acc-j茨城 山岳会日記

acc-j茨城
山でのあれこれ、便りにのせて


ただいま、acc-jでは新しい山の仲間を募集中です。

清津川・釜川右俣~ヤド沢

2024年08月30日 18時01分06秒 | 山行速報(沢)

2024/8/19 清津川・釜川右俣~ヤド沢


泳ぎのある沢に行きたい

切り出したのはazmさん
そうして実現したのが、この山行だった

行先は清津川・釜川ヤド沢
かねてよりヤド沢に興味のあったというsztさんも加えて3人での計画

前夜、大場林道ゲート前を左折した広場まで入って仮眠
4時半起床
手早く身支度を整えて5時過ぎに出発
日帰りとしては長めの行程なので早出を意識する

雲が焼けるのを見ながら、目印のある踏み後へと分け入る
踏み後は明瞭で、取水堰
お手軽なアプローチ
ここから入渓する

巨石帯は岩を縫うように進む
岩に触れ体を動かす感覚が楽しい

二俣を右に入ると淵と小滝が断続してくる
最初の泳ぎはazmさん
ロープを引いて左岸から水流左へ泳ぎ渡ってひと登り

淵の先にCSが見えるところは左岸を巻いて10m弱の懸垂下降
その先の滝は右岸を小さく巻く
続く5m滝は右岸沿いに泳いで凹角をひと登り

長い瀞は左岸の壁を伝うように泳ぐ
その先で流れは狭まり、奔流となる
右に左に両足突っ張りなど思い思いにこの流れを遡る

そして現れるのが三ツ釜
手前の湾曲したスラブは水線あたりをへつれるのだが、azmさんは積極的に泳いでいる
「攻めるねぇ」と彼のスタイルを称える

三ツ釜最初の滝を左岸から巻き、ヤド沢に出てひと休み
azmさんは、この上の程よい高さの釜に滑りこんで泳いでいる
沢登は「楽しい」が一番だ

ここからナメの美しい流れを遡る
しばらく行くと、滝が連なるゾーン

15m3段は左岸を巻いて滝上まで
スダレ状の美瀑は水線右を行けるらしいが、シャワー覚悟
おとなしく左岸巻き
20mスダレ状は左の流水溝を行くが最後のスラブが緊張させられる

8m滝は右から巻いて懸垂下降
10m滝は水流右の乾いた岩壁を登る
その先の4mはいろいろ登られているみたいだけど、手前左岸垂壁を5mくらい登って巻く
この登りはなかなか登攀的でクライミングに秀でたsztさんにリードしてもらう

3人パーティーは、とてもバランスのとれた構成
スピードはやや劣るかもしれないが、対応力や危機管理の上ではバランスがいい
こういう時、それぞれの得意分野で対応ができる
志向性が同じ向きなら、いうことはない

巻き終えて沢床に戻ると、視界の先には50m大滝
このころから雲がかかり、ガスが垂れ込め幻想的な景観

ひと休みしていると、雨が落ちてきた
雨具を身に着けて左岸巻き

急な斜面を腕力頼りで灌木を繋ぐ
昼過ぎなのに薄暗い中、雨に打たれて藪を行く
一抹の不安が過ぎる

それでも未来を信じて歩き続ける
自分と向き合うのは、こういう時だ

傾斜が緩くなったらトラバース
ほどなく滝上へと至る

最後の4段滝を慎重に登るとヤド沢の主だった滝も終了
このころには雨も上がり、気分も晴れる

この沢旅のエピローグ
ゴーロ歩きは多くなるものの、時に現れるナメが美しい

奥の二俣を右へと進み、次に現れる二俣を左に入るとやがてコンクリート構造物が見える
踏み後をひと登りで林道に出る

あとは歩きやすい林道を横一列になって行く
おしゃべりしながら1時間半も歩けば、スタート地点へと帰り着く

山行後、旅先の温泉に浸かる
そして、食事を楽しむ
自分への労いとともに、微力ながら旅先への返礼


仲間と力を合わせる
自身と向き合い、自ら労う
そうして心が蘇る

三者三様
心の様相に違いはあったとしても、この喜びは変わらない
そう、私達には明日がある

それぞれの明日にエールを送りながら、こうも思うのだ
明日、有給にしておけばよかったな、と

心の様相にチョットした違いはあったとしても、これもまた真理だろう
だが、私には乗り越えねばならない”ヤマ”もある

進め!振り返るな!


sak

 


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奥利根・湿原を巡る沢旅

2024年08月01日 12時13分53秒 | 山行速報(沢)

2024/7/24-26 奥利根・湿原を巡る沢旅

楢俣川ススケ沢~ススケ峰湿原~下ノ田代~上ノ田代~南田代~楢俣川下降

 

雷鳴
鉛色の空から落ちる雨
水面にいくつもの輪が広がり重なり合う

胸に届く、波紋


以前、湿原を「湿った草原」と表現したことがあったがそれは誤りだ
湿地と湿原ではその時間経過がまるで違う


湿原を巡る沢旅

そこに行ってみたい
そう思ってしまった
あれは「モウセンゴケの湿原」を目指した時が始まりであったか

極めて個人的な自己満足の旅
ここを目指す人が一体どれだけいるのか、という場所
むしろ、それがいい



当初、楢俣川からススケ沢~ススケ峰湿原~裏ススケ沢を下降する計画であったが、何か物足りなさを感じていた

-地形図を眺めれば創造の山並みが手招きをする-

地形図の余白、等高線の間に何を見るのか
足りない部分を想像で補ってこそ、それは完成される
地形図にはそういう美しさがある

確保した時間は3日
ススケ峰湿原から水長沢支流の文神沢中俣の源頭にある湿原へと繋いでみる

この計画には4日欲しかった
決して足の速くない私には、3日で収めることに多少の無理というか頑張りが必要だと思った
その「頑張り」に何の根拠もないのだが、ひたすら歩くほかあるまい

それからもう一つ
この地図の余白、等高線の連なりをどう読むか
そこにどういうラインを引けるか、これが最大の楽しみなのである


1日目

前夜、奈良俣ダム先のゲートまで
僅かな仮眠で朝焼けとともに歩き出す

入渓点までは湖岸道をひたすら行く
通常3時間ほどかかるらしいが、自転車投入で時間短縮を図る

とはいえ、16インチ折り畳み自転車でザックを背負ってではわずかな登りも手押しで進んだほうが体力消耗が抑えられる
下りの滑走を楽しみに、登りは手押しでこらえる
それでも1時間程短縮できたと思う

