[107] 保育士資格が登録を義務化されたわけ (2003年10月28日 (火) 14時53分)
5月から保育士資格の登録業務が、開始されました。保育士資格で職業をしている人は、登録費用4200円の前納の後「保育士証」を受け取ることになります。11月29日から施行される、改正児童福祉法にもとづいておこなわれているものです。
保育士資格取得者は、およそ140万人と推定されており、登録制度の出発に当たり今年度だけで60~65万人の登録実施が見込まれています。実際保育士資格に基づいて職業についている人は、およそ52万人です。その内訳は保育所が28万人、その他の児童福祉施設24万人です。
ところで保育士資格で職業についている人が、なぜ登録を義務づけられたのでしょうしか。それは01年11月30日公布された、改正児童福祉法によるものです。18条の4では、
「保育士とは登録を受け、…保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、児童の保育及び児童の保護者に関する指導を行うことを業とする者をいう。」
となり、児童福祉法に保育士の資格が規定をされたためです。
それまで政令(法律を実施するための行政上の規定)に基づいたいわば任用資格だったものを、児童福祉法という法律に規定された法令資格としたのです。法令資格としたのは、実態はともあれその資格を国としてより高いものに認知したことになります。しかも名称独占資格としながらも、保育士の業務は登録義務による保育士証がなければできないので、資格の厳密さにおいては業務独占資格に近いといってもよいでしょう。
この資格制度の変更は、保育士の専門性の規定も変わりました。象徴的には「…専門的知識及び技術をもって、児童の保育及び児童の保護者に関する指導を行う…」とあるように、保育士の業務に保護者に対する指導が加えられました。
00年に改訂された『保育所保育指針』には、虐待等への対応、地域における子育て支援(一時保育、地域活動事業、乳幼児の保育に関する相談・助言)等、それまでの保育室での保育を大幅に超えることがらが盛り込まれています。保育所の現場では子育て相談を受けたり、いわば子育て支援政策の担い手としても保育士が位置付けられています。このような状況に対応してカウンセリング技術の講習がおこなわれたり、有料の講座も盛況とのことです。
保育士資格を法令で定め登録制にしたのは、資格を国で管理するということです。そのため、信用失墜行為の禁止(18条の20)秘密保持義務(18条の22)などを課しています。秘密保持義務に「違反した者は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する」(60条の2)となっております。この罰則は、この種の職業としては、軽微ではありません。
このように保育士を法令資格制度にするきっかけは、00年に神奈川県で無認可保育を、女性が資格なしで経営と保育をおこない、子どもを虐待死させた事件を教訓にしたといわれています。
法令資格として専門性を高く設定したことともかかわって、大学等の保育士養成では、家族援助論の新設、乳児保育の演習科目化、障害児保育の必修化、養護内容の必修化、実習の増等、カリキュラムのガイドラインが02年度から変更されました。
保育士の専門性の高い設定は48条の2に、
「保育士は、乳児、幼児等の保育に関する相談に応じ、及び助言を行うために必要な知識及び技能の習得、維持及び向上に努めなければならない。」
とし、研修権とも解釈可能なように規定をされています。研修については『指針』にも、職員の研修等という項を設け「・・・研修に積極的かつ主体的に参画できるような環境づくりに心がけ、職員の資質向上を図り、・・・」と言った、努力義務も含む積極的な位置づけがされています。
しかし多くの現場では、それにふさわしい保育士の研修や再教育がおこなわれているとはいい難いのが現実です。職員会議等討論さえ、ある時期より減少しているのが、大方の傾向です。そればかりか保育所では非専任保育士が担任をする状況が多くなったり、給食のアウトソーシング化、さては公立保育所の民営化など条件が悪化しています。さらに幼保の合同化等保育制度そのものが揺らいでいる状況になっています。財政負担を少なくして少子化に歯止めをかけたい少子化対策の一部としての子育て支援を、保育士にゆだねるだけという閉塞感を持っているのが現場の実感のようです。制度を変えたが、それに見合う条件整備をせず、保育士個人への責任のみが付加されたからです。
登録義務の4200円負担が、期待される高度な専門性を誇り高く作り出すこととは結びつかず、むしろ条件の整わない中での業務の拡大と専門性の高度化と責任の付加に重圧を感じているのが、現場保育士の声としてあります。
ちなみに保育士登録業務は、本来は都道府県でやるのですが、知事からの委託登録機関として日本保育協会でもある「登録事務処理センター」が一括しておこなっております。
今後保育士資格取得して卒業する学生(年間約3万3000人)も4200円の費用を納入して登録義務をはたさなければなりません。
