acc-j茨城 山岳会日記

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尾瀬・中ノ岐沢北岐沢~小松湿原~猿沢下降

2023年07月28日 22時23分25秒 | 山行速報(沢)

前回の沢泊敗退からひと月半

その時に痛めた踵骨腱の痛みが癒える間もなく転勤辞令を受け取り、唐突に単身赴任生活が終わる

荷づくりに引越し
すっかり埋め尽くされた自宅の私的な場所(山道具の収納場所)を確保するべく、難航する家族間交渉

そして、新たな赴任先での新たな業
皆、とかくアジェンダだのファシリテーターだのとカタカナを使いたがる
どうやら「行動計画」「司会進行役」とは一線を画すらしい
あまりに洗練が過ぎて、居心地が悪い
まぁ、いいんだけどさ

そうこうしているうちに梅雨入りし、それも明けようとしている
慌ただしい日々、心中にはあの日叶わなかった沢での一夜が常にあった

夏の日差しが降り注ぐ関東の猛暑をよそに、森に包まれた一縷の流れを目指す
そしてたどり着くのは小さな湿原

そこに惹かれるのは何故だろう
山中にある、ただの湿った草原なのに

 

2023/7/18-19 尾瀬・中ノ岐沢北岐沢~小松湿原~猿沢下降

大清水の駐車場に着いたのは午前一時
平地の熱帯夜が嘘のように過ごしやすく、星が美しい
午前四時半には起床してゆっくり身支度
一ノ瀬行の始発乗合車を見送ってから歩き出す

鳥達の囀りが心地よい奥鬼怒林道を足早に歩く
一時間半ほどで入渓点
背丈ほどの笹藪を少し漕ぎ小沢を下っていく

北岐沢はいわゆる「癒し系」
滝もほどほどに楽しめて、ナメと深い森、そして静かな湿原を巡ることができる
山行の充実度としては少々物足りないくらい
しかしながら、真価はそこではない

遡上すると小滝が小気味良く現れ、右に左に越えていく
足場を選べば、腰を濡らすことはない
途中、小動物がじゃれ合う姿に癒される

しばらく遡るとゴルジュ地形が見えてくる
ここが大滝
奥にも支流の大滝があるらしいが、滝場の入り口からは見えない

下流左岸から岩場を回り込むように越えると滝上に出る
さらに小滝を越えていくと、次第に現れるナメ

1650の二俣(1:1)を誤って左(直進)に入るも、水量の減少に疑問を感じ誤りに気付く
軌道修正して、なおも続くナメに満たされながらゆっくりと歩く

ナメの美しい場所でひと休み
妻が持たせてくれた握り飯には、好物の「たらこ」が入っていた
ほんわかした気持ちと、懐郷心が胸に広がる

1770の二俣に幕場を散見
どれもが平坦、かつ前泊者が集めたであろう薪も残置されている
物件としてはこの上なかった

が、しかし
あまりに整いすぎていて居心地が悪い
時間も午前十一時前

明日は日本海にある梅雨前線が南下するらしく曇天、午後は降雨の予報
早めの下山はもちろんだが、せめて湿原での時間は晴天であってほしい

ここで一考
野趣に杯を傾ける一夜は沢下降で求めることにして、今日は先を目指す

小松湿原はこぢんまりとした高層湿原
池塘が散らばるでもなく、花が咲き乱れるわけでもないそれに
過度な期待を胸に目指せば少々がっかりするのかもしれない

地味故の慈しさがそこにある
それは悠久の時を経て、育まれた場所
実に尊い

黒岩山への径へは藪もなくひと登り
登山道は踏み跡、目印ともにしっかりしているが倒木多く難儀する
まして陽ざしが強く沢に比べて気温が途端に上昇する
ぶな沢を下降予定だったが、たまらず猿沢へと進路変更

猿沢は、さして難場もなく窪を下れば水流が現れる
半ばまで下った右岸に丁度いい広さの台地
山椒魚の採網を見かけたので山人のよき幕場なのかもしれない

今宵はここに宿る

時刻は午後一時半
天幕を張って、薪を集めても日暮れまで時間は余りある

木漏れ日を肴に、昼下がりの一献
傍らには、天栄の廣戸川

ついつい盃は進み、斜陽に沈む
闇に揺らめく紅蓮花に酔うまでもなく、撃沈

こんな日があってもいい
薄暮の空が樹幹に揺れた

雨粒が落ちる音で目が覚めた
時間は午前四時
こんなにも早く降り始めるのかと暗澹たる思いであったが、幸いにもすぐに雨は上がった

手早く朝飯を食し、撤収
いつものことながら、沢靴下装着の儀に気合を込める

深森に、苔生す岩
脳内では国歌斉唱が繰り返されていた

一時間ほど行けば、奥鬼怒林道
あとは大清水まで気軽な林道歩き
道中、蜻蛉の群れに遊ぶ


慈愛と調和

心穏やかになれる場所がある
自分の好物を知っている人が帰りを待っている
これだけで充分、満ち足りる

 

<追伸>

まぁ、いいんだけどさ
ついでに言うならば、沢屋にとって片仮名表記は「ナメ」と「ゴルジュ」で充分
って、言いすぎか(笑)

※片仮名表記は「ナメ」と「ゴルジュ」だけでお送りしました。
 現場からは以上です


sak

 

 

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