5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

奇想コレクション「若冲」を観る

2007-05-15 21:50:22 |  文化・芸術

「若沖と江戸絵画」展を愛知県美術館に見に行く。英語副題は「Jakuchu and the age of Imagination」だから、こちらの方がそれこそイマジネーションが拡がりそうだ。



戦後の混乱で持ち去られた日本絵画の名品がアメリカには今もたくさん存在するが、プライスコレクションもその一つらしい。正統派絵画-京の画家-エキセントリック-江戸琳派という区切りで、江戸絵画のコレクションの中から100点ほどが展示されているが、若沖が当然ながら中心にあって、有名な応挙や蕭白が脇に控えるカタチをとっている。ちょうど今日から展示替えがあったようで火曜日の午後だが、観覧者は途切れることがない。若い人たちが多く見られたのも「若沖人気」のなせる業なのだろうか。



師匠のフランク・ロイド・ライトに連れられてニューヨークの東洋美術の店に立ち寄ったときに見つけた若冲の「葡萄図」にすっかり魅了され、その「自然への思想」は尊敬するロイド・ライトの建築哲学に通じると感じたところから、Jプライスの一生をかけた大コレクション形成が始まっていったようだ。



葡萄図の墨のグラデーションは南画のグラデーションとは一味違って西洋画風で細かい。バショウ葉を描いた「筋目描」や動物画のハッキリした色づかいなどは、そう、すべて現代のグラフィックデザインの技法に通じるものばかりである。同世代のほかの画家にはない若冲の技法に若い人たちが惹きつけられるのかもしれない。



展覧会のポスターになっている「鳥獣花木図屏風」の86000の升目モンタージュなどは、着物の型染めのテクニックとどこかで通じるものがありそうだと思うし、「紫陽花双鶏図」ではアジサイの紫、鶏冠の赤、羽の茶などがやはり友禅染めの発色に似ているように見える。「鷲図」は若冲83歳の作品だが、朝日に向かって飛び立つ鷲の構図が他にはみられぬユニークさだと、コレクターはべた褒めである。



若冲の作品にも、他の画家の作品にも多く取り上げられている「動物」たち。見ていて飽きない。鶏や鶴や猿、さらには、虫といった日本在来の動物は画家も観察することができたのだろうが、日本にはいない虎や象が多く題材として描かれているのはどうしてなのだろうと疑問に思った。これも当時の外国好み、流行現象なのだろうか。



長沢芦雪の「白象黒牛図屏風」では大きな象と牛を対比させてそのデフォルメ具合が面白いが、象の牙がかなり頭のほうについているなど、どうやら本物をデッサンしたのではなく何かの手本画を使っているようにも思えた。虎も人気のある対象だが、眼光するどいというよりは、大きな眼で描かれた愛嬌ある大型猫といった風情の作品ばかりだ。これなどは、お隣韓国の虎の絵に似ているなあと思った。清正の虎退治ではないが、虎の手本画は朝鮮半島渡りだったのかもしれない。



亜流評価でしかなかった若冲を、現代にも充分通用するグラフィックの画家としてアメリカから再評価されて納得するわれわれ。絵画に限らず、いろんな面でよくあるハナシかもしれない。 ひさしぶりの美術館プロムナードだった。






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