acc-j茨城 山岳会日記

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山でのあれこれ、便りにのせて


ただいま、acc-jでは新しい山の仲間を募集中です。

只見をめぐる沢旅(小戸沢そそろ沢~芦安沢~丸山岳)

2022年09月24日 12時57分43秒 | 山行速報(沢)

2022/9/14~17 只見をめぐる沢旅


只見に初めて訪れたのは、会津朝日から丸山岳を目指した時のことだった。
「南会津アルプス縦走路構想」が頓挫し、藪に帰りつつあるという「未開の縦走路」に興味を抱いた。

結局は猛烈な藪に歯が立たず途中敗退をするわけだが、今思えば、まるで実力と研究が足りていなかった。
しかし思い通りに行かなかった無念にこそ、価値はある。

あれから、23年。
歳月の流れの中には、苦難もあった。
それでも只見は只見であり続け、私はこの山と谷に癒しを求めた。


-只見をめぐる沢旅-


好きな場所は自分で決めていい。
素晴らしき哉、沢旅。

只見湖から小戸沢西の沢そそろ沢。山越えして洗戸川前沢下降。
芦安沢を詰めて、丸山岳。下降は葦ノ沢から大幽東ノ沢、そして黒谷。

独奏の四日間が始まる。

 

2022/9/14

起点は只見駅。
車中泊の後、只見湖尻・万代橋の右岸袂の園地へ。
田子倉ダムを見ながら小戸沢林道へと入る。

小戸沢は以前から興味があった。
黒谷川、楢戸と遡行した者なら、並び流れるそれが気にならないわけはない。
上流の「そそろ沢」というネーミングにも惹かれたし、記録も少なく琴線に触れた。

小戸沢林道終点で東と西に流れを分け、西の沢へ入る。
下流部は穏やかに流れる西の沢も中流部で峡谷となり時に胸まで浸かる。
いくつか滝場もあるが、空身+荷揚げなどを駆使すれば突破できる。

上流部に入ると10mほどの滝が現れ、巻きを模索するが結局は直登するほかなかった。
しばらくゴーロが続き、高倉沢との二俣は高倉沢のトイ状を突っ張りで越えてから、そそろ沢へとトラバースする。

そそろ沢に入ると側壁は高く角度のある草付き。
威圧感が重い。
峡谷ではあるが、沢床はゴーロが多く意外と捗る。
途中でトイ状10m滝。これは左岸のルンゼから高巻く。

そろそろ幕場を求めたいが、峡谷に安息の幕場は少ない。
雨がないとは思っても、万が一を考えると安易に物件を決められない。
左岸に突き出た大岩上に1畳ほどの台地を見つけて今宵はここに根を張る。

昨晩は1時間ほどの仮眠だったこともあり、睡魔に勝てそうもない。
食事を済ませてすぐに床に就く。
あとは、今宵の眠りに日常の悪夢が現れないことを祈るばかりだ。

 

2022/9/15

幕場からは巨石をいくつか超える。
とはいえ、突破に困難はない。
流れがS字に屈曲した所で雪渓の残骸を見る。

その少し先で洗戸川前沢に繋げるため高倉山東のコルへ向かう左岸の支流に入る。
本流にも興味はあったが、それはまた今度。
そそろ沢から長須が玉経由で東の沢へ繋げるものいいだろう。

支流は急登で高度を上げる。
懸念していた絶望的な滝はなく、直登でこなしていける。

最後は藪を強引に登りきると高倉山東のコル。
稜線の藪は濃く、石楠花やツゲなどを交えた厄介なヤブコギだ。
たまらず、降りやすそうな場所を探し、少しだけ移動したら前沢側へ下降開始。

沢筋までは灌木を繋げていくが、それでも懸垂下降を強いられる場面もある。
前沢の沢床に着くまでに4回、そこから洗戸川出合まで4回の懸垂を要した。

洗戸川と合流し2年前を思い出す。
ここからの下降、芦安沢出合までに悪場はない。
時に滝場はあるが、軽い巻きやヘツリでかわせる。
この安心感は大きい。

幕場は前回同様に芦安沢出合から少し下流の左岸、小沢出合の段丘に求めた。
このあたりには山葵があるのが嬉しい。
そうして、楽しい沢の一夜が始まるのである。

薪には炎を。
山葵には肴を。
そして月。

傍らに、国権てふ。
美味し。

 

2022/9/16

芦安沢は中流部から滝が続く。
絶望感を抱くようなものはなく、軽く巻いたり、直登も険しくもやさしさを湛える南会津らしさがそこある。

入山前夜の只見駅で、Nさんが数日前に芦安を遡ったとツイートで知った。
面識なき彼の痕跡を感じながら遡るのも、何かの縁か。
おそらくこれは偶然でないのだろう。

意外と早く水は枯れ、今宵の水を確保しておく。
沢型は続き、手入れの良くない登山道のよう。
次第に背後の視界が開けて、これまでの道程がよく見える。

深山に独り。
畏れ、和ぎ、そして胸は高鳴る。

詰めは草付きの急傾斜。
灌木目指してバイルを振るう。
丸山岳から北西の1736峰。さらに100mほど西の尾根に詰めあがる。
ここからが苦難の歩となる。

待ち受ける、密藪の刺客。
笹藪はもちろん、石楠花、栂、ナナカマド。
そして密藪に絡まる、つる性植物。

容易ならざるヤブコギに、私は23年前を思い出していた。
とかく力任せだった、あの時。
それは若さの証明でもあったか。

時を経て想うのは、それでも楽しかったと、充実した、高揚したと感じた山行後感。
思い通りに行かなかった無念にこそ、価値はあった。
それは、あのころの日常でも同じではなかったか。

今はどうだろう。
はたして、同じと言えるだろうか。
藪を漕ぎながら考える。
そして夜の帳が降りる頃、丸山岳に至る。

 

2022/9/17

朝の草原に立つ。
控えめに言って、最高だ。

山頂から葦ノ沢下降点までは時に藪を漕ぎ、草原を繋ぐ。
あたりを決めて笹藪に入ると沢型はすぐに現れる。

葦ノ沢の下降は、岩がとても滑るので要注意。
懸垂下降2回。

大幽東ノ沢はゆったりと流れる。
サブウリのゴルジュでは流木が流れをせき止めて、いくつも滝場と化している。
たしか、前回下降したのは6年前
その時の印象からずいぶん変わっている。
下降はともかく、水線遡上は困難そうだった。

