5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

シフトする地球環境

2009-12-25 22:54:20 | 自然
トポグラフィー(地形学)を、気候変動を考える視点にしようという、新しいアイデアが雑誌「ネイチャー」に最近発表されたという《TIME ONLINE》の記事をIPODで読んだ。

記事によると、気候変動のインパクトを計る方法はいろいろあって、上昇する気温、上がる海水面、国家予算の程度などが一般的だが、カリフォルニア大の科学者たちの研究では、地球はどれほど早く「動いて」いるのか、気候変動を「一年何キロメーター」で表そうという新しい方法を提示している。

「気候変動の速度」すなわち、生物の気候ゾーンがシフトしていくスピードを考えようというわけだ。

地球の気温が上昇していく中、地球上で生物が住める気候ゾーンも、赤道から極点に向かう方向で動き出しているわけで、世界中の生物種にもその生存を賭けた移動が必要になってきているのだ。生物種が生き続けられる条件は、「その環境にどれほど素早く適応できるか」だが、これからは「その環境がどれほど早く移動するか」も読まねばならない。生物たちもたいへんである。

生物種個々を対象にして環境からどうした影響を受けるかを調べるのが、従来の環境学のスタイルだった訳だが、今回の研究では、それに全地球的視点を加える。気温上昇予測にあわせ、地球全体を極めて細かい地形に分けた地図上にマッピングして、種個々の変化ではなく、その種が住むべき気候ゾーンの変化をみようというのである。地球の気温が上がり始めた現在、地球のエコシステムもすでに動きはじめているというのだ。

抽象的な温度変化だけを見ていたのでは判らない、地球上の気候ゾーンの変化を観察し、問題に対応するというわけだが、絶滅危惧種を保護しようと努力する活動家には、こうした新しいゾーン指標は大きな助けになるかもしれない。

一般的に現在の「気候変動速度」は、全世界平均で「一年あたり0.5キロメーター程度」だが、このスピードは地形の変化によって、速くなったり遅くなったりするという。平らな砂漠やアマゾン流域などでは気候ゾーンが速く移動してゆき、山岳地域ではその動きは緩やかになる。

北半球の場合、山脈の北側は南側に比べより寒冷で湿潤であって、一つの山でも、その両側では違った気候ということが多いが、今後は、地形変化の多い丘陵部などの方が、生物の住環境として適することになりそうだという。

発表された「気候変動速度マップ」によると、世界の国立公園のうち限られた8%だけが次世紀が来ても現在の環境を維持出来ているだろうとし、生物種の絶滅危機は今よりさらに高まっていることだろうと云う。対応策としては、絶滅危惧種をほかに移すという案が確実でシンプルだが、コスト面から云っても実現は極めて難しそうだ。外来種の攻撃という問題も増えてくる。だが、将来こうした「ノアの箱舟」的な生物の移動が現実化することは充分あるのかもしれない。

「気候変動速度マップ」も現状では、まだまだ粗く不十分だという。生物種によっては気候変動に比較的強いものもあるわけで、気候ゾーンの変化に対応するしかたもそれぞれの種によって違ってくるわけだが、こうした種それぞれに特有の性質を計算には入れていないのだ。驚異的な生物種の数、それらの性質をピンポイントする研究は、聞いただけで気が遠くなりそうだ。

生物のハビタートが出来やすいといわれる山や丘の多いわが国であれば、「気候変動速度」の考え方を取り込んだ「自然環境政策」がそろそろ出てきてもよかろう。不毛なCO2排出量規制論争から一歩すすんだ「里山保護政策」などというユニークアイデア、民主党政権は出して来られるだろうか。


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