acc-j茨城 山岳会日記

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山でのあれこれ、便りにのせて


ただいま、acc-jでは新しい山の仲間を募集中です。

奥利根・利根川本流

2007年08月18日 18時19分14秒 | 山行速報(沢)

2007/8月中旬 奥利根・利根川本流

源流


神龍の源、鱗の落とす一滴はどんな味がするものだろう。

利根川は、坂東太郎とも言われた関東の暴川。 
遥か上信越国境・大水上山に源を発し、関東平野を流れ、銚子で太平洋に注ぐ 国内屈指の大河である。 
その下流域に生まれ育った者として、大河との関わりは深い。

利根川源流を意識したのはいつの頃だったか。 
ブラウン管に映し出される水源紀行に感嘆の溜息。 憧憬と感激はモチロンながら、憂いの溜息でもあった。 
それは気持ちのどこかで自身の自由に諦めがあったから。 
実現の光が見えたのは、手を引いてくれた仲間がいたからに他ならない。

前夜、回送車デポなどの手配を終え、湯檜曽駅で横になったのは2:30。 4:30までの僅かな仮眠。あっという間に目覚ましのアラ-ム。 
5:00に予約のタクシ-で矢木沢ダムまで。矢木沢ダムは奥利根マリン・高柳氏の渡船。 
躊躇無く水面を滑るボ-トの舳先で奥利根の風に吹かれながら意気揚々、山行の船出は 上々の空模様。

渡船が帰還すれば、湖尻には静寂が木霊する。 退路が無い。この重圧は言葉以上に重い。 

 

記念撮影

いくらか歩けば、荒れた渓相も僅かでゆったりとした河原となる。 
水長沢を右に見送り、ノッポの水量観測所を見上げる。 
水量は平水、水温もそれほど低くない。

シッケイガマワシは水線通しで右左をヘツっていく。 
又右衛門淵は腰まで浸かり左のフェ-スを小さく越える。 
巻渕は名前の通り、大きな釜に水のうねりがトグロを巻いている。 
左岸から滝下まで泳いで取り付く。

剣ケ倉土合は程よくヘツリ、巻き、泳ぐ。 
好天もあってか胸まで浸かっても心地よい。 
そうそう、”ヒトマタギ”での記念撮影はお約束。


御褒美

初日の幕は滝ケ倉沢出合先の河原。 
焚火がついたら、順調に進んだ御褒美に、明るいうちから呑んでしまうんだもんね。 
今宵は『渡舟』の純米吟醸生。 
残念ながらおさかなはないけれど、でるわでるわツマミのフルコ-ス。これがまたウマイのなんの。 
でも、みんな計画の時には、軽量化、軽量化って言ってなかったっけ? 
お腹一杯になったら、月も星もなく一気に睡魔が忍び寄る。 
遠のく意識の中で、とろとろ燃える焚火がパチリと鳴った。

翌朝は起き抜けに土砂降り。 
枝沢の物凄い増水ぶりに本流の心配をしながら朝食をとる 
20cmほどの増水に流れは濁り、しばらく様子を見ることにした。 
一時は停滞もよぎったが、濁りも取れて9:00出発 
ここからオイックイ。まもなく最初のスノ-ブリッジが出現。 
都合三箇所ほど、何の躊躇も無く下を潜ってやり過ごす。 
定吉沢出合。ともかくここまで来れば退却は無い。 

 

事前情報 

さて、問題はこの先である。 
事前情報で、今年はオイックイに難所が無いのは確認していた。 
しかしこの先、大利根滝までの状態が悪く、100mほどのSB出口に登攀困難な滝があり、 滝手前の支沢高巻きに2時間を要したとか、SB手前からの大高巻きで6時間を要したとか。 
事実、数日前には丹後沢付近で滑落による遭難があり、群馬県警ヘリの救出がニュ-スで報じられていた。

定吉沢先のゴルジュは昼にもかかわらず陽も届かない陰鬱な雰囲気。 
ヘツリというよりは、ほぼ泳いで小滝に取り付き越えていく。 
水温も幾分低下しており、この先にSBがあることが容易に想像できた。 
4箇所目のそれは先が見通せ、安定しており躊躇無く下を潜る。 
5箇所目は、出口が見えない。おそらくはこれが100mのSBであろう。 
三人、いくらかの間隔をあけて闇に身を投じる。

思案

急激な冷却に息は白い。急ぎ足で遡れば遥か先に出口が見えた。 
しかし、それは支沢の出口。本流はこの先、ヒョングリ滝を登るしかない。 
支沢を巻くか滝を行くか、ココが思案のしどころ。

リスクはあるが滝を行く。 
頭上をSBに抑えられ、苦しい体勢で滝の中ほど。 
おそらく、数日前ならSBが邪魔をしてココを越えることはできなかったであろう。

そこから直上、カンテを回り込めば滝の落ち口。 
なんとか核心を乗り越えた。 
そのさきのSBは上を行く。丁度、丹後沢出合の辺りだ。


 
豪勢

丹後沢コボラ対岸の悪い草付きのトラバ-スを終えたら、大利根滝。 
ここから利根川源流の大滝群が始まるのである。 
左岸を1ピッチ。外傾しているが総じて容易。ココまで来ればハト平は一投足。

その先、ゴルジュをひとつ抜ければ、右岸に佐市平なる幕営適地が刈り込みも済んで整地されていた。 
今宵の幕場に決定。さしもの利根川もココまで来ればささやかな流れとなる。 
なんとか予定通りの行程で心理的にグッと楽になり、今宵の盃も軽くなる。 
食事も焚火も豪勢に。闇夜に照し出される顔、顔、顔。 
みんなイイ顔してるよね。あとはいつものように酩酊するが良し。

