acc-j茨城 山岳会日記

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山でのあれこれ、便りにのせて


ただいま、acc-jでは新しい山の仲間を募集中です。

只見をめぐる沢旅(小戸沢そそろ沢~芦安沢~丸山岳)

2022年09月24日 12時57分43秒 | 山行速報(沢)

2022/9/14~17 只見をめぐる沢旅


只見に初めて訪れたのは、会津朝日から丸山岳を目指した時のことだった。
「南会津アルプス縦走路構想」が頓挫し、藪に帰りつつあるという「未開の縦走路」に興味を抱いた。

結局は猛烈な藪に歯が立たず途中敗退をするわけだが、今思えば、まるで実力と研究が足りていなかった。
しかし思い通りに行かなかった無念にこそ、価値はある。

あれから、23年。
歳月の流れの中には、苦難もあった。
それでも只見は只見であり続け、私はこの山と谷に癒しを求めた。


-只見をめぐる沢旅-


好きな場所は自分で決めていい。
素晴らしき哉、沢旅。

只見湖から小戸沢西の沢そそろ沢。山越えして洗戸川前沢下降。
芦安沢を詰めて、丸山岳。下降は葦ノ沢から大幽東ノ沢、そして黒谷。

独奏の四日間が始まる。

 

2022/9/14

起点は只見駅。
車中泊の後、只見湖尻・万代橋の右岸袂の園地へ。
田子倉ダムを見ながら小戸沢林道へと入る。

小戸沢は以前から興味があった。
黒谷川、楢戸と遡行した者なら、並び流れるそれが気にならないわけはない。
上流の「そそろ沢」というネーミングにも惹かれたし、記録も少なく琴線に触れた。

小戸沢林道終点で東と西に流れを分け、西の沢へ入る。
下流部は穏やかに流れる西の沢も中流部で峡谷となり時に胸まで浸かる。
いくつか滝場もあるが、空身+荷揚げなどを駆使すれば突破できる。

上流部に入ると10mほどの滝が現れ、巻きを模索するが結局は直登するほかなかった。
しばらくゴーロが続き、高倉沢との二俣は高倉沢のトイ状を突っ張りで越えてから、そそろ沢へとトラバースする。

そそろ沢に入ると側壁は高く角度のある草付き。
威圧感が重い。
峡谷ではあるが、沢床はゴーロが多く意外と捗る。
途中でトイ状10m滝。これは左岸のルンゼから高巻く。

そろそろ幕場を求めたいが、峡谷に安息の幕場は少ない。
雨がないとは思っても、万が一を考えると安易に物件を決められない。
左岸に突き出た大岩上に1畳ほどの台地を見つけて今宵はここに根を張る。

昨晩は1時間ほどの仮眠だったこともあり、睡魔に勝てそうもない。
食事を済ませてすぐに床に就く。
あとは、今宵の眠りに日常の悪夢が現れないことを祈るばかりだ。

 

2022/9/15

幕場からは巨石をいくつか超える。
とはいえ、突破に困難はない。
流れがS字に屈曲した所で雪渓の残骸を見る。

その少し先で洗戸川前沢に繋げるため高倉山東のコルへ向かう左岸の支流に入る。
本流にも興味はあったが、それはまた今度。
そそろ沢から長須が玉経由で東の沢へ繋げるものいいだろう。

支流は急登で高度を上げる。
懸念していた絶望的な滝はなく、直登でこなしていける。

最後は藪を強引に登りきると高倉山東のコル。
稜線の藪は濃く、石楠花やツゲなどを交えた厄介なヤブコギだ。
たまらず、降りやすそうな場所を探し、少しだけ移動したら前沢側へ下降開始。

沢筋までは灌木を繋げていくが、それでも懸垂下降を強いられる場面もある。
前沢の沢床に着くまでに4回、そこから洗戸川出合まで4回の懸垂を要した。

洗戸川と合流し2年前を思い出す。
ここからの下降、芦安沢出合までに悪場はない。
時に滝場はあるが、軽い巻きやヘツリでかわせる。
この安心感は大きい。

幕場は前回同様に芦安沢出合から少し下流の左岸、小沢出合の段丘に求めた。
このあたりには山葵があるのが嬉しい。
そうして、楽しい沢の一夜が始まるのである。

薪には炎を。
山葵には肴を。
そして月。

傍らに、国権てふ。
美味し。

 

2022/9/16

芦安沢は中流部から滝が続く。
絶望感を抱くようなものはなく、軽く巻いたり、直登も険しくもやさしさを湛える南会津らしさがそこある。

入山前夜の只見駅で、Nさんが数日前に芦安を遡ったとツイートで知った。
面識なき彼の痕跡を感じながら遡るのも、何かの縁か。
おそらくこれは偶然でないのだろう。

意外と早く水は枯れ、今宵の水を確保しておく。
沢型は続き、手入れの良くない登山道のよう。
次第に背後の視界が開けて、これまでの道程がよく見える。

深山に独り。
畏れ、和ぎ、そして胸は高鳴る。

詰めは草付きの急傾斜。
灌木目指してバイルを振るう。
丸山岳から北西の1736峰。さらに100mほど西の尾根に詰めあがる。
ここからが苦難の歩となる。

待ち受ける、密藪の刺客。
笹藪はもちろん、石楠花、栂、ナナカマド。
そして密藪に絡まる、つる性植物。

容易ならざるヤブコギに、私は23年前を思い出していた。
とかく力任せだった、あの時。
それは若さの証明でもあったか。

時を経て想うのは、それでも楽しかったと、充実した、高揚したと感じた山行後感。
思い通りに行かなかった無念にこそ、価値はあった。
それは、あのころの日常でも同じではなかったか。

今はどうだろう。
はたして、同じと言えるだろうか。
藪を漕ぎながら考える。
そして夜の帳が降りる頃、丸山岳に至る。

 

2022/9/17

朝の草原に立つ。
控えめに言って、最高だ。

山頂から葦ノ沢下降点までは時に藪を漕ぎ、草原を繋ぐ。
あたりを決めて笹藪に入ると沢型はすぐに現れる。

葦ノ沢の下降は、岩がとても滑るので要注意。
懸垂下降2回。

大幽東ノ沢はゆったりと流れる。
サブウリのゴルジュでは流木が流れをせき止めて、いくつも滝場と化している。
たしか、前回下降したのは6年前
その時の印象からずいぶん変わっている。
下降はともかく、水線遡上は困難そうだった。

