世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●企業業績の悪化の責任 経営者の責任指摘は、お門違い!

2016年08月18日 | 日記
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●企業業績の悪化の責任 経営者の責任指摘は、お門違い!

 以下は穏健な経済中心に情報を発信するノンフィクション作家・町田徹氏のコラムだ。しかし、日本企業の今期以降の業績悪化を、企業責任と云う結論で締めくくる以下のコラムは、相当の違和感を持って読んだ。筆者も企業人であった事を思うと、到底、民間企業や経営者の責任に帰結されては、堪ったもんじゃない、と云う気分になってしまう(笑)。

 一つは、常に言い続けていることだが、先進諸国の経済成長は、フロンティア地域を失い、飽和状態になっている、実物経済から金融経済と、手変え品変え「資本主義の接続可能秩序」に努力はしてきたものの、構造的に万策尽きた感がある。つまり、金融資本主義で、どれ程詐術的統計を捻りだしても、ファンダメンタルである実物経済が、カンフル剤を打たれても、もう余力を残していないことは、実は自明に近いのだ。このような経済事情は、先進国や発展途上国を大きな網で囲い込んでいるので、一企業の打てる手は限定的になる。骨折り損のくたびれ儲けと云う構造的な問題だ。

 二つ目が、日本独自の元凶が、多くの日銀弥縫策の結果、疾患を、より深刻な症状に持ち込んでしまったことである。俗に言うところ「アホノミクス」、取り消しが出来ない安倍政権と日銀による経済成長神話の醸成だ。これは、冗談を通り越して深刻だろう。日本経済が悪化する材料は、星の数ほど言い募ることが可能だが、日本経済が好転する材料は、幻想でも捏造しないと、何ひとつ出てこない。円は、年内に確実に対ドル90円台に突入するし、アベノミクスの唯一の功績、「株高」も「株安」に転じていくだろう。このまま、アベノミクスを加速させると意地を張っている内に、大半の上場企業の大株主が、「日銀」になってしまう日も遠くはない。

 日銀黒田が実行している「異次元の金融緩和」第何弾だか忘れたが、打てば打つほど、国家の富がマヤカシの富になる。延いては、国民の富が、安倍と黒田によって、合法的に略奪される結論になるだろう。その上にだ、市場の経済成長が、ほぼないと世界の経済学者たちが追認する状況になれば、日本の腐れ経済学者たちも、「経済成長は神話でした」と言い出すだろう。いや、既に多くの識者が、自説を覆し、学者としての良識を取り戻したように、口を拭い出した。この現象を目撃して、イケイケドンドンの日経も、かなり不安で弱気な「アリバイ記事」を書き始めた。その日経の記事と町田氏のコラムを、以下に参考引用しておく。