只見をめぐる沢旅。
フィナーレはやはり黒谷の森だ。
この森は「歩く」のではない。
「味わう」のだ。

取水堰を通過し、水色の大幽橋をくぐればこの旅も終わる。
黒谷林道の車止めにデポしておいた自転車に跨る。

薄暮の黒谷川沿いを自転車で疾走する。
家々の窓に明かりが灯り始める。
ふんわり香る稲わらの匂いに、秋を感じる。

暗がりの国道を只見駅に向かう。
道すがら10月1日の只見線全線再開を祝う幟がはためいていた。

もう少しだ。
がんばれ、俺。
がんばれ、只見。


sak

 

↓ 動画も

 

 


桧枝岐川・黒檜沢左俣~三岩岳

2022年08月31日 22時21分47秒 | 山行速報(沢)

2022/8/22 桧枝岐川・黒檜沢左俣~三岩岳


街道を北へ。
闇に浮かぶ牛丼屋の看板に目が留まる。

そういや晩飯、食ってなかった。
余事に振り回される日々。
終業際、唐突に思い立ち、ついと山へと向かったからだ。

ふふふ。
今日の牛丼並盛は一味違うぜ。

何故って?
それはこれから、本然を見に行くからだよ。

小豆温泉スノーシェッド手前。
黒檜沢にかかる橋の袂から入渓。
どこから降りるのか迷ったが、右岸側を少し入ると踏み跡がうかがえる。

下部は白い花崗岩が美しい。
ナメに小ゴルジュ、滝場が断続。
このリズム感がいい。

小ゴルジュは、へつったり泳いだり。
滝は概ね、登ることができて楽しい。

直登が困難そうな7m滝は右岸を小さく巻く。
この上で登山道(現在は通行禁止)が横切っており、小休止。

アブはなく、赤蜻蛉が群遊。
山はもう秋の装いが始まっている。

ここからはゴーロが増えて下流部のリズム感は薄れる。
反面、正面に三岩の稜線が見えてきて開放的。
1:1の二俣は左に崩落跡をみて、右へ。

奥の二俣は左に多段滝で右がゴーロ。
ここは針路を左にとる。
多段滝の下段はどこでも登れる。
中段は水流沿いのヌメを回避し右を登る。
上部は容易。

小滝の連瀑をこなして露岩に顕著なチョックストン3連滝。
小休止してから左岸巻き。

しかしながら、この巻き。
露岩に草付き、急傾斜。足場が決まらず悪い。
ここで足を滑らせば、止まらない。
スパイクをもってこればよかったと思いながら、必死にバイルを振るう。

こんなときにフラッシュバックする日常。
得てして日常は残酷だ。
日々身体はすり減らされる。
そして、唐突に思い立ち、ついと山へと向かうのだ。

ここが消失点ならば、受け入れてもいい。
それが、運命なのだろう。

しかし、ここを乗り越えたなら。
それは「今と向き合え」という啓示か。

草付きから藪を取れたら一安心。
灌木帯をトラバースして、最後は15mほど懸垂下降。

ここからも滝場は続くが、いずれも登ることができる。
最上流部は沢筋が幾重にも分岐する。
目指すは、地形図・三ツ岩のすぐ脇にある「草原マーク」。

水流は消え、沢筋が草叢に吸収される。
そしてたどり着く源頭。

三岩岳の本然はここにあった。
源頭に広がる草原。

赤蜻蛉が舞い、雲は流れる。
そして、金光花の群落が一斉に揺れる。
夏と秋の間に。
ただひとつ、私だけが異質だった。

日常の余事は、誰しも溜息モノだ。
だが、自己本然の姿はどうであったか。


行く手にはヤブコギが待っている。
うん。これだよ。
これがなきゃ、だな。

ふふふ。
今の俺は一味違うぜ。

 

sak


↓動画


◆ルート軌跡


実川・赤倉沢~花沼湿原~硫黄沢下降

2022年07月08日 07時13分42秒 | 山行速報(沢)

2022/6/28~29 実川・赤倉沢~花沼湿原~硫黄沢下降


今、自分に足りないのは、アレだ。
きっとそうに違いない。
確信的な思い込みから、行動に至るまでにそう時間はかからなかった。

今を生きるために、様々な人生訓や名言に納得してみたり、疑問を感じたり。
とかく日常は悩ましく、解は多様だ。

脳裏に浮かぶ南会津。
それが確信に変わる。

ひと気のない滋味溢れる場所を選ぶ。
そして独り自由を嗜むのだ。

七入から林道を行く。
実川林道は国道からすぐのところで、チェーンのゲートがある。
数年前までこのゲートに鍵はなく、車で矢櫃沢の先まで入れたようだが現在では鍵がかかっている。
広大な七入駐車場に車をおいて歩きだす。
すると、ゲートから1キロほどのところで崩落が起きていた。
鍵をつけたことに納得。

林道は途中で登り(左)、下り(右)に分かれる。
下に行くと実川に降りることができるが、その先に堰堤が見える。
それを嫌って、登りの林道へと進む。

赤安沢出合先の緩斜面から藪を漕いで入渓。
実川を遡る。
しばらくは平凡な流れ。

右岸が崩落した赤茶岩の滝から、滝とナメが現れ始める。
滝場は直登したり、小さく巻いたり。
1か所だけ泳いで水流左スラブに取り付いた。
実川の一番面白いところが、この辺りに凝縮されている。

