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●コラム紹介と書籍紹介(1)“日銀、悪夢から抜け出せ!”
夏本番を迎え、心機一転、blogにも力入れようかと思うのだが、脱力感は、容易に癒えそうもない。永遠に、戻らない可能性もありそうだが、時には、コラムを書きたい気分になることもあるだろうから、暫くは、目についた、ひとさまのコラム紹介と、関連書籍の紹介を中心にブログは続ける。
無論、どうしても、言わなければならない、政治経済外交等々が発生するたびに、今まで通り書くつもりだ。今後は、一生仕事と云うのは大袈裟だが、民主主義と資本主義の機能不全を迎えた21世紀、どのような変化が望ましいのか、グローバル世界と日本と云う立ち位置で、電子書籍の執筆に、多くの時間を費やす予定でいる。既存の政党や政治勢力は、立場主義的であり、民主主義のジレンマ、ポピュリズムから解放される時はないであろう。
つまり、魂であるとか、思想・哲学・歴史の領域に一歩も踏み入ることは出来ず、表層的些末な差異に、口角泡を飛ばす茶番から、一歩抜け出した立場で、情報を発信したい心境だ。無論、市井のブロガーに過ぎない筆者の器量では、確たるものにまで到達できるかどうか不明だ。ただ、「あいば達也」と云うブロガーが居たねと忘れられない範囲で、情報は発信していきたい。引用コラムに、時には、コメントを一定の範囲で書くこともある。
≪ 手詰まりの日銀に求めたい「撤退する勇気」
黒田日銀総裁の記者会見に出席し「この人はやっぱり大蔵省の人」とつくづく思った。市場は政策でなんとでもなる、と思っているのが大蔵官僚の特徴だった。財政・税政を握り、権力で経済は動かせるという自負心で彼らは失敗した。
市場は権力の都合では動かない。物価上昇は目標に届かず、株は上がらず、為替も円高に振れる。それでも黒田総裁はまだ「なんとかなる」と思ってい るようだ。経済対策を練る首相側近も似たような感覚のようだ。総事業費28兆円。大型景気対策を打てば、株価が上がると信じているのか。
市場の反応は真逆だった。国債は売られ、長期金利が急上昇した。市場は、金融と財政が「緩む」ことを期待しながら、「非常識はいつまでも続かない」と心配する。満ちる月はやがて欠ける。投資家は「この先」を恐れている。
第4次金融緩和と28兆円経済対策が並んだタイミングで起きた異変は、動揺する投資家心理を映し出ている。市場のシグナルは「国債バブル終焉の予兆」と受け止めるべきだろう。
■国債価格・金利に異変 お上が支える歪んだ市場
4次緩和を決めた日銀の金融政策決定会合は29日金曜日。決定が伝わると株価は乱高下した。「国債買い入れ増額なし、マイナス金利の深堀りもな し」。期待外れの内容に売りが殺到。日経平均は大きく値を下げた。ところが、予想外の「ETFの買い入れ倍増」が伝えられると、株の買い戻しが起こった。 ジェットコースターのような値動きに株式市場は湧いたが、不気味な動きは週明けの債券相場で始まった。
日銀のマイナス金利で、どんどん下がっていた長期金利(指標になる10年国債の流通利回り)が上昇に転じたのである(国債価格は下落)。「期待し た国債買い入れ増額がなかったことの反動」と見られたが、その程度では止まらず、売りが売りを呼んだ。決定会合の前日には-0.29%まで下がっていた金 利が、経済対策が発表された2日には0.06%まで上がったのである。
市場関係者に聞くと「株に例えれば2日で日経平均が1000円下がったような衝撃」という。
英国がEUからの離脱を決め危うさを増す世界で、日本国債は「安全資産」と見られていた。1000兆円を超える政府の借金で格付けは下がり、中国や韓国の国債よりランクが低い日本国債だが、世界の投資家の眼には「安定した投資先」に映る。
日銀が年間80兆円の勢いで市場から買いまくり、円安も一服しているので国債は安定感がある。長期的に不安材料はあっても、短期的にはおカネの置き場として安心できる、というのだ。背景にあるのが日本国債を巡る特殊な事情だ。
