アメリカの台湾へのF-16供与中止は敗北ではない。

2011-09-28 20:45:04 | 軍事ネタ

今月に入り、アメリカが台湾にF-16戦闘機のC/D型を売却するという兵器供与計画が、
中国の抗議により阻止されたというニュースが話題になっていた。

台湾を守るふりする米国―新型戦闘機は提供せず
http://jp.wsj.com/World/China/node_311612





F-16はアメリカで開発された軽量戦闘機で、全世界に販売されているベストセラー機。
開発当初はただの軽量戦闘機だったが、今や度重なる改修により、
空戦から爆撃まで多目的に任務をこなす使い勝手の良いマルチロール機だ。

台湾空軍は既にこのF-16のA/B型(Block20)を145機保有しており、
今回はより先進型であるC/D型を新たに66機購入するという計画だった。
しかしこの度の供与中止を受け、アメリカは中国の圧力に屈したのかと、
上記ニュース記事のように落胆を示した人も多い。


ところがこれはそう単純な話ではない。
確かにアメリカは対中関係の悪化を考慮して台湾へのF-16C/D型、66機の輸出を中止した。
しかしその代替にアメリカは既に台湾が保有しているF-16A/B型の145機のアップグレード案を提示したのだ。

そのアップグレード案の内容が、
・AESAレーダー、JHMCSを含む最新式電子機器の搭載。
・AIM-9X、AIM-120C7と最新式空対空ミサイルの搭載。
・その他各種対地誘導爆弾などの兵装アップグレード。
・エンジンをF-15Eに搭載されている先進的な物への換装も研究。


等々となっており。
これがどの程度の改修となるかといえば、

AESAレーダーの搭載により、レーダー性能では本来供与される予定であったF-16C/D型を凌ぐものとなるし、
AIM-9X、AIM-120C7と世界でも最新式の空対空ミサイルも搭載されるので空対空性能は大きく向上する。
さらに今回導入されるJHMCSというのは統合型ヘルメット式HUDであり、これとAIM-9Xを組み合わせれば、
自機の真横にいる敵機のほうをパイロットが向いてロックオンすれば、真横にもミサイルを発射できるという全方位型戦闘システムである。
さらに研究されているエンジンの換装も、導入予定であったF-16C/D型よりも先進的な物である。


これらの改修が上手くいけば、本来供与されるものであったF-16C/D型よりも作戦能力が強化されることになるだろう。
もちろん66機を新たに導入するという計画であったのが頓挫したので、その分の機数が増えないことになり、
これの埋め合わせとしての機体選定は今後も必要となるだろうが。
ただ今回の件に関しては単純なアメリカの圧力負けではないことは確かだ。

中国政府としては、アメリカによるF-16C/D型供与計画を中止させたことで一定の成果を挙げたことになるし、
アメリカや台湾としても、代替のアップグレード案で同等以上の作戦能力を得ることができる。
大人の世界のゲームが垣間見えるね。


今後もこの台湾空軍の機体導入計画と、台中情勢については見逃せない。