5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

星のような物語

2007-08-29 21:47:58 |  文化・芸術

星野道夫がカムチャトカ半島でひぐまに斃れて今年はすでに10年。「星のような物語」(写真集)に使われた写真と「アラスカメモ」や手紙類を展覧する写真展を見る。場所は美濃加茂の、みのかも文化の森である。



JALパックで出かけた人生一度だけのアラスカ旅行はすでにはるかな昔のこと、久しぶりに「アラスカの清冷な空気」を感じられないかと思い立った。星野の写真展は、未だ彼が存命中の1994年に開催された「残された楽園」を見た時以来のことだ。



名鉄の可児から太多線で木曽川をわたり美濃太田へ、さらにそこからは徒歩で20分ほどの丘の上に、市民ミュージアム&教育センターの複合施設は創られている。入場料は300円と安価。同時にプロムナードする人たちは夫婦が二組だけである。夏休みの宿題完成を目指してか子供たちのクラフト教室が開かれていて、みんな元気に駆け回っていた。



展示室の壁には多分「星のような物語」に使われた全部の写真がびっしりと立てられている。サイズもさまざまな動物や植物の季節ごとの写真がつぎつぎと現れてあきさせない。写真と写真との間には彼の遺した言葉が並べられ、写真と同じくらいの力でこころに迫ってくる。



彼が逝って10年ということは、撮影地や動植物も10年以上前のイメージで写真に定着されていることになる。コロンビア、ハバード、マラスピナと3つの氷河が撮影地としてクレジットされているが、現在の氷河の状態はどうなっているのだろう。写真に載った30種ほどの動物の中には絶滅危惧種とされたものはないのだろうか。北極の氷融解が想定外のスピードで進行しているとは、最近のテレビで報道された事実だ。北極圏のアラスカが例外ということはないのだろうから、星野の時代よりも状況はもっと悪くなっているはずだ。



彼が今も生きていたら間違いなく「地球温暖化」に対する激しいメッセージを世界中に送っていることだろう。グリズリーとカリブーの写真に挟まった「言葉」は、10年後の今の状態を予言するかのようである。



曰く、「自然とは人間の暮らしの外にあるものではなく、人間の営みを含めてのものだと思う。美しいのも、残酷なのも、そして小さなことから大きく傷ついてくのも自然なのだ。自然は強くて脆い。」



アラスカ巡りは約1時間。展望台では美濃加茂周辺を一巡してから帰路についた。






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