 ≪ かき消される進言 経済学界、安倍政権と溝
増税延期2度のトラウマ
 アベノミクスを掲げる安倍晋三内閣と、日本の経済学界との間にすきま風が吹いている。学界の一部には安倍内閣との距離を縮めようとする動きがあるが、溝は埋まりそうもない。  政府の規制改革会議は7月末で設置期限を迎え、鶴光太郎・慶応大学教授は雇用ワーキング・グループ座長を退任した。政府の成長戦略の本丸ともいえ る労働市場改革に積極的に関与しようとしたが、徒労感が漂う。グループ内で議論を重ね、正社員改革の柱として労働時間規制の見直しなどを提案しても安倍官邸には聞き入れられず、「悔しい思いをする場面が何度もあった」。
 「政府の側から研究者に数年先までの政策課題をわかりやすく示してほしい」。6月18日、日本最大の経済学会である日本経済学会のセッションで、大竹文雄・大阪大学教授は内閣府の担当者に詰め寄った。  このセッションでは内閣府の担当者が登壇し、西川正郎次官も会場で質疑応答に加わった。日本経済学会は大学に所属する経済学者や研究機関の研究者が会員の大半を占め、学会発表の主体は経済学者。官僚が姿を見せるのは珍しい。
  テーマは「エビデンス(証拠)に基づく政策立案・評価と政策研究」。専門家によるデータ分析を政策に反映させ、税金の無駄遣い、効果が乏しい政策を回避しようとする考え方で、世界の潮流になりつつある。「日本の政策決定にはエビデンスが欠けている」と危機感を持つ大竹教授らが内閣府に働きかけ、共催が実現した。
 学会と内閣府が足並みをそろえるのは一歩前進だが、政策決定の手綱を握る安倍官邸に声が届かない限りあまり意味がない。セッションでは「政治家は短期的な最適解を求めがちだ。長期的な最適解を追求する研究者とは立場が異なる」(伊藤由希子・東京学芸大学准教授)との発言も出た。
  経済学界にとってのトラウマは、安倍内閣による2度の消費増税延期。とりわけ6月1日に首相が再延期を表明したとき「やはりそうか」とため息をついた経済学者は少なくない。土居丈朗・慶応大学教授もその一人。5月の伊勢志摩サミット前に、増税反対派のポール・クルーグマン米ニューヨーク市立大学教授らを首相官邸に呼んだ時点で「安倍首相の意図は明らかだった」。
 予定通りの増税を求める日本の経済学者は多かったが、「首相は最初から再延期ありきで、日本の学者の意見を聞くつもりはなかった」とみる向きは多い。
 安倍内閣は分野別に様々な会議を立ち上げ、経済学者もメンバーに加えている。表向きは意見に耳を傾ける姿勢を示すものの、会議に参加した経済学者からは「有権者に受けそうな項目をつまみ食いしているだけで、一貫性がない」との不満が漏れる。
  日本の経済学界の側にも原因がある。現在はミクロ経済学を中心とする理論分析が研究の主流で、米国などの著名な学術雑誌への論文の掲載件数で学界での評価が決まる。日本政府に協力してマクロのデータ分析に取り組んでも学界での評価につながりにくいとあって、政策評価を専門にする学者はほとんどいない。
 政策評価を実施するにしても「予算の無駄を削り、市場の効率をよくする」という視点での分析となる。政府が2日、閣議決定した経済対策にも多くの学者が厳しい視線を注ぐ。安倍内閣にとっては煙たい存在だろう。
  摩擦を覚悟で政府の会議に参加しても、経済学者の個々の意見は、かき消されがち。政策評価に早くから関心を寄せ、日本経済学会での議論を主導する大橋弘・ 東京大学教授でさえ、「政策決定に中途半端に関わるのをやめ、研究活動に専念したいと考える学者が増えるのも無理はない」との見方を示す。
 「ここで諦めるわけにはいかない」と土居教授は語る。政府の税制調査会、社会保障制度改革推進会議などに参加する土居氏は「安倍官邸の目が届いていない分野は多く、データを基に議論を積み重ねていけば、経済学者の意見も政策に反映される」とみるが、壁は厚い。 
 ≫(日経新聞電子版:編集委員 前田裕之)


