Harumichi Yuasa's Blog

明治大学専門職大学院ガバナンス研究科(公共政策大学院)教授・湯淺墾道のウェブサイトです

津軽選挙

2015年04月20日 | 選挙制度
昨日は、専修大学で開催された日本臨床政治学会2015年度研究大会の第3部に参加し、討論者を務めた。
今回の第3部のテーマは「津軽選挙」で、報告者は藤本一美先生と、限界集落に関する研究で有名な社会学者の山下祐介先生。

最近でこそ下火になっている津軽選挙だが、昭和50年代までは、贈収賄もさることながら、開票所を暴徒が襲撃して投票箱を壊す、不在者投票の替え玉(本人に無断で行われることもあったという)、にわか文盲(代筆により、確実に買収された候補者に投票させる)、投票所における投票数を上回る得票数(開票中に、正規のものではない投票用紙を混入させたとみられる)、選挙管理委員長雲隠れ事件など、話題に事欠かなかった。
徳之島の「保徳戦争」も有名だが、津軽選挙は、不正行為が選管ぐるみであったところに特色があり、選挙のガバナンスという点でも興味深い事例である。

今回のセッションの討論者を務めるために、両先生の論文を読み、私自身も非常に勉強になった。
藤本先生は津軽のご出身なので、ご自分の体験を踏まえて、津軽選挙の実態を振り返る発表。
山下先生からは、2014年平川市長選挙で現職市議会議員の半数が逮捕され、津軽選挙の再来といわれた事件について、すでに津軽選挙を生んだ地元の社会は変容しており、あれは津軽選挙というべきものではないという非常に刺激的な指摘があった。かつての津軽選挙は、対立する二大保守系政治勢力が有権者を巻き込んだ地域一体的・共同体的なものであり、ある種の祝祭のような面を有していたのに対して、平川市長選挙の買収事件は、保守系の政治勢力の中での派閥争い的なもので、地域のコミュニティが変容している中で、有権者との一体性を欠いているという。

司会は、討論者も兼ねて、九州産業大学教授を長く務められた伊藤重行先生。九産大には以前に非常勤に行っていたこともあり、懐かしい。

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