改めまして「上方歌舞伎会」でございます。今年も大変結構でございました。何年か前、確か「すし屋」がかかった時(松十郎さんがいがみの権太)あたりから、一気に上手くなられ、それ以降皆さん“高値安定”が続いています。
舞踊とお芝居が1本ずつかかります。舞踊は地唄舞の「荒れねずみ」でした。当日も書きましたが、てっきりねずみの扮装(着ぐるみ?)で踊られると思っていたら、素踊りだったので、ちょっとビックリしました。始まる前に、千次郎さんの「解説」がありました。すっかり解説も板についた千次郎さんです。
全員黒紋付に袴という姿です。鬘やお衣装がないので誤魔化しが効きません。お扇子を巧みに使って表現されていました。お扇子を三分の一くらい開けて、それを逆三角形の向きにして顔の前に持ってくると、あ~ら不思議、ねずみの顔に見えてくるんですよね。あるいは、閉じた扇子をお尻の後ろに添えて尻尾に見せるとか。「うまいこと考えたはるなぁ」と感心しながら拝見しておりました。
七人の群舞、ちゃんと振りも揃っていました。おそらく普段はそういう踊り方をされないと思うので、かなりお稽古をなさったのではないかと…。演奏は菊央雄司さん、お三味線を弾きながら歌われていました。歌詞はわかりやすい、聞きやすいもので洒落のきいた楽しい歌詞でした。ただ、やっぱりまだまだ舞踊は苦手、面白いのにところどころで意識を失っておりました。2回見ましたが、2回とも最後の引っ込みを見られず…。情けないことでございます。
お芝居は「封印切」です。今年は成駒家さんの型だそうで、がんじろはんのご指導です。と言われても、「封印切」ってほとんど成駒家さんで、1回だけ孝夫さんで見たような記憶がありますが、同時に右画面と左画面で見ているわけでもないので、型がどう違うのかは全くわかりませんでした。プログラムによると、小判の封印が勝手に切れるのが成駒家で、自分から切るのが松嶋屋さんだそうですが、着物の中でごちゃごちゃやったはるので、切れたのか切ったのか、そんなん見えませんし…。
忠兵衛は翫政さん、梅川はわれらが吉太朗クンでした。お役の設定の年齢に近いせいもありますが、とてもしっくりとくるカップルでした。翫政さん、何となく素のイメージは三枚目なんですが、今回はちゃんと二枚目に見えました。花道から登場し、七三のところでのお芝居、ちょっと藤十郎さん風味がありました。がんじろはんよりも藤十郎さんに似てるって思いました。
吉太朗クンの梅川はとにかく可愛らしい、健気で切なくて、“ギュッとしたくなる”女の子でした。菊ちゃんが以前梅川を演ったことがあり(チャレンジ精神は認めますが、ちと無謀…)、その時のご指導が秀太郎さんでした。秀太郎さんがおっしゃるには「梅川はアホな子やねん。忠さんが好き、それだけやねん」だそうで、吉太朗クン、そんな無垢で純真なところもバッチリでした。菊ちゃんもですが、扇雀さんとか壱太郎クンは“理”が勝るような気がします。吉太朗クン、前々から上手い役者さんで、今回の梅川ももちろんすごく出来るんやろうなと予想はしていましたが、それを軽く超えてきました。初めて、梅川で泣きました。っていうか、成駒家さんのって、ここまで集中して見てなかったと思うんです(コラっ)。今回はわれらが吉太朗クンってことで、かなり気合を入れて見たので。あ、それと最前列だったこともあると思います。“舞台に近づけば近づくほど、感動は大きくなる”という法則もあったと思います。
おえんさんの當史弥さん、仲居およしの千太郎クンに秀太郎さん風味がありました。松四朗さんの八つぁん、憎々しげ満載でよかったです。八つぁん、大事ですよね。ポンポンと畳みかける台詞は、大阪弁Nativeでないと面白くありません。愛之助さんの八つぁんも良かったですよね。老け役担当?の鴈大さん、今回は顔に皺を描かずにちゃんと中年に見えました。
