acc-j茨城 山岳会日記

acc-j茨城
山でのあれこれ、便りにのせて


ただいま、acc-jでは新しい山の仲間を募集中です。

会越 御神楽岳・水晶尾根

2023年11月21日 22時36分33秒 | 山行速報(薮・岩)

2023/11/9 会越 御神楽岳・水晶尾根


晩秋の善き日に会越・御神楽
思いは通じ、目指すは水晶尾根
azmさんと


-魔法なんて、幻想だと思ってた-

岩壁に咲く彩葉
神が創りし、不溶氷

沢を遡り、藪を漕ぎ、岩を攀じる
そして静かな山旅
それは魔法のようなシチュエーション


前夜、津川で車中泊
4時に起床し、蝉が平先の登山口へ
暗いうちから歩き出すが、スモヒラまでの道は結構スリリング

登山道を右に見送り、直進して広谷川に出る
ここで装備をつけて、遡行開始

季節は晩秋
流石に腰まで流れに浸かりたくはないので、概ねへつる
1か所あるゴルジュは右岸巻き
ラクダの窓沢を仰ぎ見て、しばし進むと本名穴沢

いくつかの滝を越えると視界は開け、岩峰を縫うように走るスラブが見て取れる
そして右岸、トマノ左俣の細やかな流れに入る

途中、azmさんがゴーロの中に水晶を見つける

水晶は日本の国石
身につけることで邪気を払い、災難を防いでくれる効果があるといわれる
「水晶尾根」はその名の通り神の創りし不溶氷を見ることができ、スピリチュアルな魅力にも溢れている

トマノ左俣沢を少し登れば、左岸に濡れたスラブが現れる
過去の記録ではこちらを登ると記憶していたが、なかなか大変な登りになりそう

ここで一考
濡れたスラブの少し上流右岸から小尾根に乗って地形図上の尾根末端を目指してはどうか?
湯沢の頭までの距離は長くなるが尾根には乗りやすそうに見えた

ひとまず、偵察
右岸の草付きをひと登り
突き出たスラブの基部を左から回り込んで、スラブ上
そこから10mくらいの岩登りをすれば、あとは藪がつながり容易に支尾根に乗れそうだった

とはいえ、沢慣れしていないazmさんにはちょっと辛い登りだったみたい
不安は装備で解消しておこう、との考えからロープを出す

尾根に乗ってからはリッジを進む
始めは藪尾根、すぐに岩峰が現れて正面の藪を繋いで行く
次の岩峰は右を巻くように進むとしばらく藪が続き、扇状に広がる岩壁
右には山伏ノドームの威容が見える
そこを左にトラバースしてから右上で尾根に乗る

ここからは細いリッジ
容易だが落ちるとただでは済まないので引き続きロープを出してスタカットで行く

リッジを進み、岩塔を左から巻いて緩いフェイス
さらに細いリッジを進めば核心とされる御神楽槍
これを右から巻き気味に登ると、前方に山伏ノ頭が見える
尾根を目で追うが、結構距離はある

さて、ここで一考
これまで、安全性を重視してスタカットできたために時間は予定を大きく過ぎ、陽は傾き始めていた
日暮れまでには湯沢の頭に到達していないと今日の下山は厳しいだろう

「登山道まで2時間で行きたい。ロープは出さないで行くので、ゆっくりでいいけど休まないで行こう」

azmさんに、そう伝えた
自分にも言い聞かせた

「言葉の力」
それは魔法とも言うのだろうか

幸い、そこからのリッジはこれまでと比べると斜度はなく、藪も濃くない
足元の切れ落ちた場所でのクライムダウンもあるが、足を丁寧においていけば、ロープは要らなかった

尾根を回り込みながら行く辺りは、下を見るとスラブが続き落ちたら止まりそうもない
何か所かでお助けロープを使いながらも、あれほど遠くに見えた山伏ノ頭も目前まで迫っていた

