acc-j茨城 山岳会日記

acc-j茨城
山でのあれこれ、便りにのせて


ただいま、acc-jでは新しい山の仲間を募集中です。

谷川岳・一ノ倉沢烏帽子沢奥壁南稜

2024年07月13日 22時03分45秒 | 山行速報(アルパイン)

イチノクラ
この響きは何度聞いても特別だ

いつだって山行前はナ-バスになる
心の奥底に臆病な自分がいる
その彼が何か伝えようとしている
そんな気がしてならないのだ

道の駅・水紀行館で仮眠
3:30起床
皆、無言で身支度を始める
今日への意気込みが伝わってくる

ロープウェイ駐車場に移動して装備を整え出発
一ノ倉出合を目指す

烏帽子沢奥壁・南稜は一ノ倉の人気ル-ト
快適なリッジやフェ-スの続き、乾いていれば快適の一言に尽きる

nksさんたちから「一ノ倉の南稜に行きたい」
そう聞いたとき、「まあ、そうなるよね」と思った

思い返せば自身もそうであった
アルパインクライミングの舞台として誰しも憧れる場所だろう

一方で不安もあった
3人を引率することへの不安だ
個々が最低限の自立した技術と知識は持ち合わせてほしい

一ノ倉は彼らがこれまで経験してきたクライミングルートとは一線を画す場所
タクティクスと装備は指定し、厳守とした
登れるかどうかではない
無事に下山ができるかどうかが重要だと諭した

メンバーは4人
skmさんは一度経験があるとのこと
nksさん、azmさんは一ノ倉デビュー
そしてsak

南稜は、一ノ倉の全体像を知る意味でとてもいい場所にある
所々でレクチャーを入れながら行く

一ノ倉沢出合駐車場で装備を付ける
河原をしばらく歩いて右岸の踏み後へ入る

沢へと復帰し、ゴーロを行くと前方に雪渓
幸いテールリッジまでつながっており、雪渓通しでいく
衝立沢側は降りられそうもないので本谷側を少し登ってテールリッジ末端
そこから衝立沢側に回り込んでからフィックスに導かれてリッジの上の出る
このあたりは知らないと思わぬ苦労をするだろう

テールリッジのスラブも一部濡れてはいるものの、フリクションは十分効いている

新人を連れてここを歩くのは何回目だろう
新しい仲間が増える度、先人の務めとして幾度となくこの道を歩いた
「連れて行ってあげれば」自ら学んでくれるだろうという期待もあった
しかしながら、多くはそうならなかった

「連れていってもらった」山行は、次への要望へと繋がっていく
つまりは「消費者」を増やしたに過ぎず、勿論長続きはしなかった

自立した登山者の育成には「主体的な学びの実現」が必要だと悟った

そういう経緯から今回のメンバー3人には厳しく指導した
もしそれでついてこられないというのであれば、遅かれ早かれ遠のいていくのだろう
時に厳しい言い方で指導したこともあり、本当に申し訳ないと思っている

「楽しい」だけではない
自分で作り上げる山、その先の景色を見てほしい
その一念あってのことなのだ

中央稜取付きでクライミングシューズに履き替える
烏帽子沢奥壁基部のトラバース
中央カンテ、凹状、変形チムニー、南稜フランケの取付きを指呼しながら南稜テラス

ロープを出して登攀体制
先発:skm-nks、後発:sak-azmでツルベ登攀

1P(リード)
南稜テラスから直上し右に少しトラバース
チムニー手前で切る

2P(フォロー)
チムニーを抜ける

3P(リード)
フェースを右上気味に

4P(フォロー)
草付き(笹原)を踏み後に従い歩く

5P(リード)
フェースから大岩を回りこむ
先発が大岩で切っていたので、その先(リッジの基部)まで伸ばすよう指示

6P(フォロー)
コールの声から先発は馬の背の途中で切った様子
azmさんには、先発より上(垂壁手前)まで伸ばすよう指示して送り出す
しかし、途中でロープが重かったらしく馬の背途中で切っていた

7P(リード)
馬の背リッジ後半、垂壁手前まで
最終Pはazmさんにリードしてもらうために切る

8P(フォロー)
リードのazmさん、最後のところで少し苦労したけどフリーで抜けた
sakも4年ぶりなので新鮮な気持ちで楽しめた

終了点から少し上がった場所で休憩
強烈な紫外線に皆干上がり、早々に下山にかかる

【6ルンゼ下降の備忘録】

下降は南稜終了点から6ルンゼ方向に少し歩いた懸垂支点から
6ルンゼ懸垂下降の注意点は3つ

① ピッチ切りに注意する(特に懸垂下降3ピッチ目)
② ロープの回収(特に懸垂下降1.3ピッチ目)
③ 斜め懸垂の危険個所(懸垂下降3ピッチ目)

①はハンガーボルトと鎖で構築された支点を繋ぐと無駄がない
南稜テラスへの最終ピッチは50mロープで、10mくらい足りないので、チムニーの下で切る

②は懸垂1ピッチ目の回収時にルンゼ内部へロープが入り込みやすいので「一定リズムで淀みなく」回収する
また、懸垂3ピッチ目は大岩の目線高さにある支点を使うとスタックしにくい

