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『ズッコケ三人組』シリーズの終刊

2004-12-19 12:12:11 | 絵本と児童文学
[200] 『ズッコケ三人組』シリーズの終刊 (2004年12月19日 (日) 12時12分)

 きょうの『朝日新聞』の<ひと>欄には、「ズッコケ三人組シリーズ50巻を完結させた児童文学作家」というタイトルで、那須正幹(まさもと)が紹介されている。そして広告欄には出版社であるポプラ社が、50巻シリーズの最終刊である『ズッコケ三人組の卒業式』を掲載している。
 この報道は、すでに11月30日付の『読売新聞』にされた。また、11月上旬発行の『日本児童文学』(日本児童文学者協会編集・発行)には、本人によるエッセイ「ズッコケ時代の終焉」として、終刊の言葉を書いている。
 シリーズ50巻という連続性と2100万冊というロングセラーは、児童文学界ではまれなことであり、児童文学歴史に刻まれることになろう。その終刊は、時代の転換をも意味しているようにも思える。
 シリーズの執筆は72年に学習雑誌への連載からで、それを78年2月に出版をしたところから始まり、30年近く子どもたちに支持され続けて継続執筆したことになる。
 ズッコケというタイトルを掲げていることから、ユーモアと逸脱も含んだ子どもの活動力や冒険心を書き綴った。しかも3人の異なるキャラクターの行動は、子どもが誰かに共感し得て、継続して読める要素を兼ね備えていた。
 執筆開始時代は、日本が豊かさを手に入れつつあり、将来に曇りを感じなかった。大人は子どもを信頼し、その活動力に大いに期待のまなざしを注いでいたのである。時代の変化を取り込みながら三人組が展開するおもしろさ、エンターテーメント性が子どもたちに受け入れられたのだろう。

 さて、『日本児童文学に』に、自身が作品を連続させながら子どもの反響の変化を書いているので、それを要約しながら子どもの変化を見ることにしよう。

 三作目の『ズッコケ㊙大作戦』頃から読者が増えた。読者であ る子どもからは、三人組に共感の反応が多く、70年代後半か ら80年代までは三人組も「どこへでもいる普通の子ども」だ った。
 90年代になって変化した。「三人組は、私たちのやれないこ とをしてくれるから楽しい」になった。三人組は普通の子ども でなく、ミドリ市花山町は架空空間になってしまった。
 今は、三人組のような友だちがほしい、あんな友だち関係をつ くりたい、になった。現在の子どもたちが人間関係で苦労して いることが浮き彫りになっている。
 また、三人組の人気が、最初のころは元気物なハチベエの人気 があったが、ここ10年はモーちゃんだ。のんびりした性格が、子どもたちに安心感を与えているかも知れない。癒し系のキャラクターが子どものニーズになっている。

 このような自分の作品を通しての子どもの定点観察から、社会環境の変容からくる子どもの変化は、興味深いものがある。わたしの仕事からすると、学生の変化にも通じるものがあるからである。
 また、30年近くにわたってシリーズが続いた理由の一部に、防府市(山口県)で書き続けたことと子どものファンレターに返事を書いたというがあると、私は思っている。地方の小都市の方が生活の形があるので、それに時代の変化情報を加味してストーリーメーキンのイメージがしやすい。ファンレターは、モニターとして重要なのである。
 さあ、今から最終刊の『ズッコケ』を買いに行くことにする。




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