只見をめぐる沢旅。
フィナーレはやはり黒谷の森だ。
この森は「歩く」のではない。
「味わう」のだ。

取水堰を通過し、水色の大幽橋をくぐればこの旅も終わる。
黒谷林道の車止めにデポしておいた自転車に跨る。

薄暮の黒谷川沿いを自転車で疾走する。
家々の窓に明かりが灯り始める。
ふんわり香る稲わらの匂いに、秋を感じる。

暗がりの国道を只見駅に向かう。
道すがら10月1日の只見線全線再開を祝う幟がはためいていた。

もう少しだ。
がんばれ、俺。
がんばれ、只見。


sak

 

↓ 動画も

 

 


桧枝岐川・黒檜沢左俣~三岩岳

2022年08月31日 22時21分47秒 | 山行速報(沢)

2022/8/22 桧枝岐川・黒檜沢左俣~三岩岳


街道を北へ。
闇に浮かぶ牛丼屋の看板に目が留まる。

そういや晩飯、食ってなかった。
余事に振り回される日々。
終業際、唐突に思い立ち、ついと山へと向かったからだ。

ふふふ。
今日の牛丼並盛は一味違うぜ。

何故って?
それはこれから、本然を見に行くからだよ。

小豆温泉スノーシェッド手前。
黒檜沢にかかる橋の袂から入渓。
どこから降りるのか迷ったが、右岸側を少し入ると踏み跡がうかがえる。

下部は白い花崗岩が美しい。
ナメに小ゴルジュ、滝場が断続。
このリズム感がいい。

小ゴルジュは、へつったり泳いだり。
滝は概ね、登ることができて楽しい。

直登が困難そうな7m滝は右岸を小さく巻く。
この上で登山道(現在は通行禁止)が横切っており、小休止。

アブはなく、赤蜻蛉が群遊。
山はもう秋の装いが始まっている。

ここからはゴーロが増えて下流部のリズム感は薄れる。
反面、正面に三岩の稜線が見えてきて開放的。
1:1の二俣は左に崩落跡をみて、右へ。

奥の二俣は左に多段滝で右がゴーロ。
ここは針路を左にとる。
多段滝の下段はどこでも登れる。
中段は水流沿いのヌメを回避し右を登る。
上部は容易。

小滝の連瀑をこなして露岩に顕著なチョックストン3連滝。
小休止してから左岸巻き。

しかしながら、この巻き。
露岩に草付き、急傾斜。足場が決まらず悪い。
ここで足を滑らせば、止まらない。
スパイクをもってこればよかったと思いながら、必死にバイルを振るう。

こんなときにフラッシュバックする日常。
得てして日常は残酷だ。
日々身体はすり減らされる。
そして、唐突に思い立ち、ついと山へと向かうのだ。

ここが消失点ならば、受け入れてもいい。
それが、運命なのだろう。

しかし、ここを乗り越えたなら。
それは「今と向き合え」という啓示か。

草付きから藪を取れたら一安心。
灌木帯をトラバースして、最後は15mほど懸垂下降。

ここからも滝場は続くが、いずれも登ることができる。
最上流部は沢筋が幾重にも分岐する。
目指すは、地形図・三ツ岩のすぐ脇にある「草原マーク」。

水流は消え、沢筋が草叢に吸収される。
そしてたどり着く源頭。

三岩岳の本然はここにあった。
源頭に広がる草原。

赤蜻蛉が舞い、雲は流れる。
そして、金光花の群落が一斉に揺れる。
夏と秋の間に。
ただひとつ、私だけが異質だった。

日常の余事は、誰しも溜息モノだ。
だが、自己本然の姿はどうであったか。


行く手にはヤブコギが待っている。
うん。これだよ。
これがなきゃ、だな。

ふふふ。
今の俺は一味違うぜ。

 

sak


↓動画


◆ルート軌跡


実川・赤倉沢~花沼湿原~硫黄沢下降

2022年07月08日 07時13分42秒 | 山行速報(沢)

2022/6/28~29 実川・赤倉沢~花沼湿原~硫黄沢下降


今、自分に足りないのは、アレだ。
きっとそうに違いない。
確信的な思い込みから、行動に至るまでにそう時間はかからなかった。

今を生きるために、様々な人生訓や名言に納得してみたり、疑問を感じたり。
とかく日常は悩ましく、解は多様だ。

脳裏に浮かぶ南会津。
それが確信に変わる。

ひと気のない滋味溢れる場所を選ぶ。
そして独り自由を嗜むのだ。

七入から林道を行く。
実川林道は国道からすぐのところで、チェーンのゲートがある。
数年前までこのゲートに鍵はなく、車で矢櫃沢の先まで入れたようだが現在では鍵がかかっている。
広大な七入駐車場に車をおいて歩きだす。
すると、ゲートから1キロほどのところで崩落が起きていた。
鍵をつけたことに納得。

林道は途中で登り(左)、下り(右)に分かれる。
下に行くと実川に降りることができるが、その先に堰堤が見える。
それを嫌って、登りの林道へと進む。

赤安沢出合先の緩斜面から藪を漕いで入渓。
実川を遡る。
しばらくは平凡な流れ。

右岸が崩落した赤茶岩の滝から、滝とナメが現れ始める。
滝場は直登したり、小さく巻いたり。
1か所だけ泳いで水流左スラブに取り付いた。
実川の一番面白いところが、この辺りに凝縮されている。