③は懸垂3ピッチ目の大岩手前を降りるとき、6ルンゼ側に引き込まれやすいので注意(先に降りた人は補助する)

無事に南稜テラスまで降りる
残置していた装備を回収したら、烏帽子沢奥壁基部のトラバース
基部バンドまでの下りは結構怖いので、南稜フランケの取付から50m1本で懸垂下降
変チの取付きあたりに流れるわずかな水を啜って水分補給する

中央稜取付きまで戻ってひと心地
靴を履き替え行動食を口にするが、すでに行動水はない
唾液分泌量が少なく、嚥下に苦労する

そうなるとテールリッジの先に見える雪渓の末端から流れる水を求めて下るのみ
テールリッジ末端から雪渓へ乗り移る
ここは「沢登」的な身のこなしが必要
ほかのメンバーは少し戸惑ったかもしれないけど、これが総合的な登山なんだと思う

雪渓は念のため持ってきた軽アイゼン着用でサクサクと
振り返れば、衝立岩が大きい

雪渓末端で念願の水分補給
1.5Lくらい補給しただろうか

最高に冷たくて、最高に美味い
そして皆、最高の笑顔

まだまだ、課題は少なくない
それでも今は皆の笑顔を噛みしめたい


岩壁を振り返る
いつだって登り終えた後の山は
ちょっとだけカッコよく見える
ここに来るたび今日を思うことだろう


sak




霧来沢前ケ岳南壁V字第二スラブ

2024年07月11日 15時31分45秒 | 山行速報(アルパイン)

梅雨入り前、前線が北上するらしい
この知らせをもって奥秩父・鶏冠谷から計画も北上

だいぶ前から「行きたい場所リスト」に入っていものの機を逸していた前ケ岳南壁
「やっぱり秋かなぁ」と思い描いていたものの、条件が揃ったときこそ「ベストタイミングなのだ」と言い聞かせる

- 会 越 -

会越は豪雪に磨かれたスラブと険谷に守られた未開が多く残されている
また近代交通事情から観光地化した山域とは一線を画す
その奥深さゆえの静かな山、そして自然の造形が美しい貴重な山域と言っていい


道の駅かなやまで夜を明かして霧来沢沿いの御神楽岳登山口まで移動
しばらくは登山道を歩く

本日のメンバーはskmさん、nksさん
共に会越の山は初めてとのこと
山の特性、植生などレクチャーしながらそぞろ歩く

八乙女の滝を越え鞍掛沢の手前、八丁洗板のナメ床から入渓
なかなか優雅な風情である

思いのほか素晴らしい渓相に気をよくしながら遡っていき、霧来沢本流へ
630mで右の支流へ入るとゴーロの急登
雪渓の残る崩壊地を過ぎ、滝場が出てきて左岸の小さなルンゼから巻くが藪頼りで腕力を要する

滝上からはV字スラブへと誘われていく
下部スラブを思い思いに登っていくと、広いテラス
ここでロープを繋ぐ

わずかに濡れる水流沿いを行けば容易だろうが、ここは右岸岩壁の凹角を登る
登攀は沢靴でも問題ない

この後も念のためロープで確保をしながらスラブを行く
振り返れば会越の山波に切れ込むスラブ、残った雪渓が独特の景色となっている

都合、5ピッチほどロープを出して稜線直下まで
最後のひと登りはフリーで不安なく登れる

と、ここまではよかった

この先は登山道まで藪漕ぎ
踏み後も薄く、1145峰先で少し彷徨
さすがに初夏の藪漕ぎは濃く暑い
まだ地に足がつくだけマシだろう

前半の気持ちの良いナメ歩き
乾いたスラブ登攀の記憶が、酷暑の藪漕ぎに塗りつぶされる

やはり、秋か
そんな思いを口には出さず黙々と藪を漕ぐ
これはこれで、訓練と思えばいい

会越
雪に磨かれたスラブと険谷に守られた奥深き山々
踏み後も疎らな径を行く
そういう山登りがここにはある

会越初見参のメンバーにはどう映ったのだろうか


sak



 

 


子持山・獅子岩南壁

2024年04月22日 14時59分08秒 | 山行速報(アルパイン)

2024/3/28 子持山・獅子岩南壁

久しぶりの獅子岩南壁
sztさんと

以前一緒に来たよね、という話題となり指折り数えてみる
そうすると、お互い4回目だった
やはり、良い岩場は何度来ても良いものなのだ

倒木があって1号橋の手前から歩く

2月はあれほど暖かかったが、3月に入ってめっきり寒い日が続いた
今日もどちらかというと、曇天模様の寒い一日
鼻をすすりながら屏風岩の基部を登っていく

左に獅子岩が見えたら踏み跡に乗ってトラバース
基部で身支度を整える
下部のルートは乾いているものの、数日前の降雨による染み出しで上部スラブを行くあたりがどうも怪しい
なんならツララが見て取れ、たまに小さな氷屑が落ちてくる

