acc-j茨城 山岳会日記

acc-j茨城
山でのあれこれ、便りにのせて


ただいま、acc-jでは新しい山の仲間を募集中です。

裏妙義・木戸壁右カンテ

2023年11月10日 20時39分46秒 | 山行速報(アルパイン)


2023/10/22 裏妙義・木戸壁右カンテ

 

木戸壁右カンテは、ホ-ルドもフリクションも支点も充実した岩場
リ-ドやツルベを実戦形式で行うことができ、岩峰に囲まれた景観も素晴らしい

skmさん、azmさんとは岩壁での初手合わせ
パートナーとの息合わせに丁度いいルートである
とはいえ、自身も久しぶりの岩壁なので心して臨む

国民宿舎跡から40分ほどで木戸壁の取付き
装備をつけ初クライミングのazmさんにいくつかレクチャ-を行う

先行パーティーを見送ったら、skmさんリードで登攀開始

1ピッチ目は体が硬くなりがちなので、慎重に

セカンドはazmさん
急遽参加の初クライミング
クライミングシューズはなく登山靴での登攀だが、フォローなので度胸で乗り切ってもらう

ラストのsakは岩壁の感触を確かめながら行く
一方で硬くなった股関節に暗澹たる心境ではあったが、総じて楽しい登攀

2ピッチ目は短めで松の木のあるテラスまで

3ピッチ目がハイライト
右のカンテから高度感のある岩壁を直上
azmさんも夢中で登っている


-初めてのクライミング-

私の「初めて」はいつだったか
そして、どんなことを感じていたか
もはや、追憶の彼方ではっきりと覚えてはいない
それでも確かなのは「夢中だった」ということだ


4ピッチ目
手足の豊富な岩場を右上
大きなハングの基部が終了点

この先、左のルンゼを行けば木戸壁の頭だが、あまり登られてはいない
過去の記憶で言えば、支点もリスも少ない
信頼には足らない岩凸で支点を取りながら、慎重に登った記憶がある

ここで、一休み
と言いたいところではあったが、終了点はあまり広くない傾いた岩場
後続もあるため、速やかに下降に移る

いつもは50m1本で小刻みに同ルートを下降するのだが、今回は後続に被らないようロープを繋いで松の木テラスまで下る

懸念はロープの回収だが、悪い予感は的中する
ロープダウン後にどこかでスタックしたらしく全く引けない
仕方がないので回収した50mを結んで登り返すが、途中後続パーティの方にスタックを解いてもらうことができた(多謝)

都合、3ピッチの懸垂下降で取付
トラブルはあったが、それもクライミングの一部
実体験の引き出しは多い方がいい

今日の出来事を振り返りながら、のんびりと下山
総じて皆、満たされた面持ち

それを見て、こちらも嬉しい
「ロープを結び合う」ということは相手に自分の命を預けること
一方的に頼るものではない

「互いに預ける」

登攀にはそういう意味があると、そう思う


sak


↓ 動画も

 


西上州・鹿岳一ノ岳南壁

2022年11月23日 11時55分10秒 | 山行速報(アルパイン)

時は巡り、たとえ道が変わったとしても魂は消えない。
そして、萌える。

鹿岳一ノ岳南壁を初めて知ったのは、2009年。
山登魂山岳会・鮎島さんの記録だ。

初出記録は「クライミングジャーナル2号」(1982年7月号)
富岡労山により拓かれ、”西上州岩場調査隊ルート”として発表されたとあった。


2022/11/12 西上州・鹿岳一ノ岳南壁


道の駅で合流して、南牧村鹿岳登山口(下高原)手前の駐車場へ。
立派なトイレがあり、すでに数台の車が止まっていた。

そこから少しだけ車道を歩いて、標に従い登山道へと入る。
杉林を30分ほど行くと、右手の樹幹越しに岩壁が見えてくる。
その基部目指して登山道を離れガレをトラバース。



岩壁基部には祠が二つあり、取付きはそこから20mくらい先で立木に水色のスリングが巻いてある。
そして被った岩壁にボルトラダー。

さらにその奥10mにメスねじアンカーがある。
偵察でボルト径も確認しており、これに持参のボルトを差し込んでいくことも検討していた。
しかし、不確定要素も否めないことから確実に上まで繋がっているリングボルトで登攀することにした。

とはいえ、状態は良くない。
3本目はリングの腐食がひどく、色褪せた3mmスリングが垂れている。
4.5本目はリングが飛んでいる。
しかし、それも想定内。
あとは踏ん切りがつくかどうかだ。


◆1P(sak)15m A1

3手目はリングに錆びが目立つものの、テスティングしてリングを使う。
4手目はリング欠損用ハンガ-(「PIKA」と刻印がある)をセット。
リング穴にステンレスカラビナを入れて外れ防止策とする。
5手目はリング穴にちぎれた金属片が詰まっていて外れ防止策が取れないので、件のハンガーを引っかけて祈るように立ちこむ。
スピーディーに6手目に支点をとって一安心。
そしてフォロー用に3mmスリングをセットしておく。
後は比較的状態のいい支点を繋いでリングボルトが3つ打たれたビレイステーション。
手数は10手と記憶。

