幻滅 〔外国人社会学者が見た戦後日本70年〕 | |
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●ユダ・ネオコンが怖れるシナリオ 中露印共同体+独の覇権
2014年もまもなく暮れてゆく。新年早々、暗いコラムを届けるのは気の毒なので、本年中に片付けるとしよう。安倍晋三と云う男に引っ掻き回され、生きながらえる筈だった細々とした我が国の生命維持装置も、大量のマネーが濃縮され点滴のビニール袋に混入されたことで、あだ花のような生命は活性化し、消えゆくロウソクの最後っ屁な炎が一瞬部屋を明るくしたが、今や暗闇の中にある。まあ、良いじゃないか、いずれは経済三等国になるのだから、それが、一人の無知蒙昧な右巻き政治家によって早められたという達観した立ち位置から眺めることも可能だ。
日欧米のマネーに支配された政府、官僚、マスメディアは、今年もプロパガンダ幻想を振り撒き続けた。マネー陣営の悪魔的ニヒルな嗤いは、人類がマネーを礼賛する以上、その礼賛心理を煽り立てれば良いわけだから、成長があろうがなかろうが、成長は存在するという言説を、彼らの願望通りにひけらかせば、涎を垂らしてついてくるのは理の当然だ。それなら、何も考えず、その嘘っぱちな「成長神話」を我々も望んでいる、絶対にあるという顔で、まことしやかに語るだけで良いだろう。
我々には、その嘘っぱち言説を「真実」として語る「語りべシステム」を構築しているのだから、彼らが「虚偽」に気づくわけはないだろう。その「語りべ」が活躍するメディアの主だった新聞、テレビ、雑誌関連は我々の支配にあるのだから、そこで大いに活躍させれば、「嘘でもいいから前向きな世界」を見たがっている人類に情報を振る舞ってやればいい。最後の最後は、悲惨なことになるだろうが、悲惨もマネーにとっては餌になり得る。その時はその時で、貧困ビジネスにマネーを注ぎ込み、次なる幻想を振り撒けばいいのだ。
米国を舞台にするマネー勢力の陣営は、必ずしもアメリカマネーだけではないのだろう。世界のマネーが時には顔も判らずに、シンパシーだけで呼応する奇怪なシステムなのだが、その操作装置として、アメリカ合衆国の覇権国家性が必要なツールだったのだろう。ゆえに、世界的にみると、如何にもアメリカ一国で富を独り占めしているように見えるが、必ずしも正しい分析ではない。ただ、それ以上の分析は、秘密の秘密なのだから、探りようもない。
ただ、彼らにも重大な弱味がある。北米大陸を中心に作り上げた、それらのシステム全体は、安全な北米大陸が存在する前提で動いていることだ。その為には、マネーは自分たちの住んでいる国が危機的状況寸前であっても、或いは火が噴いていても、自国の安全や豊かさより、北米大陸の安全と豊かさを優先する。最悪な場合には、マネーを牛耳る連中は、北米大陸と云う包括的安全シェルターに逃げ込もうと考えているようだ。無論、このような推測に物的証拠など見えていない、ただ、状況的な証拠は世界中にふんだんに残されている。その断片を繋いでみるかどうか、推理の世界なのだろうが、興味深い世界である。
この彼らの安全シェルターであるアメリカ覇権主義が世界マネーの唯一の拠り所なのだから、これが壊れることは、彼らのすべての計画が根こそぎ破壊されることになる。20世紀の後半から、彼らが得意としたのが“イメージ”とか“空間”における優位性でマネーの特性をいかんなく発揮させて唯我独尊的世界の構築に成功した。そして、“モノ”と云う、原始的資本主義の触媒は、外国の先進諸国や発展途上国に投げ捨てた。
しかし、この辺から、マネー陣営の戦略的な齟齬が生まれたのだと思う。“モノ”を生産、乃至は輸出する国に、思いのほかマネーが集中し、北米大陸にマネーが集約されなくなってしまったのだ。“イメージ”や“空間”があれば、七面倒くさい“モノ”などは、馬鹿な奴らに任せておけばいいと云うのが間違いだと気づきだした。つまり、“イメージ”や“空間”だけでは無理で、やはり資本主義の根源的な“モノ”を欠いてはいけないと思いついたのである。このような齟齬の修正に乗り出したのが、現在の欧米対ユーラシアと云う対立構図を生みだした。
この結末がどのようなものになるのか、現時点では正確なことを把握している者など誰もいないだろう。我々に出来ることは、状況証拠を掻き集め、幾つかの選択肢を探るのがようやく可能な出来ることである。筆者の観点は、アメリカに一極集中させた、世界の覇権システムが分散化し始めている部分にスポットを当てて、この難題の選択肢を探している。あくまで、状況証拠の集積であり、論理的分析にまでは至らないだろうと思っている。
