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民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「ハチドリのひとしずく」 リメイク by akira 

2013年12月24日 00時42分20秒 | 民話(おとぎ話・創作)
 「ハチドリのひとしずく」 リメイク by akira 

 (ハチドリというのは とっても からだの小さい 鳥の ことです。
一番 小さいのは 体長 6センチ、体重 2グラムしか ありません。
ものすごい速さで 羽を動かし、飛びながら からだを 静止させて、
長い口ばしを 花の中に さし込んで 蜜を 吸います。
羽を 動かす時の「バズーーー」という音が ハチに 似ているので、 
ハチドリという名前が ついています。
英語で 言うと、Hummingbird (ハミングバード)です。)

 そんな ハチドリのいる 南アメリカ、アンデス地方に 伝わる おハナシです。

 むかしのこと、森が 火事になって しまいました。
森の 動物たちは(鳥も、昆虫も)みんな 必死になって 逃げています。

 そんな中で 一羽の ハチドリが 森に向かって 飛んで行きます。
この ハチドリは 川の水を 口ばしに 含んでは 森に戻って、
その 川の水を 燃えている 火の上に 落として、
また 川に戻って、水を含んでは 森に戻って、火の上に 水を落とし、
また 川に戻って、と、森と 川の間を 行ったり 来たり していたのです。

 そんな ハチドリを見ていて、動物たちが(バカにするように)言いました。
「どうして そんなことを して いるんだい?」

 ハチドリは 答えました。
「ボクは、(今)ボクに できることを しているんだ。」

 おしまい


「ハチドリのひとしずく」

2013年12月22日 00時35分18秒 | 民話(おとぎ話・創作)
 「ハチドリのひとしずく」 南アメリカに伝わる話

 森が燃えていました

 森の生きものたちは われ先にと 逃げて いきました

 でも クリキンディという名の
ハチドリだけは 行ったり来たり
口ばしで 水のしずくを 一滴ずつ 運んでは
火の上に 落として いきます

 動物たちが それを見て
「そんなことをして いったい 何になるんだ」
と、言って 笑います

 クリキンディは こう 答えました
「私は、私に できることを しているだけ」

 「英語」

The forest was on fire.
All of the animals, insects, and birds in the forest rushed to escape.
But there was one little hummingbird named Kurikindi,
or Golden Bird, who stayed behind.
This little bird went back and forth between water and fire,
dropping a single drop of water from its beak onto the fire below.
When the animals saw this, they began to laugh at Kurikindi.
"Why are you doing that?" they asked.
And Kurikindi replied, "I am only doing what I can do."

「おしどり」 小泉 八雲

2013年10月06日 00時14分27秒 | 民話(おとぎ話・創作)
 「おしどり」 小泉 八雲(ラフカディオ・ハーン) 西田 佳子 訳 角川つばさ文庫

 陸奥(むつ)の国の、田村の郷(ごう)というところに、孫充(そんじゅう)という名の猟師がいた。
 ある日、孫充は狩りに出かけたが、何もとれなかった。
 しかし、帰り道、赤沼と呼ばれるところを通りかかったとき、これから渡ろうという川を、
おしどりのつがいが泳いでいるのに気がついた。
 おしどりを殺すのはよくないことだが、孫充はとてもおなかがすいていたので、
弓矢でおしどりをねらった。
 矢は、おすに当たった。
めすは、向こう岸のまこもの中に逃げていった。

 孫充は、しとめた鳥を手にさげて家に帰り、それを料理した。
 その夜、孫充は、物悲しい夢を見た。
 美しい女が部屋に入ってきて、孫充の枕元に立つと、しくしく泣きはじめた。
 あまりにも悲しそうに泣くので、聞いている孫充まで、胸がはりさけるように悲しくなってきた。
 女は、泣きながら、孫充に言った。
 「どうしてですか?・・・・・
ねえ、どうして、夫を殺したの?
夫は何も悪いことをしていないのに!
わたしたちは、赤沼でしあわせにくらしていたんです。・・・・・
なのに、あなたは、夫を殺してしまった!
夫があなたに何をしたと言うんです?
 自分がどんなにひどいことをしたか、わかっていないんですね。
あなたは、夫だけでなく、わたしも一緒に殺したんですよ。・・・・・
だって、わたしは、夫なしには生きられませんから。・・・・・
わたしは、そのことを言いにきたんです」