流れが穏やかになると硫黄沢出合。
硫黄沢は水が少し白濁している。

この辺りは平坦地が多く、少しだけ硫黄沢に入った右岸台地が草原状。
近くの小沢で水もとれるので極上の幕場だ。
フカフカで気持ちの良い場所に天幕を張る。

沢旅はミニマリズム。
ザックで担ぎあげた道具たちで一夜を過ごす。
足りないものは自分で何とかするのも、また楽し。

自由時間。
あとはアレして、コレをする。

癒しの揺らぎに眠気を誘われ、うたた寝。
否、したたか酔いがまわったか。

鹿の鳴き声で目が覚めた。
すっかり闇に包まれた森の河原で意識を失ったかのように寝ているのだから、鹿も驚いたことだろう。
薪をくべ直し、寝床に潜る。

鳥のさえずりとともに起床。
昨夜、炊いた白米を雑炊にして食す。

幕装備はデポして、赤倉沢を遡る。
赤倉沢はすぐに二俣。
右俣を行くが、倒木が多くすっきりしない。
所々で水流脇を登るが、ヌメに注意が必要。

源流の雰囲気が満ちるころ、辺りは針葉樹で覆われる。
俊立する針葉樹が底知れぬ奥行きを演出する森は、まるで異界の淵。

倒木を床に幼木がひしめく。
混沌する生と死。
ゆっくりと未来が紡がれている。


硫黄沢左俣の源流を渡ると、もうすぐだ。

今、自分に足りないと確信した、アレ。
そう、湿原。
正確に表現するなら「人知れずひっそりと佇む湿原で惚ける時間」だ。
そして目指した花沼湿原。

森の只中にポッカリと開けた空間。
大きすぎない、こじんまりとしたところがまたイイ。

池に映る空が青い。
小さく、可憐な花が風に小さく揺れる。
遠くで蛙が何か言っている。
その言葉が解ったら楽しいだろうな、と思う。

水面に映る、青が沁みていく。


花沼湿原から西進。
いくつかの窪を渡って、硫黄沢本流へと下る。
赤茶けた川床。
いくつか滝場は出てくるが、クライムダウンと巻き下りでやり過ごす。
1か所、外傾した岩をクライムダウンする巻き下りが悪かった。

途中、コ字型の流程のショートカットルート(コル)を確認。
幕場まで下り、撤収を終えたら硫黄沢を登り返してショートカットに入る。
実川まで下って、対岸の実川林道終点へと登り返すが、結構な密藪。
おそらくはどこかに踏み跡もあるのだろう。
林道に出たら、あとは余韻を楽しみながら七入を目指す。


今を生きるために。
自分の足で歩く。


sak


↓山行動画

◆山行の軌跡

 


片品川水系・栗原川ツバメ沢~ケヤキ沢下降

2022年06月14日 23時48分27秒 | 山行速報(沢)

2022/6/1~2 片品川水系・栗原川ツバメ沢~ケヤキ沢下降

 


長雨が訪れる前に、ひとり沢旅。
もちろん、泊付の沢旅だ。

先日の笹ミキ沢で、たなさんが推していたのを思い出し行先は栗原川にした。
滝は概ね巻くこともでき、遡下降で周回も可能。

ヤレヤレな日々に、一息つかさせていただきましょうか。


栗原川林道の追貝側終点から松ゾリ沢先まで林道を歩く。
尾根沿いを少し下って左の尾根にトラバース。
急な尾根を下ると栗原川。

さすがに「川」だけあって、水量は多い。
と思っていたのだが、下山後に過去の記録と見比べると、この日の水量は多かったようだ。

河原を左に右に歩いていくと岩塚ノ滝
川幅一杯に流れを落とす。
ものすごい水量、そして瀑風だ。

先行の釣師が二人。
彼等の流儀も踏まえて、この後の先行を申し出るのも礼儀かと、しばらく待つ。
しかし、この飛沫舞う滝つぼでの一投に集中している様子。
ならばと静かに手前左岸から巻きに入る。

滝上からはナメが広がる。
とても広大で開放的な景観だ。
水量多く「気持ちよくペタペタと」といかないのが残念だ。

右岸に石垣を見る。
大正時代、足尾銅山の木材供給地として栄えた源公平集落の跡だそうだ。

 

 

源公ノ滝を程よく快適に越え、その後もナメと容易な滝が断続する。
透明度の高い流れは川床のカラフルな瀬石たちを瑞々しく映し出し、深淵で爽やかなクリアブルーを発色する。
気分よく、ゆったりと歩く。

立ちはだかる岩壁にただならぬ雰囲気。
大膳ノ滝。
三段に滝を落とし、いずれも登攀可能とのこと。
手前、右岸のルンゼから巻きに入る。

ルンゼから左小尾根へ上がって滝場を巻く。
途中、右へと延びる踏み跡に従う。
すると石垣が散見。円覚址の一端に乗る。

石垣に導かれて尾根を越えると不動沢に掛かる円覚ノ滝上。
大膳ノ滝から始まるゴルジュ内に本流と不動沢を分けており、こちらは支流の不動沢ということになる。
滝上から懸垂下降で、ゴルジュに入り本流の5段の滝を登ることもできるのだが、ここはおとなしく難場はすべて巻く。

不動沢をしばらく遡行。
ガイドブックにあるピンクテープは見当たらず、少し行き過ぎてしまったが携帯アプリで確認、補正。
少し急な尾根を登るとどこからともなく踏み跡が現れ、コルを経て本流へと導いてくれる。

石楠花の尾根を下っていくと栗原川本流。
降り立った場所が幕場適地となっている。

さて、今日はここで一泊。
時間は正午を少し過ぎた頃。
ザックを下したなら、やることはたくさんある。


「今日は、好きに生きる」
その記念すべき時を宣言する
何ら掣肘なき、いまここで


焚火に、肴に、花陽浴。
沢旅の悦楽は幕場にあり、と言っても過言ではなかろう。
いやむしろ、必然だ。
発日、外辺、他火、給。旅はかくあるべし。

暮れゆく水辺で独り、無心にゆらぎと過ごす。
帳が降りると、水音と闇に包まれる。
孤独に震える夜があるなら、孤独を謳歌する夜があってもいい。


闇にゆらぐ、紅蓮華
爆ぜて粒子は天に舞う
底から見上げる、星の流れに


明けて、手早く朝食をとったら早めの出発。
午後は天候が崩れる予報。

ツバメ沢は時折、ナメが断続し小気味良い。
滝場は登るも良し、巻くも良し、だ。

いくつかの分岐は川床の低いほうへ行く。
林道が近くなると、ゴミを散見。
それを嘆いたところで解決はしない。
自分ができるのは、拾って持ち帰ることだけだろう。
これからも楽しめるように、できる範囲で。
前回の山行で学んだことだ。

前方に土管。林道だ。
土管をくぐって、林道に上がる。
くぐらなくても上がれるが、ここはオモシロそうな方へ。

林道をしばらく歩いて、林道分岐(ツバメ沢支線)
ここから、ケヤキ沢へと下降する。

このケヤキ沢が、また良い。
ナメに立ち止まり、森の木立を見上げると木漏れ日が溢れている。


沢ヤかな涼に吹かれながら
いきものたちの讃歌を茫然と浴びる
ただただ、石のように


10m滝は右岸巻き。
巻き道は明瞭。

最大のケヤキ沢ノ大滝は右岸を巻き上がり、ルンゼへ向けて懸垂下降となる。
30mロープで最初の懸垂。
降り立った場所に踏み跡とトラロープ。
少し巻き上がりすぎたみたい。