ただ、「欧米対ユーラシア」と云う構図で、情報を収集していくうちに、上述したようなマネー勢力の実態も見えてくるのだから、存外無駄な努力でもないだろう。日本の新聞やテレビを見聞きしていたら、ロシアが今にもなくなるような雰囲気になっているが、現実は相当違うのではないかと思っている。以下は今日の時事通信の記事だが、この構想にロシアやインドが絡んでくると、アメリカ中心のドルマネー勢力の安寧も長続きしない可能性を示唆している。
≪ 中国、ユーラシアで影響力=アジアインフラ銀、始動へ-シルクロード再興と呼応
【北京時事】中国がユーラシア大陸での影響力拡大を図っている。同国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)が2015年に始動。中国が打ち上げるシルクロード再興構想と呼応し、途上国で鉄道や道路などのインフラ整備を後押しする。依然高い経済成長率と豊富な資金を背景に、その影響力はかつてのシルクロードのように欧州まで迫る勢いだ。
AIIBの資本金は1000億ドル(約12兆円)。出資比率は国内総生産(GDP)に基づいて決まるため、日米などが加わらない見通しの中、世界2位の経済大国である中国が圧倒的な発言権を握るのは確実だ。
役割が似た国際機関としては、世界銀行やアジア開発銀行(ADB)がある。ともに日米の発言力が強く、ADBの歴代総裁ポストは日本が握る。こうした現状に不満を抱くブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ国(BRICS)は14年7月、「新開発銀行」の設立で合意した。
BRICS開銀、AIIBで弾みがついた中国の勢いは止まらず、習近平国家主席は14年11月、400億ドル(約4兆8000億円)を拠出して、シルクロード沿いの各国のインフラ整備などを支援する基金創設を表明した。
シルクロードは大きく分けて、ユーラシア大陸の内陸部とインド洋を通る2ルートがある。中国のシルクロード再興も史実に倣い、陸路と海路の双方で各地をつなぐ構想。各国では中国主導で鉄道、道路、港湾、発電所などを整備する。 ≫(時事通信)
日本のマスメディアや週刊誌を読んでいる限り、中露の協力など「屁のカッパ」みたいに受けとめる判断になっても、これは致し方ないなと思うほど、西洋マネーのプロパガンダに覆いつくされている。しかし、ここ15年くらいの世界史の中で、アメリカの歴代大統領たちは、何をしたのか思い出す器量があれば、なんだか変だなくらいの印象を持つのが、教養なのではないかと思う。 金正日、フセイン、ビンラーディン、カダフィー、アサド…らがアメリカのイメージ戦略の中で「悪魔化」という偶像イメージを作られ、概ね失脚し、その当該国はズタズタにされたり、国家の形態を失うばかりになっている。いま、このような流れの最先端にウラジミール・プーチンロシア大統領がいることを、多くの人間は目撃しているわけだ。
おそらく、多くの日本人は、そんなこと言ったって、プーチンは悪そうに見えるじゃないか、クリミアを軍事力で併合しちゃったろう!しかし、アメリカが名指しする悪魔が本当に悪魔かどうか、検証作業もせずに、悪魔のまま置き去りにして、その国の惨状は、当該国の国民の質が悪いからくらいにしか評価しないのだろう。小沢一郎支持者であれば、ある程度、この辺理屈が判るだろうかと思っていたが、多くの小沢支持者も、西洋のプロパガンダの罠からは逃げられないようである。小沢一郎は、まさにこの手法で「悪魔化」されたのである。
筆者の予測は当たらないので有名だが、ユーラシア(中露印)を中心とするBRICSの西洋覇権に対する挑戦は、ますます確実な情勢になっている。2016年には、中露の経済軍事同盟が有効化する可能性が大いにあるので、それまでに、アメリカ及びNATOは、この同盟関係を潰す行動に出なければならない筈である。中国がフォルクスワーゲンを自国の市場で優遇している意図を深読みすれば、ドイツのNATO離脱と中独露共同体のイメージまで生まれるのだから、米英は必死になって阻止する気持ちはよく判る。
アメリカネオコンと愉快なマネー強欲勢力は、中独露印ユーラシア覇権の現実味を怖れ、本気で早めに潰すことを真剣に模索しているという。ただ、ネオコンなマネー勢力も、幾分イケイケどんどんとは行かない事情がある。核ミサイルの攻撃力、防衛力が、確実に中露を上回っている確証がない点であり、仮に、核戦争が勃発した場合に、受ける経済的被害、人的被害への、国民の拒否反応は、アメリカが断然飛び抜けているわけで、この評価が難題になっている。しかし、ロシア軍事ドクトリンでも示唆しているように、2016年に向けて、中露の軍事関係は同盟より一歩進んだ、共同体化する前に何とかしたという焦りは、かなり強迫神経症的になっている。
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