5月から保育士資格の登録業務が、開始されました。保育士資格で職業をしている人は、登録費用4200円の前納の後「保育士証」を受け取ることになります。11月29日から施行される、改正児童福祉法にもとづいておこなわれているものです。
保育士資格取得者は、およそ140万人と推定されており、登録制度の出発に当たり今年度だけで60~65万人の登録実施が見込まれています。実際保育士資格に基づいて職業についている人は、およそ52万人です。その内訳は保育所が28万人、その他の児童福祉施設24万人です。
ところで保育士資格で職業についている人が、なぜ登録を義務づけられたのでしょうしか。それは01年11月30日公布された、改正児童福祉法によるものです。18条の4では、
「保育士とは登録を受け、…保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、児童の保育及び児童の保護者に関する指導を行うことを業とする者をいう。」
となり、児童福祉法に保育士の資格が規定をされたためです。
それまで政令(法律を実施するための行政上の規定)に基づいたいわば任用資格だったものを、児童福祉法という法律に規定された法令資格としたのです。法令資格としたのは、実態はともあれその資格を国としてより高いものに認知したことになります。しかも名称独占資格としながらも、保育士の業務は登録義務による保育士証がなければできないので、資格の厳密さにおいては業務独占資格に近いといってもよいでしょう。
この資格制度の変更は、保育士の専門性の規定も変わりました。象徴的には「…専門的知識及び技術をもって、児童の保育及び児童の保護者に関する指導を行う…」とあるように、保育士の業務に保護者に対する指導が加えられました。
00年に改訂された『保育所保育指針』には、虐待等への対応、地域における子育て支援(一時保育、地域活動事業、乳幼児の保育に関する相談・助言)等、それまでの保育室での保育を大幅に超えることがらが盛り込まれています。保育所の現場では子育て相談を受けたり、いわば子育て支援政策の担い手としても保育士が位置付けられています。このような状況に対応してカウンセリング技術の講習がおこなわれたり、有料の講座も盛況とのことです。
保育士資格を法令で定め登録制にしたのは、資格を国で管理するということです。そのため、信用失墜行為の禁止(18条の20)秘密保持義務(18条の22)などを課しています。秘密保持義務に「違反した者は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する」(60条の2)となっております。この罰則は、この種の職業としては、軽微ではありません。
このように保育士を法令資格制度にするきっかけは、00年に神奈川県で無認可保育を、女性が資格なしで経営と保育をおこない、子どもを虐待死させた事件を教訓にしたといわれています。
法令資格として専門性を高く設定したことともかかわって、大学等の保育士養成では、家族援助論の新設、乳児保育の演習科目化、障害児保育の必修化、養護内容の必修化、実習の増等、カリキュラムのガイドラインが02年度から変更されました。
保育士の専門性の高い設定は48条の2に、
「保育士は、乳児、幼児等の保育に関する相談に応じ、及び助言を行うために必要な知識及び技能の習得、維持及び向上に努めなければならない。」
とし、研修権とも解釈可能なように規定をされています。研修については『指針』にも、職員の研修等という項を設け「・・・研修に積極的かつ主体的に参画できるような環境づくりに心がけ、職員の資質向上を図り、・・・」と言った、努力義務も含む積極的な位置づけがされています。
しかし多くの現場では、それにふさわしい保育士の研修や再教育がおこなわれているとはいい難いのが現実です。職員会議等討論さえ、ある時期より減少しているのが、大方の傾向です。そればかりか保育所では非専任保育士が担任をする状況が多くなったり、給食のアウトソーシング化、さては公立保育所の民営化など条件が悪化しています。さらに幼保の合同化等保育制度そのものが揺らいでいる状況になっています。財政負担を少なくして少子化に歯止めをかけたい少子化対策の一部としての子育て支援を、保育士にゆだねるだけという閉塞感を持っているのが現場の実感のようです。制度を変えたが、それに見合う条件整備をせず、保育士個人への責任のみが付加されたからです。
登録義務の4200円負担が、期待される高度な専門性を誇り高く作り出すこととは結びつかず、むしろ条件の整わない中での業務の拡大と専門性の高度化と責任の付加に重圧を感じているのが、現場保育士の声としてあります。
ちなみに保育士登録業務は、本来は都道府県でやるのですが、知事からの委託登録機関として日本保育協会でもある「登録事務処理センター」が一括しておこなっております。
今後保育士資格取得して卒業する学生(年間約3万3000人)も4200円の費用を納入して登録義務をはたさなければなりません。
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