acc-j茨城 山岳会日記

acc-j茨城
山でのあれこれ、便りにのせて


ただいま、acc-jでは新しい山の仲間を募集中です。

西上州・碧岩北稜

2011年04月25日 01時58分59秒 | 山行速報(アルパイン)
西上州・碧岩北稜

そうして季節は春を迎えた。
昨年末の記憶が蘇る。
同じように西上州・碧岩の北稜を目指したが、前日の降雪で南稜を行くことにした。


碧岩・右のスカイラインが北稜

こだわりはあくまで、北稜。
クライマ-ならば、まぁ、そうなるのは必然だ。
メンバ-は前回同様、ACC-J東京のAさん夫妻、sakの3名。


北稜への登路

前回取り違えた北稜までの登路は、碧岩に詳しいガストンさんにご教授いただいた。
三段の滝を目前にした鉄ハシゴ手前、右岸の沢筋を行く。
この沢の左側には大きな岩稜が横たわる。
沢床には大量の落ち葉が堆積し、さながら落ち葉ラッセルである。


落ち葉ラッセル後に左の支沢を望む


ふと振り返ると、前回遠望した岩峰が見える。
あれが碧岩かと思っていたが、そうでなかったことが判明。
地理的、方角的、山容など、釈然としなかった理由が解明する。



薮岩場

しばらく行くと沢筋は二俣。左は支沢で平凡、本流の右は水流のない滝場が見える。
ここは左へ。尾根への急登で一汗。
尾根上は歩きやすいが、すぐに薮岩場に突き当たる。
困難はないものの、岩は濡れていて苔も多い。念のためロ-プを出し、慎重を期す。
しばらく薮尾根を行くと、再び薮岩場。苔むす岩はクライミングというよりは沢登の範疇。
それを越えてひと登りで休憩に丁度いい台地。そして行く先に現れる北稜の白眉。


北稜


北西壁

左は北東壁、右は北西壁。どちらも垂直に切れ落ちる。
ガストンさんが初登した北西壁は、そう登れるものではない。
北東壁と北西壁の狭間、わずかに残された直上リッジが北稜である。
薮の中にも所々岩場が見える。
両側の切れ落ち具合に加えて、急角度。3人ともしばし圧倒され「え-っ」とか「はぁ-っ」などと感嘆の溜息。
核心は下段と上段にある2箇所の岩場。想像以上の角度で突き上げるそれに、正直告白すると行くのをためらった。
しかし、ここで引き下がるわけには参りますまい。

両側切れ落ちた細い尾根を四つん這いで行く。途中に2箇所、中木が行く手を阻んで緊張する。
20mほどで下の岩場基部に着く。ここからロ-プを出しての登攀だ。


下の岩場

下の岩場は一見10m弱。フェイス直上。
一歩あがって残置支点を発見するが、グラグラですぐに抜けた。
岩が脆くどうにもならない。
態勢を立て直そうと一歩退くと左手のガバがボロリと剥がれた。
油断はできない。
気を入れ直し右カンテ状の小さな立木を繋いで地味に高度を稼ぐ。
途中、脆い岩を見極めながら登攀が続く。
時に信用できそうもない薮を掴んで誤魔化しながら、立ち込むスタンスはもはや神頼み。
薮以外に支点はなく、途中苦しい場面で念のため持ってきたカムが効いた。
次第に薮が濃くなってくると、下の岩場は終了。上の岩場手前の立木でビレイ。ここまで25mほど。


上の岩場

上の岩場が核心部。カンテ状。
下の岩場のように薮はなくすっきりして、岩もそこそこ安定。
カンテ左を直上するとハ-ケンがあるが、ここまで7mランナウト。
支点が効いているのを確認してロ-プを掛けてひと心地。