 それから、女は、またひとしきり泣いた。
悲しげな声が、聞いている孫充の骨のずいにしみこむほどだった。
 泣き声の合い間合い間に、女は、こんな詩を読んだ。

 日暮るれば さそいしものを 赤沼の まこもがくれの ひとり寝ぞうき

 (日が暮れたら、一緒に帰りましょうと夫を誘っていたのに、今は、その夫がいなくなってしまった。
今まで、夫婦一緒に楽しく暮らしていた赤沼。そこに生えるまこものかげで、一人ぼっちで寝る夜は、
寂しくてどうしようもありません)

 そして、最後に、こう言った。
 「あなたは知らないんですね。
あなたにはわからないんですね。
自分がどんなことをしてしまったのか。
明日、赤沼に来れば、わかります。
そう、きっと、わかります・・・・・」
 はらはらと涙を流しながら、女は出ていった。

 朝になって目が覚めたとき、この夢は、孫充の記憶にはっきり残っていた。
とてもいやな気分だった。
 女の言葉がよみがえってくる。
 「明日、赤沼に来れば、わかります。そう、きっと、わかります・・・・・」
いますぐ赤沼に行ってみよう、と孫充は決めた。
行けば、あれがただの夢だったのか、そうでなかったのか、はっきりするだろう。

 こうして、孫充は赤沼にやって来た。
川の土手に近づくと、めすのおしどりが、一羽で泳いでいるのが見えた。
同時に、おしどりのほうも、孫充に気がついたらしい。
 しかし、逃げるどころか、まっすぐ孫充に向かって来る。
 不思議なことに、その目も、まっすぐ孫充を見つめているようだ。
 そして、突然、めすのおしどりは、くちばしを自分の体につき立てて、孫充の目の前で死んでしまった。

 孫充は頭を剃り、僧になった。

「三びきのこぶた」 イギリス昔話

2012年11月29日 00時15分40秒 | 民話(おとぎ話・創作)
 「三びきのこぶた」 イギリス昔話  参考 瀬田 貞二 訳  石井 桃子 訳

 今日は たまに 外国の 昔話 すっか。
イギリスの昔話で 「三びきのこぶた」って ハナシだ。
 
 むかし、あるところに、おかあさんブタと、三匹の 子ブタが いたと。
おかあさんブタは、おとうさんブタに 早く 死なれて、一生懸命 子ブタを 育てていたと。

 やっと 子ブタが 一人前に なると、おかあさんブタは、張り合いをなくしたのか、
からだをこわし、寝込んでしまったと。

 おかあさんブタは 子ブタを 呼んで 言ったと。
「おまえたちは もう 立派な 大人だ。これからは みんな ひとりで 生きていくんだよ」 
「はぁーい」

 一郎ブタは たんぼに行って わらを 一杯 取ってくると、そのわらで 家を つくったと。
あっという間に 家をつくると、床に わらを敷いて 昼寝を していたと。

 すると、ドン ドン、戸を叩く 音が する。
「誰かな」って、一郎ブタが のぞいてみると オオカミがいたと。
「子ブタくん、一緒に遊ぼう。おれを 中に 入れておくれ」
オオカミは ブタを食べてしまう 恐ろしい動物だと おかあさんから 聞いています。

「とん、とん、とんでもない」
「入れて くれないなら こんな家 吹き飛ばしてやる」
オオカミは ぷぅーと 息を吹きかけて 家を 吹き飛ばして しまったと。
そして、中で ブルブル 震えていた 一郎ブタを つかまえて、食べてしまったと。

 二郎ブタは 山に行って 木の枝を 一杯 取ってくると、その木の枝で 家を つくったと。
家が できあがると、「あぁ、疲れた」って 言って、中で 休んでいたと。

 すると、ドン ドン、戸を叩く 音が する。
「誰かな」って、二郎ブタが のぞいてみると オオカミがいたと。
「子ブタくん、一緒に遊ぼう。おれを 中に 入れておくれ」
オオカミは ブタを食べてしまう 恐ろしい動物だと おかあさんから 聞いています。

「とん、とん、とんでもない」
「入れて くれないなら こんな家 吹き飛ばしてやる」
オオカミは ぷぅーと 息を吹きかけて 家を 吹き飛ばして しまったと。
そして、中で ブルブル 震えていた 二郎ブタを つかまえて、食べてしまったと。

 三郎ブタは 町に行って レンガを一杯 買ってきて、そのレンガで 家を つくったと。
家をつくるのは 大変だったけど、辛抱強く レンガを 積み上げて 家を つくったと。