湖尻を過ぎて楢俣川の流れを右に見るころ、自転車をデポする
少し荒れた林道を歩いていると後方からヘリが飛来する
こちらを観察するように旋回し、上流へと飛び去って行く

事故でもあったのかと思いながら歩いていくと水位観測所に2人
誰かと交信をしている
どうやら、彼らの仲間がこの先の沢で怪我をしてしまったらしい
先ほどのヘリはその救助の為だとのこと

「気を付けて楽しんでらしてください」
との言葉に手伝いできることもないのだろうと、別れを告げる

藪に隠れた踏み後を辿っていると、空に暗雲が立ち込め雷鳴
救助に向かったヘリが引き返していく
救助できたのかななどと考えているとほどなく雨がボタボタと落ち始める

この3日間「不安定な天候」は織り込み済みなのだが、初っ端からこの天候は少し滅入る
雨具を着込んでとにかく距離を稼ぐ
幸い、楢俣川へ降りるころに雨は上がっていた

本流を徒渉し対岸の踏み後へと入る
淡々と踏み後を行くが、矢種沢を渉ってから踏み後が左右に分岐する

明瞭なのは左だが明らかに尾根へと向かっており、沢へ降りるには右の薄い踏み後に入るのだろう
そう思い右へとトラバースしていく
しかし、このあと踏み後は判然としなくなり、強引に楢俣川へと下ることになる

※下山後に確認すると、ここは矢種沢を渉る前に沢へと下降するのが正解らしい

先ほどの雨もあってか、水量は多め
初めの滝は右岸を軽く巻くと幕場適地
ここで、装備を身に着けて再び川床へと戻る
若干の水位上昇はあるものの、流れの渕を行けば遡行に差支えはなかった

楢俣川の本流は岩盤の発達したナメ滝が美しい
時に緊張させられる場面もあるが慎重にいけば問題はないだろう

右に深沢を合わせ、日崎沢出合では日崎沢の水流右に垂れるロープ頼りで這い上がる
滝上から対岸へ渡って楢俣川の滝場を左岸から巻いて流れに復帰する
ここから先もナメと滝が美しい区間である

やがて流れは平凡となり淡々と遡行することになる
水流も次第に細くなり、川というよりは沢にふさわしい規模になってきたころススケ沢(横沢)出合
時間は昼過ぎ
今日はこの左岸台地で幕の予定

3日間で唯一、ゆったりと沢を楽しめる時間がとれる日であった
もちろんこれを堪能するわけだが、昨夜の睡眠不足に酒と肴、炎のゆらぎが加われば睡魔に勝てるわけもない
明るいうちから舟をこぎ、星を見る間もなく寝袋に納まる


2日目

心配した雨もなく、あたたかな夜を過ごせた
明けて中日は高曇り
まずはススケ沢を詰めてススケ峰湿原を目指す

ススケ沢はいくつかの大滝を有するが、困難はなく小さく巻くことができる
源頭は様々にルートがとれるようだけど、水流の多い流れを選び遡る
やがて草付きの急傾斜に出る

このころからは青空も覗くようになって、実に開放的
背後に、至仏山が大きい

その中腹に、ヘリが飛来している
昨日は天候急変で救助ができなかったのだろう
なんとか事なき得たのならいいのだが

草付左岸側の灌木と笹頼りに高度を上げると尾根に乗り傾斜も落ち着く
但し、ここからの藪は丈もあり、消耗する
それでも大きな針葉樹の根元を繋いでいけば、藪も幾分薄いこと事が多い

いくつか草原を散見するようになるとススケ峰湿原は近い
緩傾斜の藪を漕いでいくと、その先に広がる山上湿原


-ススケ峰湿原-

有難き充足がそこにある
今、ここにいるだけで満たされる
そんな気持ちにさせてくれる場所だった


さて、ここからは下ノ田代に落ちる沢筋まで笹薮をトラバース気味に下る
このようなルート選択ができるのもGPSのおかげ
かつてこの地を跋扈した先達に到底敵うものではない

狙い通りに窪の流れを見出すと、下方に目指す下ノ田代が望める
難場のない流れを淡々と下ると、右にぽっかりと広がる下ノ田代


-下ノ田代-

草原に近い高層湿原に腰ほどの葦が広がる
中央に湿原を分ける流れ、そして白樺の木立が印象的な空間であった

この流れ(文神沢中俣中沢)を遡って次なる場所へと向かうのだが、空模様が怪しくなり始める
みるみる空は鉛色となって、雷鳴が近づいてくる

急ぎ足で小さな流れを遡る
いくつかの小滝を越えるが、総じて容易
しかし、流れは冷たく踵にできた靴擦れに凍みる


-上ノ田代-

地形図に名も記されぬ湿原
先達の残した記録から上ノ田代と記す
藪と山谷に囲まれたこの場所は、まさに隔絶された別天地


雷鳴
鉛色の空から落ちる雨
水面にいくつもの輪が広がり重なり合う

胸に届く、波紋

晴れた彼の地が歓喜なら、雨は潤い
雨が落ちるからこそ、水辺も生まれる
静かに雨音に耳を傾ける

やがて雨は上がり、水面が森を写す
そして鳥が小さく鳴く

実に美しい時間であった


片隅に幕を張りたい衝動をこらえ、往路を戻る

さて、ここからが「頑張り」どころ
今日は日暮れまで歩く予定だ

下ノ田代に戻って、Co1600mの平坦地をトラバース、南田代を目指す

平坦地とは言ってももちろん道はなく、藪に覆われた森
しかしながら、予感はあった
湿原や草原が点在するこの辺りは動物の往来も多い
その獣道が使えるのではないか、ということだ

想像した通り、獣道がそこここに見て取れ、思いのほか歩が進む
地図の余白を読み取れたこういうときは実に嬉しい

途中、地図にはない湿原に出会う
こういう偶然もまた、山旅ならではだろう

中俣右沢に出てそれを横断しさらにトラバースを続ける
南田代から流れ出る水流があるはずだ
もちろん、地形図に水線の記載などはない

アタリを付けたら流れを遡る
このころから再び雷鳴
幕場を探しつつ遡るが、なかなかいい場所はなかった

そして、南田代

それは水芭蕉に囲まれて広がっていた
これまでの湿原と違い、一部は水面に植生が生い茂っている
これが中間湿原というのだろう

沼から低層湿原、中間湿原を経て高層湿原へ
経過には数千年もの時間が積み重ねられる
その成長過程を感じられる場所だった

雷鳴が近づき雨も落ちてきた
辺りも暗くなりつつあり、適地とは言い難いが南田代から少し上流の藪中に幕を張る
雨に打たれながらの幕場設営はツライが、今日の充実を思えばこのくらいの辛さは幸せと紙一重であるとそう思いたい