このルートが見いだせれば、ここから懸垂下降を始めることになる。
見回せば立ち木に巻かれた懸垂支点のスリングもある。

しかし、この支点を使うとルンゼに降り立つまで20m以上はありそう。
しかも途中で区切るにも立木がない。
ロープの長さが心配なので、大滝寄りの立ち木豊富な岩壁へと下る。

この巻きで3回の懸垂下降を要した。


滝下から見るケヤキ沢ノ大滝はこの沢の白眉。
岩壁に囲まれ落とす流れは圧巻だ。

この後現れるスリットゴルジュは、右岸左岸とも巻き下ることもできるようだが、
オモシロそうなので懸垂下降して通過する。

再びナメが現れると栗原川との出合。
初夏のような日差しに河原が照らされ、眩しかった。

 


時は云うほど永くない
漣も永遠じゃない
奔れ、放て


sak


↓ 栗原川ツバメ沢~ケヤキ沢下降の動画です

 


足尾・庚申川笹ミキ沢

2022年05月26日 09時35分54秒 | 山行速報(沢)

2022/5/15 足尾・庚申川笹ミキ沢

 

  * * * * * * * *

山を旅するボクの荷物はいつもリュックサックひとつ。
なんとなく使い続ける靴と着古した服を身にまとい、あちこちの山を旅してまわります。
木々に囲まれ深い呼吸をすれば心は穏やかになります。

流れの冷たさにはしゃいだり、無心に歩を進めたり。

その先の景色に思いを馳せてワクワクするときもあります。

冬が来ると雪を求めて北へと旅立ちます。
そして春になるとこうして沢に戻ってくるのです。

  * * * * * * * *

前夜、仕事を片付けたら一路、足尾へ。
道の駅で前泊。
時折、通り過ぎるバイクの爆音をもろともせず、眠りに落ちる。
体とメンタルの健康向上にとって睡眠は不可欠。
本能の生存戦略がいつでも私を眠らせる。
気が付けば静寂の朝だ。

朝食をとりながら車を走らせ、庚申山へと続く林道のゲート手前の駐車場へ。
ほどなく到着したisiさん。

その後僅かで、渓さん、たなさん、ポムチムさんが到着。
サイト主さんたちとのコラボ。
渓さんにお声掛けいただき、同行させていただくことになりました。

挨拶しながら身支度を整え出発。
最近の山行エピソードの話をしながら林道を行く。
そうこうしていると笹美木橋。
沢名は「笹見木澤」とあった。

橋の袂から沢床へ。
しばらくはゴーロ。
7ケ月ぶりの沢靴に足元を確かめながら歩く。

ふと前を見ると、ポムチムさんが河原に落ちていたゴミを拾い上げ、ザックにしまう姿が目に映る。
自然な所作。
いつも実践しているから、そういうふうに見えるのだろう。

渓への知識と情熱。そして、慈愛の精神。
見習わねば。

最初の滝場は深い釜の2m。
右岸巻き、水流右、左岸ヘツリ。
思い思いに取り付く。

しんがりを行くsakは、渓さんの選んだ水流右を行く。
左岸ヘツリが体も濡らさず定石かとも思ったが、程高いバランシーなヘツリを嫌ったルート選択。
水流への取付きに足場がないので腰上まで浸かり、飛沫を浴びながらの奮闘的なクライムになったが、
sakは沢初め、まず「沢の精霊」にご挨拶といったところだ。

2段大滝は右岸を巻き、落ち口に縦縞の岩模様がオモシロい。
いくつかの滝場は難なく越え、直瀑15mは右岸巻き。

沢は開けてしばらくゴーロ帯を行く。
標高1200mを超え左岸に大滝を見ると、再び滝場が現れる。

たなさんは絶妙なバランスで難場を越えていく。
探求心と自然を慈しむ感受性、滝を越えた時の笑顔(たまに変顔?)で周りを和ませてくれる姿。
そのコントラストが印象的だ。

ナメ滝6mは釜を泳ぐも良し、回り込んでも良し。水流左を行く。
取付きは腰まで。最初のハイステップが滑りやすいので要注意。


トイ状多段8m。
躊躇いなく渓さんが取り付く。
釜を右から回り込んで、滝を浴びながら左へトラバース。
激シャワーだ。

渓さん、漢だ。
漢気が溢れ過ぎるよ。

それをみて、「あららら、、、」と笑いながら盛り上がる、ポムチムさんとたなさん。
もちろん、信頼で紡がれた仲あってのことだ。

「いいチームだ」
三人合わせても、我々二人の年齢に満たない萌える息吹はどこから見ても眩しすぎた。


さて、sakとisiさんの我がチーム。
もちろん、チーム仲あってこそのアイコンタクトで右岸巻きとした。

いくつかの滝を越えると沢は開け、渓相は平凡となるが笹原と木立が美しい林となる。


  * * * * * * * *


羽化後のハルゼミに夏を予感。
ハルゼミは身体を乾燥させて、夜明けとともに旅立つのです。

左岸に湧き水を見つけました。
溢れる湧水はいつだって冷たくて、美味。

今しか存在しない場面があちこちに散らばっていて、それを拾い集める喜び。
そうして山を旅するボクらのリュックサックに、発見と喜びが溢れます。
沢には生命と季節の源があるような気がしてなりません。
だから、ボクは沢に戻ってくるのです。


  * * * * * * * *


生命と季節の実感。
湧き出る泉。
笹原の丘に美しい木々を見る。

ルーツは源にあり。
新緑が、そして萌える息吹がひときわ眩しかった。


◆THANKS!◆ (ご一緒させていただきました!)