政府が国債でカネを集めると民間に流れる資金が圧迫され、金利が上昇する。それが普通の経済だ。国債を乱発すれば金利が上がり利払いが膨らんで、発行はおのずと抑制される。市場には自己調整機能があるとされてきた。
借り換えも含めると年間200兆円もの国債が発行されながら金利が上がらない。危険信号が灯らない日本の珍現象は、専門家の間で「国債バブル」と呼ばれてきた。
日銀が市場からどんどん国債を吸い上げ、日銀マネーを流し込むので、政府が国債を乱発しても金利は上がらないのである。市場の調整機能は働かず、警報が鳴らない。日銀の金融政策によって回路が切断されている。 困ったことだが、財政には居心地がいい。1000兆円を超える借金の金利負担はチョー軽い。マイナス金利なら得までする。借り手を甘やかす金利環境は財政規律を弛緩させ、政府を覚せい剤をやめられないシャブ中毒者のようにしてしまった。
28兆円に膨らんだ経済対策は「赤字国債に頼らない」というが、事業規模を膨らます切り札は財政投融資。かつて郵便貯金が原資だった財投は、郵政 民営化で郵貯に頼れなくなった。代わって財投債という名の国債で資金を集めている。つまり財投で経済対策、というのは国債で公共事業をすることでもある。 これに市場は金利上昇で応えた。「この先」への懸念である。
■証券会社出身の委員2人が反対 なりふり構わぬ株価対策
異変は政策決定会合でも起きていた。「ETFの買い増し」に2人の委員が反対した。佐藤健裕委員は「6兆円の買い入れは過大。市場の価格形成や日 銀財務の健全性に悪影響を及ぼす」と主張。木内登英委員は、日銀財務の不健全に加え「株式市場のボラティリティーを高める。株価を目標にしているとの誤ったメッセージになる」と強く反対した。
二人とも証券会社のエコノミストから政策審議員に登用された民間委員である。市場の声の代弁者ともいえるが、その前に「ETF買い上げ」について説明しよう。
ETFは株式を組み込んだ投資信託である。日経平均や東証株式指数(TOPIX)などと同じ値動きをするように構成する銘柄を組み込んでいるの で、投資家はたとえば日経平均を買う気分でETFに投資ができる。日銀は金融の量的緩和策の一環としてETFを市場から買っている。これまでは年間3.3 兆円だった。今回は買い入れ額を6兆円に拡大してETFを買い上げて日銀マネーを市場に流す、というのは口実で、実態は「株価の買い支え」である。ETF を買えば組み込まれている指標銘柄の株式を日銀が買っているのと同じ効果がある。6兆円ものカネで日経平均やTOPIXを底上げする。市場介入である。
外国為替市場での介入は、政府がドル買い・円売りをして円安に誘導する。米国では日本の介入に「公正な相場形成を歪める」と批判が高まっている。相場はなかなか政府の意のままには動かない。強引にやれば「アンフェア」と批判される。それが市場だ。
二人の委員が指摘するようにETFの買い上げは市場の価格形成を歪める恐れがある。3.3兆円でも「池のクジラ」と言われていたのをさらに倍増し6兆円にする。「なりふり構わぬ株価対策」と市場は反応した。
株価は、企業の業績や将来性を示すもので、高ければいい、ということではない。業績が悪くても政府の都合で価格が上がるなら、「株価は企業の体温計」の機能を失い、投資家は業績より政府の動向を見るようになる。
木内委員は「誤ったメッセージ」と言うが遠慮した表現だ。政府には株価の誘導目標があると疑われても仕方ない政策である。日経平均が下がると ETFの注文が日銀から証券会社に入る。防衛ラインを割らせない、という政府の意思を関係者は感じ取り、市場に広がる。不明朗な株価操作の臭いが濃厚に漂 う。 アベノミクスは株高で人気を得た。金融緩和で株式市場にカネが流れ込み株価を押し上げた。円安で輸出企業が儲かり株が上がる。緩和―円安―株高― 支持上昇という好循環が安倍政権を支えた。支持率に欠くことができない株価を維持するため市場介入までありという政策の総動員に、証券会社をバックにした 審議員から批判が上がった。