流れが穏やかになると硫黄沢出合。
硫黄沢は水が少し白濁している。

この辺りは平坦地が多く、少しだけ硫黄沢に入った右岸台地が草原状。
近くの小沢で水もとれるので極上の幕場だ。
フカフカで気持ちの良い場所に天幕を張る。

沢旅はミニマリズム。
ザックで担ぎあげた道具たちで一夜を過ごす。
足りないものは自分で何とかするのも、また楽し。

自由時間。
あとはアレして、コレをする。

癒しの揺らぎに眠気を誘われ、うたた寝。
否、したたか酔いがまわったか。

鹿の鳴き声で目が覚めた。
すっかり闇に包まれた森の河原で意識を失ったかのように寝ているのだから、鹿も驚いたことだろう。
薪をくべ直し、寝床に潜る。

鳥のさえずりとともに起床。
昨夜、炊いた白米を雑炊にして食す。

幕装備はデポして、赤倉沢を遡る。
赤倉沢はすぐに二俣。
右俣を行くが、倒木が多くすっきりしない。
所々で水流脇を登るが、ヌメに注意が必要。

源流の雰囲気が満ちるころ、辺りは針葉樹で覆われる。
俊立する針葉樹が底知れぬ奥行きを演出する森は、まるで異界の淵。

倒木を床に幼木がひしめく。
混沌する生と死。
ゆっくりと未来が紡がれている。


硫黄沢左俣の源流を渡ると、もうすぐだ。

今、自分に足りないと確信した、アレ。
そう、湿原。
正確に表現するなら「人知れずひっそりと佇む湿原で惚ける時間」だ。
そして目指した花沼湿原。

森の只中にポッカリと開けた空間。
大きすぎない、こじんまりとしたところがまたイイ。

池に映る空が青い。
小さく、可憐な花が風に小さく揺れる。
遠くで蛙が何か言っている。
その言葉が解ったら楽しいだろうな、と思う。

水面に映る、青が沁みていく。


花沼湿原から西進。
いくつかの窪を渡って、硫黄沢本流へと下る。
赤茶けた川床。
いくつか滝場は出てくるが、クライムダウンと巻き下りでやり過ごす。
1か所、外傾した岩をクライムダウンする巻き下りが悪かった。

途中、コ字型の流程のショートカットルート(コル)を確認。
幕場まで下り、撤収を終えたら硫黄沢を登り返してショートカットに入る。
実川まで下って、対岸の実川林道終点へと登り返すが、結構な密藪。
おそらくはどこかに踏み跡もあるのだろう。
林道に出たら、あとは余韻を楽しみながら七入を目指す。


今を生きるために。
自分の足で歩く。


sak


↓山行動画

◆山行の軌跡

 


片品川水系・栗原川ツバメ沢~ケヤキ沢下降

2022年06月14日 23時48分27秒 | 山行速報(沢)

2022/6/1~2 片品川水系・栗原川ツバメ沢~ケヤキ沢下降

 


長雨が訪れる前に、ひとり沢旅。
もちろん、泊付の沢旅だ。

先日の笹ミキ沢で、たなさんが推していたのを思い出し行先は栗原川にした。
滝は概ね巻くこともでき、遡下降で周回も可能。

ヤレヤレな日々に、一息つかさせていただきましょうか。


栗原川林道の追貝側終点から松ゾリ沢先まで林道を歩く。
尾根沿いを少し下って左の尾根にトラバース。
急な尾根を下ると栗原川。

さすがに「川」だけあって、水量は多い。
と思っていたのだが、下山後に過去の記録と見比べると、この日の水量は多かったようだ。

河原を左に右に歩いていくと岩塚ノ滝
川幅一杯に流れを落とす。
ものすごい水量、そして瀑風だ。

先行の釣師が二人。
彼等の流儀も踏まえて、この後の先行を申し出るのも礼儀かと、しばらく待つ。
しかし、この飛沫舞う滝つぼでの一投に集中している様子。
ならばと静かに手前左岸から巻きに入る。

滝上からはナメが広がる。
とても広大で開放的な景観だ。
水量多く「気持ちよくペタペタと」といかないのが残念だ。

右岸に石垣を見る。
大正時代、足尾銅山の木材供給地として栄えた源公平集落の跡だそうだ。

 

 

源公ノ滝を程よく快適に越え、その後もナメと容易な滝が断続する。
透明度の高い流れは川床のカラフルな瀬石たちを瑞々しく映し出し、深淵で爽やかなクリアブルーを発色する。
気分よく、ゆったりと歩く。

立ちはだかる岩壁にただならぬ雰囲気。
大膳ノ滝。
三段に滝を落とし、いずれも登攀可能とのこと。
手前、右岸のルンゼから巻きに入る。

ルンゼから左小尾根へ上がって滝場を巻く。
途中、右へと延びる踏み跡に従う。
すると石垣が散見。円覚址の一端に乗る。

石垣に導かれて尾根を越えると不動沢に掛かる円覚ノ滝上。
大膳ノ滝から始まるゴルジュ内に本流と不動沢を分けており、こちらは支流の不動沢ということになる。
滝上から懸垂下降で、ゴルジュに入り本流の5段の滝を登ることもできるのだが、ここはおとなしく難場はすべて巻く。

不動沢をしばらく遡行。
ガイドブックにあるピンクテープは見当たらず、少し行き過ぎてしまったが携帯アプリで確認、補正。
少し急な尾根を登るとどこからともなく踏み跡が現れ、コルを経て本流へと導いてくれる。

石楠花の尾根を下っていくと栗原川本流。
降り立った場所が幕場適地となっている。

さて、今日はここで一泊。
時間は正午を少し過ぎた頃。
ザックを下したなら、やることはたくさんある。


「今日は、好きに生きる」
その記念すべき時を宣言する
何ら掣肘なき、いまここで


焚火に、肴に、花陽浴。
沢旅の悦楽は幕場にあり、と言っても過言ではなかろう。
いやむしろ、必然だ。
発日、外辺、他火、給。旅はかくあるべし。

暮れゆく水辺で独り、無心にゆらぎと過ごす。
帳が降りると、水音と闇に包まれる。
孤独に震える夜があるなら、孤独を謳歌する夜があってもいい。


闇にゆらぐ、紅蓮華
爆ぜて粒子は天に舞う
底から見上げる、星の流れに


明けて、手早く朝食をとったら早めの出発。
午後は天候が崩れる予報。

ツバメ沢は時折、ナメが断続し小気味良い。
滝場は登るも良し、巻くも良し、だ。

いくつかの分岐は川床の低いほうへ行く。
林道が近くなると、ゴミを散見。
それを嘆いたところで解決はしない。
自分ができるのは、拾って持ち帰ることだけだろう。
これからも楽しめるように、できる範囲で。
前回の山行で学んだことだ。

前方に土管。林道だ。
土管をくぐって、林道に上がる。
くぐらなくても上がれるが、ここはオモシロそうな方へ。

林道をしばらく歩いて、林道分岐(ツバメ沢支線)
ここから、ケヤキ沢へと下降する。

このケヤキ沢が、また良い。
ナメに立ち止まり、森の木立を見上げると木漏れ日が溢れている。


沢ヤかな涼に吹かれながら
いきものたちの讃歌を茫然と浴びる
ただただ、石のように


10m滝は右岸巻き。
巻き道は明瞭。

最大のケヤキ沢ノ大滝は右岸を巻き上がり、ルンゼへ向けて懸垂下降となる。
30mロープで最初の懸垂。
降り立った場所に踏み跡とトラロープ。
少し巻き上がりすぎたみたい。