フリクション抜群の岩場を登って、山伏ノ頭
そこから湯沢ノ頭まで藪を漕ぎ、闇に呑まれる前に登山道に出ることができた

目前の危機は脱し安堵
さて、ここからが踏ん張りどころ

あとは登山道をコロコロと、と言いたいところだけどヘッデンで行く栄太郎新道はなかなかスリリング
途中ルーファイで右往左往する場面もあったが、慌てることなく道を見出しながら慎重に下る
GPSアプリ様様

azmさんは弱音を吐くこともなく歩き続けてくれている
「強い山屋になるかもしれない」
そんなことを思わせる歩みだった

スモヒラで空になった水筒を満たして、喉を潤す
最後の休憩で行動食を摂るが、すでに晩飯の時間は過ぎている
それでも心折れないのは、あの日の苦闘があったからといっても過言ではない

あの日の苦闘

それは17年前の八ヶ岳
冬、阿弥陀岳北西稜での出来事だ
あの日も核心を抜けて、稜線の向こうに沈む夕日を見た

氷点下の暗闇を歩きながら頬張った飴が実に旨かった
先を行くsatoさんの背中が頼もしかった
そして、こんなシチュエーションに高揚した
まるで、自分が強くなったような気がして嬉しかったからだ

あの時の記憶が、今日の私を歩かせている

言葉の力
あの日の記憶

魔法なんて、幻想だと思ってた

でも、魔法はある
今ならそう言える

そして、それは繋がっていく

いつかきっと
今日を思い出すときに


sak



※ゴールが御神楽温泉になっているのはGPSアプリの消し忘れです


↓動画も

 


会越・浅草岳~鬼が面山

2023年11月15日 19時50分42秒 | 山行速報(登山・ハイキング)


2023/11/1 会越・浅草岳~鬼が面山


秋を歩く

彩りに満ちた、径を行く
田子倉から浅草岳、鬼が面山を辿って六十里越へ


六十里越の登山口に車をデポして、田子倉の登山口を目指す
歩けば2時間掛る所を、持参の自転車で約20分ダウンヒル

途中でiphoneを車に忘れたことに気付く
しかし「山と高原地図」もあるので、まぁなんとかなるだろうと気にせず自転車で滑走を続けた

田子倉の休憩所から中崎尾根を目指すが、途中で入叶津に至る踏み跡に入り込む
野趣あふれる道だなと思ったもののしばらく進み、浅草岳が背後に鎮座しているのを見てルートミスを確信する
iphoneのGPSアプリがないだけでこれかよ、と暗澹たる思い
手元にある24年前の地図にこの道はなく、詰めの甘さを反省するほかない

とはいっても、まだ時間は十分ある
「人生に寄り道はつきものです」との言い訳に励まされながら往路を戻る
約1時間半のロスだった

浅草岳への登路に復帰し、しばらくはゆったりとした道を樹々の彩りに癒されながら歩く
大久保沢の水場で小休止
ここからは急な登りとなる

次第に冬枯れの様相になっては来るが、南会津と会越、奥只見の景観も広がる
剣が峰では田子倉湖や鬼が面山東面の岩壁が美しい
もちろん、行く手に鎮座する浅草岳は重厚な山容を横たえている

左に草原が見えてくると山頂まで一投足
同定を尽くせないほどの山々が広がる

頂は旅の終着点ではない
皆、その先を信じて前に進む

鬼が面山までの径は小刻みなアップダウンを繰り返す
そして、東面の絶壁

斜きかけた陽に燃ゆる山襞と影
秋を行く心情、そのものだった

北岳を横目に進むと、鬼が面山
眼下に田子倉、只見が見下ろせる
秋色に染まった絨毯に田子倉ダムの水面が青く鮮やかだ

南岳までの道は一部足元注意
尖塔に立てばこれまで歩いてきた道を一望できる

旅路を振り返る
立ち止まり、山の深さを知る
衰えて尚、足元に気づきを得る
それが何事にも代えがたい

秋を行く
私たちは白秋の先に何を見るのか

空はどこまでもついてくる

 

sak

 

