玉ちゃん

のお舞台で2024年を明けました。松竹座の「坂東玉三郎初春お年玉公演」でございます。
今回は自分への“お年玉”ということで、奮発してA席、5000円の席です。一瞬、S席にしようかと思ったのですが、10000円と倍になるのでA席にしておきました。2階の5列目でした。もちろん3階の最後列よりは舞台は近かったです。
演目は以下の通り
第一部
「口上~女方の魅力~」
地歌「黒髪」
第二部
『天守物語』より
地歌「由縁の月」
開演に先立ち、緞帳が上がるとその下に白い幕(スクリーン?)があり、そこに定式幕が映し出されました。時間になるとその定式幕が開く動きがあり(音付きでした)、次にそこに凧が飛び、獅子舞が出てきました。ひとしきり獅子舞があり(中の人はお弟子さんではないみたい)、それが終わるとその白い幕が上がり、ようやく舞台が現れます。
舞台の真ん中に緋毛氈、玉ちゃん

が座っていらっしゃいました。背景は四季の花が描かれた金屏風でした。口上では通常なら「おめでとうございます」なんですが、今日は1日に能登の地震、2日に羽田の事故があり、お見舞いの言葉から始まりました。続いて「毎年『幸せを!』と願って年を明けるけれど、人生何があるかはわからない。とはいえ、ご来場の皆様のご健勝のご様子、お喜び申し上げます。現実を忘れる時間になりますように」とおっしゃいました。
今日は満員御礼だったそうで、昨年ようやく日常が戻り、俳優として満員のお客様が嬉しい、と。ここから、お年玉公演は14日まで、その後小朝さんとの公演、28日からはコンサートがありますとちょっと宣伝が入りました。「コンサート」とおっしゃる時はちょっと恥ずかしそうにされてて、かわゆし

でした。
で、「口上」なんですが、コロナのお正月から松竹座の公演が始まり、その時は道頓堀も人出がほとんどなく向こうまで見渡すことができるくらいで、何か違った趣向ということで衣装展示・解説を始められたそうです。それが結構好評で、あちこちで続けられてきたのですが、昨年11月からロンドンで玉ちゃん

のお衣装の展覧会が始まり、お衣装がほとんどロンドンに行ってしまったそうです。少しは残ってるそうですが。辰年なので「龍」の打掛を作られたそうですが、仕立てが今回に間に合わなかったそうです(じゃあ、あの七之助さんの富姫のお衣装は新しいものではないのでしょうか?)。このお年玉公演は急遽決まったため、歌舞伎公演ができないので「どうしよう?」となった時に、昨年バルームで行った衣装解説の公演の際に「黒髪」が好評だったのでそれを今回持ってきてくださいました。自分で鏡を見ながら簪を挿される、あの動きです。
かんじんの「女方」の解説です。かなり真面目な、学術的な、社会学的な解説でした。「演劇史から見た、世界の演劇と比較した、ジェンダーから考える、日本の女方」って感じです。日本の女方、それも大人の男性が演じる女方は270くらいの歴史、300年も経っていません。シェークスピアやギリシャ演劇は少年が女性を演じていました。
玉ちゃん

ご自身は六代目歌右衛門さんに憧れてこの世界に入られました。好きな舞台に立ち、踊りを踊り、古典に接することが好きで、両親も勧めてくれたので自然にこの世界に入った、女方とか女性とか立役とかそういうことも全く意識せずにこの世界に入った、と。アメリカには女方はないそうです。ヨーロッパからインド、インドネシア、中国に女方があったけれど、日本だけ女方が残ったそうです。「なんと不思議なことか!」とご本人もおっしゃっていました。お能にも「かつらもの」というのがあり、かつらをつけて唐織を身につけると女性になり、これも一種の女方ではないかと。
最近は「男らしい」とか「女らしい」とか言っちゃいけない世の中になっているが、女方は立役より三歩下がって、女方は立役の後見のつもりで、と言われてその通り動いてきた。舞台は緞帳で世の中と仕切られている、舞台では立役らしい、女方らしいと言ってもいいと思う。舞台の内と外では基準が違うのだから。そもそも舞台は非現実の世界、そういう中で暮らしているのだから、世間と違ってもいい、そういうふうに思うとこちら側は楽になる、と。←深いお言葉でございます。
これまで明治、大正を生きて来られた先輩方からいろいろ教えてもらった、女方はいつまで残るのか?と思いつつ、ただ、世間でお化粧をした男性、女物の洋服を着た男性が何も言われなくなってきているので、女方も残るのかなぁと。これは余談ですが、とおっしゃっていました。
女方について、まっすぐな線がないそうです。正面向いて真っ直ぐに立つことはまずなくて、少し斜めに構えて立つのが普通だそうです。ここで「ミロのヴィーナス」のポーズをしてくださったのですが、まぁ、なんとステキなことか

。お着物でミロのヴィーナスですわよ、奥サン。仏像の立ち姿も見せて下さって、客席から拝みたくなりました。
続いて手ぬぐいの扱い方を。「道成寺」の手ぬぐいが出てきました。本当の紋と仮紋の二つが染めてあるそうです。女方は線を大切にする、お着物の裾ひとつとっても、それがきれいな線が出ているかどうかをちゃんと確認しないといけないそうです。手ぬぐいも持った時の線がきれいかどうかが重要。口に銜え時に二つの紋がちゃんと見えるように銜えないといけないそうです。玉ちゃん

