既に2006年になってもう何日経った?、という状況ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
もうここまで来たら2005年度版として年度末に発表しようか迷うところまできてますが、きっと年度末は忙殺されていると思うのでやっぱり今やっておこうかなと。
ということで、2005年の超個人的お勧め小説の紹介を(やっと)やりたいと思います。
既に年を越えたこともあって、今回はベスト3を一度の紹介させて頂きたいと思います。
■選定コンセプト
昨年(いや一昨年だ)は、3つほど選定の条件を考えていたのですが、今回はSFの枠と発行巻数の制限を取っ払って、(できるだけ)男女ともにお勧めできる作品にしたいと思います。
あと、2005年に刊行されたものが対象ではなくて、僕が2005年に読んだものになっちゃうんで、その辺の時期的なズレはご容赦を。
僕個人の趣味と、このブログでちらっと紹介しているものが出てきますので、ご興味のある方に楽しんで頂ければ嬉しいです。
では、改めまして、
■第3位:『イリヤの空 UFOの夏』著:秋山 瑞人
いろんなラノベ雑誌等でも特集されて、今更と思う方も多いことでしょう。
しかしながら、やっぱりこの作品は良い。とても良いです。
何より秀逸なのはこの『イリヤの空 UFOの夏』というタイトルです。
以前の感想記事にも書いたのですが、このタイトルにこそこの物語の全てが凝縮されていると言って良いほど素晴らしく、このタイトルの意味を考えるだけで元々涙もろい僕はぐっと来てしまいます。
ラスト付近でこの意味が語られていくシーンは何度読んでも、色んな思いが込み上げて来る名シーンだったと思います。
基本的にはSFを交えながらのボーイ・ミーツ・ガールがメインテーマになる作品ですが、主人公については交響詩篇エウレカセブンにも通じるノスタルジーを感じながらも、透明な切なさをもって描かれるイリヤの変化とラストシーンはやっぱり涙無しには読めませんでした。
暑い夏の夕暮れにふとノスタルジーを伴ってこの作品を思い出す、そんな作品です。
全部で4冊ありますが、4冊一気に読まれることをお勧め致します。
では、続けて第2位です。
■第2位:『博士の愛した数式』著:小川 洋子
最近文庫化され、そして映画化もされるこの『博士の愛した数式』。
これは本当に良い。本当に良い作品です。
これほど静かな雰囲気の中で、慎み深く、そして何より温かい、こんな気持ちで本を読み終えたのは久しぶりでした。
文体や表現と言ったところについては受け取り方にも個人差があると思うのですが、この作品はそういうところに捕らわれることなくその雰囲気を楽しんで頂きたいと思います。
僕は個人的に相互理解ものの作品がとても好きで、相互理解なんてちょっと硬い表現でなくとも、こういう時代だからこそコミュニケーションの取り方をとても大切にしたいと思っています。
そういう中で、この作品は、非常に謙虚で、慎み深く、それでいて温かいコミュニケーションを、数式、数字という一見コミュニケーションとは程遠いのではないかと思うツールを用いて描写していきます。
そして描かれる「eπi + 1 = 0」という公式。
まさかこの公式からこんなに美しくて優しいコミュニケーションの取り方を教わるとは思いませんでした。
これまでの過程が全てここに収斂される瞬間、静かで優しい感動を与えてくれました。
以前書いた感想でもお勧めしておりますが、改めて、そして静かにお勧めしたい、そんな1冊です。
では、最後に第1位を。
■第1位:『亡国のイージス』著:福井晴敏
昨年は僕にとっては正に福井晴敏の年だったと言っても過言ではありませんでした。
映画化もされていますが、個人的には映画よりも、強く、強く、原作をお勧めさせて頂きたいと思います。
福井晴敏作品を昨年は大分読みましたが、その中でもやっぱり『亡国のイージス』が個人的には一番纏まりがあって好きでした。
#もちろん他の作品も大好きですが。
イージス艦や重火器に関する描写はどれほど取材したのだろうと思えるほど緻密ですが、僕個人としてはその辺は個人の趣味もあるし、そういうのが嫌いな方もいらっしゃると思います。
しかし、そういう心配はこの福井晴敏作品では僕は気にする必要がないんじゃないかと思います。
つか、ぶっちゃけ、そういう描写を読み飛ばしても全く問題無いというか、その面白さを損なうことはないんじゃないかと思います。
僕の周りでは福井晴敏作品って結構(いやかなり)女性からも支持されているんですが、それが何よりの証拠かなと実感しております。
■福井作品での僕の個人的なポイント
この『亡国のイージス』だけでなく、その他の作品にも通じるところなんですが、福井作品では結構メッセージ性やテーマが一貫しています。
福井作品の特徴としては、僕の見解では一貫して3つポイントがあると思っていて、
1.国家間、組織間のはざまで揺らぐ主義・主張と現場の視点
2.自分たちの暮らす国について考えてみないか?というメッセージ性
3.上記の2点だけでは割り切れない、「人」としての気持ちとその情熱