そこから左に少しトラバ-ス。
このあたりからまたも岩質が怪しくなってくる。
よくよく確認しないと前兆もなくボロっと剥げる。
ハ-ケンを打ったものの、余り効いていないのが音でわかる。でも無いよりはいい。
信頼できる薮もなく、グズグズの小枝や草を鷲掴みで誤魔化し体重を掛けて行く。
「南無さん、頼むゼ-っ」と何度心の中で叫んだか。このあたりが一番苦しかった。
一段上がって、上の岩場最上部は手掛かりも多く正面突破。
ここまで25mほど。しかし取れる支点は少ない。
核心を抜けて薮に出たときには心底ホッとした。

大岩の右をかすめるようにすり抜けて上へ上へと35mほどで碧岩山頂。
フォロ-を迎え、三人揃ってひと安心。なんだか気が抜けて笑ってしまった。


山頂でひと心地

正直なところ、北稜を甘く見積もっていた感は否めない。
登攀グレ-ドはⅣ級くらいだろうが、非常に悪い。
悪さ、困難さは登攀グレ-ドをはるかに凌いだ。
決して安易に取り付くものではない。

しかし、アルパインというのは本来こういうものなのだろうと思い至る。
快適さを補うに余りある充実感がそれを物語っているかのように。

sak

西上州・碧岩北西壁

2011年04月21日 01時37分06秒 | 会員日記

当会の御大、ガストン氏のご協力を頂き、「コラム」のコ-ナ-に「西上州・碧岩北西壁」の初登攀記録を掲載しました。
意外と奥の深い西上州にあって、頂から見回せば連なるほどにある岩塔・岩峰。
しかし、あの胸壁をと思えば、相当な覚悟がいるのもまた事実である。



この碧岩は一般的に四方に稜が伸びており、一般的な南稜(それでも切れた岩場の通過がある)、ハイグレ-ドハイクの西稜、
クライミングの北稜など楽しみもさまざま。
その中で、北稜と西稜に挟まれた「北西壁」はまさに胸壁だ。

難度はモチロン、岩質の脆さもあってか続登はされていないらしい。
しかも、記録は1983年で山渓に発表された後、当会会員も記録に触れることがないので、筆をとっていただいた。
珠玉の記録をお楽しみください。

「西上州・碧岩北西壁」の初登攀記録はこちら

余談になりますが西上州といえば、山岳会「山登魂」の記録が素晴らしい。
毛無岩、鹿岳南壁など登攀にこだわるスタイル。記録を丹念に探し出して取り付く姿勢。

特に2011/4/10の「山急山五輪岩正面壁」の記録は価値が高い。
もはや脱帽ものです。

「山登魂・山急山五輪岩正面壁」の記録はこちら
sak


西上州、城山~栗原山縦走

2011年04月18日 20時29分17秒 | 山行速報(薮・岩)
4月17日、西上州、城山から栗原山まで縦走した。先週の偵察行を参考に城山登山口を決める。


城山に登るのに利用する「林道ながたわ線」


この「中央テレビアンテナ」の看板から城山方向に登っていくのがベスト


車を止めた地点からの叶山と両神山

インターネットで調べてみると、サスの峰から栗原山までは記録をいくつか散見するが、城山からサスの峰までの間の記録は無い。これは、悪いのか、つまらないのか、入山しにくいからなのか、いずれかの理由によるものであろう。記録ではサスから栗原までは2~3時間かかっている。地図から予測して縦走には相当の時間がかかるものと考え、早朝の出発とする。
歩き始めるとすぐに食害防止のネットに突き当たる。


しっかりした食害防止用ネット

しかしこれは既に偵察済みで、ある個所からは人間が出入りできるようになっている。先週と同じように城山の北のコルに出る。ここでハーネス等登攀用具を身に着ける。城山は先週登ったので割愛し、さっそく縦走に入る。登り下りとも急ではあるが難しくはない。やがて1043mのピークに着いた。


はさみ岩1043m

「はさみ岩」というプレートがかかっていた。目印も殆ど無く踏み跡も不明瞭である。なるべく稜線の岩を忠実に歩くと面白い。2級程度のヤブ岩稜を進むとあっけなくサスの峰に到着した。一人だと速い。サスの峰から先は歩く人も多いらしく目印も多くなる。踏み跡も少し明瞭になった。しかし皆思い思いにルートを取るのだろう、岩が出てくるといくつも巻き道がでてくる。私はガストン流で岩を忠実に攀じる。しかし岩峰上に立つと、その先が下りられず、懸垂するほどのこともないので、先ほどの所までクライムダウンする。そんなことを何回も繰りかえしながら栗原山に着く。休まず持倉越まで行き小休止。


