5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

コシャマックレル

2015-11-29 22:23:45 | ことば
西村(貞吉)は横文字は知っていても、日本語は甚未熟である。「こましゃくれる」を「コシャマクレル」、「鶏冠」を「トカサ」、「懐」を「フトロコ」、「がむしゃら」を「ガラムシャ」、、、その外日本語を間違える事は殆挙げて数えるのに堪えない。私は西村に日本語を教えにわざわざ渡来した次第でもないから、仏頂面をして見せたぎり、何とも答えず歩き続けた。


これは、芥川龍之介が大正10年(1921)に旅した中国でのことを書いた『長江游記』の『蕪湖』の一部分である。彼は上海から、長江を遡って、蕪湖~九江~廬山漢口(武漢)から洞庭湖にまで旅したようだ。まだ元気だったのだろう。

和歌山地方の方言にも、この芥川の友人のような日本語の音節順序を逆に間違えて云う傾向があって、例えば、トサカが「トカサ」、カラダが「カダラ」、ツルベが「ツブレ」のように沢山あるらしい。

芥川の引用も、和歌山の方言も、「ことばの歳時記」で金田一春彦先生が書いているものだ。この項のタイトルは「さざんか」、漢字は「山茶花」と書いて、山茶(椿)の木に似た花という意味なのだから「さんざか」でなければいけないのが、なぜかひっくり返ってしまった、というのが先生の指摘したかったところなのだ。

今日、これを書いたのは、家前の生垣に植えてある「さざんか」が突然にして開花しその紅色の花弁をたくさん散らしているのに気が付いたからだ。

数日前には花も咲いてはいなかったはずなのに、どうした弾みなのだろう。ここ3日ほどは最低気温が5度を切っているから、これに感応したのかもしれない。それとも軒先下宿中の猫たちが喧嘩をしてさざんかの木を揺すぶったせいで花弁が落ちたのだろうか。

「トカサ」にくるほどではないが、おかげで掃除の手間がひとつ増えた。「カダラ」に堪えるぞ。










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