特に1と2の間で揺れる思いというか、まずそこに対する矛盾と諦念からスタートする、というところが特徴的です。
そして必ずそれが3の「人」としての気持ちとその情熱に繋がってくるところが熱く、そして感動ポイントです。
僕はここに例外なく泣かされてます。
■こんな人には福井作品がお勧めです(笑)
5月の連休中にこんな人には福井作品お勧めです、と言う記事を書いているので、ご興味がある方はどうぞ。
判断基準は僕の主観入りまくりなんで、忘れてくださいませ(笑)。
■その他にもお勧めがたくさん
もし『亡国のイージス』を読まれたならば、次は是非『川の深さは』と『Twelve Y.O.』を読んで頂きたいですね。
話の時間軸としては、
1.『川の深さは』
2.『Twelve Y.O.』
3.『亡国のイージス』
なんで、これは3部作として捉えて頂ければと思います。
参考までに『亡国のイージス』について最初に書いた感想はこちら。
そしてこの後に外してはならないのが
『6ステイン』
これは『亡国のイージス』を読んだ方には是非読んで頂きたい短編集です。
名前の通り、6つの短編が収録されているのですが、これがまたどれも秀逸。
この短編集は本当に面白いので、シリーズの1つとして読んで頂きたいなぁ。
#だって最後の短編には「あの人」も出てくるし。
その『6ステイン』の感想はこちら。
ここまで書いて、何であれが無いの?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そこは忘れるはずもなく。
福井作品で最大のボリュームを誇るのが、
『終戦のローレライ』
これも本当に面白かったなぁ。
何度も泣きのポイントがあって大変なんですが、そんな中でも心に残る言葉が、
心には心---そんなものであって欲しい。
これからどれほど科学技術が進んだとしても。
という絹見艦長の言葉で、最後まで「人間」を描いていくところが福井作品に通じるところなんだなと実感します。
また、浅倉が破壊から全てを作り直そうとした人生を選んだのと対照的に、折笠征人とパウラたちが何度壊れようとも、それを諦めずに直しながら進む人生の対比に、その熱いメッセージ性を感じます。
僕は映画版も観ているんですが、そちらにも少し言及した『終戦のローレライ』の感想はこちら。
■終わりに
昨年はたくさん面白い小説に出会ったわけですが、今年もまたたくさん面白い小説に出会えると良いなと思います。
そこにジャンルを問うことはせず、面白いと思えるものを探していくのもまた楽しみかなと。
ということで、超個人的お勧め小説、こんな感じでいかがでしょうか。
もうここまで来たら2005年度版として年度末に発表しようか迷うところまできてますが、きっと年度末は忙殺されていると思うのでやっぱり今やっておこうかなと。
ということで、2005年の超個人的お勧め小説の紹介を(やっと)やりたいと思います。
既に年を越えたこともあって、今回はベスト3を一度の紹介させて頂きたいと思います。
■選定コンセプト
昨年(いや一昨年だ)は、3つほど選定の条件を考えていたのですが、今回はSFの枠と発行巻数の制限を取っ払って、(できるだけ)男女ともにお勧めできる作品にしたいと思います。
あと、2005年に刊行されたものが対象ではなくて、僕が2005年に読んだものになっちゃうんで、その辺の時期的なズレはご容赦を。
僕個人の趣味と、このブログでちらっと紹介しているものが出てきますので、ご興味のある方に楽しんで頂ければ嬉しいです。
では、改めまして、
■第3位:『イリヤの空 UFOの夏』著:秋山 瑞人
いろんなラノベ雑誌等でも特集されて、今更と思う方も多いことでしょう。
しかしながら、やっぱりこの作品は良い。とても良いです。
何より秀逸なのはこの『イリヤの空 UFOの夏』というタイトルです。
以前の感想記事にも書いたのですが、このタイトルにこそこの物語の全てが凝縮されていると言って良いほど素晴らしく、このタイトルの意味を考えるだけで元々涙もろい僕はぐっと来てしまいます。
ラスト付近でこの意味が語られていくシーンは何度読んでも、色んな思いが込み上げて来る名シーンだったと思います。
基本的にはSFを交えながらのボーイ・ミーツ・ガールがメインテーマになる作品ですが、主人公については交響詩篇エウレカセブンにも通じるノスタルジーを感じながらも、透明な切なさをもって描かれるイリヤの変化とラストシーンはやっぱり涙無しには読めませんでした。
暑い夏の夕暮れにふとノスタルジーを伴ってこの作品を思い出す、そんな作品です。
全部で4冊ありますが、4冊一気に読まれることをお勧め致します。
では、続けて第2位です。
■第2位:『博士の愛した数式』著:小川 洋子
最近文庫化され、そして映画化もされるこの『博士の愛した数式』。
これは本当に良い。本当に良い作品です。
これほど静かな雰囲気の中で、慎み深く、そして何より温かい、こんな気持ちで本を読み終えたのは久しぶりでした。
文体や表現と言ったところについては受け取り方にも個人差があると思うのですが、この作品はそういうところに捕らわれることなくその雰囲気を楽しんで頂きたいと思います。