、昨夜の歌舞伎中継をご覧になっていたようで「壱太郎さんの紋が分かりました」っておっしゃっていました。「恋の手習い」を音楽なしでひとさし舞ってくださいました。うふっ

でした。手ぬぐいで「の」の字を書くところも、手元で「の」の字を書くのではなく、手ぬぐいの先がちゃんと「の」の字になるように手ぬぐいを回さないといけないそうです。深いです。
さらに扇の扱い方も説明してくださいました。扇の開き方も手前に開ける、お客様の方に向かっては開けないそうです。お客様に攻撃しているようになるからと。どっちから開けてるなんて、考えたこともなかったです。直角か水平に使うときれいに見えるそうです。「姫扇」というのもあり(亀姫が持ってた)、少し小さめの扇で房がついているものです。常に房が下がっているように持たないといけないそうです。
「口上」のパートは以上です。初日なので取りとめもなく申し訳ないとおっしゃっていましたが、予定の時間より20分くらいオーバーしてお話を聞けたので、ラッキー

でした。
閉めのお言葉は「舞台に立ちます者として、実演でお目にかかれることは何よりの喜び、末永くご贔屓に、隅から隅までずずずぃーーーっと、請い願いあげ奉ります」でした。
この後「雪」でした。バルームのように鏡と簪が用意され、簪を挿して舞われて、幕となりました。(引っ込みはなかったです)
幕間を挟んで第2部の「天守物語」です。最初はスクリーンにシネマ歌舞伎の「天守物語」が映し出されており、富姫様お帰りの場面でスクリーンが上がり、あの「天守物語」の場面が現れました。薄は吉弥さんで、侍女は玉朗さんおひとりでした(桔梗柄のお着物)。後見は玉雪さんと功一さんで、簑と傘を取る場面は後見さんが引き取っていらっしゃいました。薄さんに「お着換えを~」って言われて玉ちゃん

が引っ込むと、再びスクリーンが下りて、シネマ歌舞伎の「天守物語」の獅童さん登場の場面です。獅童さんがわちゃわちゃして、亀姫登場でまたスクリーンが上がり、赤いお着物の玉ちゃん

亀姫さまでございます。ここからどうなるんやろうか?と思っていたら、亀姫の隣に畳一畳分ぐらいのスクリーンがあって、そこに玉ちゃん

の富姫が映し出され、お二人?でお芝居されました。その超古典的?な手法にちょっとビックリしたけれど、ま、そういう方法しかないよねって思って、まさか玉ちゃん

のお面をつけた人が動くわけにもいかないし…。そこは玉ちゃん

ですので、お二人?のお芝居は非常にナチュラル、「お勝手」って言って扇をポンと放り投げるところもありました。さすがにほっぺツンツンは出来なくて、悶絶死は免れました。
ここで亀姫がお琴を弾くということになって、玉ちゃん

のお琴演奏が始まりました。三曲演奏されましたが、曲目は失念です。照明も曲目に合わせて変化していました(照明:坂東玉三郎ではなかったけれど)。お琴に合わせてお歌もありましたが、めちゃくちゃ気持ち良くて、半分くらい意識を失っておりました。
演奏が終わると次の「由縁の月」の用意のため、またスクリーンが下りて来て、玉ちゃん

の松竹座案内が始まりました。正面玄関で亀姫の赤いお振袖で立ってお出迎えされ、応接間(一階の右手奥、エレベータの手前にある)に通していただき、松竹座の歴史が書かれた本を見ながら、昔の道頓堀の賑わいを紹介してくださいました。玉ちゃん

のお舞台の道具帳もあり、玉ちゃん

の「羽衣」「藤娘」「雪の傾城」「雪の傾城仲之町」の映像もほんの少し上映されました。
そのパートが終わると最後の「由縁の月」です。背景は銀色の屏風になっていました。お衣装の背中側には三日月が紋のようにあしらわれていました。ステキな打掛?羽織?でした。
カーテンコールは1回、ご挨拶はありませんでした。終演時刻は4時20分でした。
今回の公演ですが、「黒髪」と「由縁の月」だけでは寂しいので、その間に「天守物語」の富姫と亀姫を両方演じ、亀姫の格好でお琴を演奏し、さらに松竹座の100周年にちなんで玉ちゃん

が松竹座を案内するという映像を撮影されてそうで、それも見せていただける、という非常に盛沢山な「お年玉公演」でした。玉ちゃん

はチケット代もお安いので、豪華な公演はできないけれど精一杯勤めますのでとご自分で「言い訳口上」とおっしゃっていましたが、何をおっしゃるウサギさん

、十分すぎるほどステキなお正月公演、文字通りの「お年玉」でございました。この内容、最初から分かってれば、S席も奮発したんですけどね。当初の発表では「口上」と「地歌舞」だけっぽかったので、それではなぁ…とケチってしまいました。日頃「玉ちゃ~ん

」と言ってるわりにケチなファンで申し訳ございません。
14日までまだまだ進化しそうです。これからいらっしゃる方、お楽しみに。

二階ロビーには富姫と亀姫の大きなパネルがありました。

A席からの眺めです。
《オマケ》
松竹座の「かべす」

2時からの公演だったので、甘いおやつを家から持って行きました。鶴屋八幡の「いただき」と広島の藤屋のもみじ饅頭です。

髙島屋で買ったお土産です。今日は水曜で喜久寿のどら焼きがありました。金沢森八の福梅(金沢のお正月には欠かせないお菓子だそうです)と京都の俵屋吉富の葛湯。

玉出の木村家のドーナツ。限定品だそうで、買ってきました。