◆2P(sak)8m Ⅳ-

ビレイステーションからトラバースして直上。
足場が脆いところもあるので要注意。
途中の立木下までトラバース。支点をとって、立ち木を手がかりに一段上がる。
フェイスをさらに直上し、テラスまで。
ここで、右からフリールートが合流する。

◆3P(sak)35m A1 Ⅳ-

左上の小ハングを人工で越える。
1手目は目の前にあるが2手目が見つからない。
ピナクル状の岩に上がって上の様子を窺うと小ハングを乗越した岩上にリングボルトとアングルハーケンが見える。
状態は悪くない。


2手目は完全にアブミにぶら下がる。
安定体制を保つには足が遠くて苦労した。

人工登攀は4手で終了。
スラブ状を行くとリングが3本。(A1後、ここまではⅢ)
本来、ここで切るのかもしれないけど、先に見えるリッジのテラスまで伸ばす。



リッジ手前は傾斜も増してきて、岩も所々で不安定。
支点もなく、脆岩ゾーンに入り込んでしまいハマりかける。
この辺りはルーファイによっては、苦労するのかもしれない。
ちなみにこのテラスに支点はない。(ハーケンで構築)

◆4P(isi)40m Ⅳ-

リッジを右上。
しかし、岩が脆く支点は灌木以外は少ない。
頭上にハング。途中でハーケンの連打がありここで切る。
ハーケンは錆がひどいので、キャメで補強。
グレード以上に悪さが際立つピッチ。

◆5P(sak)40m Ⅳ

右斜上するハング下のフェイスを右上。
岩は安定、支点も散見。
途中、支点に誘われ右のリッジへ回り込むが、最終的にフェイスに戻る。
フェイスへ復帰するトラバースでA0。

この辺はハング上に鳥(ハヤブサ?)の営巣があって、フンが落ちてくるので要注意。
フェイス上部で再度右に回り込んで凹角を松の木右脇のテラスまで。
支点はないので、ハーケンとキャメで構築。

◆6P(isi)45m Ⅲ+

頂上まですっきりとしたフェイスが広がる。
比較的岩は安定しているが、時に浮岩もあるので要注意。
スタンス、ホールドは豊富。フリクションも抜群。
だけど、灌木以外に支点はなく、小さめのキャメ、ボールナッツ、ハーケンで支点構築。

◆7P(isi)40m Ⅳ

夕暮れを迎える。
日暮れまでにリードは上まで抜けておきたいので、登攀巧者のisiさんにリードを託す。
彼はオーダーに応えてくれて闇に巻かれる前にトップアウト。
流石だ。

岩は安定していて、ホールドスタンスも状態はいい。
しかし、残置なきリードは心理的タフさが要求される。
支点は小さめのカムデバイスでとれるが、ランナウトする場合は十分に注意したい。

ヘッデンを灯して、フォロー。
途中でロープがイワヒバにハマり、ザイルアップに苦労しているのがロープの動きでわかる。
日暮れに追われながらの登攀でも、パートナーは適宜カムで支点をとっていた。
寡黙な彼の冷静なる登攀に敬意を表す。

闇中の壁は高度感が薄れて大胆に行けるが、最後まで岩のテスティングに気を配る。
藪が出てきたら、実質登攀は終了。
isiさんと再会の挨拶。

あとは、一ノ岳の肩(展望場)まで10mくらいの藪岩歩き。
肩がらみでisiさんを迎えて握手。
パートナーに感謝。

しかし、時間がかかりすぎた。
慎重さは必要だが、遅延は大きなリスクだ。
支点構築などスピーディーに対処できないと厳しい。
反省。


前半、不安を覚える支点でのエイド。
後半は心理的なタフさを要求される登攀。
様々な要素を併せ持ったクライミング。
こういうのも悪くない。


山登魂山岳会・鮎島さんは、登攀を終えこう締めくくった。
「いい山登りの良し悪しの基準とはビビるかどうかだ」(黒部の怪人、和田城志氏による言葉)としたら、
今回のクライミングも間違いなく、「ビビったクライミング」=素晴らしいクライミング=「魂のクライミング」だったのです。


登攀後、互いの無事に安堵しながら暗闇をヘッデンで切り裂いて歩く。

時は巡り、たとえ道が変わったとしてもこの日は決して変わらない。 
そこに、言葉は要らない。


sak

 


動画も

 

 


金山沢鉱山道・赤岩第一スラブ

2021年11月05日 14時40分30秒 | 山行速報(アルパイン)

2021/10/30 金山沢鉱山道・赤岩第一スラブ


遺構と 敬意と 登攀と


行動食にチョコレート。
甘みとコク。香り、とろける食感。
ひとたび口にすれば体中に広がる幸せ。
何より、わずかな苦みがいい。


越後駒ヶ岳の北面、佐梨川の源流にある金山沢奥壁。
高距は六百~七百メートルある大岩壁。
スラブを主体とした岩壁群でプロテクションの乏しいルートは、グレ-ド以上の充実感を伴うものとなろう。
加えて、この大岩壁の只中にはかつての銅試掘の遺構が残り、今も当時を偲ぶ場所となっている。