僕は個人的に相互理解ものの作品がとても好きで、相互理解なんてちょっと硬い表現でなくとも、こういう時代だからこそコミュニケーションの取り方をとても大切にしたいと思っています。
そういう中で、この作品は、非常に謙虚で、慎み深く、それでいて温かいコミュニケーションを、数式、数字という一見コミュニケーションとは程遠いのではないかと思うツールを用いて描写していきます。
そして描かれる「eπi + 1 = 0」という公式。
まさかこの公式からこんなに美しくて優しいコミュニケーションの取り方を教わるとは思いませんでした。
これまでの過程が全てここに収斂される瞬間、静かで優しい感動を与えてくれました。
以前書いた感想でもお勧めしておりますが、改めて、そして静かにお勧めしたい、そんな1冊です。
では、最後に第1位を。
■第1位:『亡国のイージス』著:福井晴敏
昨年は僕にとっては正に福井晴敏の年だったと言っても過言ではありませんでした。
映画化もされていますが、個人的には映画よりも、強く、強く、原作をお勧めさせて頂きたいと思います。
福井晴敏作品を昨年は大分読みましたが、その中でもやっぱり『亡国のイージス』が個人的には一番纏まりがあって好きでした。
#もちろん他の作品も大好きですが。
イージス艦や重火器に関する描写はどれほど取材したのだろうと思えるほど緻密ですが、僕個人としてはその辺は個人の趣味もあるし、そういうのが嫌いな方もいらっしゃると思います。
しかし、そういう心配はこの福井晴敏作品では僕は気にする必要がないんじゃないかと思います。
つか、ぶっちゃけ、そういう描写を読み飛ばしても全く問題無いというか、その面白さを損なうことはないんじゃないかと思います。
僕の周りでは福井晴敏作品って結構(いやかなり)女性からも支持されているんですが、それが何よりの証拠かなと実感しております。
■福井作品での僕の個人的なポイント
この『亡国のイージス』だけでなく、その他の作品にも通じるところなんですが、福井作品では結構メッセージ性やテーマが一貫しています。
福井作品の特徴としては、僕の見解では一貫して3つポイントがあると思っていて、
1.国家間、組織間のはざまで揺らぐ主義・主張と現場の視点
2.自分たちの暮らす国について考えてみないか?というメッセージ性
3.上記の2点だけでは割り切れない、「人」としての気持ちとその情熱
特に1と2の間で揺れる思いというか、まずそこに対する矛盾と諦念からスタートする、というところが特徴的です。
そして必ずそれが3の「人」としての気持ちとその情熱に繋がってくるところが熱く、そして感動ポイントです。
僕はここに例外なく泣かされてます。
■こんな人には福井作品がお勧めです(笑)
5月の連休中にこんな人には福井作品お勧めです、と言う記事を書いているので、ご興味がある方はどうぞ。
判断基準は僕の主観入りまくりなんで、忘れてくださいませ(笑)。
■その他にもお勧めがたくさん
もし『亡国のイージス』を読まれたならば、次は是非『川の深さは』と『Twelve Y.O.』を読んで頂きたいですね。
話の時間軸としては、
1.『川の深さは』
2.『Twelve Y.O.』
3.『亡国のイージス』
なんで、これは3部作として捉えて頂ければと思います。
参考までに『亡国のイージス』について最初に書いた感想はこちら。
そしてこの後に外してはならないのが
『6ステイン』
これは『亡国のイージス』を読んだ方には是非読んで頂きたい短編集です。
名前の通り、6つの短編が収録されているのですが、これがまたどれも秀逸。
この短編集は本当に面白いので、シリーズの1つとして読んで頂きたいなぁ。
#だって最後の短編には「あの人」も出てくるし。
その『6ステイン』の感想はこちら。
ここまで書いて、何であれが無いの?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そこは忘れるはずもなく。
福井作品で最大のボリュームを誇るのが、
『終戦のローレライ』
これも本当に面白かったなぁ。
何度も泣きのポイントがあって大変なんですが、そんな中でも心に残る言葉が、
心には心---そんなものであって欲しい。
これからどれほど科学技術が進んだとしても。
という絹見艦長の言葉で、最後まで「人間」を描いていくところが福井作品に通じるところなんだなと実感します。
また、浅倉が破壊から全てを作り直そうとした人生を選んだのと対照的に、折笠征人とパウラたちが何度壊れようとも、それを諦めずに直しながら進む人生の対比に、その熱いメッセージ性を感じます。
僕は映画版も観ているんですが、そちらにも少し言及した『終戦のローレライ』の感想はこちら。
■終わりに
昨年はたくさん面白い小説に出会ったわけですが、今年もまたたくさん面白い小説に出会えると良いなと思います。
そこにジャンルを問うことはせず、面白いと思えるものを探していくのもまた楽しみかなと。
ということで、超個人的お勧め小説、こんな感じでいかがでしょうか。