政府・日銀・証券会社はアベノミクス推進では同じ方向を向いていた。審議委員会で発せられた異論は、内部崩壊へとつながる小さなひび割れかもしれない。
■政権維持のための政策総動員に 民間から批判・不満が続出
三菱東京UFJ銀行が国債売買で優先的地が与えられるプライマリーディーラーから離脱したことも、政策への異議申し立てだ。マイナス金利の導入で 銀行は経営が苦しくなった。日銀は「金利全体が下がり企業や個人が資金を借りやすくなった」と自賛するが、銀行は預金金利をマイナスにはできない。ほぼゼ ロ金利に近いところまで下がっているのに、住宅ローンや貸し出しの金利が下がり利ザヤ圧縮が経営に響く。国債で資金を運用してきた銀行はマイナス金利に泣いている。 「金融機関のために金融政策があるのではない」という黒田総裁の発言に金融界は冷ややだ。「民間金融を痛めてまで進める政策に展望があるのか」というのである。
三菱の離脱も、審議員の反対論も、日銀と業界に生じたひび割れから噴き出た。金融常識を踏み越えた異次元緩和が行き着いた先がマイナス金利であり、ETFの買い増しという市場介入。
そして国債の増発を伴う大型補正。無理の上に無理を重ねるアベノミクスの加速に、「次があるとしたらヘリコプタ―マネー」といわれるほどアベノミクスは追い込まれている。
業者である銀行・証券は、お上である政府・日銀には付き従うが、面従腹背の腹に不満のガスが充満している。
■物価上昇を非常識な金融手法で 達成しようとした根本的な誤り
日銀も政策転換を模索せざるをえない。2013年4月に公約した「2年後に物価上昇率2%達成」は果たせず、先送りした2016年度中にという約束も絶望視されている。
黒田総裁は会見で「次回9月の会合で、これまでの金融政策について総括的な検証を行う」と述べた。 湯水のように日銀マネーを投入しているのに物価が上がらないのはなぜか、徹底的に検証するという。2%の物価目標をできるだけ早期に実現する観点からの検証だという。
無理な目標に固執して危ない政策を重ねるのでは日銀の信認に傷がつく。「2%は果たします」と言いながら目標時期を曖昧にする理屈付けを考えるのが狙い、と関係者は教えてくれた。誇り高い日銀らしいやり方だが、根本から違っている。
インフレ期待に働きかけて物価を上昇させる、という政策に無理があった。通貨をじゃんじゃん発行すれば、これからはインフレだ、という思惑が広がり、人々はわれ先にカネを遣うから物価が上がる、という理屈に乗った金融政策が間違っていた。
高度成長期ならありえたかもしれない。低成長のなかで貧富の差が広がり、多くの人は将来への不安を抱え、気前よく消費などできない。企業は縮む国内市場より成長性が期待できる海外に投資する。
大胆な金融緩和がインフレ期待を起こせると考えたのが見当違いだった。物価上昇を目的にしたもの間違いだ。政策で物価を操れると考えたことにも無理があった。 「徹底検証」というなら「2%物価上昇を非常識な金融手法で達成する」という目標の妥当性こそ検証すべきだろう。
非常識な金融緩和の結果、政府が発行する国債の3分の1も日銀が買い集めてしまった。政府の借金を、日銀がお札を刷って埋める「財政ファイナンス」が始まっている。
誤った道からどうやって安全に抜け出すか。出口探しこそ日銀の課題だ。求められるのは「撤退する勇気」である。
≫(ダイアモンドONLINE>経済・時事>山田厚史の「世界かわら版」)
★用語解説【ヘリコプター・マネー】
≪マイナス金利の比にならないほどの劇薬!? ヘリコプター・マネーとは? 最近、ヘリコプター・マネーという言葉が話題になっています。文字通りヘリコプターからお金をばらまくという政策です。もちろん、実際に人がヘリコプターからお札を落とすわけではありませんが、端的に表現すればお金を無料で配布するという政策です。
一見すると、非現実的な馬鹿げた議論に思えるかもしれませんが、これは事実として、最近活発に議論されています。こうした議論が盛り上がっていることを認識しておくべきでしょう。第一生命経済研究所の藤代宏一さんが解説します。
■現在の日本の政策はどうなっている?