遺構×登攀

魅力的なキーワ-ドが相乗し「いつかきっと」の場所であった。

偵察行も兼ね、奥壁に通ずる鉱山道が横切る「赤岩スラブ」の計画にisiさんが乗ってくれた。
彼も金山沢奥壁に興味があったと聞く。
赤岩第一スラブを選んだのは、山岳会の先輩Nさんの名が初出記録として日本登山大系に記されていたからだ。

遺構×敬意×登攀

時代を遡る山旅。
今の自分に何を感じることができるだろうか。

駒の湯第二駐車場から、林道を歩く。
朝露の草を掻き分け行くので、早々に濡鼠。

桑ノ木沢出合から沢沿を行きかけるが、isiさんの進言もあり右岸道を行く。
沢沿いも可能らしいが、沢靴がいいだろう。

径は草に隠れて気を使う。
近年、地元山岳会諸氏により鉱山道の刈払いが実施されていると聞くが、病禍による影響で近年は行われていないのかもしれない。
いづれにしても、この踏み跡は大変な労苦により成り立っており、敬意を表したい。

やがて、径は桑ノ木沢を横断し家ノ串尾根へ取付く。
尾根を回り込むと山の神。
金山沢、雪山沢が見えてくる。

ここからは尾根の中腹を緩く登っていく。
足元は草木に隠れ、加えて金山沢側は急激に落ち込んでいるため滑落には十分注意。

岩を穿った水平歩道が現れ、この岩壁が「赤岩スラブ」だ。
眼下、吸い込まれるように金山沢。
「これは、滑ったら止まらないね」というのが一目瞭然。
慎重に足元を探り、行く先に奥壁を垣間見ながら進む。

第三スラブ、第二スラブを通過し、第一スラブ。
各々の要所にスラブ名が記されている。

第一スラブを通過し水場ルンゼ脇の広場(以下、広場)で小休止したら、金山台地まで偵察。
顕著に並ぶ五つのスラブ。

その中間部に走る鉱山道。そして坑口。
いやはや、よくあの場所を穿つ気になったな、と先人の偉業を称えたい。

往路を戻り、広場で装備を付けたら第一スラブを俯瞰。
取り付きから、白いS字のように見える岩を目指していくことにする。

懸念は下山路だが、広場から上の尾根に↑マークを発見。
おそらく、鉱山道から郡界尾根までの踏み跡というのがこれであろう。
家ノ串尾根まで詰めたらこの支尾根を下ろうということで落ち着いた。

所々、濡れてはいるがヤスリのようなザラザラ岩にフリクションは良く効く。
概ねどこでも登れそうではあるが、支点はない。
見立て通りS字白岩を目指すと、しっかりしたボルトがあった。
その先でロープいっぱいとなり、灌木で支点をとるが先ほどのボルトでとった方がプロテクションとしては安全だ。

2ピッチ目はisiさん。
傾斜も少し立ってきて、面白い。
途中ハーケンで支点をとりながら行き、終了点は2個目のボルト。

3ピッチ目は次第に傾斜も緩んできて中間バンド。
ハ-ケン連打で支点とする。

そこからは岩と草付きのミックスを尾根に向かうが、ヌルベタで結構悪い。
と、不意に〇のペイント。よく見ると↑ペイントも散見。
どうやら、広場からの踏み跡は支尾根から水場ルンゼ(中間バンド)を横切って第一ルンゼ上の尾根に続くらしい。

ここで登攀は終了し、ロープを解く。
ペイントに従って下山するが、際どい場面も少なくない。

広場まで戻って装備を解きながら、これからのことなど話していると山道に人影。
ガイドさんをはじめ数名のパーティ-で、今日は金山台地で幕とし、明日は坑道探索をするという。
なかなか魅力的なプランだなと思い、後続の方々を待つ間、ガイドさんに坑道探索の事や金山沢奥壁第四スラブについてなど聞く。
大変詳しく教えていただき、楽しい寸暇を過ごす。

パ-ティ-を見送り、我々も下山にかかる。
たとえ数人でも人の通過した後の道は往路よりだいぶ歩きやすくなっている。
しかし、足元には要注意。
明るいうちの下山だから良いものの、ヘッデン下山となれば恐ろしいレベルだ。

桑ノ木沢で小休止。

チョコレートを口にする。
体中に広がる幸せと、わずかな苦み。

日常の些事は、時に苦い。
苦悩。それは重力のようなもの。
私たちは、それに抗い次の一手を延ばしていく。


昔も今も。

 


-後日談-

ネット検索していると、当日お会いしたガイドさんは篠原達郎さんでした。(HPガイドスケジュ-ルで判明)
どこかで会った方のような気がしていたのですが、その時には気づきませんでした。

篠原さんとは2020年末に南伊豆(吉田海岸・魔王)で前後していて、「山の世界は意外と狭い」を実感。
勝手に親近感を抱くのでした。

またどこかで、お会いするかもしれないですね。

おわり

 

 

↓動画

越後・金山沢鉱山道~赤岩第一スラブ


sak


南伊豆・吉田海岸 魔王

2020年12月24日 16時30分49秒 | 山行速報(アルパイン)