ということで、鼻をすすりつつsakからスタート

寒さに加えて、冷えた岩に指先は途端に凍える
吐息で温めながら行くが、感覚に不安

短めに切って、バトンタッチ
sztさんも指先感覚に苦労していた
フレークの所は内部が濡れていてちょっと嫌だったけど、このルートで一番楽しい(と思っている)

次のピッチで緊張させられたけど、なんか来るたびに緊張度が増しているように感じるのは、
相対的なものだろう。

ちなみにこのピッチをリードしていたsztさんが中間支点に残置されていたビナを回収
おそらく、ここから撤退したのだろう
今日は乾いていたものの、この先嫌な予感しかしない

次のピッチは直上スラブを乗り越えるか、左の藪に入るか
もちろん、左の藪に入るにはびしょ濡れトラバース&ドロドロ草付きを行かざるを得ない
直上は見る限り乾いているが、その先は見えない

結論として直上を選んだのだけれど、スラブ上は濡れていて明らかに楽しくなさそう
念のため、と渡された残置ビナでロワーダウン
あとは懸垂下降で取付きまで戻った


何かを手に入れたいとき、自分は代わりに何を差し出せるのか
それに見合うだけの価値が自分にはあるのか

同じ道標を行く仲間との時間は尊い


sak


動画も

 


八ヶ岳東面・天狗尾根

2024年04月16日 17時30分28秒 | 山行速報(アルパイン)

2024/3/16-17 八ヶ岳東面・天狗尾根


事の初めはひと月ほど前
山岳会の例会で「泊付、冬山バリエーションに行ってみたい」と持ち掛けられた

自立した岳人育成に、バリエーションへと向かう機会創出は先人の勤めでもあろう
そう思い、日程調整した

八ヶ岳東面の天狗尾根は、初級冬季バリエーションとして人気が高い
静かなアプローチ、樹林の登り、そしてワンポイントながらロープを出しての登攀もある
トレースがなければ奮闘的な山ともなり、冬季バリエーションの養分は高めだ

メンバーは4人
skmさん、azmさん、nksさん、sak
登攀計画はskmさんがリードでフィックスを張って、セカンド・サードはアッセンダー
最後にsakがフォローで回収という算段

初日は美しの森から出合小屋まで
意外と多い積雪、踏み抜きに苦戦しながらも、トレースが拾えた

出合小屋で荷を解いて天狗尾根の取付きまで偵察
先行が入っているようであった

水を確保したら自由時間
ココヘリアプリを実験してみたり、ビーコンの使い方講習をしてみたり
一通り済んだら明るいうちから一杯やる
そうしながらも明日のプラン共有は忘れずに
2パーティーが小屋を通過し、この先で天幕を張るとのことだった

早々に夕食の支度に入り、腹ごしらえ
今宵のメニューは具材たっぷりチゲ鍋
ベース方式はこれができるからいい

夕刻、3人パーティーが到着し、今日の出合小屋は2パーティ、7人
目指すは旭岳東稜とのこと
お互い、翌日は2時4時と確認

明日に備えて18時頃シュラフに潜る
寒気もそれほどではなく、夏用シュラフでも十分眠れた

2時起床
目覚めのコーヒーをすすりつつ、朝ラー(朝のラーメン)高カロリーバージョンの準備
それぞれに身支度を終え、旭岳東稜へと向かうパーティーを見送って我々も4時出発
今日の山行成否はタイムキープにかかっている
余念なく意思は伝える

寒気はそれほどでもないとはいえ、雪は締まり歩きやすい
トレースもしっかり残っていて、ただひたすらに足を前に出すだけだ

隣の尾根に、ヘッデンが揺れる
無言でエールを送る

カニのハサミあたりで展望が広がる
そして風が強い
おそらく稜線は暴風だろう

カニのハサミをトラバースして岩場をひと登り
その先に最初のロープポイント
足元の切れ落ちた岩の基部を右へトラバース
そしてルンゼを直上
タクティクスは昨日申し合せておいた通り

そこからいくつか岩場を通過すると、大天狗が立ちはだかる
トラバースして基部でロープを出す

あとはガスに見え隠れする小天狗の基部岩場を左から巻いてひと登りで登山道
ここで11時
なんとかタイムキープできてホッとする

しかしながら流石に稜線に乗ると風が強い
雲が下がってきており、視界も遮られてきた
4人がバラけないよう、粛々とガレ場を下り西風に叩かれながらツルネを目指す

ツルネ東稜に入ると風が稜線によって遮られ、嘘のように穏やかとなる
雪が舞い落ちてきたが、おそらくこれは稜線の雪が飛ばされたものであろう
しっかりしたトレースも刻まれており、ほっこりした気持ちでボトボトと下る