このルートが見いだせれば、ここから懸垂下降を始めることになる。
見回せば立ち木に巻かれた懸垂支点のスリングもある。

しかし、この支点を使うとルンゼに降り立つまで20m以上はありそう。
しかも途中で区切るにも立木がない。
ロープの長さが心配なので、大滝寄りの立ち木豊富な岩壁へと下る。

この巻きで3回の懸垂下降を要した。


滝下から見るケヤキ沢ノ大滝はこの沢の白眉。
岩壁に囲まれ落とす流れは圧巻だ。

この後現れるスリットゴルジュは、右岸左岸とも巻き下ることもできるようだが、
オモシロそうなので懸垂下降して通過する。

再びナメが現れると栗原川との出合。
初夏のような日差しに河原が照らされ、眩しかった。

 


時は云うほど永くない
漣も永遠じゃない
奔れ、放て


sak


↓ 栗原川ツバメ沢~ケヤキ沢下降の動画です

 


足尾・庚申川笹ミキ沢

2022年05月26日 09時35分54秒 | 山行速報(沢)

2022/5/15 足尾・庚申川笹ミキ沢

 

  * * * * * * * *

山を旅するボクの荷物はいつもリュックサックひとつ。
なんとなく使い続ける靴と着古した服を身にまとい、あちこちの山を旅してまわります。
木々に囲まれ深い呼吸をすれば心は穏やかになります。

流れの冷たさにはしゃいだり、無心に歩を進めたり。

その先の景色に思いを馳せてワクワクするときもあります。

冬が来ると雪を求めて北へと旅立ちます。
そして春になるとこうして沢に戻ってくるのです。

  * * * * * * * *

前夜、仕事を片付けたら一路、足尾へ。
道の駅で前泊。
時折、通り過ぎるバイクの爆音をもろともせず、眠りに落ちる。
体とメンタルの健康向上にとって睡眠は不可欠。
本能の生存戦略がいつでも私を眠らせる。
気が付けば静寂の朝だ。

朝食をとりながら車を走らせ、庚申山へと続く林道のゲート手前の駐車場へ。
ほどなく到着したisiさん。

その後僅かで、渓さん、たなさん、ポムチムさんが到着。
サイト主さんたちとのコラボ。
渓さんにお声掛けいただき、同行させていただくことになりました。

挨拶しながら身支度を整え出発。
最近の山行エピソードの話をしながら林道を行く。
そうこうしていると笹美木橋。
沢名は「笹見木澤」とあった。

橋の袂から沢床へ。
しばらくはゴーロ。
7ケ月ぶりの沢靴に足元を確かめながら歩く。

ふと前を見ると、ポムチムさんが河原に落ちていたゴミを拾い上げ、ザックにしまう姿が目に映る。
自然な所作。
いつも実践しているから、そういうふうに見えるのだろう。

渓への知識と情熱。そして、慈愛の精神。
見習わねば。

最初の滝場は深い釜の2m。
右岸巻き、水流右、左岸ヘツリ。
思い思いに取り付く。

しんがりを行くsakは、渓さんの選んだ水流右を行く。
左岸ヘツリが体も濡らさず定石かとも思ったが、程高いバランシーなヘツリを嫌ったルート選択。
水流への取付きに足場がないので腰上まで浸かり、飛沫を浴びながらの奮闘的なクライムになったが、
sakは沢初め、まず「沢の精霊」にご挨拶といったところだ。

2段大滝は右岸を巻き、落ち口に縦縞の岩模様がオモシロい。
いくつかの滝場は難なく越え、直瀑15mは右岸巻き。

沢は開けてしばらくゴーロ帯を行く。
標高1200mを超え左岸に大滝を見ると、再び滝場が現れる。

たなさんは絶妙なバランスで難場を越えていく。
探求心と自然を慈しむ感受性、滝を越えた時の笑顔(たまに変顔?)で周りを和ませてくれる姿。
そのコントラストが印象的だ。

ナメ滝6mは釜を泳ぐも良し、回り込んでも良し。水流左を行く。
取付きは腰まで。最初のハイステップが滑りやすいので要注意。


トイ状多段8m。
躊躇いなく渓さんが取り付く。
釜を右から回り込んで、滝を浴びながら左へトラバース。
激シャワーだ。

渓さん、漢だ。
漢気が溢れ過ぎるよ。

それをみて、「あららら、、、」と笑いながら盛り上がる、ポムチムさんとたなさん。
もちろん、信頼で紡がれた仲あってのことだ。

「いいチームだ」
三人合わせても、我々二人の年齢に満たない萌える息吹はどこから見ても眩しすぎた。


さて、sakとisiさんの我がチーム。
もちろん、チーム仲あってこそのアイコンタクトで右岸巻きとした。

いくつかの滝を越えると沢は開け、渓相は平凡となるが笹原と木立が美しい林となる。


  * * * * * * * *


羽化後のハルゼミに夏を予感。
ハルゼミは身体を乾燥させて、夜明けとともに旅立つのです。

左岸に湧き水を見つけました。
溢れる湧水はいつだって冷たくて、美味。

今しか存在しない場面があちこちに散らばっていて、それを拾い集める喜び。
そうして山を旅するボクらのリュックサックに、発見と喜びが溢れます。
沢には生命と季節の源があるような気がしてなりません。
だから、ボクは沢に戻ってくるのです。


  * * * * * * * *


生命と季節の実感。
湧き出る泉。
笹原の丘に美しい木々を見る。

ルーツは源にあり。
新緑が、そして萌える息吹がひときわ眩しかった。


◆THANKS!◆ (ご一緒させていただきました!)