2020/12/14 南伊豆・吉田海岸 魔王 

 

もちろん、山は好きだが、海も好きだ。
山でスカイラインを望むように、海には水平線がある。
僕らは境界の彼方に何を見るのか。

目指すはシ-クリフ。
ワクワクが止まらないのは言うまでもない。

走れ。
闇中を、南へ。

前夜、吉田海岸まで入る。
集合場所は想像したよりずいぶん狭い駐車スペ-ス(2~3台)。
往路を戻って近くの道の駅で集合し、車1台乗り合わせとして現地入りすることにした。


翌朝、車はすでに2台。突当りのトイレ脇駐車スペ-スは埋まっていた。
昨夜は見いだせなかったが、すこし手前の路側帯にも数台停められそう。
平日であることに安堵。

ちなみに1台はクライミングが目的みたい。
急いで競走みたいになるのも、なんだかなぁ。。。という気がしたのでノンビリ準備。

パ-トナ-はisiさん。
遠路、南伊豆の提案に快く乗ってくれた。
有難き幸せ。

海を正面に右の岬を越えようと、ログ風建物前の広場を行くが小川に阻まれ、結局は堤防に出て岬のコルを目指す。
先行が進んだ経路からコル左寄りを目指したが、自然と右寄り、最低コルへの踏み後に入ってしまう。
そこからは”沢ヤ”的なカンで草付きとボロルンゼを下る。(ちょっと怖い)

※帰りに分かったことだが、コル左寄り(岬側)を超えた先にはフィックスが張ってあるので安全に下れる。

大小、岩の転がる海岸を行く。
まるで沢登りのようだが、フリクションが効いて小気味良く歩ける。

今日は、2018年にガイドの木村・山下両氏が開拓した4ピッチル-ト「魔王」の登攀が目的だ。

取り付きで準備をしながら先行を見送る。
打ち寄せる波が激しく、時に波しぶきが風に舞う。
大潮なので、潮位も高いのだろう。

先行リ-ドが2ピッチ目をスタ-トしてから我々も出発。


攀じれ。
岩壁を、空へ。


1ピッチ:sak
緩傾斜のスラブから草付きバンドを伝って立ち木まで。
スラブ上部にボルトがある。
草付きバンドは問題なく歩けるが、念のため岩溝にカムで支点をとる。


2ピッチ:isi
草付きバンドを進み、右のフェイスを登る。
傾斜は立っているけど、カチやポケットがたくさんあってフリクションもバチ効き。
岩登りは良いですなぁ。って感じ。
フェイスの後は岩バンドを左へ。凹角を右上して2ピッチ目は終了。


3ピッチ:sak
凹角右のフェイスを行く。
2ピンとったら、凹角を跨いで左の岩溝に入る。
岩溝を登ると小テラス。
先行がここで切って、先を譲ってくれた。

その先のスラブ状カンテはホ-ルドが細かく少し難しい。
立木のある大きなテラスで切る。


4ピッチ:isi
ル-トの核心。コ-ナ-スラブ。
2ピンまで足が少なく怖い。
無念のA0。

その先、スラブを右へトラバ-ス。
手足が細かくペタシペタシとごまかしながら。
本来はその先も繋げるのだが、核心だけ短く切ろうというのは事前打ち合わせ通り。


5ピッチ:sak
コ-ナ-から左クラックを登りスラブを直上。
容易だが岩も柔らかいので慎重に。
念のためカムと灌木を数ケ所使う。
稜線の灌木でフォロ-を迎え、終了。


輝く海原は美しく、風が強い。


飛べ。
海原を、彼方へ。

自由な風に不自由を恵んでやるよ。
潮風に手綱をつけてやれ。

空と海の境界を見に行こうぜ。
欲しいものなんか後でいい。
必要なのはそんなんじゃない。


藪の稜線をしばらく下る。
コルあたりで踏み後がなくなったので、周辺を探すと捨て縄があった。

ここから懸垂下降。
50m×3ピッチとガイドブックにあったが、1ピッチ目は25mほどで次のラッペルステ-ション。
明らかに下の立木まで届くと思ったが、念のためここで切る。

結果としてこれが正解。

稜線の灌木は海風に鍛えられ枝張りが濃く、強靭。

そのためロープ回収時に、灌木でスタック。
isiさんに登り返してもらい、無事回収。
やれやれ。

結局、立木を繋いで4ピッチの懸垂下降。
スタ-ト地点に戻って大休止。

白波立つ海岸で装備をしまいながら、これからの話をする。

憧れはいくつもある。
日常と折り合いをつけながら、次を目指す。
このくらいの自由が丁度いい。


行け。
この道を、未来へ。


sak


裏妙義・木戸壁右カンテ

2020年12月22日 16時42分53秒 | 山行速報(アルパイン)