急場が一段落したところで一休み
ダンゴがひどいので、アイゼンを外す

あとは小屋までワンピッチ
稜線で風に叩かれ、時間を要したが明るいうちに小屋に戻ることができた

撤収を終え、あとは駐車場を目指すだけ
なんだけど、緩んだ悪雪に苦労して結局ヘッデンを出すことになった

機会創出と体験は自立した岳人育成の出発点
統率の意思、時に厳しく留意点は伝えた

あとは主体的な学びの実現
山行を消費して終わるのか、この先に臨むのか

Where there is a will, there is a way


sak

↓動画も


西上州・鍬柄岳南稜

2023年12月22日 19時24分57秒 | 山行速報(アルパイン)

2023/12/2 西上州・鍬柄岳南稜

そこここに突き出る岩峰
一つ登れば、その先に見えるトンガリが気になってくる
岩に触れゆく道にスリルと緊張感
西上州には、そういう楽しさが溢れている

鍬柄岳もその一つ
下仁田の街から北に見える岩峰
マルチピッチの練習も兼ねて南稜からのアプローチ
skmさん、nksさんと

駐車場からは鍬柄岳がよく見える
あの先端へ行くのかと思えば、誰しも高揚することだろう

指道標に従って登山道を行く
30分ほどの登りで基部に到着する

登り始めはいくつかルートが取れるらしい
できるだけクライミングの高さを確保しようと、登山道を大桁山方面に下って西面へ回り込む
あれこれ吟味して西面のコーナークラックを登路に定め、装備を纏う

今日はskmさんがオールリード
先日入会のnksさんはセカンドで、sakがフォローしながらラストというオーダー

1P
バンドを少し登ってコーナークラック
右壁にハーケン
用意したカムはサイズが小さく、クラックで支点が取れないようだった
支点を求めて左壁を行くが苦戦を強いられていた

クラックを抜けた立ち木でピッチを切る
本来、その先のリッジまで伸ばせると思ったが、苦戦に加えて岩の冷たさに指が悴んでしまったようだった

続いてnksさん
やはりクラックの所で逡巡するも、時間をかけて登りきる

立木まで到達したのを確認してからsakもクラックを行く
ここはレイバック気味に行くとホールドスタンス共に得やすい

2P
フェイスを少し登ったらあとは階段状をリッジまで
本来はここまでで1Pだろう

3P
目前の岩を右から巻いてリッジに登る
ここは岩を直登の方が楽しいかもしれない
途中にある枯れ木はぐらつくので要注意
松の木をよけてクライムダウンしたら安定のコル
少し上にリングボルトとハーケンがある

4P
フェイスを20mでテラス
skmさんはその上の松の木まで伸ばす
支点は灌木でとれるものの岩が脆いので注意

5P
容易なフェイスだが、やはり岩は脆い
15mほどで山頂

休憩をとったら、登山道で下山する
この登山道もほぼ岩場の下りで鎖伝いに降りていく
15分ほどだが慎重に

岩場基部でお昼時間
もぐもぐタイムをしながら主に支点構築を中心にレクチャー
本日の課題を復習して山を下りる

駐車場から振り返ると、鍬柄岳のトンガリ
いつだって、登り終えた後の山は少しだけ恰好良く見える

あれが鍬柄岳
街道からこのトンガリを見るたびに、今日を思うことだろう


sak

動画も↓

 


足尾・松木沢ジャンダルム中央ルンゼ

2023年12月13日 00時36分59秒 | 山行速報(アルパイン)

2023/11/24 足尾・松木沢ジャンダルム中央ルンゼ

 


砂利道を歩く
小石を踏む音に、この地の道程を思う

松木沢ジャンダルム
朝日に照らされたそれは、岩峰そのものが輝いているように見える

今日は中央壁・中央ルンゼを行く計画
skmさんと

ジャンダルムの基部を左に回り込んでいくと顕著なルンゼを見る
ここが中央ルンゼ
少し上の安定した場所で装備をつける

ジャンケンで勝ったskmさんはフォローをチョイス
sak先行で登り始める

1P(リード)
ルンゼを詰めるが、落葉がたまっており掃除をしながら行く
輝く岩峰にあってルンゼ内には陽が届かず手が悴む
次第にルンゼの両岸が狭まり、斜度も立ってくる
進路が岩で遮られるため、右の岩棚でピッチを切る

2P(フォロー)
岩棚から一段上がるところは右から岩がせり出していて窮屈
ここは左にスタンスを見い出すが、足下は切れ落ちているので少し緊張する
そこからは階段状
ルンゼの行き詰まりを左上する

3P(リード)
ほぼガレ場の歩き
3本クラック基部まで

4P(フォロー)
本来、中央ルンゼは右凹角を行くのだと思うがここは直上ルートに合流して真ん中のクラックを行く
NP経験はないというskmさんだったけどソツなくこなす
クライミングとしてはここが一番楽しかったのではないか

5P(リード)
左のルンゼを行く
両壁に足を突っ張ってジリジリと高度を稼ぐ
コブシ岩の肩まで

6P(フォロー)
コブシ岩の凹角を行く
ホールドスタンスともに豊富で楽しい登り

岩上で一休み
風は強いが、小春日和
今日の登りを振り返りながら、次の計画を語り合う
緊張から解放されたこういう何気ない時間に心満たされる

下降路の右ルンゼは、フィックス頼りでロープを出すことなく下ることができた
取付きまで戻ってデポした荷物をまとめたらあとは往路を戻る


きらめく水面に魚影を見る
それでも、あの頃には戻れない

人も自然も時に翻弄され変っていく
そして、ゆっくりと進む

松木村の今
水面に映る空は青かった


sak


↓動画も

 


