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維新から学ぶべき事

2016年07月24日 09時46分08秒 | 戦争法ではなく平和保障法を


 参院選の投票日からもう一週間になりますが、この話題にもぜひ触れておきたいので。
 私の勤務先にも共産党員の人がいます。もっぱら居住地の支部で活動しておられる党員で、職場では何もしていません。その党員のCさんから、何と今回の参院選の結果について「リサーチ」を依頼されちゃいましたw。
 どういう「リサーチ」かと言うと、今度の参院選で、大阪では「おおさか維新の会」(以下「維新」)候補が2人当選し、共産党の渡部結(わたなべ・ゆい)さんは次点で落選してしまいましたが、「なぜ維新から2人も当選してしまったのか?しかも、2人のうち1人は全くの新人なのに、なぜ、ちょうど半分ずつきれいに票が割れたのか?」という内容です。
 多分、Cさんとしては、せっかくあれだけ応援したのに、悔しくて仕方がなかったのでしょう。しかも、今までなら考えられないような票割りで、維新が2人も当選してしまって。それで、「何でやねん!これはきっと官邸の陰謀だ!」と思ったのでしょう。

 「官邸の陰謀」説はともかくとして、確かに、同じような疑問は、他の人も少なからず抱いているようです。実際、当の維新の幹事長自身も「なぜこんなにうまく票割りができたのか?逆に我々の方が教えて欲しいくらいだ」と、記者会見の席で言っていたそうですから。(参考記事
 ここで、まず話の前提として、今回、維新が参院選2人擁立に至った経過について、分かりやすく書いた新聞記事の内容を下記に紹介しておきます。(既にネットからは削除されているので、図書館でコピーした文章から引用します)

お維 2人擁立で内輪もめ
 「自公対民共」の与野党対決が鮮明になる中、おおさか維新の会は憲法改正で安倍政権と歩調を合わせ、独自のスタンスを取る。牙城の大阪選挙区(改選定数4)では、2人当選が至上命令だ。
 「大阪で2議席取らせてもらいたい。ルールを変えたり、法律を変えたりする時は数がいるんです」
 1日午前、大阪府茨木市の阪急茨木市駅前。おおさか維新の高木佳保里氏(43)とともに、松井一郎代表が声を張り上げた。
 公認1人目は、党政調会長の浅田均氏(65)。確実に国政に送り込むため、候補者を1人に絞り込むべきだとの声も強かったが、複数擁立は、橋下徹前代表の意向でもあった。
 「憲法改正のためには次の参院選が勝負。大阪選挙区に3人出して、3人通すくらいでないと駄目だ」。橋下氏は昨年12月、党の忘年会でこう発破をかけた。党幹部は「憲法改正を議論する環境が整えば、政界に戻るというシグナルだ」と受け取った。
 だが、高木氏擁立は党内に亀裂を生じさせた。浅田氏は、盟友の橋下氏を支えてきた前府議の重鎮。対する前堺市議の高木氏は、3月に自民党を離党したばかり。維新の看板政策・大阪都構想には反対の立場だった。府議団が浅田氏、大阪、堺の市議団が高木氏を支援する布陣を敷くが、「政敵だった人を応援する気にはなれない」(大阪市議)というわけだ。
 公示後の高木選対の会議。陣営を取り仕切る国会議員が、動きが鈍いと見た大阪市議らに対し、「なんで高木をやらへんねん!」と面罵した。浅田陣営から応援要請を受けたという別の大阪市議には、「向こうには協力しなくていい」と指示を飛ばした。
 票を奪われる形となった浅田陣営は、高木氏との差別化を意識する。街頭演説で力点を置くのは、公約の柱に掲げる「憲法改正による教育の無償化」よりも、高木氏が主張しにくい「都構想の実現」だ。
 大阪で維新の席巻を許してきた自民党は、外務省出身の松川るい氏(45)を擁立し、「1位で勝つ」(府連幹部)ことを目標に据える。気がかりなのは、憲法改正をにらんで維新側に秋波を送る首相官邸の動きだ。安倍首相が6月17日に大阪入りした際も、民共批判に終始し、維新への批判は封印した。府連内では「首相があの調子では士気が上がらない」と反発もある。
 公明党現職の石川博祟氏(42)も維新批判は口にしない。府内の衆院小選挙区に4人の現職がいる公明党には、「維新を刺激し、対抗馬を立てられる事態は避けたい」(陣営幹部)という事情もある。
 一方、民進、共産両党は「改憲阻止」を訴え、割って入ろうと躍起だ。(後略、以上7月2日付読売新聞朝刊より)

 それで、わざわざ、「大阪民主新報」という地元・大阪の共産党系新聞社の開票速報記事まで持ってきてくれて、「これで分析してくれ」と言われちゃいましたw。
 「何もわざわざ私のような”ノンポリ”に頼まなくても、自分たち党員のほうが政治の事は詳しいはずなのに」と、少々いぶかしく思いながらも、せっかくの「調査依頼」なので、早速その開票速報を元に、分析を開始しました(上記写真)。
 しかし、いくら調べてみても、前述の新聞記事以上に詳しい事は私にも分かりませんでした。
 確かに、今回の選挙で、自民党や諸派・無所属の票が前回と比べて大きく減り、それとは対照的に、維新の票が大きく伸びたのは事実です。しかし、これは何も今回だけに限った事ではありません。以前の大阪ダブル選挙や都構想住民投票の時も、自民党から維新側に多くの票が流れました。いくら両者が表面では激しく対立していても、維新も元は自民党の人たちなのですから、当然の成り行きです。
 諸派・無所属から維新への票の移動も、前回諸派として立候補した人たちの大半が、旧みんなの党や新党大地の人たちで、維新とは似た者同士なのですから、これも当然の成り行きです。



