acc-j茨城 山岳会日記

acc-j茨城
山でのあれこれ、便りにのせて


ただいま、acc-jでは新しい山の仲間を募集中です。

二子山・中央稜

2020年11月27日 20時05分12秒 | 山行速報(アルパイン)

クライミングロ-ド2020秋 ④


◆2020/11/13 二子山・中央稜


大テラスで一息つきながら、前半を振り返る。

 

1ピッチは体慣らし。
取り付きから直上、右のクラックを抜けるところが少し緊張する。

 

2ピッチ目は突き出たフェイスの登りが爽快だった。

 

3ピッチ目は逆Yのクラック。
レイバックとジャミングで体を上げ、乾いた岩にスメアも効く。
核心では左クラックに手がかりを求めるがなかなか決まらず、無念のA0。

そこで、思い出したのが過去の記憶だ。

二子山中央稜に来たのは3度目だが、なぜか記録は残していなかった。
最初に来たのはmさんと、もう16年前のことだ。

次に来たのはいつ誰とであったか、朧げだ。
ただ、濡れた石灰岩に難儀し、このピッチでセミになりかけた苦い記憶だけが残っている。
二子山再訪に間が空いたのは、そんな闇に囚われたか。

今回の旅の終着点、二子山の選択に他意はなかった。
しかし、それは闇を振り払うためだったのかもしれない。

でも、また宿題となってしまったなと、そんなことを思いながら後半ピッチはkumさんにリ-ド交代。


ここから先は楽しい記憶しかないピッチですよ。

核心ピッチで消耗したようであったが、「行きます!」と元気に答える。
そうこなきゃ、ね。

ここからのクライミングは実に楽しい。
開放的な景色、程よい傾斜に手がかり。
kumさん、endさんには、それを感じてほしい。

kumさんのクライミングはしなやかだ。
慎重さも兼ね備えており、安定している。
アルパイン向きだ。

endさんも快調に高度を稼ぐ。
高度感にもずいぶん慣れて来たようだ。
場数を踏めば、優れた身体能力を活かせることだろう。

 

終了点でロ-プを畳んだら、山頂へ。
後続を見ながら、登攀の余韻に浸る。
脳裏に流れるのは、あの曲だ。

♪~


旅には、音楽と出逢いと学びがある。
僕らはそれらに笑い、躓き、気づき、成長する。

あと、10年若かったら。
思い返してみれば、約10年前 -正確には9年8カ月程前だが- にも同じことを言っていた。


苦笑する。
しかしながら、今もこうして一緒に山へと向き合う仲間がいる。
ありがたいことだ。

これからも共に笑い、躓き、気づき、成長していく。
そういう物語が続けていけたら、いい。



sak

 

クライミングロ-ド2020秋 ①から読む


松木沢ジャンダルム 中央壁直上ル-ト

2020年11月26日 19時30分15秒 | 山行速報(アルパイン)

クライミングロ-ド2020秋 ③


◆2020/11/12 松木沢ジャンダルム 中央壁直上ル-ト


銅親水公園へ集まったのは5人。

5人というのは何か宇宙的な力学に操られているかのようだ。
戦隊ヒ-ロ-然り、アイドルグル-プ然り。
剣道や柔道の団体競技も先鋒から大将まで、5人がワンチ-ム。
音楽で言うならクインテット。
日本史の授業で「五人組制度」というのもあったな、と思い出す。

秋のクライミングロ-ドに参加するメンバ-が全員揃うのは今日だけ。
宇宙的な作用で集まったオ-ルキャストが目指すのは、松木沢ジャンダルム。

朝日に照らされた中央壁。
その真ん中にあるクラックを繋いで直上するのが今日のル-トだ。

松木沢のロ-プが張ってある所を飛び石伝いにわたって、対岸に渡る。
踏み後を拾っていくが途中見失い、適当に岩壁基部目指していく。
岩壁を少し左に回り込む。

上部にハング岩が見えるのは中央ルンゼ取り付き。
さらに20mほど行ったところ。
岩がガタガタ(ギザギザ)したチムニ-が見える。
ここが中央壁直上ル-トの取付きだ。

 

先発はisi-end・kumパ-ティ-。
isiさんの登攀力とル-ファイで先陣を切っていただく。
endさんにはクライミングを感じていただき、kumさんには後半リ-ドをしていただく計画。