幕を張って一杯やるころ、派手な稲光とともに土砂降りの雨
笹葉に落ちる雨が心地いいBGM
明日の行程を案じながら、眠りにつく


3日目

昨夜20時頃に雨は上がった
翌朝、空は鉛色ながら雨は落ちていない
楢俣川の増水という事態は何とか回避できるだろう

今日は最終日
朝食のラーメンを作りながら、下山したら何食べようかなどと考える

ふと入山日のヘリ旋回シーンがよみがえる
いや、その前に無事の下山だろと気を引き締める

南田代から赤倉岳とススケ峰の鞍部を目指す
ここは昨日のように獣道はあまり期待できそうもない

事実、屈強な笹というか細竹の藪に分け入ることになる
時に木登り、鞍部を見定めて次なる巨木を目印として進む
それでも鞍部からの沢型まで至れば、草原がそこここにあって藪漕ぎの苦労はなかった

しかしながら稜線にのれば背丈を越える藪
より安全と思える楢俣川下降点までの約100mがなかなかの奮戦となった

楢俣川側へ下降を始めると、すぐに窪となり水が流れる
しばらくは平凡な流れで時に草原に出くわす

沢床に笹が覆い被らなくなるといくつかの滝が出てくる
1か所、10mくらいの懸垂下降
それでも下から見ればクライムダウンでも行けたようだった

あとは藪を使って小さく巻き下ることが可能で楢俣川本流(沢種沢)に至る
上流右岸には10mほどの滝が美しく流れを落としており開放的な景観だった

さすがに上流部は滝やゴルジュ状が散見されるもクライムダウンと小さな巻き下りで通過が可能
このころから陽も出てきて楽しい沢下り
大きな三角岩のオミキスズ沢出合で小休止

この3日間を振り返る

山中に独りで入る
なんの社会貢献も関りも持たない時間
いうなれば「余白」の時であった

私は余白に何を見たのか
流れを下りながら、それに想い巡らせていた

 

sak



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片品川水系・泙川湯之沢~広沢下降

2024年07月09日 18時14分10秒 | 山行速報(沢)

24/6/5-6 片品川水系・泙川湯之沢~広沢下降

6月になると、無性に「ひとり沢旅」に行きたくなるんです。
それは森の息吹や命の躍動に触れたくなるからだと思います。

「ひとり沢旅」ですから人気のないところを選びます。

孤独?
それは、全然気にならないですね。
心が満たされていればいいんですから。
もちろん、道義に反することはダメですよ。

 

前夜、泙川林道のゲートまで
ゲート前は車を止めると迷惑になりそうなので、少し手前の広めの路側帯に車を止めて一夜を明かす

装備を付けたら、しばらく林道歩き
自転車で行くこともできそうだけど、この道の崩落・落石具合を考慮すればあまりメリットはなさそうに思えた
もっとも青空に気をよくしながら行けば、歩きも存外楽しいものだ

平滝の手前から入渓
開けた流れにナメが美しい

堰堤を2つ左岸から越えていくつかの滝を巻き気味に通過すると湯之沢出合
湯之沢出合の滝は水量多くなかなかの迫力

左岸から龍ノ沢
大滝を見に行く

湯之沢は前半に滝が集中するが、おおむね巻くことができる
残置ロープに縋っての下降を2度こなすと流れは平凡になる
あとはとにかく河原歩きに徹すると広沢に出合う

シダの群生する左岸台地に居住まいを定めて幕を張る
宿が定まったならば、あとは周辺を徘徊
陽もまだ高いので湯之沢をしばらく詰めてみる

湯之沢は若干白濁した流れ
名の通り湯之沢上流から温泉成分が流れ出ているものかと思ったが、この白濁は鈴小屋沢からのものらしい
鈴小屋沢を分けてからは透明感あふれる流れとなった

それからは10m前後の滝がいくつか現れる
苔生した滝に清冽な流れが気持ちいい

1か所巻き気味に上がった以外は階段状
滑りに気を配れば問題ない

1420mの二俣で本流から離れ右俣へ
次の二俣も右へ進むとCo1598峰と1703峰の鞍部に出る
ここは気持ちの良い笹原となっていて、吹き抜ける風が心地よい

笹を踏む音
森のざわめき
蝉時雨

山や谷で自分だけの時間や情景に出会えた時
とても満たされるんです。

このためにここまで来たんだ!
これは運命だ!って。

ちょっと、言い過ぎですかね?(笑)


名残惜しさを残して下降を開始
尾根をまたいで広沢へ

広沢の下流は特に難場はない
幕場に着けばやることはたくさんある
そう思えば、自然と足も早まり湯之沢に合流

ここからはノンビリと、と言いたいところ
だけど余念なく沢旅の一夜を過ごすためには、ここからがなかなか忙しい

闇に咲く紅蓮花
熾火を肴に黒松仙醸

今宵、いずこに宿るかを知らず

熾火を見てると、想いは巡ります。
過去のこととか、これからのこととか。

明日があるなんて保証は何処にも無いんですけどね。
今日を生きた自信っていうのかな?
もちろん、単なる思い込みですよ。

でも、本当は不安なんです。
だから、いろいろ考える。
そして心を整える。
誰だってそういう時間が必要なんじゃないかな。

きっと明日もいい天気
樹幹から覗く星空に想いを馳せる

 

明けて見上げれば青い空
幕場に別れを告げて、往路を戻る
昨日歩いた渓も角度を変えれば違った色に見える

これからどうなるかなんてわからない
それでも未来に向かって歩き出す
一夜の余韻を背に歩く

生きていくって、選択の連続ですよね。

山でも、社会でも。

いろんな場面で、どう行動するか。

「善き行い」を選べば「偽善だ」と揶揄されるかもしれない。
「誰かの意見」に沿わなければ「自分勝手な奴だ」と批難される。

答えなんかないんです
あるとすれば、「誰のために行動するのか」ってことですよ

自分のため?
愛する人のため?
困っている人のため?
それとも、あなたを利用しようとしている人のため?

