民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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「私に帰る旅」を読んで その2

2013年01月28日 00時10分46秒 | マイ・エッセイ&碧鈴
 「私に帰る旅」を読んで その2

 高校の終り頃から、本を読むようになった。
みんなが受験勉強をしている中、オレは本ばっかり読んでいた。
いはゆる「自我の目覚め」っていうヤツだ。

「嗚呼、我が知らざる我は、何処の空を彷徨っているのか」
「三太郎の日記」の一節、まだ覚えている。

 先生になりたいと思っていたオレは、一番成績のよかったのが英語だった、
という理由で東京の大学(文学部、英文学科)に進学した。

 男は女の1/4という、女ばかりのクラスにオレはとまどっていた。
硬派のオレは(高校は男子校)軟弱な男ばかりの中、ひとり粋がっていた。

 そんな中、オレはひとりの女の子に心を寄せた。
いはゆる「恋の目覚め」っていうヤツだ。

 彼女はオーケストラでチェロをやっていた。
オレは彼女と仲良くなりたい一心でオーケストラに入会した。
楽器はコントラバス、練習では目の前にいつも彼女がいて、オレは幸せだった。

 家で練習するため、東京から宇都宮までコントラバスを抱えて電車で帰ったり、
夏休み、長野のスキーロッジで合宿したことはいい思い出になっている。
(真っ暗な山の中、本当に落ちてきそうな星空の美しさはまだ心に残っている)

 まだ愛好会だったオーケストラはクラブに昇格するには(大学からの援助が違う)
実績として、演奏会をやらなくてはいけないという。

 だけどそのためには、団員数が足りないので大勢のエキストラが必要だという。
オレは一人反対した。
「そんな人の力借りないで、自分らのできる範囲でやればいいんじゃないの」
何人か共感してくれた人もいたけど、結局受け入れてもらえなかった。

 オレはオーケストラをやめた。
秋の演奏会、聴きに行った。
部員の倍以上いるオーケストラ、コントラバスは8人(部員はたった一人)
曲はベートーベンの「運命」
「ジャジャジャ、ジャーン」
オレの中で何かがくずれた。

 大学の試験、オレはカンニングすることができなかった。
堂々とカンニングする生徒、見てみぬふりする講師。
オレは白紙で答案用紙を出した。

 この二つの事件(こと)「曲がったことがキラい」「ウソをつくのがキラい」
というオレの資質はどっからきたのだろうと思う。

 オレは思う、高校の時ギターを習いだして、「芸術とは何か」に興味を持ち、
その類(たぐい)の本を読んだこと、「人生とは何か」についての本を
むさぶるように読んだこと、このことが影響しているのではないか。

 その3に続く