裏妙義・木戸壁右カンテ

2023年11月10日 20時39分46秒 | 山行速報(アルパイン)


2023/10/22 裏妙義・木戸壁右カンテ

 

木戸壁右カンテは、ホ-ルドもフリクションも支点も充実した岩場
リ-ドやツルベを実戦形式で行うことができ、岩峰に囲まれた景観も素晴らしい

skmさん、azmさんとは岩壁での初手合わせ
パートナーとの息合わせに丁度いいルートである
とはいえ、自身も久しぶりの岩壁なので心して臨む

国民宿舎跡から40分ほどで木戸壁の取付き
装備をつけ初クライミングのazmさんにいくつかレクチャ-を行う

先行パーティーを見送ったら、skmさんリードで登攀開始

1ピッチ目は体が硬くなりがちなので、慎重に

セカンドはazmさん
急遽参加の初クライミング
クライミングシューズはなく登山靴での登攀だが、フォローなので度胸で乗り切ってもらう

ラストのsakは岩壁の感触を確かめながら行く
一方で硬くなった股関節に暗澹たる心境ではあったが、総じて楽しい登攀

2ピッチ目は短めで松の木のあるテラスまで

3ピッチ目がハイライト
右のカンテから高度感のある岩壁を直上
azmさんも夢中で登っている


-初めてのクライミング-

私の「初めて」はいつだったか
そして、どんなことを感じていたか
もはや、追憶の彼方ではっきりと覚えてはいない
それでも確かなのは「夢中だった」ということだ


4ピッチ目
手足の豊富な岩場を右上
大きなハングの基部が終了点

この先、左のルンゼを行けば木戸壁の頭だが、あまり登られてはいない
過去の記憶で言えば、支点もリスも少ない
信頼には足らない岩凸で支点を取りながら、慎重に登った記憶がある

ここで、一休み
と言いたいところではあったが、終了点はあまり広くない傾いた岩場
後続もあるため、速やかに下降に移る

いつもは50m1本で小刻みに同ルートを下降するのだが、今回は後続に被らないようロープを繋いで松の木テラスまで下る

懸念はロープの回収だが、悪い予感は的中する
ロープダウン後にどこかでスタックしたらしく全く引けない
仕方がないので回収した50mを結んで登り返すが、途中後続パーティの方にスタックを解いてもらうことができた(多謝)

都合、3ピッチの懸垂下降で取付
トラブルはあったが、それもクライミングの一部
実体験の引き出しは多い方がいい

今日の出来事を振り返りながら、のんびりと下山
総じて皆、満たされた面持ち

それを見て、こちらも嬉しい
「ロープを結び合う」ということは相手に自分の命を預けること
一方的に頼るものではない

「互いに預ける」

登攀にはそういう意味があると、そう思う


sak


↓ 動画も

 


西上州・鹿岳一ノ岳南壁

2022年11月23日 11時55分10秒 | 山行速報(アルパイン)

時は巡り、たとえ道が変わったとしても魂は消えない。
そして、萌える。

鹿岳一ノ岳南壁を初めて知ったのは、2009年。
山登魂山岳会・鮎島さんの記録だ。

初出記録は「クライミングジャーナル2号」(1982年7月号)
富岡労山により拓かれ、”西上州岩場調査隊ルート”として発表されたとあった。


2022/11/12 西上州・鹿岳一ノ岳南壁


道の駅で合流して、南牧村鹿岳登山口(下高原)手前の駐車場へ。
立派なトイレがあり、すでに数台の車が止まっていた。

そこから少しだけ車道を歩いて、標に従い登山道へと入る。
杉林を30分ほど行くと、右手の樹幹越しに岩壁が見えてくる。
その基部目指して登山道を離れガレをトラバース。



岩壁基部には祠が二つあり、取付きはそこから20mくらい先で立木に水色のスリングが巻いてある。
そして被った岩壁にボルトラダー。

さらにその奥10mにメスねじアンカーがある。
偵察でボルト径も確認しており、これに持参のボルトを差し込んでいくことも検討していた。
しかし、不確定要素も否めないことから確実に上まで繋がっているリングボルトで登攀することにした。

とはいえ、状態は良くない。
3本目はリングの腐食がひどく、色褪せた3mmスリングが垂れている。
4.5本目はリングが飛んでいる。
しかし、それも想定内。
あとは踏ん切りがつくかどうかだ。


◆1P(sak)15m A1

3手目はリングに錆びが目立つものの、テスティングしてリングを使う。
4手目はリング欠損用ハンガ-(「PIKA」と刻印がある)をセット。
リング穴にステンレスカラビナを入れて外れ防止策とする。
5手目はリング穴にちぎれた金属片が詰まっていて外れ防止策が取れないので、件のハンガーを引っかけて祈るように立ちこむ。
スピーディーに6手目に支点をとって一安心。
そしてフォロー用に3mmスリングをセットしておく。
後は比較的状態のいい支点を繋いでリングボルトが3つ打たれたビレイステーション。
手数は10手と記憶。