2020/12/3 裏妙義・木戸壁右カンテ


11月から始まったクライミングロ-ドはまだまだ続く。
先週の太刀岡山の苦難を乗り越えて、今日は癒しの岩登り。

多少の脆さはあるけど、ホ-ルドもフリクションも支点も充実したここは初めてのマルチに丁度いい練習場。
リ-ドやツルベを実戦形式で試すこともできる。

miyさん、kumさんは新人同士でツルベ登攀。
tosさんはマルチピッチの練習メイン。sakと組んでセカンドで。


-クライミングメモ①-

「パ-ティ-を組む」ということは相手に自分の命を預けること。
決して一方的に信頼を寄せるものではありません。
互いに預けるのです。心して臨みましょう。


1~3ピッチ
概ね安定した岩場を快適に行く。
時に被り気味のところも支点がたくさんあるので思い切り行ける。
反面、支点が多く玉切れ注意。

tosさんは久々のクライミング。
ハイステップのところで逡巡。
そこは、足にね。乗り込むんですよ-。

kum-miyパ-ティ-は、じゃんけんで勝ったmiyさんから。
順調に登ってきます。


-クライミングメモ②-

岩登りは足の使い方と重心に気を配りましょう。
体が伸び切ってしまっては、次のホ-ルドに手が届くことはありません。
まず、足を上げられる場所を探しましょう。

 

4ピッチが核心。
高度感あふれるピッチですが、思い切って体を壁から離して。
しっかり足に乗りましょう。

5ピッチ~
最後の終了点手前は左の凹角ではなく右上フェ-ス。
ほら、支点があるでしょ。

終了点から懸垂下降。
スタックリスクを避け、ロ-プ一本で。

安全確実を心がけて。
途中のラッペルステ-ションは狭いので、待機場所での位置取りに注意します。


-クライミングメモ③-

懸垂下降でのミスは致命的です。
万に一つも無傷で済むことはありません。
一つ一つ、安全を確認してから体重を預けましょう。

 

下降を終え、木戸前ルンゼというオプションもあったけど、miyさんのリクエストで1ピッチ目をトップロ-プで反復練習。
フィジカルに優れたスポ-ツマンのmiyさんは腕力に頼る傾向があるので、足に乗ることを意識して登ってもらう。
あとはその足に重心を乗せることですかね。
安定すれば、両手を放すこともできますよ。

ひとしきり飽きるまで登りこんでから撤収。
表妙義の岩塔群を望みながら。

 


-山岳会メモ-

acc-j茨城は、クライミング・沢登りを中心に活動している社会人山岳会です。
あなたの華麗なクライミングデビュ-を応援します。
次はあなたが主役です!

現在会員募集中。詳しくはこちらまで

 


sak


太刀岡山左岩稜(中退)

2020年12月20日 22時36分22秒 | 山行速報(アルパイン)

2020/11/26 太刀岡山左岩稜(3P中退)


道半ばにして、無念の中退。

中退というと、ネガティブな印象が強い。
だけど、そこに至るまでの奮闘や数々の体験は無駄ではない。
価値はそこにある。


太刀岡山左岩稜は、下部のクラック、そして上部は古くから登られている開放的なリッジで構成される。
核心は下部クラック。

過去、1ピッチ目はクラックを避けて右の凹角を行った。
今回はクラックを繋いで上部に抜ける計画。
だけど、クライミングを始めて間もないメンバ-には、ちと辛かったみたい。

1ピッチ目、最下部の外傾した岩を乗越て小テラス。
そこからハンドクラック。
ジャムしたり、クラック左に重心を置いてレイバック気味に行ったり。
miyさん、kumさんはここでだいぶ腕力を消耗したらしい。

2ピッチ
以前は左のクラックに体がハマり込んで苦労した記憶。
それを教訓にあまり体を入れこまないよう、ステミングとバックアンドフットでいく。
途中体を入れ替えて、快適に登る。

3ピッチ
下部のフィンガ-クラックは足が入らず、だいぶ迷った。
クラックの左エッジを手掛かりに右エッジ足をかけレイバック。
ここは右から小さく巻くこともできるのは、後にわかったこと。

中間部のスクイ-ズチムニ-は岩上スラブへ乗らず、中を通り抜ける作戦。
どうしても最後の出口で腰の骨盤がハマって抜け出せない。
チムニ-出口の2mくらい上が少し広くなっており、そこから脱出。

上部のクラックは容易。

miyさんが登り始めるが、下部のフィンガ-クラックで苦戦している。
しばらくの奮戦。
kumさんに選手交代したが、やはり1ピッチでの消耗でかなり厳しいようだ。

ここさえ抜ければ、快適なリッジの始まり。
引き上げたロ-プをフィックスして、懸垂下降。
二人のもとに降り立ち、ユマ-リングでなんとか登れないかやってみたけど握力に確信が持てないらしい。

これでは辛いばかりだろうと、中退決定。
独り3ピッチ目をゴボウで登り返し、ロ-プセット。懸垂下降で取付きへ。

想い届かず、課題に背を向けることは、少なからずある。
「勇気ある撤退」と人は言うが、大切なのは「その後、どうしたか」

miyさんは下山後、缶コ-ヒ-のプルトップを自分で開けられないほどに握力を失っていたらしい。
店員さんに「開けてもらえませんか」とお願いしたのだそうだ。

上等じゃないか。
それほどに握力を酷使することなんて、普通できない経験だぜ。
いうなれば腕力や握力に頼りすぎた、ということ。

敗退を恐れるよりも、何もしないことを恐れろ。
壁はそこら中にたくさんある。


sak

 