この政策は金融政策と財政政策をミックスした最終進化形の政策で、マイナス金利の比にならないくらいの劇薬ですが、それだけあってその効果と副作用も凄そうです。
そこで、まずは現在の日本で採られている政策をおさらいしましょう。日銀は2013年以降、量的・質的金融緩和(QQE)という政策を採用していますが、実はそれ以前の10年から「包括緩和政策」と呼ばれる、現在の枠組みと似たような金融緩和策を推し進めてきました。いずれも軸となるのは国債の購入で、これは連邦準備制度理事会(FRB)のQE(09年から14年まで3度にわたって実施)や欧州中央銀行(ECB)のそれとほぼ同様の手法です。
この国債購入は、民間銀行が保有する国債を中央銀行が(基本的に民間銀行にとって有利な条件で)買い取るというもので、その代金の支払いのことが 「中央銀行の資金供給」と表現されています。ただ、筆者は「中央銀行がジャブジャブに資金供給をして……」という誰もが一度は耳にしたことがあるこの表現に違和感を覚えます。これだと、あたかも日銀が無料で民間銀行にお金を渡しているような誤解を与えるからです。ジャブジャブといっても、それは単に国債の売却代金を受け取っているのに過ぎないのです。
■政府が無料でお金をばらまく? 問題はないのか
その点、ヘリコプター・マネーの考え方は豪快です。国債などの対価を受け取ることなく、本当に無料でお金をくれます。実行するのは政府、それを側面支援するのが中央銀行です。
まず、政府は国民に“究極のばらまき”を施します。それが、「地域振興券」、「子ども手当」、「介護手当」、「○○給付金」なのか、具体的な手段 はわかりませんが、とにかく現金同等物を大規模に国民に行き渡らせます。突然、現金がふところに入れば人々はそれを消費に回すと考えられるため、経済活動が活発化します。消費の活性化によって景気がよくなることや、おカネの総量が増えることで金額ベースの経済規模が嵩上げされ、物価が上昇し易くなります。 従来型の金融・財政政策を総動員しても困難であったデフレ脱却が、いとも簡単に成し遂げられるというわけです。
しかしながら、問題となるのはその財源と将来の返済です。そこで中央銀行である日銀の出番です。中央銀行は政府が発行した赤字国債を満期、あるいは永久に保有する前提で買い取ると約束することで、政府による(理論上は)無限の赤字国債発行を可能にさせます。
これを大規模かつ継続的に実施するとアナウンスするのです。要するに返済の必要のないおカネを大量に発行・配布するのです。ちなみに、このような 政府と日銀の関係は、戦時中に酷似しています。戦費を調達したい政府が日銀に国債を引き受けさせ、日銀を“打ち出の小槌”として活用したのです。その成れの果てが戦後の物価急上昇でした。
*筆者注:ハイパー的インフレ。預金価値も半減する。
このように政府と日銀が癒着すると、歯止めがきかなくなるとの反省から、現在、日銀は政府から独立しています。なお、ヘリコプター・マネーの類義語として財政ファイナンス、マネタイゼーションという言葉がありますが、どれもほとんど似たような意味です。 さて、話を戻します。多額の現金が配られたら、何が起こるでしょうか? 予想される望ましい効果は上述したとおり経済が活発化して物価が上昇するほか、おカネの価値が(適度に)下落するため、インフレ率が上昇しやすくなることです。
反対におそろしいのは、政府・日銀に対する信用が失われ、円の通貨価値が暴落するなど、経済的混乱に陥ることです。お札という紙切れに価値がある と人々が信じるのは、政府と日銀の後ろ盾があるからです。政府・中央銀行の信用が失われた戦後の日本、90年代後半のアジア(通貨危機)、最近のアルゼンチン、ベネズエラ、ジンバブエなどでは通貨価値が安定せず、経済が大混乱に見舞われました。このことを再認識する必要があるでしょう。
■なぜ最近、ヘリコプター・マネーの議論が活発化しているのか
最後に、なぜ最近になってヘリコプター・マネーの議論が活発化しているかというと、その背景に「金融政策の限界論」があります。16年入り後は、日銀のみならず、ECBなど先進国の中央銀行が金融緩和を強化しましたが、景気は思うように回復せず、物価も勢いがありません。
そこで思い出されたのが、2年前までFRB議長を務めていたバーナンキ氏が、かつて言及したヘリコプター・マネー政策です。同氏は「ヘリコプター・ベン」とのあだ名があるとおり、従来からこの政策に肯定的な見方を示していました(回顧録で本人は一部否定していますが)。
中央銀行に“打つ手なし”との諦めムードが広がりつつある今、発表当時はかなり奇抜な意見として処理されてきたこの政策が再び脚光を浴びたというわけです。 (第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)
※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ず るに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載 された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
≫(The PAGE)
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