 ちなみに、上記が前回と今回の参院選大阪選挙区の得票比較です。
 それによると、前回2013年の参院選でも、維新候補は100万票以上も得票し、堂々1位で当選しています。そして、「維新と似た者同士」の「旧みんなの党や新党大地の人たち」も、当選こそしなかったものの、合わせて20万票以上も得票しています。この時は、共産党の辰巳孝太郎さんが4位に滑り込み、共産党の議席回復が実現しましたが、これも冷静に見れば、共産党の全国的な躍進傾向とは別に、大阪では候補者乱立に助けられての僥倖(ぎょうこう= 思いがけない幸い)だった事が分かります。
 官邸はここに目をつけたのです。それで、先の読売新聞の記事にもあるように、「自民党が憲法改正を実現するためには、大阪都構想で対立した維新の力も借りなければならない」と、安倍首相サイドが維新の橋下徹・元代表や松井一郎・現代表に働きかけて、2人擁立を実現したのでしょう。

 ただ、ここで一つ疑問に思うのが、2人擁立したうちの1人は現職で維新の会政調会長の浅田均なのは当然としても、もう1人になぜ、ついこの間まで自民党だった高木佳保里を擁立したのか?実際、浅田均は、この高木擁立については相当苦々しく思っていたようで、テレビ局の取材の際にも、「よりによって、あんな裏切り者を擁立しやがって!」と言い放ち、高木と顔も合わさなかったようですw。
 しかし、これも後で考えてみれば、元・自民党堺市議の高木を擁立する事で、浅田が今まで得票し切れなかった南大阪・自民党・女性の票を得る狙いがあったのではないでしょうか。そして、内輪もめを避ける為に、「府議団が浅田氏、大阪、堺の市議団が高木氏を支援する布陣」にして、選挙地盤も敢えて二つに割る道を選んだのではないか。
 これが予想以上に当たったようです。
 普通、同じ党から2人擁立する場合に、よくやるのが、ベテランの現職は業界団体や労組票などの組織票で手堅くまとめ、もう1人は一般受けする主婦やサラリーマン出身者、タレント候補を立てて、浮動票で当選を図る方法です。
 この一見妥当とも言える方法が、実は複数擁立で最も陥りやすい「落とし穴」なのです。ベテランは組織票で悠々当選すると油断し、新人候補も、いざとなればベテランから票を回してもらえると油断してしまう。それで結局、新人が現職の票まで食ってしまって現職が落選したり、最悪両方とも共倒れしてしまうのです。
 それが、この維新の場合は、地盤を完全に二つに割る事で、どちらも自力で当選しなければならないように仕向けたのです。つまり「背水の陣」です。しかも2人とも「ライバル同士」なので、自分から「票を回してくれ」とは口が裂けても言えません。これが逆にプラスに作用し、票の掘り起こしにつながったのです。


 
 これは共産党には到底真似のできない芸当です。その理由は二つあります。
 その一つは、共産党の場合は、候補者はみんな国政革新を目指す「同志」であって、「ライバル」なんかではない事に表向きはなっているからです。国政では同じ選挙区に2人も擁立する事なぞ現実にはあり得ませんが、都道府県議選や市町村議選では共産党も2人以上擁立する事はザラにあります。その場合も、共産党の候補者はみんな同じ「仲間、同志」であって、維新の浅田と高木のような「いがみ合う仲」ではありません。少なくとも表向きはそのようになっています。
 それはそれで、共産党の持つ優れた点ではあるのですが、それが選挙戦では、下手すれば「もたれ合い」になってしまう場合も、無きにしも非ずです。
 ところが、維新や自民党はそうではない。しょせんは利権で結びついた集団でしかないので、内部では足の引っ張り合いなぞ日常茶飯事です。負ければもう後がありません。「食うか食われるか」です。だから、選挙になれば、共産党以上に必死になって、投票三日前ともなれば、各駅の駅前に立って、ひたすら候補者名を連呼したりするのです。共産党も、普段はビラの全戸配布や街頭演説に力を入れますが、投票三日前から駅頭でひたすら連呼したりはしないでしょう。
 もう一つは、国政選挙で2人擁立できるのも、それなりに大きな政党だからです。大阪の維新のように、常に百万票以上得票できなければ、同じ選挙区に2人も擁立できません。それができるのは、国政では自民党と民進党ぐらいです。元々1人しか擁立できない中では、「足の引っ張り合い」なんて起こりようがありません。

 今まではそれでも良かったのです。革新系の野党として、党勢拡大に努めていたらそれで良かったのです。「今は選挙で負けても、得票を徐々に伸ばしていけば、やがて当選できるようになるだろう」と。でも、今や自民党が、秘密保護法も安保法制も強行採決で通してしまい、今度はいよいよ憲法にも手を付けようとしている中で、今までのような「党勢拡大」一本槍のやり方で、「やがて勝てるだろう」と戦っているだけでは、その前に憲法も選挙法も改悪されてしまいます。そうされない為にはどうするか。自民党や維新の言ってる事や、やっている事は確かにデタラメそのものですが、彼らの「真剣さ」については、共産党ももっと彼らから学ぶべきではないでしょうか。
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