二子山・中央稜

2020年11月27日 20時05分12秒 | 山行速報(アルパイン)

クライミングロ-ド2020秋 ④


◆2020/11/13 二子山・中央稜


大テラスで一息つきながら、前半を振り返る。

 

1ピッチは体慣らし。
取り付きから直上、右のクラックを抜けるところが少し緊張する。

 

2ピッチ目は突き出たフェイスの登りが爽快だった。

 

3ピッチ目は逆Yのクラック。
レイバックとジャミングで体を上げ、乾いた岩にスメアも効く。
核心では左クラックに手がかりを求めるがなかなか決まらず、無念のA0。

そこで、思い出したのが過去の記憶だ。

二子山中央稜に来たのは3度目だが、なぜか記録は残していなかった。
最初に来たのはmさんと、もう16年前のことだ。

次に来たのはいつ誰とであったか、朧げだ。
ただ、濡れた石灰岩に難儀し、このピッチでセミになりかけた苦い記憶だけが残っている。
二子山再訪に間が空いたのは、そんな闇に囚われたか。

今回の旅の終着点、二子山の選択に他意はなかった。
しかし、それは闇を振り払うためだったのかもしれない。

でも、また宿題となってしまったなと、そんなことを思いながら後半ピッチはkumさんにリ-ド交代。


ここから先は楽しい記憶しかないピッチですよ。

核心ピッチで消耗したようであったが、「行きます!」と元気に答える。
そうこなきゃ、ね。

ここからのクライミングは実に楽しい。
開放的な景色、程よい傾斜に手がかり。
kumさん、endさんには、それを感じてほしい。

kumさんのクライミングはしなやかだ。
慎重さも兼ね備えており、安定している。
アルパイン向きだ。

endさんも快調に高度を稼ぐ。
高度感にもずいぶん慣れて来たようだ。
場数を踏めば、優れた身体能力を活かせることだろう。

 

終了点でロ-プを畳んだら、山頂へ。
後続を見ながら、登攀の余韻に浸る。
脳裏に流れるのは、あの曲だ。

♪~


旅には、音楽と出逢いと学びがある。
僕らはそれらに笑い、躓き、気づき、成長する。

あと、10年若かったら。
思い返してみれば、約10年前 -正確には9年8カ月程前だが- にも同じことを言っていた。


苦笑する。
しかしながら、今もこうして一緒に山へと向き合う仲間がいる。
ありがたいことだ。

これからも共に笑い、躓き、気づき、成長していく。
そういう物語が続けていけたら、いい。



sak

 

クライミングロ-ド2020秋 ①から読む


松木沢ジャンダルム 中央壁直上ル-ト

2020年11月26日 19時30分15秒 | 山行速報(アルパイン)

クライミングロ-ド2020秋 ③


◆2020/11/12 松木沢ジャンダルム 中央壁直上ル-ト


銅親水公園へ集まったのは5人。

5人というのは何か宇宙的な力学に操られているかのようだ。
戦隊ヒ-ロ-然り、アイドルグル-プ然り。
剣道や柔道の団体競技も先鋒から大将まで、5人がワンチ-ム。
音楽で言うならクインテット。
日本史の授業で「五人組制度」というのもあったな、と思い出す。

秋のクライミングロ-ドに参加するメンバ-が全員揃うのは今日だけ。
宇宙的な作用で集まったオ-ルキャストが目指すのは、松木沢ジャンダルム。

朝日に照らされた中央壁。
その真ん中にあるクラックを繋いで直上するのが今日のル-トだ。

松木沢のロ-プが張ってある所を飛び石伝いにわたって、対岸に渡る。
踏み後を拾っていくが途中見失い、適当に岩壁基部目指していく。
岩壁を少し左に回り込む。

上部にハング岩が見えるのは中央ルンゼ取り付き。
さらに20mほど行ったところ。
岩がガタガタ(ギザギザ)したチムニ-が見える。
ここが中央壁直上ル-トの取付きだ。

 

先発はisi-end・kumパ-ティ-。
isiさんの登攀力とル-ファイで先陣を切っていただく。
endさんにはクライミングを感じていただき、kumさんには後半リ-ドをしていただく計画。

後発はsak-miyパ-ティ-。
こちらはツルベ登攀。miyさんにツルベ登攀を実践してもらうというのが目的だ。

それぞれの課題と向き合い、実践する。
それが今日の目的。
さぁ、楽しい岩登りの時間です。

1ピッチ
チムニ-を直上し、右に乗り移る。
乗り移るあたりが面白い。

 

2ピッチ
緩いスラブから中間部、2mほどの乗越が第一関門。
その先のクラックを直上し、上部で左に現れるフレ-ク+オフウィズス。
ここが第二関門だろう。

腕と肩を入れ、足をスメアで突っ張り、体をズリ上げる。
我ながら、強引な登りだ。
この辺りはそれぞれに登り方は違うのだと思う。

カムは#4が2つあるといい。
クラック下部で1つ、上部で1つ。上部は#5でもOK。

先陣を切るisiさんのクライミングは安定している。
現在、当会で一番登れるメンバ-だろう。
ストイックな取り組み姿勢にも襟を正される思いだ。

 

