5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

黒い目をした人形は

2015-02-28 22:09:34 |  文化・芸術
夕食のテーブルに駄菓子の袋がひとつ置いてあった。家人が誰かから貰ったものだと云う。我が家に駄菓子とは珍しい。そのまま貰って小袋を開いて中の菓子をつまみながらこのブログを書いているのである。大袋には「ナツカシノアジ・駄菓子屋さんパック」とあるが、ボーロや煎餅はすべて洋風味だ。これが懐かしいのはきっとずいぶん若い母親たちではないだろうか。

どこかで子供が入る集まりでもあったのだろうか。もうすぐ桃の節句だから、ひょっとすると「雛あられ」のおすそ分けなのかもしれない。蕪村の弟子、高井几董にこんな句がある。

「裏店やたんすの上の雛祭り」

昨日の民放TV朝番では豊田市足助の「中馬のお雛さん」という内雛飾りイベントを紹介していたが、裏店のお雛さんもあって興味を惹いた。「動く人形台」に乗って回る人形たち。電気技術者をしていたという老人が作る回り舞台は、静かな段飾りとは一風変わった面白さ。やはり男がつくるとこうなるかと思った。

中馬とは地名かと思ったがそうではないらしい。足助を抜ける飯田街道は「中馬街道」とも云うのだそうだが、これは沿道の農民が農産物を自分の馬で城下に運んでいた「手馬」が訛ったのだろうか。農民がいつしか運送人に専業化して客の依頼を受け、駄賃馬として荷物を指定先まで運ぶようになったのが「中馬」なのだという。おかげで勉強になった。

「中馬のお雛さん」似た「雛飾りで町おこし」は全国各地で開催されているようで、NHKの中部地区ニュースにも二箇所がこれを紹介している。どちらも津放送局の発信だ。

「伊賀の城下町でひな祭り」というのが最初のレポート。伊賀の城下を歩いて楽しめるようにという企画で、焼き物や和菓子で作った雛人形の展示(60箇所)が特徴らしい。伝統の伊賀焼、伊賀くみひもを使った人形、忍者の格好をした人形など、この土地らしさを出す努力もされているようだ。

「尾鷲の古民家でひな飾り展示」というのは、現地NPOの企画で実施される展示会。「天満荘」という古民家が使われ、地元の家庭から譲られた昭和初期からの段飾り20組を展示している。どうやら、各地で雛祭り展示イベントが増えた理由のひとつには、代替わりや高齢化によって人形の維持や管理ができなくなった地元民たちが手放した雛人形をボランティアが再生展示するというのが、ひとつの流れになっているらしい。

少し前のニュースに、アメリカのケネディ大統領に雛段飾りをプレゼントした女性の存在が判明し、ケネディ大使がその礼を伝えたというものがあった。「文化輸出」は安倍首相の政策のひとつなのだろうから、青い目の人形ではないが、家族の手に余る黒い目の雛飾りを海外にプレゼントするというアイデアはどうだろう。

人形一体なら個人の愛玩用でしかないが、段飾りなら異文化メッセージとして団体に贈呈することも出来そうだ。NY五番街のウインドウ装飾をすれば「春を呼ぶ人形たち」ということできっと人気になるだろう。雛あられらしきバター菓子を食べながら、ここまで考えた次第だ。


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