後発はsak-miyパ-ティ-。
こちらはツルベ登攀。miyさんにツルベ登攀を実践してもらうというのが目的だ。

それぞれの課題と向き合い、実践する。
それが今日の目的。
さぁ、楽しい岩登りの時間です。

1ピッチ
チムニ-を直上し、右に乗り移る。
乗り移るあたりが面白い。

 

2ピッチ
緩いスラブから中間部、2mほどの乗越が第一関門。
その先のクラックを直上し、上部で左に現れるフレ-ク+オフウィズス。
ここが第二関門だろう。

腕と肩を入れ、足をスメアで突っ張り、体をズリ上げる。
我ながら、強引な登りだ。
この辺りはそれぞれに登り方は違うのだと思う。

カムは#4が2つあるといい。
クラック下部で1つ、上部で1つ。上部は#5でもOK。

先陣を切るisiさんのクライミングは安定している。
現在、当会で一番登れるメンバ-だろう。
ストイックな取り組み姿勢にも襟を正される思いだ。

 

3ピッチ
左のスラブを乗り越えると、次第にガレ場。
足元が非常に不安定なので、落石に注意しながら行く。
中央ルンゼとここで合流。

大バンドは休憩にいい広さ。
とはいえ上部からの落石なども懸念され、自己確保とヘルメットは必須。

 

4ピッチ
3本クラックを行く。
先発はここからkumさんがリ-ド。

先発は右、後発は中央を行く。
中央クラックはカムがよく決まり、足をねじ込んで快適な登り。

5ピッチ
スラブを一段上がり、左上。
チムニ-をステミングで行く。

6ピッチ
中央の凹角。
上部が被り気味だが、手掛かりは多いので楽しく登れる。
そこを抜けると、ジャンダルムの頂。
松木沢を眼下に、振り返れば中倉山が大きい。


♪~

感じてほしいんだ

一歩目の胸の高鳴りや
触れる手掛かりの温もりや
悔しさや
その先にある蒼い空を

僕はそうやって壁を越えてきた
今も胸の高鳴りは止まないぜ

 


下降は、右ルンゼを踏み後に導かれて行く。
わずかで、懸垂支点。
念のためダブルロ-プでの懸垂下降。
50m1本でも足りるとは思う。
しかし、落石の起きやすいところなのでフォ-ルラインの外れる場所までの退避を考慮。
2本あるといいかなと思う。

その後はガレガレの踏み後を行く。
途中、急な場所にはフィックスもある。
踏み後を行けば松木沢の渡渉点。
あとは気軽な林道歩きだ。

課題と向き合い、実践する。
5人、それぞれの課題だ。
そして見つけた課題は明日につながる。

明日という言葉には、希望がある。
そして未来を感じる。

明日も休みだぁ------。
明日は仕事かぁ------。

多少? 心の様相の違いはあれど、私達には明日が待っている。
暮れ行く中で、互いの明日にエ-ルを送る。

あとは次なる登攀の地へと、気ままに移動しながら風呂に入って、好物を仕入れる。
万葉の里のデッキテラスで独り祝杯。


プレモル(※プレミアムモルツの略)はやっぱり最高。
あれ?箸はどこだっけ?

「明日も休み」
実にいい響きだ。

果してどんな一日になるのだろう。

 

つづく


sak

 

クライミングロ-ド2020秋 ①から読む


天狗山ダイレクト

2020年11月25日 19時39分32秒 | 山行速報(アルパイン)

クライミングロ-ド2020秋 ②


◆2020/11/5 天狗山ダイレクト


遠路、「野猿返し」に行くのならと計画したのが「天狗山ダイレクト」
往年の登路を近年、山岳ガイドの佐藤勇介氏が整備したという。

さらに2020年夏には巻き気味に登っていた山頂直下の岩壁を直登すべく再整備。
HPで詳細が公開されている。
題して「天狗山ダイレクトダイレクト」

佐藤勇介氏のHPはこちら

面白いネ-ミングに加えてこの手の登攀が大好物のsakにとって非常に気になる1本。
思い起こせば8年前、「男山ダイレクト」も楽しかったなぁ。


こうなれば、行かない理由はない。
というか、行きたい。
否、行くべきだ。


馬越峠に車を止めて天狗山登山道を山頂に向けて40分ほど。
山頂直下の鞍部から踏み後を拾って下降。
ピンクテ-プがしっかりあって、迷うことはなかった。

右にケルン、そこからトラバ-ス。
踏み後は薄く目印はないが、迷うことなく取り付き。
左手下にボルダ-チックな岩が、”デン”と横たわっているのでわかりやすい。

 