3ピッチ
左のスラブを乗り越えると、次第にガレ場。
足元が非常に不安定なので、落石に注意しながら行く。
中央ルンゼとここで合流。

大バンドは休憩にいい広さ。
とはいえ上部からの落石なども懸念され、自己確保とヘルメットは必須。

 

4ピッチ
3本クラックを行く。
先発はここからkumさんがリ-ド。

先発は右、後発は中央を行く。
中央クラックはカムがよく決まり、足をねじ込んで快適な登り。

5ピッチ
スラブを一段上がり、左上。
チムニ-をステミングで行く。

6ピッチ
中央の凹角。
上部が被り気味だが、手掛かりは多いので楽しく登れる。
そこを抜けると、ジャンダルムの頂。
松木沢を眼下に、振り返れば中倉山が大きい。


♪~

感じてほしいんだ

一歩目の胸の高鳴りや
触れる手掛かりの温もりや
悔しさや
その先にある蒼い空を

僕はそうやって壁を越えてきた
今も胸の高鳴りは止まないぜ

 


下降は、右ルンゼを踏み後に導かれて行く。
わずかで、懸垂支点。
念のためダブルロ-プでの懸垂下降。
50m1本でも足りるとは思う。
しかし、落石の起きやすいところなのでフォ-ルラインの外れる場所までの退避を考慮。
2本あるといいかなと思う。

その後はガレガレの踏み後を行く。
途中、急な場所にはフィックスもある。
踏み後を行けば松木沢の渡渉点。
あとは気軽な林道歩きだ。

課題と向き合い、実践する。
5人、それぞれの課題だ。
そして見つけた課題は明日につながる。

明日という言葉には、希望がある。
そして未来を感じる。

明日も休みだぁ------。
明日は仕事かぁ------。

多少? 心の様相の違いはあれど、私達には明日が待っている。
暮れ行く中で、互いの明日にエ-ルを送る。

あとは次なる登攀の地へと、気ままに移動しながら風呂に入って、好物を仕入れる。
万葉の里のデッキテラスで独り祝杯。


プレモル(※プレミアムモルツの略)はやっぱり最高。
あれ?箸はどこだっけ?

「明日も休み」
実にいい響きだ。

果してどんな一日になるのだろう。

 

つづく


sak

 

クライミングロ-ド2020秋 ①から読む


天狗山ダイレクト

2020年11月25日 19時39分32秒 | 山行速報(アルパイン)

クライミングロ-ド2020秋 ②


◆2020/11/5 天狗山ダイレクト


遠路、「野猿返し」に行くのならと計画したのが「天狗山ダイレクト」
往年の登路を近年、山岳ガイドの佐藤勇介氏が整備したという。

さらに2020年夏には巻き気味に登っていた山頂直下の岩壁を直登すべく再整備。
HPで詳細が公開されている。
題して「天狗山ダイレクトダイレクト」

佐藤勇介氏のHPはこちら

面白いネ-ミングに加えてこの手の登攀が大好物のsakにとって非常に気になる1本。
思い起こせば8年前、「男山ダイレクト」も楽しかったなぁ。


こうなれば、行かない理由はない。
というか、行きたい。
否、行くべきだ。


馬越峠に車を止めて天狗山登山道を山頂に向けて40分ほど。
山頂直下の鞍部から踏み後を拾って下降。
ピンクテ-プがしっかりあって、迷うことはなかった。

右にケルン、そこからトラバ-ス。
踏み後は薄く目印はないが、迷うことなく取り付き。
左手下にボルダ-チックな岩が、”デン”と横たわっているのでわかりやすい。

 


1ピッチ
階段状の岩場を行く。
条件が悪ければ左から巻いて、実質登攀開始の2ピッチ目からスタ-トすることもできる。

 

2ピッチ
ここは正面のリッジと左凹角を行く2ル-トがあるらしい。
素直に行くと正面リッジかと思うが、どうやら左凹角の方がオモシロイみたい。

ということでここはオモシロい方へ賭けてみる。
右のクラックにカムで支点を得ながら、5mくらい上がり左フェイスに乗り移る。
フェイスにはハ-ケンが二か所あり、それに導かれ右上。
凹角へ戻るように行き、最終的にリッジへ乗って松の木でピッチを切る。

3ピッチ
正面岩稜を右に巻き、右側壁のクラックを行く。
手がかりは豊富なので、快適な登り。

4ピッチ
岩交じりの稜をコンテでしばらく歩く。

5ピッチ
「門」と呼ばれる岩塔。
ワイドクラック右の階段状から行く。
最終的にはワイドクラックを跨ぎ乗り越すことになる。
支点は残置ハ-ケンを利用。

6ピッチ
尾根上の歩きピッチ。
次第に三段岩壁が見えてくる。
ここで小休止。

7ピッチ
三段岩壁の1~2段を行く。

1段目は立っているものの、しっかりしたハンガ-が二つ。
手がかり足掛かりは多いので、楽しい。
2段目の正面リッジは今にも崩れそう。
そこで、左にトラバ-ス。
階段状を上がって、松の木でピッチを切る。