◆2P(sak)8m Ⅳ-

ビレイステーションからトラバースして直上。
足場が脆いところもあるので要注意。
途中の立木下までトラバース。支点をとって、立ち木を手がかりに一段上がる。
フェイスをさらに直上し、テラスまで。
ここで、右からフリールートが合流する。

◆3P(sak)35m A1 Ⅳ-

左上の小ハングを人工で越える。
1手目は目の前にあるが2手目が見つからない。
ピナクル状の岩に上がって上の様子を窺うと小ハングを乗越した岩上にリングボルトとアングルハーケンが見える。
状態は悪くない。


2手目は完全にアブミにぶら下がる。
安定体制を保つには足が遠くて苦労した。

人工登攀は4手で終了。
スラブ状を行くとリングが3本。(A1後、ここまではⅢ)
本来、ここで切るのかもしれないけど、先に見えるリッジのテラスまで伸ばす。



リッジ手前は傾斜も増してきて、岩も所々で不安定。
支点もなく、脆岩ゾーンに入り込んでしまいハマりかける。
この辺りはルーファイによっては、苦労するのかもしれない。
ちなみにこのテラスに支点はない。(ハーケンで構築)

◆4P(isi)40m Ⅳ-

リッジを右上。
しかし、岩が脆く支点は灌木以外は少ない。
頭上にハング。途中でハーケンの連打がありここで切る。
ハーケンは錆がひどいので、キャメで補強。
グレード以上に悪さが際立つピッチ。

◆5P(sak)40m Ⅳ

右斜上するハング下のフェイスを右上。
岩は安定、支点も散見。
途中、支点に誘われ右のリッジへ回り込むが、最終的にフェイスに戻る。
フェイスへ復帰するトラバースでA0。

この辺はハング上に鳥(ハヤブサ?)の営巣があって、フンが落ちてくるので要注意。
フェイス上部で再度右に回り込んで凹角を松の木右脇のテラスまで。
支点はないので、ハーケンとキャメで構築。

◆6P(isi)45m Ⅲ+

頂上まですっきりとしたフェイスが広がる。
比較的岩は安定しているが、時に浮岩もあるので要注意。
スタンス、ホールドは豊富。フリクションも抜群。
だけど、灌木以外に支点はなく、小さめのキャメ、ボールナッツ、ハーケンで支点構築。

◆7P(isi)40m Ⅳ

夕暮れを迎える。
日暮れまでにリードは上まで抜けておきたいので、登攀巧者のisiさんにリードを託す。
彼はオーダーに応えてくれて闇に巻かれる前にトップアウト。
流石だ。

岩は安定していて、ホールドスタンスも状態はいい。
しかし、残置なきリードは心理的タフさが要求される。
支点は小さめのカムデバイスでとれるが、ランナウトする場合は十分に注意したい。

ヘッデンを灯して、フォロー。
途中でロープがイワヒバにハマり、ザイルアップに苦労しているのがロープの動きでわかる。
日暮れに追われながらの登攀でも、パートナーは適宜カムで支点をとっていた。
寡黙な彼の冷静なる登攀に敬意を表す。

闇中の壁は高度感が薄れて大胆に行けるが、最後まで岩のテスティングに気を配る。
藪が出てきたら、実質登攀は終了。
isiさんと再会の挨拶。

あとは、一ノ岳の肩(展望場)まで10mくらいの藪岩歩き。
肩がらみでisiさんを迎えて握手。
パートナーに感謝。

しかし、時間がかかりすぎた。
慎重さは必要だが、遅延は大きなリスクだ。
支点構築などスピーディーに対処できないと厳しい。
反省。


前半、不安を覚える支点でのエイド。
後半は心理的なタフさを要求される登攀。
様々な要素を併せ持ったクライミング。
こういうのも悪くない。


山登魂山岳会・鮎島さんは、登攀を終えこう締めくくった。
「いい山登りの良し悪しの基準とはビビるかどうかだ」(黒部の怪人、和田城志氏による言葉)としたら、
今回のクライミングも間違いなく、「ビビったクライミング」=素晴らしいクライミング=「魂のクライミング」だったのです。


登攀後、互いの無事に安堵しながら暗闇をヘッデンで切り裂いて歩く。

時は巡り、たとえ道が変わったとしてもこの日は決して変わらない。 
そこに、言葉は要らない。


sak

 


動画も

 

 


金山沢鉱山道・赤岩第一スラブ

2021年11月05日 14時40分30秒 | 山行速報(アルパイン)

