おとらのブログ

観たもの、見たもの、読んだもの、食べたものについて、ウダウダ、ツラツラ、ヘラヘラ書き綴っています。

正倉院 歴史と宝物

2021-11-08 23:00:35 | 読んだもの
 奈良博の「正倉院展」を見るために読んだ中公新書の「正倉院」です。2008年初版で、2015年で四刷りになっています。著者は杉本一樹さん、2008年当時は宮内庁正倉院事務所長さんでした。

 本の紹介文です。
8世紀半ばに創建された正倉院は、当時の宝物を今に伝える世界でも稀有な存在である。聖武天皇ゆかりの品が目を惹くが、東大寺に関係する品や文書も多く含まれ、内容は多岐にわたる。宝物の献納や出用、御覧の記録をひもとけば、時の朝廷や権力者の姿が浮かび上がると同時に、いかに多くの人々が収蔵品の保存に力を尽くしてきたかがわかり、興味深い。1200年以上にわたって宝物を守り続ける正倉院の歴史をたどる。

 “予習”のつもりで買いましたが、昨日も書いたようにあまり予習にはなってなくて、予習ならば宝物紹介の写真集的なものを見ないといけなかったのかなぁと思いました。でも、本としてはとても面白く読みました。↑紹介文にもあるように、宝物の献納や出用の記録を辿りながら、保存や修復について、担当者ならでは視点で書かれてあって、非常に興味深かったです。

 内容なんですが、目次を書いた方がわかりよいかと…。
 第1章 正倉院とは何か?
 第2章 宝物奉献をめぐってー献物帳の世界
 第3章 宝物の保管と利用ー「曝涼帳」の時代
 第4章 帳外品の由来についてー東大寺の資材と造東大寺司関係品
 第5章 宝庫・宝物の一千年ー平安~江戸末期
 第6章 近現代の正倉院

 「正倉院展」のことはよく聞いても、正倉院自体については、歴史の教科書でも「聖武天皇のゆかりの御物が倉に納められ、それが校倉造のおかげで1200年間とても良い状態で残っていました。」程度の記述で、「ふーん、すごいね」という感想ぐらいしかなく、その1200年という時間の流れにまでは全く考えが及びませんでした。今回この本を読んで、納められた当時のこと、聖武天皇遺愛の品だけではなく、東大寺での法要にまつわる品、造東大寺司(東大寺の事務所)にかかわる品もあり、宮中儀式具やや武器・武具なども含まれているということを知りました。聖武天皇遺愛の品も5回に分けて献納され、それぞれの記録がちゃんと残っていて、だからこそちゃんと保存もできるそうです。

 「出用」というのも初めて知りました。っていうか、この本に書かれてあったことはほぼ全て初めて知ったことだったのですが。いったん倉に納められたものは全てそのまま残っていると思っていたので。そういえば、大河ドラマの「麒麟がくる」で信長が蘭奢待を所望して、持ってこさせたという場面がありましたね。あれって、正倉院から持ち出されてました。展覧会会場に年表があって、そこに「織田信長、蘭奢待拝見」の一行がありました。隣のお客さんも「あ、これや」って指さしていました。きっと「麒麟がくる」のことをおっしゃっていたんでしょうね。信長の後、秀吉も家康も東大寺を訪問しています。東大寺側は「蘭奢待拝見」に備えていたそうですが、どちらも何も言わなかったそうです。

 漢字と年号が多くてなかなか読み進むのは大変ですが、すごくワクワクする本でした。第2章から4章までの正倉院宝物についての記述の部分は全てが「すごいお宝!」っていうのもありますが、それにまつわる文書が残っており、「あーでもない、こーでもない」的な騒動もあったりして面白かったです。東大寺の大仏さんは2回焼けていて、その火が結構間近に迫ってくるのですが、不思議と正倉院は火事にならなかったそうです。落雷で火事(ボヤ?)というのはあったそうです。

 第5章から6章は時代ごとに残っている文書から、その時代時代の事情や担当者の役割や苦悩?まで読み解いてくださっています。宝物は1200年間眠り続けていたわけではないんですね。内容は結構ドラマチックなんですが、著者の杉本さんは研究者でいらっしゃるので、そこは煽ることなく淡々と書いていらっしゃいます。「正倉院展」を見るために読んだ本でしたが、正倉院そのものを見たくなりました。次の奈良博の展覧会は「藤田美術館展」で行く予定にしていますが、今度こそ、正倉院外構まで行きたいと思います。
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2 コメント

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正倉院 (まるこ)
2021-11-15 08:53:59
数年前、正倉院を拝見しました。といっても、もちろん外構です。大きな校倉造で、私の大好きな古代の風が吹いておりました。
機会がございましたら、ぜひ。
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模型 (おとら)
2021-11-15 22:55:23
奈良博の中に正倉院の模型?が置いてあって、ずっと実物を見たいと思っています。次回は何とか見に行きたいと思います。
返信する

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