2/10(水)-12(金)
メンバー:単独
この前の1月に甲斐駒を登り北岳を見た.調べてみると2泊3日で冬にも行けそうで,雪山を登るいい練習になりそうだ.去年富士山,奥穂の山頂まで行っているから北岳に行ってみようと思い,2月上旬の天気のよさそうなタイミングを見て決行した.
直前の土日はそれぞれ日帰りで山に行ったので,先週の白毛門の山行を思い出し,1日休みを入れたあと1日移動にあて2/10から入山することにした.
入山前sakさんに会う機会があり,「北岳は遠いんですよ」との言葉を頂く.その意味をあとでたっぷり思い知らされるとはこの時思ってもみなかった.
入山前日に夜叉神トンネルの手前に車を置くつもりで芦安温泉まで来てみると,山の神~夜叉神トンネル通行止めの表示が出ている.目論見が早くも崩れる.下調べが不足していた.
2/10(水) 天気:晴れ
仕方がないので,予定を早めて3:30山の神の登山口から出発する.どうなることかと思ったが,登山道は踏み跡が明瞭で車道に出るまで迷うことなく歩き進めることができた.車道を進み,
5:07夜叉神トンネル入り口に到着する.事前に調べた風景と違いトンネルのシャッターが開いている.通行止めの看板があるが進んでいくと西側で工事をしていた.だから歩行者も通行止めなのか...帰りは通れないってこと?またまた調査不足である.出だしが思惑と違い少し動揺する.我ながら気が小さい.
しかし,1時間40分ほど余計に歩いている.落ち込んでる暇はない.どんどん先に進む.歩行者も通行止めになっているためか,林道に鹿のトレースはあるものの人の歩いた形跡は見られず,周りがまだ暗いこともあって緊張がなかなかほぐれない.
そうこうするうちに6:27鷲ノ住山登山口に到着.この日は雲はないものの冷たい風が強く,この登山口のあたりはちょうど風の通り道になっているようで体も冷える.その上登山口からすぐの尾根がなかなか細く抜けるのに気を使う.
すこし登って歩いていくと,ピンクリボンや赤布があってルートはわかりやすくひたすら野呂川めがけて降りていく.
8:08吊り橋に到着.
発電所の脇からしるしを頼りに対岸の車道まで上がり,北岳への登山口のあるき沢橋まで歩く.途中のトンネル内で車2台をやり過ごし,
あるき沢橋の登山口に到着したのが8:50であった.ようやく北岳へ向けて登り始めることとなる.
ここからはトレースやピンクリボンがありコースは明瞭だが,急な登りのうえトレースが微妙に凍っていて足を取られて歩きづらい.
ここらへんでアイゼンをつけ,フウフウいいながら池山御池小屋を目指して歩いていく.
池山御池小屋に到着したのが12:00.参考にしたガイドブックではここをベースにしているが,北岳はこれが最初で最後になるかもしれないと思い,できるだけ登ることにする.小屋の周囲ではトレースがわかりづらく,雪の量もすねから膝下ときに膝上であったので,アイゼンからわかんに付け替える.
歩き始めるとトレースがすぐに出てくるが,ところどころ消えておりわかんに変えたのは正解だった.城峰の手前に幕営適地があったが,砂払いまで行きたいと思いひたすら歩く.
城峰を13:57に通過し,砂払いに続く尾根を登っていくがさすがにバテ始めてきた.ここにきて夜叉神トンネル手前からスタートできなかったツケがきたようだ.パワー不足スタミナ不足もあるかもしれない.
翌日のことも考え,14:34テントを張れそうなところで行動を打ち切りテントを設営する. 本日はここまで.
2/11(木) 天気:晴れ
10日の深夜は強い風の音がしていたが,風の音も徐々に収まり天気予報通り今日は風が弱そうだ.
5:46行動開始.3:30には起きて5:00頃から行くこともできたけど,砂払いまでそれほど遠くないだろうと思い込んで開始を遅くし,ピッケル,アイゼンで歩き始める.これが見当違いだった.