↓動画も

 

 


裏妙義・木戸壁右カンテ

2023年11月10日 20時39分46秒 | 山行速報(アルパイン)


2023/10/22 裏妙義・木戸壁右カンテ

 

木戸壁右カンテは、ホ-ルドもフリクションも支点も充実した岩場
リ-ドやツルベを実戦形式で行うことができ、岩峰に囲まれた景観も素晴らしい

skmさん、azmさんとは岩壁での初手合わせ
パートナーとの息合わせに丁度いいルートである
とはいえ、自身も久しぶりの岩壁なので心して臨む

国民宿舎跡から40分ほどで木戸壁の取付き
装備をつけ初クライミングのazmさんにいくつかレクチャ-を行う

先行パーティーを見送ったら、skmさんリードで登攀開始

1ピッチ目は体が硬くなりがちなので、慎重に

セカンドはazmさん
急遽参加の初クライミング
クライミングシューズはなく登山靴での登攀だが、フォローなので度胸で乗り切ってもらう

ラストのsakは岩壁の感触を確かめながら行く
一方で硬くなった股関節に暗澹たる心境ではあったが、総じて楽しい登攀

2ピッチ目は短めで松の木のあるテラスまで

3ピッチ目がハイライト
右のカンテから高度感のある岩壁を直上
azmさんも夢中で登っている


-初めてのクライミング-

私の「初めて」はいつだったか
そして、どんなことを感じていたか
もはや、追憶の彼方ではっきりと覚えてはいない
それでも確かなのは「夢中だった」ということだ


4ピッチ目
手足の豊富な岩場を右上
大きなハングの基部が終了点

この先、左のルンゼを行けば木戸壁の頭だが、あまり登られてはいない
過去の記憶で言えば、支点もリスも少ない
信頼には足らない岩凸で支点を取りながら、慎重に登った記憶がある

ここで、一休み
と言いたいところではあったが、終了点はあまり広くない傾いた岩場
後続もあるため、速やかに下降に移る

いつもは50m1本で小刻みに同ルートを下降するのだが、今回は後続に被らないようロープを繋いで松の木テラスまで下る

懸念はロープの回収だが、悪い予感は的中する
ロープダウン後にどこかでスタックしたらしく全く引けない
仕方がないので回収した50mを結んで登り返すが、途中後続パーティの方にスタックを解いてもらうことができた(多謝)

都合、3ピッチの懸垂下降で取付
トラブルはあったが、それもクライミングの一部
実体験の引き出しは多い方がいい

今日の出来事を振り返りながら、のんびりと下山
総じて皆、満たされた面持ち

それを見て、こちらも嬉しい
「ロープを結び合う」ということは相手に自分の命を預けること
一方的に頼るものではない

「互いに預ける」

登攀にはそういう意味があると、そう思う


sak


↓ 動画も

 


尾白川・鞍掛沢~乗越沢~日向山

2023年11月06日 21時05分25秒 | 山行速報(沢)

2023/10/16 尾白川・鞍掛沢~乗越沢~日向山

 

初めての沢登り
楽しいと思ってくれるほど嬉しいことはない

あわよくば、また行ってみたい! とか
奥只見や奥利根にも行ってみたい! なんて局地的に興味を抱いてくれたら、殊の外嬉しいに違いない

そんな都合のいい奇跡はともかく、何事にも順序というものがあるのが世の理

そこで「はじめての沢登り」というキーワードでWEB検索してみる
見つけた記事にはこう書いてあった

「当たり前のようですが、はじめての沢登りは重要です。ここで失敗すると沢登りにマイナスのイメージを持たれてしまい、2度目のそれはないかもしれません」

「2度目はない」
そう心に刻む、山行前

 

仕事明けそのままに相方を拾って車を走らせる
今回の相方は初顔合わせのazmさん

「沢登りをやってみたいです」
という言葉に、「これは!もしかして」と胸膨らましながらも冷静を装い、「じゃあ、今度行こうか」と実現した山行だった

前泊の地は「道の駅はくしゅう」
日の出に合わせて矢立石登山口まで

朝陽に森が染まる中、尾白川林道を行く
トンネルをいくつか潜り、径が途切れるところから尾白川へと下る
噂に違わぬ急な下り
足元も悪いので慎重に行く

.

