→ 自衛隊の敵地攻撃能力の保有について
→ F-Xに艦載機は無意味
などの当ブログの過去の軍事ネタ記事で、現代日本に必要な装備は巡航ミサイルという自論をかねてよりしつこく言ってきたので、
今日はその巡航ミサイルそのものについて。
ナチス・ドイツ軍のV-1飛行爆弾 |
巡航ミサイルという兵器は、その始祖は第二次世界大戦に端を発する。
当時ドイツ空軍はイギリス空軍との間で熾烈な本土爆撃合戦を繰り広げていた。
しかし戦況の悪化に伴い、イギリス空軍の必死の防空戦の前にドイツ爆撃機の損耗は拡大し戦果を期待できないどころか、
逆にドイツ本土はイギリス軍やアメリカ軍の爆撃機により日々空襲に晒されていた。
その報復手段として、爆撃機をブリテン島に飛ばすのではなく、
直接爆弾を飛行させ爆撃する長距離攻撃兵器の開発を命じ、これがV-1飛行爆弾となった。
V-1はパルスジェットにより推進し、プロペラの回転数によって距離を計算し
自動的にエンジンを停止させ落下するという簡易な誘導装置を持っており、
およそ250kmほどの航続距離を持っていた。
V-1は飛翔速度が時速600kmほどでしかなく、当時の戦闘機よりも遅かった為に、
捕捉されれば戦闘機や対空砲火により撃墜されることが多かった。
しかしV-1による攻撃には利点があった。
それは爆撃機を飛ばす必要がない為に、撃墜されても人命的損失が皆無なこと。
つまり一方的な攻撃が可能な兵器であり、またコストも爆撃機より格段に安かった。
ドイツ軍は第二次世界大戦中にこのV-1を20,000発以上も発射し、
どこからともなく飛んできて無差別に爆発するこの兵器はロンドン市民を恐怖に陥れた。
これが現代の巡航ミサイルの始まりである。
アメリカ軍のトマホーク巡航ミサイル |
現代では技術の発達により、巡航ミサイルは飛躍的な進化を遂げた。
1983年から配備されたアメリカ軍のBGM-109「トマホーク」は最も成功した巡航ミサイルで、
射程距離は2,500km、弾頭重量は約450kg、命中精度は「建物の窓の中まで狙える」と例えられるほど。
配備が開始されてからアメリカ軍のいるあらゆる戦場で大量に使用されており、
湾岸戦争、ユーゴ紛争、アフガン、イラクなど現代の大きな戦争のほとんどで活躍している。
トマホークの利点としては、やはり長距離から一方的に攻撃できる兵器であることと、
地上・水上艦・潜水艦・航空機から発射できるという発射プラットフォームを選ばないこと、
精密攻撃ができること、などが挙げられる。
速度はせいぜい時速800kmほどでしかないので、
捕捉されれば撃墜が容易なのは相変わらずだが、
トマホークは航空機のように飛行経路や高度を自在に設定でき、
危険地域は迂回したり、低空飛行でレーダー網を掻い潜ったりができる為に
また小型で多数発射するので結果的に迎撃は困難とされている。
艦隊から斉射されるトマホーク |
日本がトマホーク巡航ミサイルを保有するメリットは大きい。
海上自衛隊は世界有数の護衛艦隊戦力を有しており、もしもトマホークを導入すれば、
護衛艦や潜水艦などから多数のトマホークを発射でき強力な攻撃手段を獲得することになる。
自衛隊は爆撃機などの敵地攻撃能力がなく、F-2支援戦闘機などが申し訳程度に誘導爆弾を扱えるのみである。
敵勢力の策源地を壊滅させなければ、際限なく攻撃を受け続けそれを迎撃するのみでは、
いつまでも完璧な本土防衛ができるとは望むべくもない。
このような状況にあっては、巡航ミサイルの導入は強力な敵地攻撃手段となり、
敵勢力の策源地を攻撃できればそもそもの侵攻能力を未然に削ぐことが可能となる。
また爆撃機や空母の導入など他の考えられる手段よりもよっぽど安価で、高い費用対効果が期待できるのも理由の一つ。
以上のことから、巡航ミサイルの導入は自衛隊の防衛能力・手段を効率的に大幅に拡大させうると考えられるわけです。
でも、V2やドーラも忘れないであげてください…
速度は遅いから航空機での迎撃も容易だろうし。
スピットファイアよりスピード出てたらまた違ったんじゃないのかい。
このドイツのチャレンジ精神大好きw
V-2やドーラは巡航ミサイルに関係ないじゃない。
>>toppo
早期警戒機などを飛ばして、巡航ミサイルを捕捉できるように努力をする。
その後は下のUnknownも言ってる通り、戦闘機や艦船などの対空ミサイルや対空機銃で破壊する。
ってかんじかな。
しかし数を撃たれた場合、完全な迎撃は困難なので、やはり撃たれないのが重要。
撃たれない為に策源地攻撃能力を、という話。
>>moja
俺は理系じゃないから、
科学的な話はわからん。
>>ryuzaki
V-2は巡航ミサイルには関係ない!
V-2は弾道ミサイルだね
あくまで推測の域はでないけど。
その通り。
V-1とV-2は開発目的は似ているけど、
同じミサイルの始祖とはいっても全く別種の兵器なのです。
巡航ミサイルと弾道ミサイルの区別についてはまた新しく記事で書こうと思うよ!
>>ハープーンblock2のUnknown
ハープーンの対地攻撃型はスタンドオフ兵器であるので、全くトマホーク巡航ミサイルとは別種のものだよ。
トマホークとは攻撃する対象が異なる。
どういうことかというと、ハープーンは敵車両や戦車などの移動目標など、小さい敵に対する対地ミサイルで、
トマホークは戦車などの個別目標ではなく敵施設などを攻撃して破壊する兵器。
ハープーンの射程はせいぜい200km前後しか無いのに対し、トマホークは2500km以上。
炸薬量も段違いで、当然トマホークのほうが破壊力は大きいが、飛翔速度はハープーンの方が速い。
対地攻撃ミサイルでいえば、陸自は既にAH-64Dアパッチに搭載するヘルファイア・ミサイル等を保有しているけど、
これもスタンドオフ兵器であるので、ヘルファイアを持っているからといって敵地攻撃能力・策源地攻撃能力があるとは言わないよね。
ハープーンのはそれと同じカテゴリの兵器なので、敵地攻撃能力があるとはみなされない。