5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

天神講の焼き鰈

2020-01-24 21:36:42 | たべもの

いちはやく春の訪れを告げる花といえば梅だが、暖冬の今年、その開花も例年よりだいぶん早いようだ。天気予報の〈tenki.jp〉によると、すでに全国20地点で開花が観測されていて、今日24日は、神戸、徳島、大分からの開花報告があったという。神戸では平年より21日も早い観測だそうだ。

梅の花といえば「東風ふかば」の歌で知られた菅原道真の飛梅伝説が有名だ。讒言で九州へ左遷され失意の内に死んだ彼の御霊を「天神」として祀った大宰府天満宮では、道真の誕生と命日とが重なる25日を「天神さまの日」として月例で天神祭を行う約束だが、新年最初の1月25日は「初天神」ということで特に大切に斎行されてきている。

大宰府の道真には「飛梅伝説」のほかに「梅が枝餅伝説」もある。大宰府の寺の門前で餅売りの老婆から「元気を出して欲しい」と梅の枝を添えて供された餅を道真が好んだという。ありそうな話がもとになって、今では天満宮参拝の名物菓子ということになっているわけだ。

食べ物にまつわる天神話は他にもあって、道真はなぜか醤油ご飯や鰈も好きだったというのだが、いずれも殿上人の食生活にはなさそうな材料だ。庶民の天神さん贔屓が現れたカタチなのだろうか。

学問神の天神さんにあやかって鰈を食べるというのが福井県の嶺北地方。「天神講の焼きガレイ販売」という福井ニュースをNHKのHPに見つけた。

大宰府と同じように、道真の月命日に「天神講」を行うのは、福井、大野、勝山、鯖江といった旧越前の各地域。特に1月の月命日には、道真の好物だという焼き鰈を道真の掛け軸の前に供える風習が残っている。

福井市の中央卸売市場では、明日の月命日を前に神事を行い、お祓いを受けた初天神用の焼き鰈が売り出されたというニュースだ。「祈願、学業成就」と印刷された特別ののし紙がスチロール皿にまかれでちょっと豪華な感じだ。隣の越前町で水揚げされたいきのいい鰈を使い、大きなものでも1500円ほどの売り値だという。観光客用というより受験生のいる地元家族の御用達価格。試験シーズンだから家族で鰈を食べて頑張ってもらいたいというわけだ。

「孫には健康に育ってほしいです。欲を言えば賢い子に育ってくれたらと思います」

というのは遠方にいる孫に送る焼き鰈を買ったという老女。この辺りで子供時代を過ごした若い学生たちには、故郷の味として舌が覚えているのかもしれない。おばあちゃんから送られた焼き鰈を都会の孫はどんな気持ちで鰈をかみしめるのだろうか。

 


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