栗原山


持倉越(この看板は、あと数十年で木に食われてしまうだろう)


持倉越からは船子川左俣(仮称)にある、昔の道を辿ろうとするも、不明瞭でなかなか見つけられず、ロープも持っていることだし、このまま沢を直降することにした。滝はいくつか出てきたが、すべて巻いて下りることができ、出合のバイクデポ地点には午前中に着いた。


バイクをデポしておいた林道桜井沢線の看板

歩いた感想は、ルートの取り方では非常に面白い縦走であった。インターネットで見た記録に、サスの峰先の下りがあまりにも急で戻ったと書いてあったが、ブッシュがあり、まったく不安のない下降である。当初の計画では東福寺渓谷を巡る稜線一周であったが、時間に不安があったので半周にした。でも一日一周は十分にできると確信した。しかし、今日眺めたところでは、残りの半周にあまり魅力は感じなかった。といってもガストンの性格から言って、近いうちに残りの半周にも行くにちがいないだろう。

車出発5:10~城山北のコル5:35~はさみ岩6:40~サスの峰7:40~栗原山9:30~持倉越9:50~バイクデポ地点10:40
ヤブグレード1~2級

時間もまだ早いことだし、次回のために偵察でもしてから家に帰ろう。
                                              ガストンガニマタ

伊豆城山・西南カンテ

2011年04月18日 01時28分13秒 | 山行速報(フリ-)
伊豆城山・西南カンテ


城山全景と桜

春の陽気に誘われて伊豆、大仁までやってきた。
ココのところ何故だか、西湘~伊豆に惹かれていたのだ。
ひと足早い陽気を掴まえたい。そんな風であったような気もするが、感覚的なものでうまく説明できない。

ともかく、春の陽気に乾いた岩。アルパイン的マルチピッチを楽しもうというのがこのたびの計画主眼。
伊豆、城山はそんな計画にもってこいだ。
メンバ-は東京のAさん夫妻、茨城はABさん、sakの4名。


ついつい熱が入る

城山南壁のアプロ-チは驚くほどお手軽だ。
南壁は高く、立ち、そして乾いていた。
こんな岩場を見ると、ついつい熱が入ってしまうのは、岩ヤの性分。
ウォ-ミングアップのつもりが、昼前までフリ-の岩場で楽しむ。

しかし、ここの岩は細かく甘い。
慣れるまでの間、充分に手こずり、慣れてからも充分に手こずった。
登れて楽しい、登れずチョット悔しいながらもやっぱり楽しい。
クライミングの楽しさを初心に帰って再発見した気分だ。


西南カンテ

西南カンテは南壁西端にある顕著なカンテからスタ-トする。
支点はハ-ケン、リングボルト、ペツルと充分にある。
アルパイン的なマルチピッチだ。
東京のAさん夫妻が先行。
茨城パ-ティ-はABさんリ-ドのツルベで離陸する。

1ピッチ
逆層気味のカンテを行く。しかし快適なフリクションでグイグイ登れる。
2ピッチ
カンテが終わり、樹木帯を抜けるとハング帯。
3ピッチ
右上にトラバ-スし屈曲点で切る。このトラバ-スが意外と怖い。
4ピッチ
カンタンな左上の登り。二間バンド大ハングエリアを見ながら。
5ピッチ
核心の凹角。中盤が薄カブリ。足元が切れ落ちているので旨く抜けると爽快なピッチ。
抜けると一投足で踏み後があり、終了。


核心の凹核

下山は懸垂下降で。
二本のロ-プで行ってみたものの、回収がうまくできずに手こずる。
このあたりの判断は要修行。
結局はプル-ジックで登り返して、ロ-プ1本で短く下ることにした。