8ピッチ
三段岩壁の3段目。
正面壁は脆いハングが威圧感を放っている。
その左。スラブにボルトがあって、そこから回り込む。
クラックもあるのでカムが有効。
立ち木で切る。


9ピッチ
階段状の岩場。
miyさんにロ-プワ-クの練習をと、リ-ドを頼む。
樹林帯に入って、終了。

あとは尾根を伝って祠がみえたら山頂は一投足。
見晴らしのいい、天狗山山頂だ。

昨日は昨日で最高だったけど、今日も最高だ。

乾いた岩、尖ったリッジ、傾斜の強い壁に程よいガバ。
クライミングを楽しめる要素が満載の二日間だった。


そうして山旅と山旅の間に現実が加わる。
山と日常と、どちらが自分の本質か。

とかく日常は同じようなことの繰り返し。
夜、第三のビ-ルはまぁまぁ旨いけど、一日を振り返ればウンザリしてしまうことが多いものだ。

しかし、次なるル-トに想い馳せながら過ごすそれは、満更退屈ではなかった。


つづく


sak


クライミングロ-ド2020秋 ①から読む


金峰山川東股沢・野猿返し

2020年11月23日 22時32分29秒 | 山行速報(アルパイン)

クライミングロ-ド2020秋 ①


クライミングへの憧れは、いつ芽生えたのか。
そんなことも記憶の彼方に霞む。
歳月は、残酷だ。

眩しいくらいにクライミングを欲する新人に触れる度に感じる焦燥。
あと、10年若かったら。
などと思うのは、明らかに言い訳だ。

11月。
そんな言い訳に抗らおうと、クライミングで繋げる旅に出ようと考えた。
もちろん、新人たちに背中を押された形だ。

とはいえ、まとまった休みは取れないので、2×2=4日のクライミングロ-ド。
ル-トは「行ってみたいリスト」から手ごろなグレ-ドをチョイス。
そうと決まれば、心は踊る。


◆2020/11/4 金峰山川東股沢・野猿返し


最高です。
もう言うことありません。

花崗岩最高!
白樺林最高!
落葉松の黄葉最高!

思わず、叫びたくなる。


前夜、大弛峠下広場まで。
今年最初の寒気が入って、もはや秋とは言えない気温。
冬用シュラフを持ってこなかったことを後悔したけど、なんとか眠れた。

明け方miyさんと合流して東股の野猿返しへ。
道中の白樺林がなんとも美しい。

「キャンプ禁止」の看板が二つ続くところを過ぎたあたりで沢へ。
ジャンプして流れを渡り、ケルンに導かれる。
取り付きを探して少し彷徨したものの、特徴あるクラックが目印のスラブを見つけてクライムオン。

上部のハンガ-ボルトを目指し、右寄りのクラックをいくが、どうやら左寄りのほうが容易らしい。
初っ端から奮戦模様。
miyさんもハラハラしただろう。

あとは思い思いに岩稜(時にクライムダウン)を行く。
支点は立ち木とカム。
#0.4~#3を1セットで不足はない。

クライムダウンがあると、ロ-プが重くなる。
ピッチ切りはそれに応じて判断する。

突き出た岩稜帯は快適そのもの。
もちろん、この乾いた岩があってこそだろう。

ロケ-ションが実にいい。
落葉松林の彩りはもはや黄金色の草原。
伸びやかな山様に突き出した岩塔も美しい。

終了点直前で今辿ったル-ト全体が見通せる。
それを眺めながらの振り返り。
核心ピッチがどうだったとか、あの時どうしたとか、何処が面白かったとか。

miyさんは先月入会。
日和田山での練習を経て、初のマルチピッチ。
「楽しい」を連発。

sakだって同じだ。
「楽しい」どころか、最高だ。

終了点から懸垂下降。
踏み後を辿っての下山もわずか。

あとは川上村で風呂に入って、まったり。
ナナ-ズで好物の総菜を仕入れて車中宴会。
今日という日を労らい口にする、ビ-ルはやはり旨し。

聞けばmiyさんは野球をはじめ、バイクやパラグライダ-などかなり極めているみたい。
自分の知らない世界を垣間見るのはとても新鮮。
この調子でクライミングに本腰を入れたら、上達も早いことでしょう。
新しい仲間との出会いには様々な発見がある。
それもこれも岩のお陰だ。

クライミング最高!
ナナ-ズの総菜、最高!
プレモル(※プレミアムモルツの略)最高!
あれ?箸はどこだっけ?

夜間は-6℃。(マジで寒い)
それを補うに余りある、初日が暮れ行くのであった。

ちなみに我が愛車とは長い付き合い。
すでに走行距離は30万キロを超えた。
幾度、車中で夜を越したか。

寝袋に入ってリアウインドウから星空を見上げる。
山に入ることを実感する。
そうして、眠りにつくのだ。

さあ、明日は天狗山ダイレクト。
今夏に整備されたという三段岩壁。
はたして。


つづく

 


sak