そして尾白川
前日の雨による増水を懸念していたが、遡行には問題なさそうだった

最初に出てくるのが、大きな釜を持った3×4m滝
暑い盛りなら泳ぐのも楽しいだろうが、肌寒い朝には躊躇われ右岸巻き

しばらく遡行すると夫婦滝がなかなかの迫力で迎えてくれる
ここは右岸巻きか滝左のスラブを行くことになる

「ロープ出して行ってみる?」
azmさんに問いかけると「やってみたいです」との応え

傾斜は寝ているものの、足元の滑りもあって慎重にリードする
azmさんもこの「滑り」に苦戦しながらクリアする

登山経験は持ち合わせた彼も、この滑りには閉口気味
表情も曇りがちだった

マズい、極めてマズい
心の裡でそうつぶやく


途中、気分を変えて沢の歩き方や遡行図の見方などレクチャーしながら鞍掛沢に入る
鞍掛沢に入ると明るく開けた渓相と花崗岩のナメ床が美しい
加えて、紅葉の始まりに癒されながら沢を行く
滝はほどほどに出てくるが、滝脇のスラブを登ったり小さく巻いたりして進む


2条5×6滝は左岸巻きもアリだが、2条ある流れの中央突破を試みる
すべすべのナメ滝を細かな岩の弱点を拾っていく
抜け口手前の数歩はフリクション頼みで抜ける

滝上で肩がらみ
azmさんも苦戦しながらなんとか登りきる

「ファイト!一発!」

誰しもそう叫びたくなるような場面こそ記憶に残る
楽しめたかどうかではない
「記憶に残る」
硬派な我々が目指すべきは、そこだ!

そう、そこしかない!


ハング滝6mは手前の滝とともに左岸巻き
右に出合う10m滝
地形図で見ると、これが乗越沢らしく、左岸から巻き上る

この先は水量も格段に少なくなって、滝を登ったり軽く巻いたり、困難はない
しかし、アザミが多いので手元には注意が必要だ

細い流れを淡々と行くと前方にいかにも悪そうなルンゼ
ここは踏み跡に従って右岸の尾根に乗り上げる
小笹の径を行けば鞍掛山のコルに至る

コルで装備を解いて靴を履き替える
前日の低気圧通過、そして冬型の気圧配置で風もやや強く冷たい
ここからは雨具を着こむ

駒岩から日向山へ
下り基調だが、足元が悪い場所もあり慎重に進む

そして日向山

「天空のビーチ」ともいわれる景観と眺望で人気の山
平日でもここを訪れる方は多いみたい

寄せる山波が白砂に沁みる
青い空がどこまでも続く
そして影

まるでファンタジー
この歳になってファンタジーでもなかろうよ、と自嘲もするが自分の気持ちには素直になりたい
美しい記憶を胸に、山を下ればそれぞれの明日が待っている


さて、初めての沢登り
楽しんでいただけましたか?

困難も感動も、挫折も歓喜も
いろんなことが起きるからこそオモシロい

手軽な楽しさより、
労してやり遂げた記憶の方が「本物」
そう、思いませんか?


そういえば、山行前に読んだWEB記事はこう結んであった

「大切なのは、あなたの楽しみ方を知ってもらうだけではなく、その人ならではの楽しみを一緒に見つけてあげること。それは、あなた自身の「山」が広がるチャンスでもあります」

さて、次はどこへ行こうか
「本物」を探しに

硬派な我々が目指すべきは、そこだ!
そうに違いない

否、そう思いたい


sak

 

 

↓ 動画も