・谷川渓さん  >>「けいちゃんねる!」へ  
・たなさん   >>「源流徘徊たなか」へ    
・ポムチムさん >>「ポムチムダイアリー」へ 

 


sak


↓庚申川・笹ミキ沢の様子を動画で!「山岳劇場」


↓谷川渓さんの「けいちゃんねる! 庚申川笹ミキ沢下山ライブ」

 


守門岳・大雲沢

2021年10月26日 17時34分33秒 | 山行速報(沢)

2021/10/15 守門岳・大雲沢

 

越後・守門岳に抱かれた大雲沢は、豪雪に磨かれた峡谷。
遅くまで雪渓が残り、前冬の降雪量によっては雪渓が消えないこともある。

日本登山大系によると、初めて発表された大雲沢の遡行記録が、ジャストsakの誕生日。
この時点で「行くしかないだろ」となったことは、言うまでもない。

そして、時空と流れを遡る沢旅に出かけるのだ。

前日、仕事をやっつけ北を目指す。
只見駅前で車中泊。
朝焼けの六十里越を行く。
新潟県に入ると、前方に裸山。

大白沢から、スキ-場を縫う道に入り、守門岳の登山口。
あらかじめ装備を着け、登山道を5分ほど行くと、布引ノ滝への道を分ける。

この道を10分ほど行き、右手の緩傾斜から小尾根を下降。
灌木を繋いでいくが、次第に急降下。最後は懸垂下降20mで川床に降りる。
上流も下流も側壁は立っているので、下降はここしかないといった風情。
そして深く刻み込まれた谷へと入る。

峡谷にあって、しばらくは河原歩き。
布引ノ滝で、滝行をしようかと思ったけど、さすがに寒いのでやめる。
とはいえこの後、「泳ぎ」の場面は幾度となく訪れるのだ。

最初の泳ぎポイントは左岸トラバ-スも可能なようだが、結構な高さのトラバ-スとなりそう。
安全策を取り、意を決して泳ぐ。
さすがに10月中旬ともなれば、まぁまぁ寒い。
滝は容易に登れる。

ゴルジュに現れる堰堤は釜が結構深くて、難儀した。
手足の置き場を探りながらシャワ-を被り続ける。
そのあとは、泳ぎ、攀じりの楽しい(けどちょっと寒い)沢登に興じることができる。

そして、小滝を越えると峡谷に掛かる雨滝の群れ。
神秘的な景観が広がる。

天から落つる、雫たち。
青空に、刹那輝く雫たち。
どれとして同じものはない。

峡谷はしばらく続く。
泳いで、へつり、巻いての懸垂下降。
そして、時に「ドボン」する。

ゴルジュ後半の8m滝が核心。
左バンドをトラバ-スするのだが、ここは慎重に偵察。
中段は岩がしっかりしてそうだが細かい。
上段は手足の置き場はあるけど、大変脆い。
双方とも中間支点は取れそうもない。

クライミングシュ-ズに履き替えて、上段を空身で行く。
充分テスティングしながら時間をかける。

滝上から荷揚げし、二段めの滝は水流左から。
最後の大岩は突き出たエッジを直登。

この難場を越えると、大雲沢三俣。
広い河原の前方に直瀑が二筋。左にも窪はあるけど水流は見えない。
すばらしく解放的な景観で、青空がとても良く似合う。

三俣は左のガレを登り真ん中の本流へと進むが、草付の高巻が大変いやらしい。
チェ-ンスパイクがあればよいと思う。

茅ヶ崎山岳会さんの記録では上部は高巻きが多いようだったので、本流を放棄し登山道への最短ル-ト(支流)を遡ることにした。
しかし、さすがに登る人は少ないからだろう。沢筋は非常に脆く、ヌメる。
辟易として小尾根の薮に活路を見出すが、長時間の急傾斜ヤブコギとなった。

ここで、大変消耗し登山道まで2時間ほど(休憩含)もかかってしまった。
やはり、本流遡行がベストです。

登山道で身支度を整え、荷物をデポして守門岳を往復。
すっかり、ガスに覆われ眺めはゼロ。
下山もヘッデン確定の様相。

しかし、あの天から落つる雫たちに出逢えた充足感は色褪せない。

青空に、刹那輝く雫たち。
陰から陽へ。そしてまた、陰へを繰り返す。

その先に、未来が待っている。


sak

 

守門岳・大雲沢の様子を、動画配信↓


奥秩父・西のナメ沢

2020年11月18日 18時48分44秒 | 山行速報(沢)

2020/10/31 奥秩父・西のナメ沢


沢納に、秋彩の東沢。

選択は間違いなく、正しい。
事実、ゆらゆらとした流れに秋の彩りは美麗であった。

ただ一つを除いては-----。

 

早朝。まだ暗い、西沢渓谷駐車場。
endさんとヘッドランプを灯して笛吹川東沢を目指す。

アプロ-チは快適な平坦路で近況など話しながら行けば、あっという間だ。
西沢を分かち、鶏冠谷出合で渡渉。
東沢左岸の踏み後を丹念に拾って行くと次第に沢と交わるようになる。

東沢はナメが発達し、沢登の魅力にあふれている。
ゆらゆらとした流れ。
紅葉を愛でながらスラブ状の沢べりを行く。
もう、それだけで癒されるというものだ。

東のナメ沢は、どスラブのナメ床が4段300m。
圧巻だ。

そして、西のナメ沢出合で小休止。

本日の選択は西のナメ沢。
東沢から西のナメ沢を遡り、西沢へと下る。

笛吹川流域の秋を堪能し尽くす贅沢な計画。


~耳を傾けてごらん~

ナメ滝をサラサラと流れる、その水音に。
漣が繰り返し、繰り返し奏でるんだよ。
忙しい君に、心落ち着くその揺らぎを贈るよ。


~見上げてごらん~

淡水色の秋空を。
秋風に紅葉が舞い、やがてナメに流されていく。
心深き君に、己を顧みるその様を贈るよ。


~想像してごらん~

そのナメ滝を登る姿を。
漣を遡り、時として水濡れた落葉を踏む。
他でもない僕に、贈るよ。


~試してごらん~

アクアステルスのソ-ルを。
西のナメ沢では、滑って滑って登れないよ。
まさかの「ナメ滝全部巻き」を贈るよ。

次第に、苔むす流れになって癒されますが、依然ヌメヌメです。
「これじゃあ、ナメ滝ならぬ、ヌメ滝じゃん」などと、盛り上がりながら行くのも思い出深きものです。

尾根に上がって、石塔尾根を下る。
倒木の迷路を縫い尾根を外さないよう。

コロコロと下山しながら、思うことはただ一つ。
今日は滝を登った、そういう印象がない。

~思い出してごらん~

滝を登ったという記憶を。
季節の悪戯か。僕にその資質がなかったのか。
これからそこを目指すみんなに贈るよ。


と、いうことで。
ナメは、ほぼ巻きました。

(注)巻きも結構ハラハラします。


sak


巻機山・米子沢

2020年10月02日 12時14分37秒 | 山行速報(沢)