「大いなる自己満足」
それでいいんじゃないかなって。

sak



 


足尾・仁田元沢~中倉尾根

2024年07月02日 17時00分31秒 | 山行速報(沢)

2024/5/25 足尾・仁田元沢~中倉尾根


独りの沢旅というと「ナメだ」「湿原だ」と、計画段階でついつい欲張りすぎてしまう
もっともこの「創造しながら計画を練る」時間は楽しい
一方、何処に価値を見出すのかという課題に直面するときでもある

欲張りな計画は、時に本来あるべき沢旅の価値を失っているのではないか
そうして選んだのが仁田元沢だった

沢を歩く、径を行く
そこにある、輝きを見つけに


前夜、銅親水公園まで入って車中泊
5:00起床、銅親水公園の駐車場はすでに満車
林道を中倉山の登山道へ向かい、さらにその奥へとすすむ

林道は次第に荒れてきて、土砂に埋もれて踏み後だけとなる
さらに進むと自然と沢に降り立ち、堰堤が立ちはだかる
左岸から巻いて立ち木を支点に5mほどの懸垂下降
結局、ロープを出したのはここだけだった

しばらくゴーロ歩きをすると程よい小滝が出てくる
時に直登して濡れるも楽しい

遡れば遡るほどに森の若葉が幼くなってきて、季節を遡っているかのよう
鳥の囀り、若葉揺れる葉音、湧水が重なり合って奏でるせせらぎ
ここには癒しの音色が溢れている

左岸に中倉山へ突き上げる支沢の滝を見送ると平凡となるが、渓の煌めきは霞まない

次第に左岸斜面が笹原で覆われていて美しい
駆け上がっていきたい衝動に駆られるが、ここは本流筋を行く

最後は軽い藪漕ぎをしながら窪を行くと庚申山と中倉山の稜線に出る
陽射しは強いが、風は爽やかで気持ちいい

ここからは笹原に径がいくつもついていて少々迷いやすい
稜線を行くと皇海山や足尾や日光の山々を眺めが良いのでお勧めだ

オロ山まで来ると道も明瞭となり、あとは稜線漫歩
沢入山を越えると山人も多くなる
中倉尾根は近年大変な人気の山となっているらしい
かくいう私も沢歩きと稜線歩きを同時に楽しもうという魂胆

笹原の林間に蝉時雨が清々しい

比して左は荒々しい岩峰の重なり
この対比が独特の景観となっているのだが、これは過去の爪痕
足尾本来の姿ではない

 

木陰でひと休みしながら、今日の山行を振り返る

松蝉の讃歌を浴びて巡る径

自分の足で歩く
悲しみより生きる喜びを大切にしたい
その想いが未来を紡ぐ


sak

 

 

 


尾白川・鞍掛沢~乗越沢~日向山

2023年11月06日 21時05分25秒 | 山行速報(沢)

2023/10/16 尾白川・鞍掛沢~乗越沢~日向山

 

初めての沢登り
楽しいと思ってくれるほど嬉しいことはない

あわよくば、また行ってみたい! とか
奥只見や奥利根にも行ってみたい! なんて局地的に興味を抱いてくれたら、殊の外嬉しいに違いない

そんな都合のいい奇跡はともかく、何事にも順序というものがあるのが世の理

そこで「はじめての沢登り」というキーワードでWEB検索してみる
見つけた記事にはこう書いてあった

「当たり前のようですが、はじめての沢登りは重要です。ここで失敗すると沢登りにマイナスのイメージを持たれてしまい、2度目のそれはないかもしれません」

「2度目はない」
そう心に刻む、山行前

 

仕事明けそのままに相方を拾って車を走らせる
今回の相方は初顔合わせのazmさん

「沢登りをやってみたいです」
という言葉に、「これは!もしかして」と胸膨らましながらも冷静を装い、「じゃあ、今度行こうか」と実現した山行だった

前泊の地は「道の駅はくしゅう」
日の出に合わせて矢立石登山口まで

朝陽に森が染まる中、尾白川林道を行く
トンネルをいくつか潜り、径が途切れるところから尾白川へと下る
噂に違わぬ急な下り
足元も悪いので慎重に行く

.

そして尾白川
前日の雨による増水を懸念していたが、遡行には問題なさそうだった

最初に出てくるのが、大きな釜を持った3×4m滝
暑い盛りなら泳ぐのも楽しいだろうが、肌寒い朝には躊躇われ右岸巻き

しばらく遡行すると夫婦滝がなかなかの迫力で迎えてくれる
ここは右岸巻きか滝左のスラブを行くことになる

「ロープ出して行ってみる?」
azmさんに問いかけると「やってみたいです」との応え

傾斜は寝ているものの、足元の滑りもあって慎重にリードする
azmさんもこの「滑り」に苦戦しながらクリアする

登山経験は持ち合わせた彼も、この滑りには閉口気味
表情も曇りがちだった

マズい、極めてマズい
心の裡でそうつぶやく


途中、気分を変えて沢の歩き方や遡行図の見方などレクチャーしながら鞍掛沢に入る
鞍掛沢に入ると明るく開けた渓相と花崗岩のナメ床が美しい
加えて、紅葉の始まりに癒されながら沢を行く
滝はほどほどに出てくるが、滝脇のスラブを登ったり小さく巻いたりして進む


2条5×6滝は左岸巻きもアリだが、2条ある流れの中央突破を試みる
すべすべのナメ滝を細かな岩の弱点を拾っていく
抜け口手前の数歩はフリクション頼みで抜ける

滝上で肩がらみ
azmさんも苦戦しながらなんとか登りきる

「ファイト!一発!」

誰しもそう叫びたくなるような場面こそ記憶に残る
楽しめたかどうかではない
「記憶に残る」
硬派な我々が目指すべきは、そこだ!

そう、そこしかない!


ハング滝6mは手前の滝とともに左岸巻き
右に出合う10m滝
地形図で見ると、これが乗越沢らしく、左岸から巻き上る

この先は水量も格段に少なくなって、滝を登ったり軽く巻いたり、困難はない
しかし、アザミが多いので手元には注意が必要だ

細い流れを淡々と行くと前方にいかにも悪そうなルンゼ
ここは踏み跡に従って右岸の尾根に乗り上げる
小笹の径を行けば鞍掛山のコルに至る

コルで装備を解いて靴を履き替える
前日の低気圧通過、そして冬型の気圧配置で風もやや強く冷たい
ここからは雨具を着こむ

駒岩から日向山へ
下り基調だが、足元が悪い場所もあり慎重に進む

そして日向山

「天空のビーチ」ともいわれる景観と眺望で人気の山
平日でもここを訪れる方は多いみたい

寄せる山波が白砂に沁みる
青い空がどこまでも続く
そして影

まるでファンタジー
この歳になってファンタジーでもなかろうよ、と自嘲もするが自分の気持ちには素直になりたい
美しい記憶を胸に、山を下ればそれぞれの明日が待っている


さて、初めての沢登り
楽しんでいただけましたか?

