5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

市長の「文化的」揉め事

2014-10-27 22:27:00 | 行政
名古屋・納屋橋の袂、堀川沿いにある鶏料理屋がニュースで話題になっている。店は畳んでマンションにしようという所有者と、歴史ある日本家屋だから残して欲しいと頼む名古屋市長の間のちょっとした「文化的」揉め事。何かと話題作りの巧みな市長だが、今回もマスコミを楽しませている節もみえる。

噂の現場はどんな風になっているのかちょっと気になったので万歩の途中で現場横を抜けてみた。堀川右岸の堤上、川に沿った狭いスペースには小さなビルが並んで建っている。鶏屋の建物の周りには仮囲いが立てられ「マンション建築予定」の表示が出ている。鶏屋がマンションデベロッパーに売ったのだろうと思っていたら、所有者は依然、鶏屋の名前のままだ。

NHKの記事によると、解体工事の為の周辺道路や河川の使用許可を市に申請して足掛け2ヶ月になるが、「歴史的な価値が高い建物で、最後の一軒だからぜひ残したい。補償は考える。」として河村市長が返答を保留しているため、所有者側としては動きがとれずに困っているというわけだ。

仮囲いの上から覗くと営業を止めてもう長いのか建物は干乾びたように埃まみれ、「由緒ある建築だ」というわりに、造作は新しく見え、明治時代のものとは思えなかった。鶏屋の南隣はマンション、北隣はこれも古い額縁屋だが、ここが昔の木造がビルに立て替えられてすでに久しい。それにしても、市長はなぜこの鶏屋の保存に拘るのだろうか。

鶏屋が順風ならともかくだが、世代が変われば、嗜好もかわり、見方も考え方も変わるのだ。マンションに建て替えた方がこの先見込めると考えての経営判断なのだとしたら、誰も止めるわけにはいくまい。

市長の云う「市の補償」の内容はいったいどれほどのものなのだろう。この一軒を残したとしても、それ以後の維持管理はどうするのか。まさか鶏屋の経営も市が肩代わりするという意味ではあるまいから、文化財として買い上げるとでも云うつもりだろうか。将来への構想を具体的に示さずに「由緒があるのだから残すべき」というのは無理がありそうだ。

堀川を護岸したのも名古屋市だ。岸辺のコンクリート化に呼応するかたちで納屋橋一円の建物はほぼ全てが今風のビルに模様替えしてしまっている。今頃になって残った鶏屋一軒が貴重だというのもどこかヘンだ。それなら何故もっと早くから文化財保護施策を打ち出してこなかったのか。保護すべき文化財なら他にも万と残っているはずだ。


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