1ピッチ
階段状の岩場を行く。
条件が悪ければ左から巻いて、実質登攀開始の2ピッチ目からスタ-トすることもできる。

 

2ピッチ
ここは正面のリッジと左凹角を行く2ル-トがあるらしい。
素直に行くと正面リッジかと思うが、どうやら左凹角の方がオモシロイみたい。

ということでここはオモシロい方へ賭けてみる。
右のクラックにカムで支点を得ながら、5mくらい上がり左フェイスに乗り移る。
フェイスにはハ-ケンが二か所あり、それに導かれ右上。
凹角へ戻るように行き、最終的にリッジへ乗って松の木でピッチを切る。

3ピッチ
正面岩稜を右に巻き、右側壁のクラックを行く。
手がかりは豊富なので、快適な登り。

4ピッチ
岩交じりの稜をコンテでしばらく歩く。

5ピッチ
「門」と呼ばれる岩塔。
ワイドクラック右の階段状から行く。
最終的にはワイドクラックを跨ぎ乗り越すことになる。
支点は残置ハ-ケンを利用。

6ピッチ
尾根上の歩きピッチ。
次第に三段岩壁が見えてくる。
ここで小休止。

7ピッチ
三段岩壁の1~2段を行く。

1段目は立っているものの、しっかりしたハンガ-が二つ。
手がかり足掛かりは多いので、楽しい。
2段目の正面リッジは今にも崩れそう。
そこで、左にトラバ-ス。
階段状を上がって、松の木でピッチを切る。


8ピッチ
三段岩壁の3段目。
正面壁は脆いハングが威圧感を放っている。
その左。スラブにボルトがあって、そこから回り込む。
クラックもあるのでカムが有効。
立ち木で切る。


9ピッチ
階段状の岩場。
miyさんにロ-プワ-クの練習をと、リ-ドを頼む。
樹林帯に入って、終了。

あとは尾根を伝って祠がみえたら山頂は一投足。
見晴らしのいい、天狗山山頂だ。

昨日は昨日で最高だったけど、今日も最高だ。

乾いた岩、尖ったリッジ、傾斜の強い壁に程よいガバ。
クライミングを楽しめる要素が満載の二日間だった。


そうして山旅と山旅の間に現実が加わる。
山と日常と、どちらが自分の本質か。

とかく日常は同じようなことの繰り返し。
夜、第三のビ-ルはまぁまぁ旨いけど、一日を振り返ればウンザリしてしまうことが多いものだ。

しかし、次なるル-トに想い馳せながら過ごすそれは、満更退屈ではなかった。


つづく


sak


クライミングロ-ド2020秋 ①から読む


金峰山川東股沢・野猿返し

2020年11月23日 22時32分29秒 | 山行速報(アルパイン)

クライミングロ-ド2020秋 ①


クライミングへの憧れは、いつ芽生えたのか。
そんなことも記憶の彼方に霞む。
歳月は、残酷だ。

眩しいくらいにクライミングを欲する新人に触れる度に感じる焦燥。
あと、10年若かったら。
などと思うのは、明らかに言い訳だ。

11月。
そんな言い訳に抗らおうと、クライミングで繋げる旅に出ようと考えた。
もちろん、新人たちに背中を押された形だ。

とはいえ、まとまった休みは取れないので、2×2=4日のクライミングロ-ド。
ル-トは「行ってみたいリスト」から手ごろなグレ-ドをチョイス。
そうと決まれば、心は踊る。


◆2020/11/4 金峰山川東股沢・野猿返し


最高です。
もう言うことありません。

花崗岩最高!
白樺林最高!
落葉松の黄葉最高!

思わず、叫びたくなる。


前夜、大弛峠下広場まで。
今年最初の寒気が入って、もはや秋とは言えない気温。
冬用シュラフを持ってこなかったことを後悔したけど、なんとか眠れた。

明け方miyさんと合流して東股の野猿返しへ。
道中の白樺林がなんとも美しい。

「キャンプ禁止」の看板が二つ続くところを過ぎたあたりで沢へ。
ジャンプして流れを渡り、ケルンに導かれる。
取り付きを探して少し彷徨したものの、特徴あるクラックが目印のスラブを見つけてクライムオン。