 

潜在能力

昨夜、雷雨はあったが陽も上がる頃に夏の日差しが戻っていた。 
しばらくは平凡なゴ-ロも程なく終わり、大きな淵の奥に4m滝。 
泳いで取り付くも手がかりが極めて小さい。ザックピストンで行く。 
先陣を切るリ-ダ-。このリ-ドは渋い。

ゴルジュ状になったら後半の滝群が次々と立ちはだかる 
人参滝は左岸を巻く。藪の中に懸垂支点があるので沢床への下降に利用する。 
かすかに稜線が見える。源頭のデルタに想い馳せる。

名無しの滝は泳いで水流右目指すがホ-ルドが滑って取り付けず退却。 
それならと右岸のスラブを水流左目指して、微妙なバランスで突破。 
ボルダ-さながら、ドボン覚悟のトラバ-ス。 
ザックピストンで確保体制に入る。と思ったら、みんな水流右を難なく登る。 
「コレだよ、コレ!」手には軍手。軍手の意外な潜在能力を垣間見た出来事だった。

 

静謐 

美山滝はフリ-。 
赤沢滝(3段)は2段目で一旦水流を潜り、左のフェ-スを水流を頭からカブリながら行く。 
口々に「ヒャ-」とか「冷てぇ-」とか反応はいろいろ。でも、みんな本心では「気持ちイイ-」と感じているはずだ。 
最後の水上滝は脆そうなので、右岸を巻く。所々踏まれている。 
か細い流れになる頃、最後のSB。下を駆け抜け、一休み。 
あとは淡々と水流を遡れば源頭の雪田へと導かれるはずだ。

流れは驚くほど静謐。キラメく鮮泉。眺めるだけで口の中に潤いが広がる。 
さかぼうにとっての源流は期待通り、喜びの味がした。 そして何より感謝の気持ちがスッキリとした後味のように心地良かった。 
みんなの背中を眺めながら、喜びの一歩と感謝の一歩を交互に噛み締める。 
空は蒼く、緑は濃い。さあ、源頭の雪田はあとわずか。

 

sak


奥秩父・豆焼沢

2007年08月15日 02時18分16秒 | 山行速報(沢)

2007/8月中旬 奥秩父・豆焼沢

不遇

「不遇の沢」さかぼうにとって、豆焼沢はこんなイメ-ジが強い。 
沢自体、何の不遇も遜色も無い。むしろ奥秩父の美渓で知られる人気ル-トであるからだ。 
なぜそんなイメ-ジがあるかと言えば、山行計画に度々挙がるものの、 悪天中止となったり、最終選考に漏れ、今日まで実現に至らなかったことが大きな要因である。 
そして今回、ようやくその美渓に触れる瞬間がやってきたのであった。 


人工

出会いの丘駐車場から車道をしばらく下り、豆焼橋のあたりを適当に下降。沢床に降り立つ。 
決して明瞭なトレ-スではないが、沢ヤならこの適当さは理解できよう。

頭上高く第二豆焼橋を望むようになるとゴルジュの滝。 
これをホチの滝と読み違え右岸を巻くが下降が悪く、イキナリの懸垂下降。 
不意を突かれ、ノッケから冷や汗モノである。

つづいて今度こそホチの滝。橋の直下の壮麗な滝は、なんとも悲しい景観だ。 
下段を左岸、上段を右岸で橋脚の袂を行けば排水溝から勢い良く水が噴出していた。

人工滝。半身半造の人造人間ならぬ人造滝といった様相だ。 

 

迫力

次のゴルジュは流水左をヘツリ、瀑水は右のフェ-スを行く。 
しかし、ココが悪い。 
残置あればこそ、行く気にもなったが、スベスベのフェ-スに細かい立ちこみを求められ、 フリ-ではとてもリスクが高いのでザイルを出す。 
前半ですでにお腹一杯になりそうで、この先一体どうなってしまうことか、不安がよぎる。

ココから先はナメもあり、快適にサクサクと進む。 
と、駐車場で後発だったはずのパ-ティ-が先を歩いていた。 
あれ?いつ抜かれたのかな?と一瞬戸惑ったが、駐車場から仕事道がトオの滝まで 通っているらしい。納得。

第一の見所、4段50mはさすがの迫力だ。 
前日の雨もあってか、迫力も2割増し。迷わずここは右岸の巻き。

見所

4段24mは適当に登り、第二の見所、両門のスダレ状滝。 
さすが、この沢の顔。この光景に出逢えるからこそ、人は豆焼沢を遡るのだ。滝を眺めながら大休止。 
ゆったりと惜しむようにこのスダレ状を行けばその先に待っているナメがこれまた美しい。

あとはゴ-ロ、ミニゴルジュをシャワ-で行く。体が冷えて、消耗する。 
延々と続くように見えた上流部も、ドラム缶が見えるあたりでフト辺りを見回せば、そこに登山道。 あっけなく終了点だ。

ようやく実現した豆焼沢は、さすが奥秩父の美渓で知られる人気ル-トなだけはある。 
滝、ナメの美しさ、程良い緊張感、そのボリュゥム。どれをとっても満足できる。 
ただ、唯一残念なのは、ホチの滝の荒れ模様である。 
「悲運の滝」せめて橋が滝上になければ。 
とはいえ、その益を享受している現代人の私に云う資格はあろうはずがない。 
黄色い橋脚がとても悲しい色に見えた。

装備を解いたら、あとは快適なトラバ-ス道を雁坂小屋まで。 
そこから黒岩尾根を3時間で鮮やかな原色の豆焼橋が現れた。


sak