2021/10/30 金山沢鉱山道・赤岩第一スラブ


遺構と 敬意と 登攀と


行動食にチョコレート。
甘みとコク。香り、とろける食感。
ひとたび口にすれば体中に広がる幸せ。
何より、わずかな苦みがいい。


越後駒ヶ岳の北面、佐梨川の源流にある金山沢奥壁。
高距は六百~七百メートルある大岩壁。
スラブを主体とした岩壁群でプロテクションの乏しいルートは、グレ-ド以上の充実感を伴うものとなろう。
加えて、この大岩壁の只中にはかつての銅試掘の遺構が残り、今も当時を偲ぶ場所となっている。

遺構×登攀

魅力的なキーワ-ドが相乗し「いつかきっと」の場所であった。

偵察行も兼ね、奥壁に通ずる鉱山道が横切る「赤岩スラブ」の計画にisiさんが乗ってくれた。
彼も金山沢奥壁に興味があったと聞く。
赤岩第一スラブを選んだのは、山岳会の先輩Nさんの名が初出記録として日本登山大系に記されていたからだ。

遺構×敬意×登攀

時代を遡る山旅。
今の自分に何を感じることができるだろうか。

駒の湯第二駐車場から、林道を歩く。
朝露の草を掻き分け行くので、早々に濡鼠。

桑ノ木沢出合から沢沿を行きかけるが、isiさんの進言もあり右岸道を行く。
沢沿いも可能らしいが、沢靴がいいだろう。

径は草に隠れて気を使う。
近年、地元山岳会諸氏により鉱山道の刈払いが実施されていると聞くが、病禍による影響で近年は行われていないのかもしれない。
いづれにしても、この踏み跡は大変な労苦により成り立っており、敬意を表したい。

やがて、径は桑ノ木沢を横断し家ノ串尾根へ取付く。
尾根を回り込むと山の神。
金山沢、雪山沢が見えてくる。

ここからは尾根の中腹を緩く登っていく。
足元は草木に隠れ、加えて金山沢側は急激に落ち込んでいるため滑落には十分注意。

岩を穿った水平歩道が現れ、この岩壁が「赤岩スラブ」だ。
眼下、吸い込まれるように金山沢。
「これは、滑ったら止まらないね」というのが一目瞭然。
慎重に足元を探り、行く先に奥壁を垣間見ながら進む。

第三スラブ、第二スラブを通過し、第一スラブ。
各々の要所にスラブ名が記されている。

第一スラブを通過し水場ルンゼ脇の広場(以下、広場)で小休止したら、金山台地まで偵察。
顕著に並ぶ五つのスラブ。

その中間部に走る鉱山道。そして坑口。
いやはや、よくあの場所を穿つ気になったな、と先人の偉業を称えたい。

往路を戻り、広場で装備を付けたら第一スラブを俯瞰。
取り付きから、白いS字のように見える岩を目指していくことにする。

懸念は下山路だが、広場から上の尾根に↑マークを発見。
おそらく、鉱山道から郡界尾根までの踏み跡というのがこれであろう。
家ノ串尾根まで詰めたらこの支尾根を下ろうということで落ち着いた。

所々、濡れてはいるがヤスリのようなザラザラ岩にフリクションは良く効く。
概ねどこでも登れそうではあるが、支点はない。
見立て通りS字白岩を目指すと、しっかりしたボルトがあった。
その先でロープいっぱいとなり、灌木で支点をとるが先ほどのボルトでとった方がプロテクションとしては安全だ。

2ピッチ目はisiさん。
傾斜も少し立ってきて、面白い。
途中ハーケンで支点をとりながら行き、終了点は2個目のボルト。

3ピッチ目は次第に傾斜も緩んできて中間バンド。
ハ-ケン連打で支点とする。

そこからは岩と草付きのミックスを尾根に向かうが、ヌルベタで結構悪い。
と、不意に〇のペイント。よく見ると↑ペイントも散見。
どうやら、広場からの踏み跡は支尾根から水場ルンゼ(中間バンド)を横切って第一ルンゼ上の尾根に続くらしい。

ここで登攀は終了し、ロープを解く。
ペイントに従って下山するが、際どい場面も少なくない。

広場まで戻って装備を解きながら、これからのことなど話していると山道に人影。
ガイドさんをはじめ数名のパーティ-で、今日は金山台地で幕とし、明日は坑道探索をするという。
なかなか魅力的なプランだなと思い、後続の方々を待つ間、ガイドさんに坑道探索の事や金山沢奥壁第四スラブについてなど聞く。
大変詳しく教えていただき、楽しい寸暇を過ごす。

パ-ティ-を見送り、我々も下山にかかる。
たとえ数人でも人の通過した後の道は往路よりだいぶ歩きやすくなっている。
しかし、足元には要注意。
明るいうちの下山だから良いものの、ヘッデン下山となれば恐ろしいレベルだ。

桑ノ木沢で小休止。

チョコレートを口にする。
体中に広がる幸せと、わずかな苦み。

日常の些事は、時に苦い。
苦悩。それは重力のようなもの。
私たちは、それに抗い次の一手を延ばしていく。


昔も今も。

 


-後日談-

ネット検索していると、当日お会いしたガイドさんは篠原達郎さんでした。(HPガイドスケジュ-ルで判明)
どこかで会った方のような気がしていたのですが、その時には気づきませんでした。