上部のハンガ-ボルトを目指し、右寄りのクラックをいくが、どうやら左寄りのほうが容易らしい。
初っ端から奮戦模様。
miyさんもハラハラしただろう。

あとは思い思いに岩稜(時にクライムダウン)を行く。
支点は立ち木とカム。
#0.4~#3を1セットで不足はない。

クライムダウンがあると、ロ-プが重くなる。
ピッチ切りはそれに応じて判断する。

突き出た岩稜帯は快適そのもの。
もちろん、この乾いた岩があってこそだろう。

ロケ-ションが実にいい。
落葉松林の彩りはもはや黄金色の草原。
伸びやかな山様に突き出した岩塔も美しい。

終了点直前で今辿ったル-ト全体が見通せる。
それを眺めながらの振り返り。
核心ピッチがどうだったとか、あの時どうしたとか、何処が面白かったとか。

miyさんは先月入会。
日和田山での練習を経て、初のマルチピッチ。
「楽しい」を連発。

sakだって同じだ。
「楽しい」どころか、最高だ。

終了点から懸垂下降。
踏み後を辿っての下山もわずか。

あとは川上村で風呂に入って、まったり。
ナナ-ズで好物の総菜を仕入れて車中宴会。
今日という日を労らい口にする、ビ-ルはやはり旨し。

聞けばmiyさんは野球をはじめ、バイクやパラグライダ-などかなり極めているみたい。
自分の知らない世界を垣間見るのはとても新鮮。
この調子でクライミングに本腰を入れたら、上達も早いことでしょう。
新しい仲間との出会いには様々な発見がある。
それもこれも岩のお陰だ。

クライミング最高!
ナナ-ズの総菜、最高!
プレモル(※プレミアムモルツの略)最高!
あれ?箸はどこだっけ?

夜間は-6℃。(マジで寒い)
それを補うに余りある、初日が暮れ行くのであった。

ちなみに我が愛車とは長い付き合い。
すでに走行距離は30万キロを超えた。
幾度、車中で夜を越したか。

寝袋に入ってリアウインドウから星空を見上げる。
山に入ることを実感する。
そうして、眠りにつくのだ。

さあ、明日は天狗山ダイレクト。
今夏に整備されたという三段岩壁。
はたして。


つづく

 


sak


奥秩父・西のナメ沢

2020年11月18日 18時48分44秒 | 山行速報(沢)

2020/10/31 奥秩父・西のナメ沢


沢納に、秋彩の東沢。

選択は間違いなく、正しい。
事実、ゆらゆらとした流れに秋の彩りは美麗であった。

ただ一つを除いては-----。

 

早朝。まだ暗い、西沢渓谷駐車場。
endさんとヘッドランプを灯して笛吹川東沢を目指す。

アプロ-チは快適な平坦路で近況など話しながら行けば、あっという間だ。
西沢を分かち、鶏冠谷出合で渡渉。
東沢左岸の踏み後を丹念に拾って行くと次第に沢と交わるようになる。

東沢はナメが発達し、沢登の魅力にあふれている。
ゆらゆらとした流れ。
紅葉を愛でながらスラブ状の沢べりを行く。
もう、それだけで癒されるというものだ。

東のナメ沢は、どスラブのナメ床が4段300m。
圧巻だ。

そして、西のナメ沢出合で小休止。

本日の選択は西のナメ沢。
東沢から西のナメ沢を遡り、西沢へと下る。

笛吹川流域の秋を堪能し尽くす贅沢な計画。


~耳を傾けてごらん~

ナメ滝をサラサラと流れる、その水音に。
漣が繰り返し、繰り返し奏でるんだよ。
忙しい君に、心落ち着くその揺らぎを贈るよ。


~見上げてごらん~

淡水色の秋空を。
秋風に紅葉が舞い、やがてナメに流されていく。
心深き君に、己を顧みるその様を贈るよ。


~想像してごらん~

そのナメ滝を登る姿を。
漣を遡り、時として水濡れた落葉を踏む。
他でもない僕に、贈るよ。


~試してごらん~

アクアステルスのソ-ルを。
西のナメ沢では、滑って滑って登れないよ。
まさかの「ナメ滝全部巻き」を贈るよ。

次第に、苔むす流れになって癒されますが、依然ヌメヌメです。
「これじゃあ、ナメ滝ならぬ、ヌメ滝じゃん」などと、盛り上がりながら行くのも思い出深きものです。

尾根に上がって、石塔尾根を下る。
倒木の迷路を縫い尾根を外さないよう。

コロコロと下山しながら、思うことはただ一つ。
今日は滝を登った、そういう印象がない。

~思い出してごらん~

滝を登ったという記憶を。
季節の悪戯か。僕にその資質がなかったのか。
これからそこを目指すみんなに贈るよ。


と、いうことで。
ナメは、ほぼ巻きました。

(注)巻きも結構ハラハラします。


sak