 ≪ リーマンショック以来の悪い数字も… 日本企業の「不振」はここまで深刻になっていた!
まだまだ悪くなる…かも

■悪条件ばかり
 円高、チャイナショック、Brexit(英国のEU離脱)、爆買いの沈静化、そして消費の減速……。
 速報値によると、日本企業の4~6月期(第一四半期)決算は「経常利益」の合計が3四半期連続の減益になった。しかも減益幅は前年同期比で15.9%減と大幅だ。
 この速報値は、時事通信が、先週水曜日(8月10日)までに発表を終えた東証1部上場1219社(金融を除く。全体の96%に相当)の決算を集計したものだ。米国会計基準や国際会計基準を採用する企業については、「経常利益」の代わりに概念のよく似た「税引き前利益」で計算したという。
 一方、個別の決算発表で目立ったのは、日本の成長に不可欠な輸出を支える製造業の不振だ。大手鉄鋼2社や造船、海運会社が経常赤字に転落したほか、自動車や電機も減益率が大きかった。
 GDP指標では輸出扱いになる“爆買い”も一時の勢いがなく、これまで底堅い動きを保ってきた内需企業の低迷に拍車をかけた。
 まだ1年度の4分の1にあたる3ヵ月が経過したばかりなのに、早くも全体の6%にあたる71社が通期の業績予想の下方修正に踏み切り、先行きに赤信号を灯したという。このままでは2017年3月期通期が2期連続減益になるのは必至だ。
 四半期ごとに巡ってくる上場企業の決算発表は、1ヵ月以上の期間に分散するのが恒例だ。今回一番乗りを果たしたのは、7月1日に発表した焼肉チェー ン「あみやき亭」(本社:愛知県春日井市)だ。内需型企業の潮目を象徴するような決算で、経常利益が前年同期比6.5%減の7億4300万円と、前年同期 (8.9%増の7億9500万円)から一転、減益になった。
 同社の決算短信は「牛肉価格の高止まりの中で、人手不足解消のために人件費が嵩んだことと、消費者マインドの低下が響いた」としている。

 ■リーマンショック以来の衝撃
 ここで経常利益という概念をおさらいしておこう。一口に利益と言っても、営業利益、経常利益、当期利益など様々な概念がある。
 営業利益は、本業の稼ぎに焦点を当てた概念だ。売上高から材料費や人件費、宣伝・広告費などのコスト(経費)を引いたもので、売上高が伸びてもそれ以上にコストが嵩むと営業減益や営業赤字に転落する。
 経常利益は、その営業利益に受取利息などを足す一方、銀行借り入れや社債の元利払いの費用を引いたものだ。つまり、本業と金繰りを勘案して、事業全 般の活動ぶりを示す利益の概念である。会計の日本基準を採用している企業の場合、業績の好不調を見るのに最も相応しい概念と言える。
 最後が当期純利益(最終利益)だ。人生に平時と異なるイベントがあるように、企業も本業とは無縁の土地売買や天災・事故などで予想外の特別損益が発 生することがある。それらを控除したうえで税金を差し引き、残った最終的な利益が当期利益(最終利益)だ。配当金の原資なので、株主にとっては最も関心の高い利益である。
 今回(4~6月期決算)の特色は、上場企業が円高の直撃を受けたことだ。前年同期に1ドル=120円台前半だった円相場が、10円前後の円高となったことが響いたのである。
 時事通信の集計によると、東証1部上場の1219社の売上高は5.9%減となった。一方、人件費など諸経費の上昇で、経常利益が売上高を上回る減少を記録したという。
 また、日本経済新聞の集計(8月6日までに発表を終えた1055社が対象)によると、経常減益社数が全体の58%に達した。これはリーマンショックの影響が残っていた2009年7~9月期(62%)以来の高水準で、企業業績の不振は深刻と言うべき状況だ。