困難も感動も、挫折も歓喜も
いろんなことが起きるからこそオモシロい

手軽な楽しさより、
労してやり遂げた記憶の方が「本物」
そう、思いませんか?


そういえば、山行前に読んだWEB記事はこう結んであった

「大切なのは、あなたの楽しみ方を知ってもらうだけではなく、その人ならではの楽しみを一緒に見つけてあげること。それは、あなた自身の「山」が広がるチャンスでもあります」

さて、次はどこへ行こうか
「本物」を探しに

硬派な我々が目指すべきは、そこだ!
そうに違いない

否、そう思いたい


sak

 

 

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中ノ岐川・巻倉沢~兎岳~岩魚止沢下降

2023年10月17日 20時19分50秒 | 山行速報(沢)

2023/10/3-4 中ノ岐川・巻倉沢~兎岳~岩魚止沢下降


やっぱり兎岳に行く
そう決めたのは、数日前
山行前夜に催される懇親会に誘われた時のことだった

参加は自由
会議の後、行きませんか?
そう問われて、咄嗟に「ちょっと野暮用があるので」と口をついた
会社人としてはどうかとも思ったが、そう答えていた

兎岳との出逢いは16年前
利根川を遡ったその先に佇む峰、包容とした姿が印象的だった

控えめで、飾り立てて人目を引こうとはしない態度
私は、そんな姿に惹かれたのだ

折角なら沢を繋ぐ山旅がいい
中ノ岐林道から西沢、巻倉沢を詰めて兎岳へ

不安は雪渓の状態だが、この夏に限って言えばおそらく消えているだろう
そこにはどんな景観が広がっているのか
想像して高揚する反面、未知なる旅をためらう自分もいた

そんな時に誘われた前出の懇親会
咄嗟に口をついた言葉に、もう自分は決心していたんだなと自覚した


シルバーラインのタイムトンネルをゆっくりと走り抜け、銀山平
暗闇の樹海ラインを奥只見湖に沿って走り、雨池橋にて一夜を明かす

目覚めると車窓に微かな雨
それでも雲の流れと、森から立ち昇る靄でこれから晴れることはわかった

中ノ岐林道から西沢までのアプローチに自転車を使う
登り基調の林道でザックを背負いながらのクライムサイクリングは辛いので半分以上、押し歩き
この辺りは以前の経験から想定通り

それでもナメの美しい二岐川や林道に水を落とす滝沢、遥か上から流れを落とす上カブレ沢など見所は随所にあって飽きることはない

西ノ沢橋の手前左岸に藪に埋もれた林道がある
しばらくはそれを辿り、岩魚止沢
帰り道に通るであろうこの踏み跡入り口にケルンを積んでおく

そこからさらに西沢左岸の藪を行くと自然と沢に降りる
西沢の水量は多く、想像より冷たかった

雪渓の存在も想定しながら、岸辺を辿る
時に現れるゴルジュ地形も小さく巻いたりへつって行けば困難はない

左に下り上り沢を見て、淡々と進みオキノ巻倉沢との出合
ここは水量の多い巻倉沢へ

地形図ではこの辺りから雪渓に埋もれているのだが、さすがに今年はただの河原だ

ちなみに、地形図の「雪渓」マークは国土地理院では「地図記号:万年雪」というらしい
そして万年雪の記号は、9月頃の雪の少ないときに50メートル×50メートル以上あるものを表示しているそうだ

巻倉沢はしばらく明るい河原が続き、巻倉岳への支流を見送ると次第に両岸は立ってくる
ゴルジュ状を1か所通過するが、困難はない
その後、小滝が続き水流脇を登ったり小さな巻きを繰り返す

中流部はゴーロが続く
たまに現れる小滝も小さく巻いたり、水流脇を行くことができる

左に支流を見ると、滝場が始まる
序盤は水流近くが階段状なので、どれも容易

標高1550mあたりの屈曲点で左に支流を見送ると、2段15m滝
ここは水流奥から取付いて中段で水流を跨ぐ
上段は右岸の岩草ミックスを登り、大岩下で落ち口にトラバースするがちょっと怖い
その後、10m直瀑は右岸巻き、2段10mは水流右を行く

そして巻倉沢最大と思しき、3段30m滝
下段、中段は水流右を行き、上段は右岸スラブを巻き気味に行く
草と岩が外傾しているので、念のため空身+チェーンスパイクで行き、荷揚げ
藪に入ってトラバース、草付き急傾斜を草頼りのクライムダウンで沢床に復帰

この後もいくつか滝は出てくるが、水流脇を登ることができる
次第に開ける源頭が秋の空に映えた

その後はガレが多くなる
そしてガレの間から水が湧き出しておりこれが水源となっていた
水を500ml確保し、この先は沢型を忠実に詰めていく

左に大水上山が見えるころ、小笹から背丈ほどの藪に突入
15分ほど藪を漕ぐと兎岳への登山道に出る

荷物をデポして、大水上山まで往復
奥利根の山々を指呼しながら、春の健闘を思い返す


振り返れば、兎岳
踏み出すごとに近づくそこは彩色の時が近づいていた

「よく来たね」
山標にそう記されていた
よぎるのは、あの時から山を紡いできたことへの労い
自身「よく来たな」とも思う

兎岳を後に稜線を荒沢岳方面へ向かう
道中、日が傾き風が変わった
さきほどまで爽やかだった風が急に冷たくなる

今日の宿りは、巻倉山の先の平坦地の予定
少し下れば、岩魚止沢の源頭で水も確保できる場所
彩色の中、寒さに呼応するように歩も足早になる

水を確保し、ツエルトを張り終える
今宵の友は真野鶴の純米吟醸
あとは、山上の宴で友と語り合うだけ

と、そこまでは良かった

夜半からの雨
暗闇でシュラフカバーに包まりながらも、下山を憂慮していた

朝、事態はそれ以上に身の回りを侵食していた
防水性の低いツエルト内部は雨水で水浸し、空だったはずのコッヘルには布地を伝って雨水が並並と溜まっていた
濡れたライターにコンロ、火をつけるにほとほと苦労した