見終わってから「あぁ、すごいしっくりとくる『封印切』やったわぁ。ええもん、見せてもろたわぁ」って思ったのですが、これって秀太郎さんがよくおっしゃっていた「上方の匂い」っていうものなんでしょうね。出ている役者さんが全員大阪弁Native、大阪で生まれて大きくなって今も住んでるっていうのがいいんでしょうね。歌舞伎のお芝居の上手下手から言えば、もちろんがんじろはんや扇雀さんのほうがお上手なんでしょうけれど、この人たちが舞台にいると確かに大阪新町の井筒屋なんです。反対にこの人たちが黙阿弥ものとかするとちょっと浮くかもしれません。
それともう一つ思ったのは「晴の会」の経験です。「晴の会」では小さいハコで出演者が全員主役みたいなもので、何かしら大事なお役、スポットライトを浴びます。1年に2度“前に出る芝居”を経験されることは大きいと思います。100回のお稽古よりも1回の本番ってどこかで聞いたことがありますから。
さらにもう一つ、千次郎さんは玉ちゃんに、千壽さんは幸四郎さんに、吉太朗クンは菊ちゃんにと幹部さんに引っ張ってもらってるっていうのもあるのかなぁと。要となるお役を割り振られ、それにきちんと応えてこられたことが大きな財産になっているような…。再来月、歌舞伎座でわれらが吉太朗クンが千鳥です。「FFX」や「刀剣乱舞」でも注目されましたが、ガッツリ古典もバッチリ出来るところをお江戸のお客さんに見せてやってちょーっておばちゃんは思っております。
そうそう、最後のご挨拶です。孝夫さんが今年監修に回られて、出て来られるのかしらとドキドキしましたが、無事にお出ましでした。珍しいシングルのスーツ姿でした。どうもああいうご挨拶はお苦手なようで、なかなかのグダグダぶり、でもそんな孝夫さんは滅多に見ることができませんので、年に1回のファンサービス?かと…。萌え~でございます。最後に「これからもこの『晴の会』をよろしく…」って言いかけて、後ろからタカタロさんのダメ出しがありました。ワタシ的には、それだけ「晴の会」のことも思ってくださっているんだなぁとちょっと嬉しくなりました。秀太郎さんが手塩にかけて育てられた「晴の会」ですからね。本当にご兄弟仲の良い松嶋屋さんでございます。
上方歌舞伎会の皆さんの活躍の場が広がればと祈ります。また来年を楽しみに。
舞踊とお芝居が1本ずつかかります。舞踊は地唄舞の「荒れねずみ」でした。当日も書きましたが、てっきりねずみの扮装(着ぐるみ?)で踊られると思っていたら、素踊りだったので、ちょっとビックリしました。始まる前に、千次郎さんの「解説」がありました。すっかり解説も板についた千次郎さんです。
全員黒紋付に袴という姿です。鬘やお衣装がないので誤魔化しが効きません。お扇子を巧みに使って表現されていました。お扇子を三分の一くらい開けて、それを逆三角形の向きにして顔の前に持ってくると、あ~ら不思議、ねずみの顔に見えてくるんですよね。あるいは、閉じた扇子をお尻の後ろに添えて尻尾に見せるとか。「うまいこと考えたはるなぁ」と感心しながら拝見しておりました。
七人の群舞、ちゃんと振りも揃っていました。おそらく普段はそういう踊り方をされないと思うので、かなりお稽古をなさったのではないかと…。演奏は菊央雄司さん、お三味線を弾きながら歌われていました。歌詞はわかりやすい、聞きやすいもので洒落のきいた楽しい歌詞でした。ただ、やっぱりまだまだ舞踊は苦手、面白いのにところどころで意識を失っておりました。2回見ましたが、2回とも最後の引っ込みを見られず…。情けないことでございます。
お芝居は「封印切」です。今年は成駒家さんの型だそうで、がんじろはんのご指導です。と言われても、「封印切」ってほとんど成駒家さんで、1回だけ孝夫さんで見たような記憶がありますが、同時に右画面と左画面で見ているわけでもないので、型がどう違うのかは全くわかりませんでした。プログラムによると、小判の封印が勝手に切れるのが成駒家で、自分から切るのが松嶋屋さんだそうですが、着物の中でごちゃごちゃやったはるので、切れたのか切ったのか、そんなん見えませんし…。