篠原さんとは2020年末に南伊豆(吉田海岸・魔王)で前後していて、「山の世界は意外と狭い」を実感。
勝手に親近感を抱くのでした。

またどこかで、お会いするかもしれないですね。

おわり

 

 

↓動画

越後・金山沢鉱山道~赤岩第一スラブ


sak


南伊豆・吉田海岸 魔王

2020年12月24日 16時30分49秒 | 山行速報(アルパイン)

2020/12/14 南伊豆・吉田海岸 魔王 

 

もちろん、山は好きだが、海も好きだ。
山でスカイラインを望むように、海には水平線がある。
僕らは境界の彼方に何を見るのか。

目指すはシ-クリフ。
ワクワクが止まらないのは言うまでもない。

走れ。
闇中を、南へ。

前夜、吉田海岸まで入る。
集合場所は想像したよりずいぶん狭い駐車スペ-ス(2~3台)。
往路を戻って近くの道の駅で集合し、車1台乗り合わせとして現地入りすることにした。


翌朝、車はすでに2台。突当りのトイレ脇駐車スペ-スは埋まっていた。
昨夜は見いだせなかったが、すこし手前の路側帯にも数台停められそう。
平日であることに安堵。

ちなみに1台はクライミングが目的みたい。
急いで競走みたいになるのも、なんだかなぁ。。。という気がしたのでノンビリ準備。

パ-トナ-はisiさん。
遠路、南伊豆の提案に快く乗ってくれた。
有難き幸せ。

海を正面に右の岬を越えようと、ログ風建物前の広場を行くが小川に阻まれ、結局は堤防に出て岬のコルを目指す。
先行が進んだ経路からコル左寄りを目指したが、自然と右寄り、最低コルへの踏み後に入ってしまう。
そこからは”沢ヤ”的なカンで草付きとボロルンゼを下る。(ちょっと怖い)

※帰りに分かったことだが、コル左寄り(岬側)を超えた先にはフィックスが張ってあるので安全に下れる。

大小、岩の転がる海岸を行く。
まるで沢登りのようだが、フリクションが効いて小気味良く歩ける。

今日は、2018年にガイドの木村・山下両氏が開拓した4ピッチル-ト「魔王」の登攀が目的だ。

取り付きで準備をしながら先行を見送る。
打ち寄せる波が激しく、時に波しぶきが風に舞う。
大潮なので、潮位も高いのだろう。

先行リ-ドが2ピッチ目をスタ-トしてから我々も出発。


攀じれ。
岩壁を、空へ。


1ピッチ:sak
緩傾斜のスラブから草付きバンドを伝って立ち木まで。
スラブ上部にボルトがある。
草付きバンドは問題なく歩けるが、念のため岩溝にカムで支点をとる。


2ピッチ:isi
草付きバンドを進み、右のフェイスを登る。
傾斜は立っているけど、カチやポケットがたくさんあってフリクションもバチ効き。
岩登りは良いですなぁ。って感じ。
フェイスの後は岩バンドを左へ。凹角を右上して2ピッチ目は終了。


3ピッチ:sak
凹角右のフェイスを行く。
2ピンとったら、凹角を跨いで左の岩溝に入る。
岩溝を登ると小テラス。
先行がここで切って、先を譲ってくれた。

その先のスラブ状カンテはホ-ルドが細かく少し難しい。
立木のある大きなテラスで切る。


4ピッチ:isi
ル-トの核心。コ-ナ-スラブ。
2ピンまで足が少なく怖い。
無念のA0。

その先、スラブを右へトラバ-ス。
手足が細かくペタシペタシとごまかしながら。
本来はその先も繋げるのだが、核心だけ短く切ろうというのは事前打ち合わせ通り。


5ピッチ:sak
コ-ナ-から左クラックを登りスラブを直上。
容易だが岩も柔らかいので慎重に。
念のためカムと灌木を数ケ所使う。
稜線の灌木でフォロ-を迎え、終了。


輝く海原は美しく、風が強い。


飛べ。
海原を、彼方へ。

自由な風に不自由を恵んでやるよ。
潮風に手綱をつけてやれ。

空と海の境界を見に行こうぜ。
欲しいものなんか後でいい。
必要なのはそんなんじゃない。


藪の稜線をしばらく下る。
コルあたりで踏み後がなくなったので、周辺を探すと捨て縄があった。

ここから懸垂下降。
50m×3ピッチとガイドブックにあったが、1ピッチ目は25mほどで次のラッペルステ-ション。
明らかに下の立木まで届くと思ったが、念のためここで切る。

結果としてこれが正解。

稜線の灌木は海風に鍛えられ枝張りが濃く、強靭。

そのためロープ回収時に、灌木でスタック。
isiさんに登り返してもらい、無事回収。
やれやれ。

結局、立木を繋いで4ピッチの懸垂下降。
スタ-ト地点に戻って大休止。

白波立つ海岸で装備をしまいながら、これからの話をする。

憧れはいくつもある。
日常と折り合いをつけながら、次を目指す。
このくらいの自由が丁度いい。


行け。
この道を、未来へ。


sak