2020/9/15 巻機山・米子沢


集合時間、小雨舞う桜坂。
4日前の小三本沢と同じ感覚で寝袋を出る。
さて、どうしたものか。
沢から登山への計画変更も頭に浮かぶ。

そうこうしているうち、matさんと合流。
二人とも面識のない新入会のkudさんご夫妻を探す。
駐車場には車もまばらで、すぐに合流することができた。

1時間ほど出発を遅らせ天候の様子を見たい旨伝え、身づくろいや朝食を摂っているうちに鉛空だけ残して雨は止む。
こうなると、登山への計画変更は言い出し難い。
少しだけ装備を見直してお助け紐と捨て縄、カムをザックに押し込めた。

林道を少し歩いて、案内板に沿って米子沢。
広い河原に水流が一筋。
ここで水流があるということは、水量多めの予感。
今年の記録ではおおむね水量多し、とあった。おそらくは長梅雨の影響だろう。
出発も遅れたので、タイムキ-プにも気を配らねばならない。
少し急いで河原を詰める。

米子沢は「癒しの王道」ともいうべき人気ル-ト。
その白眉は後半のナメと草原にある。
なんとか後半天候が回復してくれればいいのだが。

kudさん夫妻はクライミング経験はあるが、沢は先月始めたばかり。
沢特有のヌメに苦戦したようだが、滝登りはソツなくこなしている。
matさんも入会1年経ち、安定して滝を登る姿に頼もしさを感じる。

序盤の滝場は概ね水流脇を行く。
念のため二か所ほどお助け紐を出し、一か所5mの懸垂下降。

トイ状滝は左クラックを半ばまで。
そこから水流を渡って右に移る場面が、水量多くちょっと怖い。
一段上がったところにカムとスリングで手がかりを作って後続通過。
このあたりが「ファイト!一発!」ってな感じだ。

それでもまだ滝場は続く。
特段困難な滝場こそないが、濡れたスラブ、草付きには用心が必要。

後半戦、大ナメ帯へと入る頃には、ガスは幾分晴れ、時折青空も覗く。
一気に開放的な景観が広がる。
ここでガスが晴れるなんて、私も神がかっているではないか。

内心そんなことを考えていると、matさんが訥々と語りだす。
matさんのおばあ様の言い伝えによると、”梅干しに念ずると晴れる!”ということらしい。
記録をしたためながら今になって思うと、天日干しした梅干しはその過程といい、形といい「お日様」の象徴的存在なのかもしれないなと合点もいく。

「だから私、さっきおにぎりの梅干しに祈ったんです」

私ごときが、神がかったなどおこがましい。
すでに、神の使いがここにいらしたのだ。(祈)

大ナメで小休止し、景色を堪能しながらゆっくりと歩く。
そのあとは滝場も規模が小さくなるので緊張する場面はない。
源流を右に左に進み、避難小屋への道には気づかずに詰めあがる。

水流も極めて細くなる頃、右岸の草原に乗る。

草原に佇み、大の字になって寝転ぶ。
草葉の間からは青空。
乾いた風が頬を撫でる。

心安らぐ時。
風になびく笹葉のサラサラという音が今は祝福の拍手にしか聞こえない。

去りがたきを去り、頂へ。
そして日常へと径を下る。


sak


南会津・小三本沢

2020年09月29日 11時21分11秒 | 山行速報(沢)

2020/9/11 南会津・小三本沢

 

集合時間。
小雨舞う、入叶津。
さて、どうしたものか。

すっきりしない天気予報に山行中止もよぎったが、前日に山行決行の決断をした。
そして当日。この天気に少し責任を感じつつ、茨城組と合流。

Kikさんは、「大丈夫だよぉ~。そのうち(雨が)あがっぺよぉ~」と言う。
根拠もなくそう言い切るのはいかがなものかと訝しながら、スマホで降雨レ-ダ-を見る。
どうやら、この小雨は1時間ほどで上がるらしい。
便利な時代だ。

いやしかし、だ。
kikさんの携帯は確かガラケ-のはず。
あなたの感覚は文明の利器をも超えているのか?
kikさん、あなたは最強なのか?

小三本沢は浅草岳の山頂近くにある天狗の庭という草原に突き上げる日帰りとしては少し長めの沢。
時間のロスは痛いが、初めから雨に濡れながら行くのも快くない。
ということで1時間遅れの出発。

メンバ-はkikさん、Kei2さん、endさん、sakの4人
sakにとっては久しぶりのパ-ティ-山行。
ゲ-トを過ぎてなお立派な国道を、近況など話しながらテクテク歩いて林道入り口。
その林道を終点まで詰め、小三本沢へ入渓。

下流部は崩壊が進み濁った沢とドロドロの泥壁に挟まれた流れを行く。
なんだか、温泉でも出ていそうだね、なんていいながら黙々と進む。

崩壊地を過ぎると途端に流れは澄み、魚影が走る。
ということで、それぞれに竿を出す。
そのころには青空が覗き、竿に止まる赤とんぼが秋の訪れを告げていた。

安沢出合で納竿し、大休止。
endさんが仕込んできたホットサンドを皆でいただく。
ホイルで包んだサンドウィッチを軽く焚火で炙るのだが、ほんのり温かくて美味。
さすがシェフ。(本業です)

ここからは遡行に専念。
途中の滝場は最初だけ軽く巻いて、あとは直登やへつりが可能。
なかなか、楽しめるところだ。

大滝は右岸の藪を巻く。
慣れていないとキツいかもしれない。

小三本沢は癒し系かなと思っていたけど、沢登のいろんなシチュエ-ションがコンパクトにまとまっている良渓。
kei2さんはいつか行きたい沢の一つだったらしい。
そういう山に同行できることは、なんだかとても嬉しいものだ。

大滝上からは源流の雰囲気漂う。
だけど、なかなか長い。

明らかに両岸が開けてくると天狗の庭はもうすぐ。
登山道には小さな木橋。
なんとか、天気も保ってくれた。
後続を迎えようと、振り返れば虹がかかっていた。

下山途中から雷雨。
雷鳴轟く中、キノコに余念のないkikさんがトンビマイタケを見つける。

なんだかんだ言って、やっぱりkikさんは最強なのかもしれない。


sak


洗戸川・洗淀沢~会津朝日岳

2020年09月13日 00時45分02秒 | 山行速報(沢)

2020/8/31-9/3 洗戸川・洗淀沢~会津朝日岳


会津駒・朝日岳山群は福島県の南西部と新潟県境に接し、深い森林と渓谷を抱く日本的情緒あふれる一大山地。
道路などの通行手段に乏しく、ダムにより隔離されたその不便さから本州の深部、最奥部ともいうべき隔絶感がある。
一般的な道路地図でもその広大さは測り知ることができよう。