陽気は春を超えてもはや半袖で気持イイほど。
あとは軽い食事をしながらここ最近の四方山話をしていると、クライミングはもはやお腹一杯で今日はこれでお開きとなった。
久々の乾岩に狂踊しながらも慣れない岩質に苦労したのを感じるのは、翌日、思い切り筋肉痛になってからのことであった。

sak

西上州偵察行

2011年04月12日 20時15分29秒 | 山行速報(薮・岩)
大震災では、私の近所でも被害がたくさんあるし、山に行ってきます、とはとても言えない雰囲気であり、私自身も山に行く気持にはなれなかった。まだ余震も続いており、家が心配であるが、4月10日、久しぶりに西上州に行ってみた。
北関東自動車道が全線開通したので、それを利用してみた。自宅から、笠間西インター→下仁田インター→「道の駅うえの」まで2時間半で行ってしまった。さらに高速料金片道1000円は嬉しい。
10日朝、目が覚めて時計を見ると8時半ではないか。寝坊してしまったと朝食を食べたり一連の出発の準備をする。地震のせいか道の駅にはお客の姿がない。最後にGPSの準備をするのにメガネをかけたら、なんと時間はまだ7時前であった。6時半を8時半と見間違えたのだ。なさけねえー!どうりでお客がいないはずだ。
車からバイクを下ろし、今日はバイクで回る予定である。
まず境沢川に行く。


瓔珞橋

瓔珞橋の入山点を確認して戻ってくると、行く時気がつかなかったので、今転落したばかりと思われるカモシカが林道にいた。どうやらガケから滑落したらしい。立ち上がるよう手を貸したが、骨折しているらしく立つことができなかった。


ひん死の重傷を負ったカモシカ

とても車では走れない急で石ころだらけの道を走りまわる。時間があるので、サスの峰に南東尾根から登ってみた。
ヤブの薄い傾斜の緩い尾根を登る。所々に岩場があるが問題となる場所はなかった。1時間で頂上を往復した。


サスの峰

林道発10:20~サスの峰10:55~林道着11:20
ヤブグレード1級
次に船子川左俣の入山点を確認、それから城山に行く。城山の林道は狭く急で車利用の場合は四駆の軽トラでないと無理だと思う。
時間があるので城山にも登ってみることにした。歩き始めるとまもなく動物の食害防止のネットが張り巡らされており、これを越すのに難儀し時間を食った。入山方法をかえないとダメだ。


城山

林道発12:35~城山13:30~林道着14:10
ヤブグレード1級
またバイクで別な入山点を探して回り、適当と思われる地点を確認して偵察を終えた。


途中から見えた叶山牢口ルンゼ(昔登ったが今でも登れそうに見える。ビルディングフェースも昔と変わっていないように見えた)
                                 ガストンガニマタ

筑波山の風景<18> 罠

2011年04月11日 00時59分40秒 | 筑波山の風景

<筑波山の風景・18>

箱罠

山を歩けば、出会う動物は少なくない。
小さなものでは、オコジョやテン、カワネズミなど初めて出会ったときには驚いたものだ。
ニホンサルには威嚇された経験は皆もあろう。
根はおとなしいのだろうが、ニホンシカの巨体に驚かされることもしばしば。
幸い、熊に近距離遭遇したことはないが、いつ何時遭遇するやもしれない。

筑波山に生息する獣の代表といえば、いのししであろう。
幼いそれは「うりぼう」などと可愛げな愛称で親しまれるが、この「イノシシ」。
一般的には害獣として分類されるようだ。



筑波を彷徨い、ふと見慣れぬモノに出会った。
それがイノシシ駆除用の「箱罠」だと思い至るには時間がかからなかった。

しかし、この箱罠。取り扱うには狩猟免許が必要。
価格もその屈強さから、決してお安いものではないのは想像がつく。
イノシシからすれば、厄介なシロモノではあろうが、作物を荒らされるのでは、人間様とて生活がかかっているのだから致し方ない。
幾分、腰が引けながらも写真をパチリ。
イノシシ用の箱罠に人間様が掛かってしまったなど笑い話にもならない。

sak