・谷川渓さん  >>「けいちゃんねる!」へ  
・たなさん   >>「源流徘徊たなか」へ    
・ポムチムさん >>「ポムチムダイアリー」へ 

 


sak


↓庚申川・笹ミキ沢の様子を動画で!「山岳劇場」


↓谷川渓さんの「けいちゃんねる! 庚申川笹ミキ沢下山ライブ」

 


後立山連峰・五竜岳

2022年05月25日 00時17分08秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2022/5/2~4 後立山連峰・五竜岳


「快挙」と言ってもいいのではないだろうか。
それは山頂のことでなく、困難なルートのことでもなく、日常での出来事。
このゴールデンな日々に3連休。
平日休を生業とする身としては、本心では社会をドロップアウトするくらいの覚悟だが、
そんな様子は一切見せずに「休みますが、何か?」と努めて冷静を装った結果だ。

案の定、幾許かのチクリと来る一言は頂戴したが、
かの”一休さん”のように「気にしない気にしない、一休み一休み(三連休三連休)」。
と唱えるのだった、が。。。


【登山あるある①】

山行計画時は強気でイケイケだったにもかかわらず、直前に少しだけいろんなことが不安になったりもする。

...「あるある」は続く


2022/5/2

五竜テレキャビン・とおみ駅の駐車場でisiさんと合流。
始発は8:15なので、のんびり準備。
今日は西遠見あたりまでの行程。
ゴンドラとリフトを乗り継いで、あっという間に標高は1640m。

滑走屋に交じって山屋は数名。
みなここで準備をして、やおら登り始める。

雲はあるものの、概ね晴れ。
昨日5cmくらいの積雪があったようだが、歩行に困難はないのでツボ足で。
最初の急登で体温は上昇しヤッケは脱ぐ。
時に夏道を歩く。

非常に距離の長いイメージのあった遠見尾根だが、淡々と脳内BGMをリフレインして進めば意外と距離は感じない。

【登山あるある②】

淡々と歩いていると、いずこからか脳内にBGMが降り注ぎリフレインする。
それは名曲よりもCMなどの覚えやすいメロディーラインであることが多く、まんまと企業戦略にハマっている自分を時に呪う。

(今日の脳内BGM:「釣り具のキャス〇ィング」のテーマ

...「あるある」は続く

西遠見に着くころ、次第に雪が舞う。
五竜や鹿島槍、唐松もガスに巻かれて、稜線は暴風の予感。
展望よりも「耐風」を考慮した場所にブロックを積み上げ、幕を張る。
あとは、水を作りながらの入山祝い。(祝杯)

さて、懸念は明日のルートだ。
計画ではGⅡとG0を2泊3日で予定していたが、直前にフェイスブックのACMLで少雪の情報。
GⅡのABCルンゼの雪は繋がっていないとのこと。
藪ルンゼ登攀が予想され、加えて今日の降雪。
すでに雪は本降りで10cmほど積もっているだろうか。

「藪のスカ雪登攀かぁ」
加えて取付きまでの雪崩も気になるところ。
いずれにしろ、明日朝(4時)の天気で判断することにした。

早めの飯を平らげたら、やることもないので昨夜の寝不足を解消するべく寝袋に潜る。
幸い、頭上を轟々と唸る強風にもテントを揺らされることはなかった。


2022/5/3

4時に起床。
雪はまだ降り続いている。

棒ラーメンの朝食をとりながら、天気予報を確認。
どうやら降雪は朝まで続き、強風は昼まで残るらしい。
今日のGⅡは諦め、一般道で五竜岳へ昼頃到着の予定とし、7時まで二度寝。

再度目覚めると、風は強いものの概ね青空が覗いている。
身支度を整え、歩き出す。
昨日から30㎝ほどの積雪があったようだが、すでにトレースがある。
よく見れば、白岳の上部に単独行者。

白岳の登りの前にアイゼンを装着。有難くトレースを追う。
またも、脳内BGMはあの曲だった。

白岳を踏んで、五竜山荘。
昨夜ここで幕営したパーティーが待機しており、軽くあいさつを交わす。

流石に稜線は風が強く、休憩も体温を下げるだけなのでそのままゆっくりと歩を進める。
夏道の鎖場あたりで単独行者に追いつく。
トレースの御礼とともに、先行を申し出る。

このあたりは、岩雪ミックスでちょっと悪い。
雪に埋もれた岩をまさぐりながら急場を登る。
雪が安定してきたところで、雪面に手を突き刺してホールドを得ていたら雪中に岩が隠れていて右手中指を痛打してしまった。
その後は悪場もなく雪稜を進む。

「あそこが山頂か?」と思っていた頂の向こうにさらなる高みが見えたりして、さながら「登山あるある」だ。


【登山あるある③】

目前に見える頂は、大抵「山頂の手前」。
それは山頂を踏むために試されているかのよう。まさに試練である。

...「あるある」は続く


山頂。
ほぼ予定通りの11:57。
いつしか風は弱まり、展望も開ける。
それにしても初めての頂というのは、やはりいいものだ。

往路を戻る途中、G0の確認。
やはり、藪パインは必至。
五竜山荘を風よけにして休憩。

モチベーションというのは何事においても事の成否を左右する。
山頂を後に、満足感を得てしまったのもあったのだと思う。
状態の良くないバリエーションに取り組む意欲がみるみる下がっていったのは、自分でもわかった。
それは音を立てて急降下していくかのようだった。

【登山あるある④】

「早く下山したい病」
下界には様々な欲望を満たす誘惑と仕事の不安を払拭できる安心感がある。
私はそれに屈したのだ、そう思う。

...「あるある」は続く

幕場に戻ったのは、14時半。
ここまでの道中で、G0を諦め登山日程の終了を決めていた。
ゴンドラの最終は16時半。急げばなんとかなるか・・・。

その様子を見かねてか、isiさんは「今日はここで一杯やれたら最高ですよね」と私を諫めた。
何故に事を急いていたのか、憑き物が落ちた思いだった。

西遠見の平坦地には本日入山のテントがいくつも張られていた。
皆、幕場の整地作業と宴の準備で大わらわ。
楽しげな会話がそこここから聞こえる。
昨夜の雪で湿っていた我がテントもすでに乾燥し快適な一夜を過ごせるだろう。

今「なぜ山に~」と問われたら、語る言葉が見つからない。


【登山あるある⑤】~今宵は”登山あるある”がいっぱい~

・山屋は「なぜ山に」と問われた時のことを考え準備している
 ⇒いつ誰に聞かれてもいいように。少しカッコイイ事言いたくなるよね。

・パートナーとの道具談議で物欲にスイッチが入る
 ⇒isiさんと道具談議。いつも物欲に駆られます。間違いなくアレはポチるわ。

・テント内で足が攣る
 ⇒疲労もあってか手狭なテント内で体育座りしてると、足攣りはよく起きます。
  「漢方68番」が特効薬。

・携帯の電池残量を気にしすぎて、山アプリ(GPSログ)のリスタートを入れ忘れる
 ⇒帰幕後に気づいたりして、徒労感に苛まれる。

・「昨夜は熟睡してましたね・・・」といわれて自覚がない
 ⇒昨夜は「うつらうつら」して、あんまり寝た気がしないな、と思っていたのですが。


...「あるある」はまだ続く

 