 すると、ドン ドン、戸を叩く 音が する。
「誰かな」って、三郎ブタが のぞいてみると オオカミがいたと。
「子ブタくん、一緒に遊ぼう。おれを 中に 入れておくれ」
オオカミは ブタを食べてしまう 恐ろしい動物だと おかあさんから 聞いています。

「とん、とん、とんでもない」
「入れて くれないなら こんな家 吹き飛ばしてやる」
オオカミは ぷぅーと 息を吹きかけて、家を 吹き飛ばそうと したと。
けれども、顔を 真っ赤にして ぷぅーと 吹いても レンガの家は びくともしなかったと。

 オオカミが 地団駄ふんで 悔しがっていると、屋根に 煙突があるのに 気がついたと。
「よし よし、あそこから 入ってやろう」
オオカミは 屋根に のぼって 煙突から 入って いったと。

 ところが、三郎ブタは お利口です。
オオカミが 煙突から 入ってくるのも わかっていました。
 それで、暖炉に 大きくて 深い ナベに 一杯 水を 入れて かけておいたと。
それが 今では グラグラ、煮えたぎっています。

 そんなこと 知らない オオカミは ストンと 煙突を 降りてきたから たまりません。
三郎ブタは オオカミが 降りてきたところを タイミングよく フタを取り、
オオカミが ナベの中に 落ちると、すぐ フタをして、
 そして、オオカミを ぐつぐつ 煮込んで 食べてしまったと。

 それから 三郎ブタは しあわせに 暮らしたと。

 おしまい




 

「かしこいモリー」 イギリスの昔話

2012年11月21日 01時04分02秒 | 民話(おとぎ話・創作)
 「かしこいモリー」  イギリスの昔話  参考  松岡 享子 訳

 むかし、あるところに、子供がたくさんいる 夫婦が いたと。
この夫婦は 一生懸命 働いていたが、貧乏な生活から 脱け出すことができなくて、
(もう これ以上 子供を育てることはできない)
心を鬼にして、三人の女の子を 森に捨てにいったと。

 捨てられた 三人の女の子は 森の中を とぼとぼ 歩いていたと。
「おなかがすいたなぁ」
「どこか 泊めてくれる家は ないかなぁ」
あたりは だんだん 暗くなり 心細くなってきた時、ピッカラ ピッカラ 家のあかりが 見えてきたと。

 三人の女の子は 元気が出て 走って その家に行き「トン トン」戸を叩いたと。
すると、おかみさんが出てきて、「なんか 用かい」って、言うので、
「おなかが ぺこぺこなんです。なにか 食べるものを いただけませんか?」って、お願いすると、
「おあいにくさま。うちには 見ず知らずのもんにあげる 食べものなんて ないよ。・・・
それより うちの亭主は 人を食う大男なんだ。見つかったら、食われっちまうよ」
 それでも、三人は おなかがすいて 動けないほどだったので、
「せめて 水だけでも、・・・それに ほんのちょっとでいいから、休ませてもらえませんか。
だんなさんが 帰ってくるまでには きっと 出ていきますから」って、一生懸命 頼むと、
ようやく、おかみさんは 三人を中へ入れてくれて、パンとミルクを 出してくれたと。

 ところが、三人が パンを食べていると、ドスン ドスン 大男が 帰ってきて、
「クン クン、なんだっ、人間のにおいがするぞ。・・・おーい、人間がいるんじゃねぇのか?」
って、言いながら 部屋に入ってきたと。
「ああ、ちっこい娘っこが 三人 迷いこんできて、おなかがすいたっていうから、 
パンとミルクを あげていたとこさ。・・・食べ終わったら すぐ出て行くとさ」
大男は 三人を ちらっと見ると「泊まっていくがいいさ」って、言ったと。
三人は こわくて ブルブル 震えていたが、ほかに当てもなくて、泊まっていくことにしたと。

 ところで、三人の女の子のうち、一番年下の子は、モリーという名前の とても かしこい子だったと。 

 大男には、モリーたちと同じ年頃の娘が 三人いて、
モリーたち 三人は、それぞれ 大男の同じ年頃の娘と 同じベッドで 寝ることになったと。
 モリーは、大男から目を離さなかったから、大男が モリーと二人の姉さんの首には ワラのなわを巻き、
大男の娘の首には 金の鎖を巻いたのを、見逃さなかったと。