それは、日本アルプスや近隣の会越・下田川内、奥利根に比べても見劣りしない。
際立つ観光地を有しない地味さから、その隔絶感は本州の中でも随一といえよう。

それらに魅了された南会津ファンも少なからずいて、もちろん私もその1人だ。

会津駒ケ岳~朝日岳の南北に連なる主脈や、ダム湖と藪に護られた村杉半島は残雪を利して歩いた。
山群の中心にある丸山岳は大幽西ノ沢を辿り、会津朝日岳は楢戸沢を遡り北壁スラブを経て山頂に至った。
高幽山と梵天岳の間にある瓢箪型の小さな草原に佇んだこともあった。

そしてなお、憧れたのが洗戸川・洗淀沢からの会津朝日岳だった。
白戸川流域の豊饒な渓の恵みを享けながら、会津朝日岳南壁に切れ込む流れを遡る。
主脈が山巓を繋ぐ旅なら、沢を繋ぎ歩いて自由闊達な山旅をしてみたい。
そう思ったのは、自然なことだったのかもしれない。

この径には何があるのだろうか。
自然の中で生きるには、常に孤独がつき纏う。
どう過ごすかは自由。
反面、自由というのは実に非情なものだ。

現実を突きつけられると、社会生活での緩い束縛が恋しくなる。
山行前夜、そんな葛藤をしながら奥只見シルバ-ラインを行く。


8/31

奥只見ダムから大鳥ダムへの道をペタペタと歩く。
途中いくつかの工事個所があるが、通過に困難はない。
懸念していたメジロアブもほぼ消えており、快適なアプロ-チ。

水色の上大鳥橋先、ほどなく右から白滝沢が出合う。
白滝沢は地図上短く見えるが、なかなかどうして水勢もあり白泡立つ流れ。
このあたりが名の由来だろうか。


いくつか滝場を有するが、特筆した困難はなく、やがて流れは森に消える。

藪に入るが密度は中以下。
上へ上へと詰めていくと1395峰。
良好な視界があれば村杉まで約2時間、のはずだった。

しかし、このころから雨。視界もない。
1395峰から北へ延びる緩やかな尾根を見出すのがポイントとなるのだが、この辺りは藪も深い。
幾たび進路探しで行きつ戻りつを繰り返した。
ようやく尾根の径型へとたどり着いたときには1時間半ほども経過していた。

小雨降る藪を行くのはなかなか心折れるものがある。
しかしここで折れたら、山ヤを名乗る資格はなかろう。
この後も奮戦続き。
眼鏡のレンズが外れ紛失するアクシデントも、残された自分の視力だけを頼りに藪を漕ぐ。

村杉岳は頑強なツゲとシャクナゲに囲まれた頂。
残雪の頂とはまるで違う表情だ。

ここから東へ進路をとる。
幸い雨も上がり、ぽっかりと開けた草付きに出ると沢床はその先にある。
上五沢(上小沢)源頭についたと思った。
しかし、ここが滝のクサ沢(滝の沢)源頭だったことを知るのは、しばらく後のこと。
もはや登り返すに躊躇うほど下ってから気づいたが、装備に不安はないのでそのまま下る。

切れ込んだ窪を丹念に下っていくとやがていくつかの沢筋を合わせ、30mほどの草付きスラブにわずか水の流れ。
45mロ‐プでは少し長さが足りないようであったので、藪を頼りに少し巻き下り、最後は懸垂下降20m。
その後現れる10m未満の滝場も懸垂下降とクライムダウンでやり過ごす。

瀑流帯と河原を繰り返し、中流の2段40m。
上段は左岸を懸垂下降。下段は左岸を小さく巻き下ることができた。
その後も断続的に瀑流帯と河原を繰り返す。

17時を過ぎ、地形図上の783mの右岸に1mほどの高さの段丘。
この先には30m大滝も控えていることから、今日の行動をここで終了。

藪の彷徨と想定外の滝場下りで釣りをする気にもなれず、楽しみは明日に持ち越し。
反面、奥深い山中の大滝群を拝することができたのはこれもまた運命だろう。

薪はわざわざ集めるまでもなく、そこここに渦高く溜まっている。
夜な夜な一人で豪勢な焚火。
もう、近づけないほどに火柱があがり、時に爆ぜていくつもの火の粉が漆黒の空に消えていく。
その光景をただぼんやりと眺めていた。


9/1

朝方はさすがに冷える。
谷はぼんやり靄っていたが、空は晴天の兆し。
すっかり燃え尽きた焚火跡の処理をし、引き続き、滝のクサ沢(滝の沢)を下降する。

やはり、河原の後に瀑流帯があり、時に懸垂下降。
30m大滝は、上部がひょんぐっていて、なかなか立派だ。
幸い右岸から巻き下るとができた。
この滝を過ぎるとメルガ股沢まで一投足だった。

メルガ股は悠然と流れる。
深い森に滔々と流れる様に魅了される。
本当はメルガ股から丸山岳を目指すのが、南会津の沢旅における王道といえよう。
いつの日かの再来を誓い流れを下る。

洗戸川出合は明るく開ける。白戸川左岸の段丘はこれまで幾人の幕場として利用されてきただろうか。
一休みして洗戸川(洗戸沢)に入る。

最初のゴルジュ状は腰まで浸かるが通過は容易。
後は河原が続き遡行は捗る。
芦安沢まで遡行に専念するなら2時間あればたどり着く。

しかし、今日の行程は待望の癒し区間。
釣りを堪能し、焚火の準備にも余念なく一日を終える予定。
幕場は芦安沢出合と思っていたが、すぐ手前の小沢出合の段丘を利用した。

幕場近くに沢わさびが群生していて味噌汁の具にしたり、炒めたり。
やっぱり沢登はこうでなきゃ。そんな一日を堪能した。


9/2

朝食を素早く済ませ、焚火跡を処理する。
今日が核心。
そういう緊張感がある。
幸い天気は保つようだが、午後の雷雨リスクは頭に入れておかねばなるまい。

 

芦安沢出合を過ぎると、廊下やゴルジュ状、ゴ-ロと河原が断続するが、ゴルジュ内の小滝に困難はない。
とはいえ春の雪崩や出水により渓相は激しく変わり、滝場通過の困難度は年々変わることだろう。