2022/5/4

好天。
昨日入山のパーティーはすでに五竜に向けて出立。
静かなテント村。
G0を取りやめた我々は下山するのみだ。

備忘録のため、取付きへの下降路確認にしばし出かける。
あれがABCルンゼ、あれがG0。
Bルンゼ取付きに1パーティ-。

それを眺めて二人、しばらく立ち尽くした。
トライしなかった理由はいくつかあった。
冷静なる判断と言えば聞こえはいいが、言葉にすれば安っぽさだけが残った。

沈黙で呼応するパートナー。
その気遣いが沁みる。

今、私にできるのはGⅡ取付の彼らにエールを送ることだけだった。

 


幕場を後に遠見尾根をゴンドラ・アルプス平駅へと向かう。
滑走屋でにぎわうゲレンデを歩く。
「鯉のぼり」を掲げて滑走する姿もある。
皆、心から楽しんでいた。


【登山あるある⑥】

帰りのザックは、なぜか少し重く感じる。
食料を消費した分、軽いはずなんだけどなぁ。
 ※個人的なその時の心持ちと思い込みです


「登山あるある」はあなたの傍にも。
それは「登山でよくあること」かもしれませんが、その場・その時の想いは唯一無二のものとなるでしょう。

 

追伸

【sakの”山行記あるある”】

1.山行への想いが強すぎて、前置きが長くなってしまう(笑)
2.未来志向の教訓や格言が大好きなので、「ポジティブ説教」が色濃い(汗)
3.執筆中は脳内BGMがここでもリフレインする


sak


↓五竜岳の様子を動画で

 

 

 

 

 


越後・池ノ塔~郡界尾根~越後駒ケ岳

2022年05月12日 22時50分25秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2022/4/28 池ノ塔~郡界尾根~越後駒ケ岳

 

普段は手の出ない奥深い山巓でも残雪を利すれば、山旅の自由度は広がる。
これぞ春山の醍醐味といってもいい。

地形図を眺めれば創造の山並みが手招きをする。
マイナーな場所ほど行ってみたくなるのは、もはや病か。
否、そこは探求心だと言っておこう。

点と点を繋げばそれはもう、壮大な計画。
いつかきっとの想いに栞を挟み、生業に縛られながらも等高線の連なりに思いを馳せるのだ。

池ノ塔は越後駒ケ岳から北西に連なる郡界尾根の中ほどに位置する尖塔。
佐梨川雪山沢を詰めた頂がそれである。
アオリとの間には、地元称「ブラック台地」といわれる平坦地がポッカリと開ける。
ここで一泊も楽しそうだと大湯から駒の湯、池ノ塔尾根を辿っての計画を立ててみたものの、初日は生憎の雨で彼の地での夜はお預け。
しからばと水無川側から残雪に埋まるセンノ沢を遡り、池ノ塔~越後駒ケ岳を日帰りで目指す。

荒山集落の先を歩き始めたのは夜明け前。
雪の残る水無川添いの道をしばらく歩く。
途中、森林公園を見送り小規模なデブリを越える。
前方にカグラ滝が轟音をたてながら落ちるのを望むとセンノ沢はもうすぐだ。

センノ沢は出合でこそ雪は割れているが、下部は概ね雪に埋まっていた。
中流で右岸側に白沫の流れを見る。
本流は谷を埋める雪渓と考えてそれを詰めるが、どうやらこちらは池ノ塔へ直接詰めあがることに途中で気付く。

これからの針路補正は相当の労力を費やさねばならぬという思いから、そのまま雪を繋いで標高1200m。
ここからは池ノ塔まで藪を漕ぐ。

久しぶりのヤブコギに少しばかり興奮しながらの登行。
とはいっても、石楠花などのヤブコギ天敵が現れ始めるとウンザリしてくる。
そして、池ノ塔西峰。
真っ白なブラック台地を見下ろして次こそはと、彼の地での一夜を想う。

西峰から池ノ塔本峰まではわずかに踏まれているようで藪は濃くない。
次の無名ピークまでは何とか歩けるが、そこから先の郡界尾根は屈強な藪と闘うことになる。
時に空中戦を強いられながらも、左には佐梨川に切れ落ちる断崖が待っている。
これは、自分との闘いといえよう。

それでも郡界尾根と越後駒に挟まれた雪のオツルミズの景観に癒され、
断崖の基に昨年歩いた鉱山道の姿を見ると感慨深いものがある。

最低鞍部の少し手前でいよいよ藪は頑強となり、もはやどうしたらいいのか途方に暮れるレベル。
このままでは今日の下山もままならなくなるので、オツルミズへと下降する。
雪渓は概ね安定しており、踏み抜きもないが越後駒側からの雪崩を警戒し常に郡界尾根寄りを歩く。

途中、雪崩の危険のない緩やかな斜面から流れる支沢で水補給。
担いだ水分はすでに底をついていたので、これは生き返った。

フキギを過ぎると越後駒へと突き上げる雄大な谷を右に見送る
この先、雪が途切れて流れが顔を出す。
右岸を少々ヤブコギしてこれをやり過ごすとオツルミズ源頭。

 

雨流線が谷を求めて、雪面に艶めかしい曲線を描く。


雲は流れ、世界中に羽ばたいていく。


空と白銀の狭間に、陽は小さな陰を落とす。

そして歩く。
この星の片隅を歩く。

下山はグシガハナ経由の極楽尾根。
急下降に加えて雪と夏道のミックス。
登山道とはいえ、気は抜けない。

十二平に着く頃、闇に捕まる。
闇に包まれた大デブリ帯はまるで迷路。
突然進路が激流に削られ、断崖となっていたりする。
落ちれば、雪融水に流され10分とは保たないだろう。
ここは慎重に。
白息の向こうに、星が瞬いていた。

果たせなかった場所での一夜を想う。
傍らに花陽浴の吟醸。
そうしてまた等高線の連なりに思いを馳せるのだ。


sak

 

↓ 山行の様子を動画で


南会津・七ケ岳

2022年04月08日 18時07分17秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2022/3月~4月 南会津・七ケ岳