 それで、モリーは みんなが ぐっすり 寝込むまで 眠らずにいて、
みんなが寝込むと ふとんからはい出し、モリーと二人の姉さんの首から ワラのなわをはずして、
大男の娘たちの首に巻き、モリーと二人の姉さんの首には 大男の娘たちからはずした 金の鎖を巻いたと。

 真夜中になると、大男が 手に太いこん棒を握りしめ、娘たちのベッドまでやって来たと。
そして、手探りで、ワラのなわを巻いてある 娘の首をさがし、ベッドから 引きずり下ろすと、
こん棒で ぶっ叩いて 殺してしまったと。

 モリーは、もう ぐずぐずしていられない、今のうちに 逃げ出さなきゃと、
二人の姉さんを起こし、音を立てないように、そーっと 抜け出し、
ただ ひたすら 歩き続けて、夜が明けた時には、立派なお城の 前に いたと。

 モリーは 中に入れてもらい、王さまに 今までのことを 話したと。
王さまは モリーの話を聞くと、
「おまえは なんと かしこい娘じゃ。・・・
ところで モリー。・・・あの大男の枕元の壁に 刀が かかっているんだが、
もう一度 あの大男のところに戻って、その刀を 持ってくることができるか?
もしも、できたら、おまえの一番上の姉さんを わしの一番上の息子の 嫁にしてやるんだがな・・・」
「やって みるわ」モリーは そう言うと、お城を出ていったと。

 モリーは 大男の家に戻ると、部屋にしのびこみ、ベッドの下で、大男の帰りを待ったと。
そのうち、大男が ドスン ドスン 部屋に入ってきて ベッドに入って 寝たと。
モリーは 大男が いびきをかきだすのを待って、ベッドの下からはい出し、
枕元の壁にかかってる 刀をつかんで、部屋を出ると 一目散に お城に向かって走ったと。

 すると「待てぇー!」刀がなくなったことに 気がついた大男が 追いかけてきたと。
モリーは 一生懸命 走る。だけど、大男の足は速い、あっという間に すぐうしろまで 迫ってきたと。
大男が 手を伸ばしてきて、「あっ、つかまる」と、思った その時、
大男は つんのめるように ドターンと 前に倒れたと。

 モリーが 行く時に 草を結んでおいた仕掛けに 足をひっかけたのだ。
その隙に モリーは ようやく「髪の毛一本橋」まで たどりつくことができたと。
モリーが「髪の毛一本橋」を渡り始めると、追いついた大男は、地団駄ふんで 悔しがったと。
「やりやがったな、小娘がっ。・・・今度会ったら ただじゃおかねぇぞっ!」

 モリーが その刀を 王さまのところに 持っていくと、王さまは たいそう 喜んで、言ったと。
「おまえは ほんとに かしこい娘じゃ。
約束通り おまえの一番上の姉さんを、わしの一番上の息子の 嫁にしよう。
ところで、モリー。・・・おまえ、もう一度 あの大男のところに戻って、
大男の枕の下にある財布を 持ってくることができるか?
もしも、できたら、おまえの二番目の姉さんを わしの二番目の息子の 嫁にしてやるんだがな・・・」
「やって みるわ」モリーは そう言うと お城を出ていったと。

 モリーは 大男の家に戻ると、部屋にしのびこみ、ベッドの下で、大男の帰りを待ったと。
そのうち、大男が ドスン ドスン 部屋に入ってきて ベッドに入って 寝たと。
モリーは 大男が いびきをかきだすのを待って、ベッドの下からはい出し、
枕の下にある財布をつかんで、部屋を出ると 一目散に お城に向かって走ったと。

 すると「待てぇー!」財布がなくなったことに 気がついた大男が 追いかけてきたと。
モリーは 一生懸命 走る。だけど、大男の足は速い、あっという間に すぐうしろまで 迫ってきたと。
大男が 手を伸ばしてきて、「あっ、つかまる」と、思った その時、
大男は つんのめるように ドターンと 前に倒れたと。

 モリーが 行く時に 草を結んでおいた仕掛けに 足をひっかけたのだ。
その隙に モリーは ようやく「髪の毛一本橋」まで たどりつくことができたと。
モリーが「髪の毛一本橋」を渡り始めると、追いついた大男は、地団駄ふんで 悔しがったと。
「やりやがったな、小娘がっ。・・・今度会ったら ただじゃおかねぇぞっ!」