朝食準備をする間にも衣服は濡れ、寒さに震えながら岩魚止沢を下降して西沢へ向かう
増水が心配であったが、水場の水量も昨日とあまり変わりはないので問題ないだろう
淡々と下っていくが、ほどほどに滝が続く

途中の大滝25m+15mは左岸を巻き下り
これらを含めて、終始クライムダウンか両岸の藪を使って巻き下りでこなす
懸垂下降は要しなかったがチェーンスパイクがあると心強い

下流部(1310m)で右俣を合わせると穏やかになって下降も捗る
最後のゴルジュ状をこなすと沢は一層穏やかとなって、見覚えのある目印に出合う

腹ごしらえをして昨日辿った西沢沿いの藪化した林道を行く
そのころには雨も途切れ途切れとなって、時折太陽も顔を出す

中ノ岐林道に出れば、あとは自転車での滑走
雨池橋まで40分ほどでたどり着くという、痛快なデプローチ
車輪は偉大だ

風切る疾走感
流れていく緑と灰色の岩峰、渓谷美
行く手に真っ赤な雨池橋と奥只見湖

今日も無事に下山できそうだ
そうして思い浮かぶのは、家で待つ妻の姿

控えめで、飾り立てて人目を引こうとはしない態度
私は、そんな姿に惹かれたのだ
あのころからだったのかもしれない
落ち着いた深みのある安らぎを好むようになったのは

奥利根と奥只見の間
中ノ岐川・巻倉沢を遡り、兎岳へ

開けた源頭が秋の空に映える
刻々と彩色の時が近づいていた


sak


 

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谷川・万太郎谷から転戦、白毛門沢へ

2023年10月12日 20時47分39秒 | 山行速報(沢)

2023/9/29 谷川・白毛門沢

土砂降りの雨
これはどうにもならないな、そんな夢で目が覚めた

そして車窓の外へ目をやると、水たまりに雨粒がいくつも輪を重ねていた

土樽パーキングの高架下で雨宿り車中泊
これはどうにもならないな、と二度寝を決め込む

降雨レーダーによると、午前8時頃には雨が上がるらしい
パートナーのENさんとその情報に一縷の望みを託す
実際、そのころに雨はあがった

なんとか気持ちを立て直して向かうは万太郎谷
井戸小屋沢を目指してのことだった

身支度を整えて入渓するも、明らかに水量は多く流れは強い
普段なら、この先の渓相に夢膨らましながら、サクサクと通過する序盤から緊張を強いられる流れなのだからどうしようもない
この時、すでに転戦先を考え始めていた


-国境の長いトンネルを抜けると-


万太郎谷を後に遡行服のまま車を走らせた
関越自動車道・湯沢インターチェンジから東京方面へ

先ほどまで燻っていた場所の上を通過し、関越トンネルに入る
そして、その先

モノクロームの世界から、総天然色の世界へ
悩むことなき、快晴
革命的な出来事にENさんと二人、気分は高揚した

時間は9時を回っており、時間的余裕もない
そして、白毛門沢へと向かうこととした

**************

白毛門登山口で再び準備を整えて出立

陽差しが眩しい
爽やかな風に口元も緩む

ハナゲの滝は中段から巻いて、東黒沢出合
ここから白毛門に向かう

序盤はナメ滝が続く
この短時間に悪天から好天の遡行へ転進した気分の高揚を体現するかのように、泳ぐ必要もない釜で泳いでみたりしながら進む
足元はヌメる場面もあるので、慎重に行く

中盤は滝が続く
直登をためらう滝にはしっかりと巻き道もあるので、安心だ

そういえば、白毛門沢にはその昔、単身で遡ったことがあった
残っている記憶といえば、ハナゲの滝下部でヌメに足を取られて転んだことと白毛門山頂へダイレクトに突き上げ、気分のいいクライマックスだったということ
中盤のF1(10m滝)やタラタラノセンの印象はなく、それはそれで新鮮な遡行を楽しめた

上部稜線が近づくと終盤のスラブ帯
傾斜は強くなるが手がかり足掛かりは豊富なのでグイグイ登れて、景観も広がる

息を切らしながらも源頭
この好天と爽やかな風
遡ってきた白毛門沢の沢筋を眺めながら小休止

ここを登ってきたのか
振り返れば、今日という一日の長さを知る
あっという間の出来事のようで、意外と長い道程だ
いずれにせよパートナーがいてこそ、山行は豊かになる
良きも悪しきも、共にしてくれたことへの感謝

最後は小笹の踏み跡を行けば、白毛門の山頂
いうまでもないが、視界を遮る物はない

あとは登山道をひたすら下る
いつもながら、膝に負担がかかる下りだ

ジジ岩、ババ岩を横目に見覚えのある場所で手を合わせる
「今日も、無事下山できそうです」
あの日のパートナーにも感謝で返す

失意の朝から、何とか立て直すことができた今日
「楽しい」と思えるのは、特別なこと
そこに特別なものはなくてもいい


sak

 

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川内・下田を巡る山谷の沢旅

2023年09月21日 21時56分44秒 | 山行速報(沢)

2023/9/7-10 川内・下田を巡る山谷の沢旅

 

川内下田・今早出沢~魚返りの大滝~青岩~東又沢~大ブナ沢~1096峰~西の沢~室谷川

 

一ノ俣沢橋の袂で夜を明かす
朝、ここで雨が降っていないのは初めて

3時間ほどの仮眠であったが、寝起きは良かった
それはもちろん、これから始まる沢旅への期待がそうさせたのだ

-川内・下田を巡る山谷の沢旅-

秘境の先へ
青の別天地
深懐の森と夜
静淵の時

山谷を繋ぎ、巡る理由

「そこに身を置いてみたい」
ただそれだけのことだった

 

2023/9/7

今日はアプローチ
一ノ俣沢橋から右岸の踏み跡に入り、一ノ俣沢を遡る
何度か辿った道なので記憶のままに遡っていったら、一ノ俣乗越に至る枝沢の手前を詰めてしまい余計なヤブコギをこなすことになってしまう
なんとか尾根に乗って獣道を北進すれば、明瞭な踏み跡の一ノ俣乗越
踏み跡を下っていくが倒木などで隠された場所もあるので、注意深く下る
窪をいくつか渡りながら右(北)へトラバース気味に下降していくとアカバ沢の流れ
この流れを下っていくとナメとともに今早出沢に合流する