一路、北へ。

陸羽街道から塩原を抜けて、山王峠を越えると南会津。
道の駅を左に見て、山菜ときのこの販売所を通り過ぎる。
そして会津鉄道の高架橋をくぐると「あぁ、来たな」と、いつも思う。

その南会津の前衛に鎮座するのが七ケ岳。
いつかきっとと思う反面、気軽にハイクできるだろうと今まで選から外れていた。

雪の多い季節ならば面白そうだと記録を漁るが意外と積雪期の七峰縦走はネットで見つからなかった。

というわけで、出来上がった当初プランが、
”針生~黒森沢登山口~高倉山北尾根~高倉山~七ケ岳~下岳~下岳登山口~針生”
というもの。
さて、いかがなものか。

 

【針生~黒森沢登山口~高倉山北尾根(中退)】

針生からのファーストトライは前日のルート工作(林道ラッセル)もむなしく、降雪と強風で時間切れ中退。

多雪の年、どうやら1日で抜けるのは厳しそうだ。
同行してくれた、kikさん、matさんには感謝。

再訪を予感しながら、次なる機会に望みを繋げる。


【針生~黒森沢登山口~高倉山北尾根~高倉山~七ケ岳~黒森沢登山口~針生】

ファーストトライから7日。トレースが残っていることを期待したが、会津田島では直前にドカ雪が降って、むしろ雪深い林道に苦慮。
スキー板で脛まで潜るのだから、ツボ足だったら恐ろしいレベルだ。
前回、針生から2時間半で着いた登山口まで、結局4時間もかかってしまった。

スキー板をデポして、わかんに履き替え高倉山北尾根に乗るが、膝ラッセル。
なかなかに心を砕く深雪である。

こういう時は、アレだ。
「こんなの当たり前だと思い込んで行く」作戦だ。

端から見ると苦行なんだけど、「むしろこれが当たり前」なので大丈夫です。
的なアレです。
まぁ、どちらかというと辛いんですけど、なんか山やってる気がして気分は高揚します。

雪庇の発達した急登をいくつか超えると次第に視界が広がる。
こうして眺めると南会津の山々は起伏がなだらかだ。
隣に見える大平山までの稜線も廊下のように雪庇を連ねていて、楽しそうだ。

などと思って後に調べてみると、やはり歩いている方はいるのです。
しかし、ものすごい記録だ。

◆会津田島~舟鼻山~駒止湿原~黒岩山~七ケ岳の記録(3泊4日:55.6km)

とにかく、こんなの当たり前だと思い込んで行くと次第に傾斜は緩む。

こんもりとした雪原に一歩踏み出す。
そうして足跡は伸びていく。

ひとつひとつの積み重ねは、確実に頂へと近づいていく。
一方で、消失点に向かっていることもまた事実である。
頂は通過点でしかない。

刻まれてきた足跡はそのほとんどが衆目に触れることもなくやがて消える。
ただ、振り返って胸を張ればいい。
こんなの当たり前だ、と。

時間は16時過ぎ。翌日は予備日。
このままワンビバークで縦走することも考えたが、視界にはレンズ雲。
強風の予感に恐れをなして黒森沢コースを下山。

途中、闇に捕まった上にわかんのベルトが切れるアクシデント。
結局ビバークすることになるのだが、これでよかったのだと自分に折り合いをつけた。


【たかつえスキー場~七ケ岳~下岳~古内登山口~会津山村道場駅】

4月4日
明らかに3月と比べると里の積雪量が違う。というか、ほぼなくなっている。
雪庇の崩壊を懸念しながら車を走らせる。

道の駅:番屋で朝を迎えるが、あいにくの小雨模様。気温は1℃。
慌てても仕方ないので、次なる計画の偵察として桧枝岐まで車を走らせる。

そうこうしているうちに雨が上がる。
この雨の切れ間を待っていた。

今シーズンの営業を終えた、たかつえスキー場のゲレンデを直登してゲレンデトップ、高倉山まで。
山頂に着くころ、また雲に巻かれる。しかしここまでくれば雨でなく雪。気温も氷点下だ。
冷たい雨より、雪の方が組みし易い。

高倉山から七ケ岳は一投足。
とはいえ、視界が利かないからコンパスで方角セットは忘れずに。
懸念していた雪庇は一部切れ切れになりながらもなんとかつなげられた。

雪庇の立体的な造形とクラックの切れ目。
それを慎重に選びながら歩く、このシチュエーションがいい。

下岳を過ぎると時に夏道が現れる。
道標を頻繁に見かける頃に縦走路は終わり針生と古内の分岐点。
古内への下りは道を外してしまったが、問題なく林道に出る。

林道開通記念碑からは地形図にある破線、南の沢筋を行く。
渡渉が一度あったが、靴をぬらさず飛び石で通過。
あとは林道らしき雪道を行くと舗装路に出る。

事前にデポした自転車を使って舗装路を快適に下る。会津山村道場駅で一休み。
当初、たかつえまで自転車で車回収をしようと考えていたが、16インチの折り畳み自転車では1%の勾配ですら大苦戦。
中山峠の8%勾配など到底歯が立ちそうもない。
なんとか会津高原駅までたどり着き、駅に自転車を置いてデマンドタクシ-(たかつえまで900円!)のお世話になるのであった。

山々に遊ぶことを選んだ自由。
成功も、失敗も、充実も、後悔も、苦楽も。
何があろうとも、そんなの当たり前だ。

選ぶ自由がある。
その価値を忘れてはならない。


sak

 

 


常念岳東尾根

2022年03月31日 20時56分42秒 | 山行速報(雪山・アイス)

2022/3/30 常念岳東尾根


闇にゲートが浮かぶ。
この先、様々な出来事があるだろう。
灯りをともして、ゲートを後にする。

常念岳は安曇野に居を構えた中学校の友人がイチ押しの山だ。
家から見える山姿が実に良いらしい。
同窓会でその話を聞き、一度は行かねばならない山の一つだった。

舗装路をしばらく歩いて、東尾根の取り付き。
鉄塔巡視路となっており、しばらく歩いやすい道が続く。
高架鉄塔の下をくぐって、笹原の踏み跡を行く。
明瞭な踏み跡で不安はない。

残雪とともに藪が濃くなってくると道は隠されるものの目印と先行のトレースが先を導いてくれる。
時に膝まで踏み抜くこともしばしばだが、雪の締まった3月にトレースのある登行は気が楽だ。