 モリーが その財布を 王さまのところに 持っていくと、王さまは たいそう 喜んで、言ったと。
「おまえは ほんとに かしこい娘じゃ。
約束通り おまえの二番目の姉さんを、わしの二番目の息子の 嫁にしよう。
ところで、モリー。・・・おまえ、もう一度 あの大男のところに戻って、
大男が指にはめている指輪を 持ってくることができるか?
もしも、できたら、おまえを わしの一番下の息子の 嫁にしてやるんだがな・・・」
「やって みるわ」モリーは そう言うと お城を出ていったと。

 モリーは 大男の家に戻ると、部屋にしのびこみ、ベッドの下で、大男の帰りを待ったと。
そのうち、大男が ドスン ドスン 部屋に入ってきて ベッドに入って 寝たと。
モリーは 大男が いびきをかきだすのを待って、ベッドの下からはい出し、
大男の指から 指輪をはずして 逃げようとした時、
大男が 起き上がり、モリーの腕を ガシッと つかんだと。
「やっと つかまえたぞ、小娘めっ!・・・どうしてくれよう。
そうだ、・・・おまえが 一番 ひどいと思うことを してやろう。
おまえが 一番 ひどいと思うことは どんなことだ。」

「そうね、・・・袋に入れられて、そこに イヌとネコも 一緒に入れられて,・・・
それから 針と糸とハサミも 一緒に入れられて、・・・壁にかけられるのが いやだわ。
それから、森の中の 一番 太い棒で 袋の上から、叩かれるのが 一番 いやだわ」
「ようし、その通りに してやるわい」大男は そう言うと、
麻袋を持ってきて、モリーを中へ押し込めると、イヌとネコも 一緒に入れ、
針と糸とハサミも 一緒に入れ、壁にかけると、
森の中で 一番 太い棒をさがしに、森へ出かけていったと。

 大男が 行ってしまうと、モリーは 袋の中で 大きな声で 歌うように言ったと。
「あぁー、なんてステキなんでしょ、わたしだけしか 見れないなんて・・・」
「モリー、一体 何が 見えるんだね?」大男のおかみさんが 聞いたと。
 けれども、モリーは それには答えないで、
「あぁー、なんてステキなんでしょ、わたしだけしか 見れないなんて・・・」と、くり返したと。
おかみさんは もう気になって、気になって、
「お願いだから、わたしを袋の中へ入れて、おまえの見てるものを 見せておくれ」と、頼んだと。

 そこで、モリーは ハサミで 袋に ジョキジョキ 穴をあけ、針と糸を持って 飛び降りると、
おかみさんを 持ち上げ 袋の中へ入れ、針と糸で 穴をふさいだと。
おかみさんは 袋に入ったけど、なんにも見えないので、
「なんにも見えないじゃないか。あー、窮屈だ。早く 降ろしてくれ」って、言ったと。
モリーは そんなことに かまわず、走って ドアのかげに 隠れたと。

 そこへ、大男が でっかい木を かついで、戻ってきたと。
そして、壁から 袋を降ろし、そのでっかい木で 袋を叩きはじめたと。
中にいる おかみさんは、「あたしだよ、助けておくれ!」って、叫んだけど、
イヌはワンワン吠えるし、ネコはニャンニャン鳴くしで、大男には おかみさんの声が 聞こえなかったと。
 今のうちだ、モリーは お城に向かって 走りだしたと。

 すると「待てぇー!」逃げるモリーに 気がついた大男が 追いかけてきたと。
モリーは 一生懸命 走る。だけど、大男の足は速い、あっという間に すぐうしろまで 迫ってきたと。
大男が 手を伸ばしてきて、「あっ、つかまる」と、思った その時、
大男は つんのめるように ドターンと 前に倒れたと。

 モリーが 行く時に 草を結んでおいた仕掛けに 足をひっかけたのだ。
その隙に モリーは ようやく「髪の毛一本橋」まで たどりつくことができたと。
モリーが「髪の毛一本橋」を渡り始めると、追いついた大男は、地団駄ふんで 悔しがって、
「やりやがったな、小娘がっ。・・・今度会ったら ただじゃおかねぇぞっ!」
「もう 二度と 会うことは ないわ」モリーは言ったと。

 そして、モリーは 王さまのところに 指輪を持っていき、
王さまの 一番末の息子と 結婚して 幸せに暮らしたとさ。

おしまい