地形図では赤柴沢(前沢)出合に「岩幽」の表記があるが、それと思しき岩小屋などを見ることはできなかった。
赤柴沢(前沢)は穏やかに出合う。
いざという時のエスケ-プル-トとして、この先前進を拒まれたなら、ここに戻ってくることとなろう。

ここから本流は洗淀沢(荒淀沢)と名を変える。
加えて、今まで以上に両岸は立ってくる。
反面水量は減るため、平水なら胸まで浸かることはあっても泳ぐことはない。

釜を持った4m+1mの滝は右岸を巻く。
岩と草付きのミックスで、足場が外傾している。
空身で登り、荷揚げ。
その後は灌木を繋いで小さく巻き、最後は懸垂下降で沢に復帰した。

しばらく峡谷の河原が続くが、やがて蛇行し始め流れはさらに岩の中に食い込んでいく。
なかなか見ごたえのある景観だ。
そして前方には会津朝日岳の南壁。
しかも稜線の岩峰群は佇立し稜線に出てからも難儀させられそうに見える。

断続的に現われる小滝を丁寧にこなして行くと、右岸に大崩壊跡。
通過が躊躇われるが、素早く通過するため直前で休憩。

観察すると左岸に滝が見える。
どうやらここが「両門の滝」だった場所。
円形上のスラブ壁に左岸20m、右岸10mチョックストンであったらしいが、右岸10m滝は崩壊により埋もれているのだろう。
この滝の通過が核心の一つだったので、残念ではあったが少しホッとした。

大崩壊地のゴ-ロ帯を落石に気を配りながら行く。
急登に息が切れる。

登り切ると二俣。
左が本流のようだが、8m滝の落ち口がナメとなっていて手が出そうもない。
草付きを小さく巻くにも結構な傾斜で、草もか細い。
ここは右の容易な滝を登って中間尾根に立つ杉木まで高巻いていくことにした。

ちなみにこの右の流れは、さらに辿っていくと次第に傾斜を増して壁に吸収される。
はたして、会津朝日岳南壁は登られているのだろうか?

高巻きは30分ほど。
最後は懸垂下降で沢床に復帰。6m滝上に出た。

流れは小さくなるものの、沢の切れ込みはさらに激しくなり、小滝が続く。
気持ちよく直登で超えていくが、ヌメりもあるので慎重に行く。

前方に明らかなハング滝。
20mくらいあるだろうか。あそこが三俣だ。
一見し容易ならざる雰囲気が見て取れる。

左俣にチョックストンの15m、右俣にスラブ状の多段30m。
全体俯瞰すると、正面の20mハング滝よりも右俣スラブ滝を登って草付きバンドを辿り、正面滝上を目指した方が容易に思えた。

とはいえ、先人の記録では正面ハングの弱点を縫い、突破している。
右俣滝からの草付きスラブはオプションとして、正面ハング滝の観察に入る。

滝直下まで来る。
意外と登攀部分は高くなく10mくらい。
ホ-ルドも豊富に見えたので、ファ-ストトライ。

しかし岩がグズグズで全く信用できない。
水流右のルンゼ状を行き、水流裏めがけて左上するのだが、ホ-ルドが甘くて、左上への一歩が出ない。
一旦クライムダウン(というか、泥壁をずるずる下って)して空身で再トライ。

手と足の置き場には最大限注意を払うが、それでも信用ならないほどのボロさ。
むしろ、岩をぼろぼろ落としたら、ガバでも出来やしないかと思い試してみたが、余計に甘々ホ-ルドになってしまった。

どれくらい格闘しただろうか?
なんとか右足に体重を乗せ、滝裏へ。
そこからは少し安定した足場があるので、荷揚げ。

滝上への草付きも草の根をホ-ルドに体重分散しつつ登る。
草付きが苦手な人は大層難儀することだろう。

滝上からは単調な流れとなり、枝沢の流れが2~3流入する。
本流と思しき流れを遡るが、一か所5mほどのナメ滝を力づくで登ると滝は終了。
急角度の窪を息を切らしながら行くと尾根に出る。

しかし、ここからの尾根にも気が抜けない。
シャクナゲとツゲと松・杉の混成植生で、まるで意思を持ったかのように前進を阻止してくる。

ヤブコギは全身運動。やたらに腹が減る。
明日下山の目途が立ったので、予備食で凌ぎつつ八本歯の峰を超えていく。
しかし、ものすごい角度、そしてヤブコギだ。
落ちたら、北壁か南壁を転がり落ちて命はないだろう。
腕力がモノを言う登りだった。

やがて楢戸沢源頭の北壁スラブが見えてくると会津朝日岳の山頂はあとわずか。
山頂に出た時には、疲れ切った腕を力なく片方だけ挙げて記念撮影とした。


9/3

朝日岳避難小屋で快適な一夜を過ごし、あとは下るだけ。

下山後の車回収や着替えのタイミングなど考えながら、ボトボトと下ってゆく。
途中、会津朝日岳を目指す方々とすれ違いながら久しぶりの会話。

三吉ミチギの水場で大休止。
東シナ海を通過した台風の影響もあって、今日は日差しが一層強い。

水場からの樹幹越しに見る南会津の空は青く、そして深い。
いわなの里でタクシ-を呼ぼうか悩んだ末に、萬歳橋まで歩くことにした。

なぜ?と問われても困ってしまうが、半世紀を生きた男の酔狂とでも言っておく。

 


エピロ-グ

「虹が見えますよ」

只見線の車中、見知らぬ女性が声を掛けてくれた。
汚いザックを抱えた無頼者に声をかけるのは勇気が要っただろう。

でも、彼女は教えてくれたのだ。
このすばらしい、景観を。
このすばらしい、瞬間を。
そして人が喜びを分かち合う、素晴らしい世界を。

車窓後方にきれいな虹が見えた。


sak

 

8/31
奥只見ダム(4:49)-上大鳥橋(5:37)-白滝沢入渓(6:03)-1395峰(9:08)-村杉岳(12:57)-滝のクサ沢沢床(13:06)-幕場(17:32)

9/1
幕場(6:46)-メルガ股沢出合(7:51)-洗戸川出合(8:47)-<釣行>-芦安沢出合・幕場(12:43)

9/2
幕場(6:26)-赤柴沢出合(8:12)-両門の滝跡(11:03)-三俣(13:00)-稜線<八本歯>(15:05)-会津朝日岳(16:54)-朝日岳避難小屋(17:37)

9/3
避難小屋(6:28)-三吉ミチギ(8:15)-いわなの里(9:24)-白沢集落(10:22)-萬歳橋(11:24)