今早出は水量が少なかった
この夏の猛暑と新潟の少雨が原因だろう
それでも見上げれば青空、足元には金色の流れが煌く
流れに浸りながら行くのが、実に気持ちいい

5年前に泳いだ瀞場は渇水に加えて、大岩が鎮座しており腰を濡らす程度の通過


横滝も水流少なく、容易に直登
折角だからと甌穴の中に入ったり、積極的に水と戯れ遅い夏休みを楽しむ
あとは淡々と流れを遡り、ガンガラシバナを望む右岸草地に幕を張る

ガンガラシバナ右方ルンゼは、渇水で流れが目視できない
それにしてもこの迫力
今早出を遡った者のほとんどがそれに目を奪われるだろう

ささやかな焚火で夜を過ごす
星夜を肴に今宵は「奥の松」

寝不足で闇が満ちる前から睡魔に襲われる
明日は関東地方に台風が接近するらしい
その影響もあって新潟も終日好天は望めないだろう

岩峰のシルエットに明日を思い、残りの薪を全てくべる
火勢が増し辺りの草木がオレンジ色に染まり、時に爆ぜる
迫る闇に抗っているかのようであった

 

2023/9/8


-秘境の先へ-

ガンガラシバナを横目に今早出沢の本流を行く
流れを詰めると、スラブ状にガレや大岩が堆積する
前衛の3つの滝は概ね右から小さく巻くように進んだが、3つ目の草付トラバースは一歩が悪い


魚返しの大滝

 

過去の記録では左壁からとある
クランク状に佇立する壁に滝の流れは概ね二条

当初は左水流の左を走るクラック沿いで想定
下部のバンドを右上しクラック下まで
少し登ってみたが、かなりのヌメりでちょっと怖い
一旦退く

次に取付いたのは、そこからさらに左の岩壁
傾斜はキツいが、岩は乾いている
そして途中に灌木が生え、その上も草が使えそうであった

空身の荷揚げ
荷揚げの労力とリスクを考慮し10mで一区切りとした

下部はスタンスが少ないので慎重に
灌木に手が届けば、強引に身体を上げられる
ここから右に移動し、少し安定した場所で最初の荷揚げ

そこからは左上気味に草と岩のミックスを行く
草付は土が外傾して堆積、さらに締まっているのでキックステップが切りずらい
バイルと念のため装着していたチェーンスパイクが活躍
やや被った上部岩場基部の灌木でビレイ、荷揚げ

ここからバンドを落ち口にトラバースして滝上
これにて大滝は終了、一息つく

大滝上からは大岩の間を越え、すぐにゴルジュ状
続く第二ゴルジュも含めて左から巻く

一旦河原になり右からの流れを合わせる
このころから風が強まり、雨が落ちてきた
雨具を着込んで先を急ぐ

いくつか滝を越えると、6m滝が左から落ちる
ここは少し本流を遡ってからの巻きで、この支流へと入る
狭いルンゼ状を行くと5m滝、ここは念のため空身で登り荷揚げする

滝上から窪状を詰めていくと開放的なスラブが見える
青岩(青い岩盤)だ


-青の別天地-

その昔、残雪を利してここに立った時はあったが、これほど広大な岩盤とは思い至らなかった


藪尾根に囲まれた中にあって唯一といっていい開放的な癒しの空間
異空間の佇まいであった

雨はあがったものの未だ風は強い
藪を風よけに小休止し、早々大川支流の東又沢へと下降した

東又沢は3度ほど懸垂下降を要したが、それ以外は特筆することなく下降には適していた
但し、下部では流木の堆積が膨大でまるで迷路のようだった

流木ゾーンを越えると穏やかな流れに岩魚が走る
左にぶなの森を見るようになると大ブナ沢との出合も近い
しかし、大ブナ沢に水流はなく涸沢と化していた
予想外の事態であったが、5分ほど歩くと水流は復活し安堵する

ここからは右に左に幕場を探しながら行く
深懐のぶなの森は木木が連なり沢を覆う


-深懐の森と夜-


二又ぶなの袂に居住まいを定めて宵の支度に入る
今夜だけ、この森の仲間に入れてもらう

騒めく、ぶなの木々
流れは瑞々しい音を奏で、焚火のゆらぎが空間を支配する

深懐の森の一夜はそうして更けていった


2023/9/9

朝陽の眩しい渓を行く
空は高く、秋を予感させる
晴やかな朝だった

穏やかなゴーロを行くと両岸が迫る
この20mの滝は右から、空身と荷揚げで通過する
その上の3mは右から巻く

大岩脇の8m多段滝は右岸から小さく巻き、6m柱状節理を越えて右に932コルへ詰める支沢を分け、左に水量の多い支沢を分ける
そして現れる10m滝
この時点で標高は770m
1096mピークまでは約320mの高低差だった

-葛藤と我慢-

ここで一考
10m滝はいかにも悪そうなので、右岸尾根から巻きの一択
まずは支尾根に上がりその先を偵察しようと考え、尾根に取り付く
藪はそれほど濃くなくチェーンスパイクの威力を存分に味わい快適に上がる

そしてその先、谷筋には幾筋ものスラブが山肌を走る
大きな滝が見えたわけではないし、森に入ればなんとかなるだろうとは思った

一方、すでに支尾根に上がっている自分
そしてこれから川床に下り戻ってから谷を登り直す労力
完結性より安全性を採用し、尾根を詰めることにした

今となっては「あの時、自分は妥協したのだ」という思いもある
しかしながら、後悔はない

とはいえ、そこから駒形山の北1096m峰までの道のりはヤブが次第に濃くなり苦労する
我慢の3時間半となった

1096峰からは安堵をもって取り組める
遠く、青岩が見える
あそこから歩いてきたと思えば感慨深い

西の沢下降は駒形山へと向かう途中の鞍部手前から谷筋に下る
しばらくは、ぶな林の窪を下る
いくつか窪を合わせるとナメ滝が続く
明るく気持ちのいい景観である反面、足元は非常に滑る

藪がある所は藪を手掛かりに下る
懸垂下降は4か所(計6回)
50m1本だったので、上流部の二つの大滝は2ピッチに分けた

540mあたりの河原に幕場を求めて本日の行動は終了
今日はヤブコギと足元の悪い下降でくたびれた
辺りに薪がゴロゴロしていたが、今日の焚火はなしとして早々に横になる

見上げれば、月が微笑んでいた


2023/9/10

今日は下山日
青空に口元も緩む
本音で言えば、下山したら何を食べようかなどという邪な想いもあったことを告白しておく

西の沢も中流部以降は穏やかになる
順調に下降を続け、室谷川に至る
出合の8m滝は左岸側の立ち木を使って懸垂下降

さて、ここからはこの沢旅のエピローグ
室谷川だ

 