 ■二つの悪条件
 業種別に見ると、円高とチャイナショックのダブルパンチを浴びた形となったのが、鉄鋼や造船、海運だ。
・売上高が前年同期比16.9%減の1兆511億円に落ち込んだ新日鉄住金は120億5000万円の経常赤字(前年同期は844億2200万円の黒 字)に、売上高が同13.6%減の7406億6500万円となったJFEスチールも133億6800万円の経常赤字(前年同期は287億700万円の黒字)に転落した。
 海運の日本郵船も売上高が同20.0%減の4707億5900万円、経常収益が99億2400万円の赤字(前期同期は215億円の黒字)に、三菱重工業は造船事業の不振が響いて売上高が同9.0%減の8472億8100万円、経常収益が166億800万円の赤字(前期同期は616億2500万円の黒 字)にそれぞれなった。
 自動車も深刻だ。
 大手7社の売上高をみると、富士重工業だけが販売台数を伸ばして増収(前年同期比0.5%増の7693億7800万円)基調を確保したものの、他の6社はそろって円高の影響をカバーしきれず、トヨタ自動車(前年同期比5.7%減の6兆5891億1300万円)、本田技研工業(6.3%減の3兆 4717億3000万円)、日産自動車(同8.4%減の2兆6544億9900万円)、マツダ(同3.7%減の7762億400万円)、スズキ(同 2.4%減の7540億3100万円)、三菱自動車(同14.3%減の4287億3200万円)がそろって減収となった。
 国際会計基準の税引き前利益でトヨタ(前年同期比19.9%減の6770億5600万円)とホンダ(同2.2%増の2884億9200万円)の明暗が分かれた以外は、国内基準の日産(同8.2%減の1982億4700万円)、マツダ(17.7%減の449億2800万円)、富士重(同8.7%減の 1187億9500万円)、スズキ(同1.7%減の612億7800万円)、三菱自(同81.9%減の43億7100万円)といずれも経常減益だった。三菱自が極端に不調だったのは、燃費不正問題の影響だ。 電機でも傾向は自動車と似たり寄ったり。
 日立製作所は売上高が前年同期比7.9%減の2兆1304億6700万円、M&Aなどの影響を除いた継続事業税引き前利益が同23.1%減の 1097億5400万円だった。航空業でも、来日客の航空運賃の単価下落や国内線旅客収入の頭打ちなどが響いて、日本航空、ANAホールディングスの2社 がそろって減収減益決算となった。
 内需型企業のうち小売業は3月期決算会社が少ないが、そのうちの1社である三越伊勢丹ホールディングスの決算も、内需型企業の業績の潮目を象徴する ような決算だった。前年同期に8.9%(前年同期比)の高い伸びを見せた売上高と同69.8%増の経常収益が、今回は4.9%減(2946億4600万 円)と43.8%減(73億3900万円)と一転して巨額の減収減益に転じたのだ。
 相変わらずの国内の個人消費の低迷に加え、これまで好調だった“爆買い”というインバウンド需要が円高と中国の個人輸入関税の引き上げという2つの悪条件に沈んだことが背景にある。

 ■まだまだ悪くなる…かも
 多くの企業は、今年7〜9月期以降に挽回は可能と見ており、2017年3月期の通期業績の見直し(下方修正)を見送っているという。今のところ、「業績予想を下方修正した企業は71社、全体の6%」(時事通信)に過ぎないという。
 しかし、例外企業の1社であるトヨタは8月4日の決算発表で、売上高を26兆円(従来は26兆5000億円)、税引き前当期純利益を1兆7800億 円(同1兆9000億円)に下方修正した。これは前回の予想発表時点(今年5月11日)に想定していた為替レート(1ドル=105円)をより現状に近い水準(1ドル=102円)に置き換えた結果だ。
 懸念すべきは、多くの企業がまだ4分の1(3ヵ月)が経過したばかりだとの理由で、トヨタのような厳密な見直しを怠った可能性が小さくない点だ。
・企業業績は、輸出産業を中心に減速する企業が出て、前2016年3月期に4年ぶりの減益に転じた。そして、今2017年3月期は、7〜9月期以降、輸出企業に加えて内需型企業でも業績の下方修正に踏み切る企業が相次ぎ、2期連続の減益になりかねない情勢となっている。
 半面、上場企業はリーマンショック以降の数年間にわたって、手元流動性、つまり保有する現預金を一貫して拡大させてきた。前期(2016年3月期)末は、その手元流動性がその前の期と比べて2%増の109兆円と史上最高を更新した。
 これは、上場企業が潤沢な資金を持ちながら、溜め込むばかりで、給与として労働分配率を向上させることも、十分な成長投資に回すこともなかったことの証左である。
 2期連続の大幅な経常減益決算に見舞われかねない今こそ、円高の影響を受けない国内市場で新たな成長分野を確保するなど、強靭な体質作りを急ぐべきだろう。経営者の責任は重大である。
 ≫(現代ビジネス>ニュースの深層>町田徹)

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