アフガン・イラク・北朝鮮と日本

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ゼレンスキー大統領の国会演説に対する違和感

2022年03月23日 22時22分03秒 | その他の国際問題
「国連改革が必要」ゼレンスキー大統領が国会でオンライン演説【ノーカット】
 
アジェンデ 最後の演説 チリ・クーデター (日本語字幕付) Salvador Allende ultimo discurso
 
先程放送されたゼレンスキー・ウクライナ大統領のオンライン国会演説を私も聞きました。聞いて非常に違和感を感じました。ゼレンスキー大統領に対してではありません。それをスタンディングオベーション(起立拍手)で迎えた岸田総理や衆参議長に対して、私は非常に薄気味悪い違和感を感じました。
 
客観的に見れば、この戦争は明らかにロシアによるウクライナ侵略戦争です。たとえ、どんなに双方に言い分があったとしても、先に手を出したのはロシアです。ウクライナが先に手を出したのではありません。
 
あくまでロシアが侵略者で、ウクライナはその被害者です。被害者の国の大統領が、世界各国に向けて、オンラインで侵略を非難するのも、当然の行為です。その非難する言葉の中に、多少行き過ぎた表現や誇張があったとしても、その為に侵略自体を免罪するような事があってはなりません。
 
問題はそれを聞く我々の側にあります。今回、ゼレンスキー大統領は、ロシアによる侵略を告発する被害国の指導者として、スタンディングオベーションで迎え入れられました。
 
侵略戦争に反対するのは当然の事です。まして日本は、過去に「大東亜共栄圏」の名目で、アジア侵略に走り、その反省の上に立って、平和憲法を制定した国なのですから。他国以上に、平和や自由・人権を擁護する立場に立たなければならない筈です。
 
しかし、日本政府は今までそのような立場で外交を行って来たでしょうか?日本国民も、そのような立場で他国民と交流して来たでしょうか?
 
例えばベトナム戦争の時はどうだったでしょうか?ベトナム戦争では、沖縄や岩国・厚木の米軍基地から、多くの戦闘爆撃機が飛び立ち、ベトナムの戦場を空爆しました。それに対して、日本の政府や国民は、当時のベトナム指導者ホーチミンに対して、スタンディングオベーションで応えたでしょうか?
 
確かに、「ベ平連」などの形で、反戦平和や侵略戦争反対の運動は盛り上がりました。横浜では市民が米軍の戦車輸送を阻止する戦いに立ち上がりました。でも大多数の国民は、それを対岸の火事として見ていただけではなかったでしょうか?酷い奴になると、戦争で一儲けしようと、「死の商人」に成り下がる輩も少なくなかったのではないでしょうか?
 
南米チリの反革命クーデターの時はどうだったでしょうか?選挙で民主的に選ばれたチリのアジェンデ社会主義政権に対し、米国は1973年に反革命クーデターをけしかけました。「9.11」は、米国では2001年のニューヨーク同時多発テロの日として記憶されますが、南米では、この米国による反革命クーデターの日として記憶されます。
 
アジェンデ大統領は最後の演説で米国の侵略を告発しました。このアジェンデ演説もゼレンスキー演説と同じ侵略に対する抗議です。それに対し、日本の政府や国民は、この決死の抗議に対して、スタンディングオベーションで応えたでしょうか?完全に黙殺しただけだったではないですか!
 
「当時はインターネットなぞ無かったから、スタンディングオベーションなぞ起こりようもなかった」と言いたいのでしょうか?別にインターネットなぞ無くても、ラジオ演説だけでも、流そうと思えば流せたのではないでしょうか?アジェンデ大統領が、最後にまだ唯一掌握していた放送局に託した、自決前の最後の演説を、テレビを通して全国放送する事も、可能だった筈です。
 
ミャンマーのアウンサン・スーチー氏に対してはどうだったでしょうか?軍事政権によって捕らえられた民主活動家のスーチー氏の演説も、オンラインで国会に流し、政府も国民も、スタンディングオベーションで応えるべきだった筈です。「平和・自由や人権・民主主義を守る側への支援を惜しまない」と、当時の政府は言っていたのですから。そして、当時はもう既にインターネットの時代に突入していたのですから。
 
しかし、日本はベトナム戦争、チリ反革命、ミャンマーの人権弾圧に対しては、沈黙したままでした。それどころか、ベトナム戦争では、米国に侵略の基地まで提供しました。ミャンマーの人権弾圧に対しても、形だけ遺憾の声を上げるのみで、裏では逆に軍事政権と血脈を通じているではないですか。
 
ミャンマーの軍事政権を育成したのは実は日本なのです。第二次大戦中に、当時ビルマと呼ばれたミャンマーでは、英国の植民地統治に対する独立運動が起こっていました。それを日本軍が、戦争遂行に利用しようとしました。「南機関」という軍直属のスパイ組織が、独立運動の指導者を拉致して、独立を認める代わりに日本への協力を迫ったのです。
 
そして、ビルマ独立義勇軍(BIA)を編成し押し立てて、ビルマを占領し、形だけの独立を義勇軍に与えました。しかし、実際は日本が英国に代わってビルマを新たな植民地にしただけでした。これが「大東亜共栄圏」なるものの正体です。やがて、その正体を見抜いた義勇軍は、親日から反日に転じます。その独立義勇軍の末裔(まつえい:子孫)がスーチー氏であり、南機関の一員だったビルマ人ネ・ウィンの末裔が、今のミャンマー軍事政権なのです。
 
この様に、ミャンマーについては、もはや日本は第三者ではありません。当事者でもあるのです。それに対して、日本の政府や国民は、どう振る舞ったでしょうか?親日か、反日か?米国寄りか、中国寄りか?そんな自国の都合で、ある時は独立運動や民主活動家を、またある時は軍事政権の側を、打算的に利用して来ただけだったではないですか!
 
ロシアのウクライナ侵略を非難しながら、米国のアフガン・イラク侵略は見て見ぬふり。ベトナム戦争に加担しながら、その反省もなしに、「今のベトナムは反中国だから応援する」と言う職場のパートや、ベトナム人労働者を低賃金搾取する事しか考えない日本のブラック企業。「ウクライナのゼレンスキー頑張れ!」とあれだけ言っていたのに、彼が日本軍の真珠湾攻撃を揶揄した途端に、ゼレンスキー叩きに変わる日本の右翼。
 
そんな日本が、自分に都合の良い時だけ、スタンディングオベーションで迎えても、最後には民主活動家の側からも、軍事政権や侵略者の側からも、見透かされ見捨てられるだけです。日本が真に平和・民主国家で、自由・人権の守護者であろうするなら、そこには一切のエコひいきや二枚舌があってはならない筈です。全ての侵略や人権侵害に抗議してこそ、初めて世界から尊敬される国になると思います。

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