反面、泊装備の重荷に体が悲鳴を上げ始める。
予定では尾根上部2100mで幕を張り、明日の登頂を目指す計画。
しかし、明日の天気は下り坂。
しからばと、1900mに泊装備をデポし本日登頂にシフトチェンジ。

軽荷となってから登行は捗り、森林限界。
前常念が美しい。

晴天、微風。トレースは明瞭。
時に股下まで踏み抜くこともあるのだが、腰深までハマっている先行のトレースを見るにつけ、
心の中で「ありがとう」と唱えてその穴は避けて歩く。

前常念への登りでは重荷登行の疲労も影響してか息が切れ始める。

こういう時は、アレだ。
「電池切れにならないように行く」作戦だ。

端から見るとバテているように見えるのだけれど、「問題ない」程度にバテているだけなので大丈夫です。
的なアレです。
まぁ、どちらかというとバテてるんですけどね(汗)

 

前常念まで岩場が二か所。
右から巻くように通過する。
一か所、急斜面トラバースからの直上でピッケルを使う。

ようやくたどり着いた前常念から常念岳はまだまだ遠く見えるが、これまでの登りに比べたら傾斜は緩い。
それ以上に奥に広がる景色は素晴らしく、ビクトリーロードといえよう。

 

「これが北アルプスです」
山頂からの景観は雄弁に語っていた。

 

 

自分の足で、一歩づつ。
信じ続けた結果。

 

山頂を後に下山は登りと反比例して早い。
こうなると、下界の様々な誘惑が脳裏に過る。
ということで、泊装備を回収して下山。

途中、闇につかまりヘッドライトを灯すも、踏み跡を拾えるところまでは高度を下げられたので不安はない。

遠く、安曇野の街の明かりが揺れる。

 

闇に始まり、闇に終わる山行だった。
加えて、使わなかった無駄な荷を担いだ徒労感は否めない。

それでも一歩一歩の積み重ねは重厚だ。

 

無限の闇に吞まれぬように。

決めるのは自分だ。

 

sak

 


南会津・田代山~帝釈山

2021年12月31日 15時23分13秒 | 山行速報(登山・ハイキング)

2021/11/16 南会津・田代山~帝釈山


はじまりのやま


私がはじめて「死」を意識したのが、田代山だった。

さしたる難所もない、山頂が湿原となっている山だ。
当時、趣味としていた四輪駆動車での林道探索の延長で、本格的な登山の経験も装備もないまま、風雨を忍て登山を決行した末の出来事であった。
季節は6月。
とはいえ、全身を濡らし風に叩かれれば、山を知っている者なら事態は想像に容易い。
下山後の温泉は非常に熱く、それゆえ「生」を実感し、そして安堵した。

一方でそんな体験をしたにもかかわらず、登山に傾倒したもの事実だった。

なぜか。

11月。
季節こそ違うが、今の自分にそれを問いたい。
そして、南会津・田代山に向かった。


晩秋の朝。

猿倉登山口はすでに冬支度。
トイレも閉鎖され案内板も雪囲いされていた。

寒いくらいの身なりで歩き出す。
しばらく歩けば、体温も上がってちょうどいい。

あの時は風雨の中、ビニールポンチョで歩いていた。
それで風雨をしのげるはずもなく、すぐに全身濡れてしまう。
さらに歩行ペースなど考えずにガムシャラに登った。
そういうのが「登山」だと思っていた。

今日は樹幹からこぼれる朝陽が眩しい。
そして静かだ。

やがて、木道が現れると小田代。
視界も開けてテーブルマウンテン田代山の端縁を見上げる。
木道には霜が降り、滑らぬように慎重に行く。

田代山は山頂が湿原となっている。
もはや積雪を待つばかりの草木。
反時計回りの木道を行けば池塘は氷で覆われていた。

あの日、私の山に対する観念が変わった。
山頂草原一面に揺れるワタスゲ。
息を呑んだ。
未だ見ぬ自然への憧憬が動き始めた瞬間だった。

その先に、何があるのか。
もっと知りたいと思った。

全身は濡れぼそり喘ぎながらも、その興奮のままに帝釈山への道を進んだ。
今思えば、衝動に突き動かされただけの行動だ。

そして帝釈山に着くころ、その衝動は後悔に変わっていた。

雨は強まり、風に叩かれた。
足元はおぼつかなくなり、時に転倒。
泥水に膝をつきながら、「死」を意識した。

なにもかもが足りていなかった。
知識も装備も判断も。
幸運だったのは、そんな状況で道を外すことがなかったことだろう。

復路、避難小屋に立ち寄った。
今思い返すと、食料は何を持っていたのか思いだせない。

ひとつ覚えているのは、登山前に勇んで用意していたガスとコンロで湯を沸かしたことだ。
反面、味噌汁を持参したつもりが、持っていたのは味噌別売の「フリ-ズドライ野菜」。
なんともちぐはぐな、情けない話だ。

白湯に乾燥野菜。
一口啜る。
わずかな野菜の旨味が私を救った。
あたたかな食事は偉大だ。

あの時の湯気の匂いを思いつつ、避難小屋前。
扉は冬囲いが施されていた。
囲いを外せば、入ることはできるのだが、立ち寄ることはしなかった。
自分の黒歴史ともいえる、この扉を開くのが少し怖かったのかもしれない。

郷愁に駆られ、帝釈山までの往復。
今となってはなんてことない道で「死」を意識した自分を振り返る。

帝釈山で流れ込むガスに雪の予感。
そういえば昨夜のラジオでも北から寒気が入り、天気は不安定と報じていた。
復路を急ぐが、田代山湿原はすでにガスの中。

下山途中に霰が降り出す。
クマザサの葉を叩く霰降る音は、疎らな拍手のようだ。
若かりし彼に、今の私はどう映るだろうか。
おそらくあの日、彼と私が出会い、手を差し伸べていたら、彼は山に惹かれることはなかっただろう。

その後、彼は山に惹かれ、情熱を傾けた。
そして現在。

彼は山で死を突きつけられ、初めて自分の「生」への執着を知った。
私は、それを実感するために山を続けてきた。

落葉松の落葉が林道を染める。
オレンジロードを走りながら想う。

生きていることの実感。

安堵に浸った温泉は、あの日と変わらず熱かった。


-はじまりのやま-

あの日の出来事。
追憶の山を訪れて。

sak