-静淵の時-

スラブを穿がつ流れを泳ぎ下る
自然の妙なる造形に見惚れる

はぁぁぁ、ほぉぉぉ、とか言葉にならない感嘆詞が思わず口をつく
そして、日差しに揺らぎ輝く水面

流れに浸かりながら静かにゆっくりと進む
透き通った流れを手ですくって口にすれば、わずかに甘い
ザックを浮袋にラッコ泳ぎで空を見上げる

静かな時の流れに、これはもう最高の終わり方ではないか
もう、これで満足してもいいのではなかろうか
「山の納め方」を考える歳になって、そう思うこともある


人の行路は山谷にも近し


山谷を繋ぎ、巡るもう一つの理由


旅は死ぬまで終わらない
歩くのさ、この足で


sak


↓動画も

 

 


足尾・神子内川手焼沢

2023年09月19日 21時48分50秒 | 山行速報(沢)

2023/9/2 足尾・神子内川手焼沢


朝発で沢登
午後の雷雨リスクも考慮して手近で軽めの沢登りを企画
初顔合わせのtakさん、skmさんと

こんな時のために「マイ沢リスト」に温存されていたのが、足尾の手焼沢
森中の涼に浸り水流を胸まで浸る場面もあって残暑に嬉しい1本

日足トンネルの足尾側出口から入渓
地蔵滝を見物して足場で組まれた通路を行くと手焼沢と長手沢の分岐
手焼沢を進むと明らかに足跡

石積み堰堤手前で先行の釣師に追いつく
竿を出しているようだったので、しばらく待機

頃合いを見計らって、声を掛け先行を申し出る
しばらく巻き気味に行くことを伝えて快諾いただく

 

ゴーロをしばらく行くとゴルジュ地形
ここからは水流を行くのが楽しい
逆くの字滝は水流左から取付くも屈曲部分がスタンス少ないナメ状のため、戻って右を巻き気味に通過

ここからは小滝を越えることに終始
涼と生と緑に見惚れながらの遡行となる

源頭は右岸の笹原をひと登りで登山道
茶ノ木平で一休み

茶ノ木平の分岐標から少し戻ったところから長手沢へ下降
早めに窪に入ってしまえば、それほどの苦労はなかった

1か所5mほどの懸垂下降を要したものの、あとは淡々と下る

左岸にピンクテープが見える
地形図を見れば、この辺りまで林道が伸びているようだった

takさんが少し足を痛めたようだったので、1150あたりからこの林道へ乗り上げる
あとは平坦で立派な林道~細尾峠の道を足尾に向けてポクポク歩く

まだまだ暑い9月
予報通り、山間に鉛色の雲が湧き始めていた


sak

 

⇩動画も


五頭・大荒川本谷

2023年09月15日 21時37分01秒 | 山行速報(沢)

2023/8/27 五頭・大荒川本谷

やっぱり沢は好い
そう思える一日だった

・・・・・・・・・・・・

前夜、茨城から五頭・魚止ノ滝駐車場まで
下道をノコノコと行くので流石に遠い

続く熱帯夜
途中、道の駅で寝る気になれず、登山口まで
ここまでくれば幾分過ごしやすく、幕を張って就寝

駐車場から登山道を行く
登山道が左折するところから直進する踏み跡に入る
途中草藪に埋もれているが迷うようなことはなかった

堰堤上で装備をつける
今日は久しぶりにsztさんとの沢登
気心知れたパートナーとの山は良い
数年ぶりのことであっても、あの日の奮闘は鮮明に残っている

大荒川本谷は中規模ながらゴルジュと滝が続く
途中のシャワークライミングや泳ぎが楽しい所

入渓点からいくつかの滝を問題なく超えていく
森の中なので、清涼感抜群だった

右に小倉沢を見送った先の8m滝は登れるらしいが、落ち口に流木が堆積して庇状となっているため右から小さく巻き、懸垂下降で沢床に戻る
この後も泳いだり、へつったりして楽しい

小ヤゲンは最初の滝を水流左から行く
その先はチョックストンが二段になって流れを落としていた
右壁に古いリングボルトもありトポにもあるように右壁~リッジへと抜けるのがルートだろうと見立てて取付いた

しかしながら、近くで見るとリングボルトは寂れリングが途中で欠けている
いやはや
仕方ないのでこれをスルーして右に見えるハーケンを使う
右壁のフェイスをクリアしてリッジに乗るが、ここからは支点もなく数歩が悪かった

リッジの立ち木に至れば一安心
しかしながら岩は脆いので注意が必要
30mロープで2ピッチ


【大荒川本谷へ入渓される方に”お願い”】

小ヤゲンの登りでウェアラブルカメラを落としてしまいました
滝場を登り終える直前だったので、どこまで落ちたかは不明です

落下した先を覗いてみましたが、寓話「ヘルメースときこり」のようにヘルメース神が現れることもなく
涼やかな風が吹くだけでした

もし、この付近で「GoPro7」を拾得された方がいらっしゃいましたらご一報ください

【以上、個人的なお願いでした】


終了点から川床へは藪伝いで戻れる
辺りを観察するとコル状から古いロープが下がっており、小ヤゲンは手前から大きく巻くことができるらしい

この後も小ゴルジュを飛沫を浴びながらも楽しい遡行が続く
スグノ沢手前の3mは通常巻くようだが、sztさんが細かいスタンスに乗ってクリア
後続のsakはお助けを投げてもらう

沢登りの一場面
なんかいいよね、こういうの

いくつかの支流を見送って大ヤゲン
峡谷の小滝を越えると深い釜を持った狭いチョックストンの2段滝
これは手前の右岸小尾根から巻くが、中々傾斜が強いので要注意

藪を伝って川床に戻ると8m滝上
小滝を越えて15m滝はロープを出して右の草付を行く
新タメ沢を分けて現れる2段15mは水流右
この先は沢というよりは溝のように狭まった流れを行くが、なかなか面白い

ム沢を目指したはずが、遡行図と違うナメ滝が断続的に現れる
最終的には面倒になって右岸尾根から巻き上がりそのまま松平山まで軽いヤブコギ
そして山頂にダイレクトに到達するのが、なんとも良い

暑い夏に水と戯れる
下山は山葵山を経由して魚止ノ滝登山口まで


暑い夏
いや、熱い夏はまだまだ終わらない


sak

 

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