トレースはところどころ残っているもののわかりづらく,トレースを外すと膝辺りまで潜ってしまう.時には傾斜が急で腰までの雪をかき分けながら進む.
砂払い手前の開けたところで夜が明け,
ここの時点で7:31.1時間くらいで砂払いまで行けるだろうと思っていたがまだまだ先である.せっかくGPSを持ってきているのに確認しない自分が悪いのである.しかし視界がようやく開けてきた.
間ノ岳もようやく全貌が見え,鳳凰三山も見ることができる.
8:00前に砂払いをようやく通過.
ボーゴン沢ノ頭へ向けて歩いていく.ご覧の通りトレースはわかりやすい.
8:17ボーゴン沢ノ頭に到着.やっとで北岳にご対面だ.甲斐駒,八ヶ岳もみられる.風は強くなく,いい天気で登山日和である.北岳まではまだまだ長い.
八本歯ノ頭に着いたのが9:30.BCからここまで3時間半以上.本当に山頂まで行けるのか不安でいっぱいであった.
いよいよ八本歯のコルへむけての下りである.今まであったトレースは見当たらない.ここで皆引き返したのか?それとも雪のないときに皆向かったのか?とにかく自分で考えながら行くだけだ.
「八本歯の辺りは切れ落ちているから気を付けて」と事前に言われていたが,確かになかなかの高度感である.今回ロープは持ってきていないので慎重に下り,時にはクライムダウンも交える.
八本歯のコルに到着したのが10:01.ここまで下れたから登り返すのも慎重にいけば大丈夫そうだ.
それより気になるのは果たして本当に頂上まで行けるのか?BCを出るときは4~5時間くらいで頂上に行けるだろうと思っていたが,どう考えても1時間では行けそうにない.「これは無理かな?」という考えが頭をよぎり少し弱気になる.
北岳山荘への巻き道分岐の通過が10:55.写真を撮っている余裕がなかったのでわかりづらいが,吊尾根分岐の下のところが立っていて傾斜が急である.
入山前に降雪もなく天気も安定していたので,雪崩が起こる可能性は低いとはいえ絶対ないわけではない.日も高くなってきたため雪が硬いわけでもなく登るペースが上がらない.
雪壁を避けて岩の出ているところを登っていくが,登りに夢中になっているとこの傾斜のことを忘れそうだ.振り返ってみると,傾斜は急でここで落ちると止まらない.登りはいいが下りではここは降りられないなと考えながら登っていく.
標高が高くなってきたせいなのか心臓はバクバクで,狭心症の人ってこんな感じ?なんてことも考えながらとにかく頂上を目指す.あー苦しいなー.「北岳は遠いんですよ」の言葉がよぎり,確かに遠いとあの言葉を実感する.
11:19,「そろそろ吊尾根分岐のはずだけどまだかよ~」などと思いながら一息ついて小さな雪庇を抜けると・・・
そこには分岐の標識とともに中央アルプス?が.標識には山頂まで20分とあり,「よし,いける!」とスイッチが入る.
いままでより明らかに冷たい風が吹いているが,強さとしては無いに近い部類に間違いないのだろう.今までの雪壁に比べ雪は硬く岩も多い.慎重にルートを見極めて登っていく.
「あそこが頂上か?」と思いながら登ってみても稜線はまだ上に続いている.それでも自分を励ましながら進んでいく.そして,
11:43山頂に到着した.
まずは富士山をバックに登ってきたところをカメラに収め,
富士山を正面に写し,
間ノ岳方面
恵那山?
中央アルプス?
仙丈ヶ岳
甲斐駒,北アルプス,八ヶ岳と時計回りで記念撮影.
鳳凰三山で記念撮影をしめる.
頂上に滞在したのは10分程か.風は冷たいし帰りのことも考えれば長居は無用である.
下りは慎重に進みながら,写真を撮る余裕も出てきて,わかりづらいかもしれないが北岳山荘もいれて間ノ岳をパチリ.