忠兵衛は翫政さん、梅川はわれらが吉太朗クンでした。お役の設定の年齢に近いせいもありますが、とてもしっくりとくるカップルでした。翫政さん、何となく素のイメージは三枚目なんですが、今回はちゃんと二枚目に見えました。花道から登場し、七三のところでのお芝居、ちょっと藤十郎さん風味がありました。がんじろはんよりも藤十郎さんに似てるって思いました。
吉太朗クンの梅川はとにかく可愛らしい、健気で切なくて、“ギュッとしたくなる”女の子でした。菊ちゃんが以前梅川を演ったことがあり(チャレンジ精神は認めますが、ちと無謀…)、その時のご指導が秀太郎さんでした。秀太郎さんがおっしゃるには「梅川はアホな子やねん。忠さんが好き、それだけやねん」だそうで、吉太朗クン、そんな無垢で純真なところもバッチリでした。菊ちゃんもですが、扇雀さんとか壱太郎クンは“理”が勝るような気がします。吉太朗クン、前々から上手い役者さんで、今回の梅川ももちろんすごく出来るんやろうなと予想はしていましたが、それを軽く超えてきました。初めて、梅川で泣きました。っていうか、成駒家さんのって、ここまで集中して見てなかったと思うんです(コラっ)。今回はわれらが吉太朗クンってことで、かなり気合を入れて見たので。あ、それと最前列だったこともあると思います。“舞台に近づけば近づくほど、感動は大きくなる”という法則もあったと思います。
おえんさんの當史弥さん、仲居およしの千太郎クンに秀太郎さん風味がありました。松四朗さんの八つぁん、憎々しげ満載でよかったです。八つぁん、大事ですよね。ポンポンと畳みかける台詞は、大阪弁Nativeでないと面白くありません。愛之助さんの八つぁんも良かったですよね。老け役担当?の鴈大さん、今回は顔に皺を描かずにちゃんと中年に見えました。
見終わってから「あぁ、すごいしっくりとくる『封印切』やったわぁ。ええもん、見せてもろたわぁ」って思ったのですが、これって秀太郎さんがよくおっしゃっていた「上方の匂い」っていうものなんでしょうね。出ている役者さんが全員大阪弁Native、大阪で生まれて大きくなって今も住んでるっていうのがいいんでしょうね。歌舞伎のお芝居の上手下手から言えば、もちろんがんじろはんや扇雀さんのほうがお上手なんでしょうけれど、この人たちが舞台にいると確かに大阪新町の井筒屋なんです。反対にこの人たちが黙阿弥ものとかするとちょっと浮くかもしれません。
それともう一つ思ったのは「晴の会」の経験です。「晴の会」では小さいハコで出演者が全員主役みたいなもので、何かしら大事なお役、スポットライトを浴びます。1年に2度“前に出る芝居”を経験されることは大きいと思います。100回のお稽古よりも1回の本番ってどこかで聞いたことがありますから。
さらにもう一つ、千次郎さんは玉ちゃんに、千壽さんは幸四郎さんに、吉太朗クンは菊ちゃんにと幹部さんに引っ張ってもらってるっていうのもあるのかなぁと。要となるお役を割り振られ、それにきちんと応えてこられたことが大きな財産になっているような…。再来月、歌舞伎座でわれらが吉太朗クンが千鳥です。「FFX」や「刀剣乱舞」でも注目されましたが、ガッツリ古典もバッチリ出来るところをお江戸のお客さんに見せてやってちょーっておばちゃんは思っております。
そうそう、最後のご挨拶です。孝夫さんが今年監修に回られて、出て来られるのかしらとドキドキしましたが、無事にお出ましでした。珍しいシングルのスーツ姿でした。どうもああいうご挨拶はお苦手なようで、なかなかのグダグダぶり、でもそんな孝夫さんは滅多に見ることができませんので、年に1回のファンサービス?かと…。萌え~でございます。最後に「これからもこの『晴の会』をよろしく…」って言いかけて、後ろからタカタロさんのダメ出しがありました。ワタシ的には、それだけ「晴の会」のことも思ってくださっているんだなぁとちょっと嬉しくなりました。秀太郎さんが手塩にかけて育てられた「晴の会」ですからね。本当にご兄弟仲の良い松嶋屋さんでございます。
上方歌舞伎会の皆さんの活躍の場が広がればと祈ります。また来年を楽しみに。