あっという間に吊尾根分岐の標識まで戻る.ここからの下りは慎重に.
北岳山荘への巻き道分岐を過ぎ,
少し余裕が出て,八本歯のコルまでの道中の写真を何枚か.
で八本歯のコルに再度到着したのが12:58.ここからは復路のポイントなので小休止.
落ち着いて登り返し,
往きに一番嫌だったポイントも落ち着いて通過した.ここにはハーケンとスリングで支点があった.振り返ってのぞき込むと,確かにロープを出したくなる.
さあ,あと一息で八本歯ノ頭だ.
13:17八本歯ノ頭に到着.ようやく富士山を安心して見られるところまできた.
やっと緊張感から解放され,間ノ岳や登ってきた北岳も安心してみることができる.
さあ帰ろう!帰りは富士山を眺めながらテクテクと下っていく.
途中振り返って北岳を眺める.
「頂上いけてよかったな~.よくみるとどっしりとしてかっこいいな~」と思ってとった一枚がこれ.
太陽の角度も午前中とは違い,山頂まで登りきったことも重なったからかこの瞬間が北岳の姿を一番味わっていたような気がする.
ボーゴン沢ノ頭からもやっぱり富士山だ.
砂払いを過ぎて,
なかなか見ることのできないこちら側の鳳凰三山もこれが見納め.
そして最後はやっぱり富士山.アップで撮ってしまった.
15:14無事BCに到着した.
2/12(金) 天気:晴れのち曇り
夜叉神トンネルの工事があるから作業が終わらないとトンネルが通れないと思い,起床は7:00までのんびり休む.テント一式を片付けて9:16に下山開始.雪が意外と深かったので,しばらくわかんをつけて下ることにする.
池山御池小屋を過ぎ急な下りの直前でわかんを外す.ここで10:27.下りは早い.
登りではアイゼンを履いていたがなんとかなりそうなのでツボ足で下る.しかし足元は滑りやすいところもあり,ところどころ傾斜が急で幅が狭いところもあり気を使う.
それでも途中にでかいブナがあったりと,普段お目にかかれない大きな広葉樹林帯を気持ちよく下っていく.
あるき沢橋の登山口に11:46.ここから発電所まではそんなにかからないが,発電所は日当たりも悪いのでここで栄養と水分補給のために小休止.ヘッドランプも準備する.
発電所から見上げる鷲ノ住山はやっぱり高い.
リボンを頼りに黙々と登って上まで到着.
でもこのあとのやせ尾根が意外と歩きづらい.慎重に通過し林道に出たのが14:11であった.ふぅ,汗かいた.
初日は暗い中歩いたので,林道からの眺めを味わいながらのんびり夜叉神トンネルへ向かっていく.天気予報通り午後は曇ってきた.それでも15:12には夜叉神峠西登山口に到着してしまう.
遠くでは工事をしている音がする.ここで少しだけ昼寝をして時間をつぶす.
17:00にトンネルを見れば,やっぱり作業は終わってる.
トンネルの中は水があふれているところもあって,靴をできるだけ濡らさないように歩き,
無事反対側に出た.
その後は車道を歩いてひたすら降りる.途中で日は暮れ真っ暗になるが随分日は長くなっている.冬ももう終わりだな~.
18:15車に到着して無事下山となった.
「山は逃げる」という人と,「山は逃げない」という人がいるけれど,私は山は逃げると思う.今の体力・環境などいろいろなことがある中で,目の前の機会を逃すと次の機会はもう訪れないかもしれない.
今回の山行は準備が足りず途中で登頂をあきらめかけたけど,天気に恵まれ山頂まで行くことができて運が良かったと思う.もしかしたら一番素敵な北岳に登り,もう北岳に登るチャンスはないかもしれないかと思うと,課題は多いのかもしれないが頂上まで行けたことが少し誇らしく思えるのだった.
最後に,,,下に降りてみれば,週末のためなのか山の神の通行止めのゲートは開いていた・・・
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