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おとらのブログ

観たもの、見たもの、読んだもの、食べたものについて、ウダウダ、ツラツラ、ヘラヘラ書き綴っています。

ユリイカ6月号

2015-06-02 23:34:49 | 読んだもの
 「ユリイカ」という雑誌です。タイトルの横を見ると小さく「詩と批評」と書いてあります。そういう雑誌だったんですね。名前は聞いたことがあるけれど、内容は全く存じ上げませんでした。

 その「詩と批評」の雑誌の今月号がなぜか桂米朝師匠の特集号でした。最近、本はもっぱらネットで買ってたんですが、先週久しぶりに天満橋のジュンク堂に行き、演劇・歌舞伎・文楽・落語の棚を見たら、この雑誌が置いてありました。おそらく、もともとの定位置(文芸?の棚)に置いてあったら手に取ることもなかったと思いますが、米朝師匠の特集と言うことで落語の棚にも置いてくださっていたようです。おかげで見逃すことなくgetできました。

 私もまだ全て読めていないんですが、なかなか充実しています。

 米朝師匠の特集ページの内容です。
 【“桂米朝”という時代】
 師匠と勉強 / 桂ざこば 聞き手=編集部
 落語家の名前 桂米朝の家に生まれて / 桂米團治 聞き手=編集部
 米朝さんと正岡容と私たち / 大西信行
 聞き納め桂米朝噺 / 加藤武
 『上方風流』のこと / 山田庄一
 桂米朝さんの想い出 やるべき事は総てやりつくした人 / 権藤芳一
 米朝山脈 / 織田正吉

 【噺家とひとびと】
 上方落語の吹き返し / 月亭可朝 聞き手=編集部
 眠らないママ / 廓正子
 二人の盟友 桂米朝と吉鹿之司 / 金森三夫
 「口碑文芸」を愛した「文化遺族」 / 乙部順子
 八十八翁の笑み / 桂吉坊
 米朝一門の師弟愛 / 中川周
 米朝アンドロイド / 石黒浩
 米朝師匠追悼 / 雲田はるこ

 【落語の学究】
 上岡龍太郎、桂米朝を語る / 上岡龍太郎 聞き手・構成=戸田学
 四代目桂米団治と桂米朝 / 豊田善敬
 笑福亭松鶴と桂米朝 / 戸田学
 稀有の人・桂米朝師の学問 / 延広真治
 桂米朝の構図 / 和田尚久
 桂米朝師を考える一視点 浄瑠璃本研究の立場から / 神津武男
 形而上学的桂米朝論 桂米朝と井筒俊彦 / 山内志朗
 「精妙なうそ」の人 桂米朝へのオマージュ / 森本淳生
 眠れる落語、眠れない落語 「土橋万歳」雑感 / 中田健太郎

【現世の行きかた】
 ■現世の行きかた 桂米朝略年譜 / 編=豊田善敬・戸田学

 ざこばさん、米團治さんのインタビューあたりは、あちこちで聞いたり読んだりしていますが、月亭可朝さんとか上岡龍太郎さんまで引っ張り出してきて、米朝師匠を語るっていうのはずいぶんと珍しいような気がします。結構読み応えがありました。

 「米朝一門の師弟愛/中川周」っていうのは米朝師匠のお孫さん(三男さんのお嬢さん)で、大学の卒業論文として教育者としての米朝師匠を取り上げられたそうで、その卒論が掲載されています。かなりレアですね。吉坊さんは吉朝さんのお弟子さんですが、米朝師匠のところで内弟子修業をされています。文章、お上手です。最後はほろりとさせられました。

 高座で演じる落語家という面だけでなく、いろいろな切り口で米朝師匠を偲んでいらっしゃいます。編集者に米朝師匠の大ファンって方がいらっしゃったんでしょうか。「愛」が感じられる特集でした。面白い雑誌だと思います。ぜひ! です。

 大阪の雑誌「上方芸能」の次号が米朝師匠の追悼号になるそうなんですが、東京の雑誌に負けてはいけません。ガンバレ!
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幕外ばなし

2014-12-15 23:59:00 | 読んだもの
 
 先だってお亡くなりになりました奈河彰輔さんが著されました「幕外ばなし」です。私家版で一般の書店には並んでおらず、ご本人と伝手がなければ、古本屋さんかオークションぐらいしか方法がないのですが、先日偶然にもネットの古本屋さんで見つけようやく手に入れました。今日届いたばかりで、まだパラパラとしか見ていませんが、写真がかなりあって面白そうです。孝夫さんの襲名披露のことをふれた段もありました。楽しみに読ませていただきます。

 
 カバーを外すとこんな装丁になっていました。カバー・装丁は舞台美術家の前田剛さんだそうです。なかなかおしゃれです。ついでに、この入手した本ですが、ほぼ新品、おそらく私が初めて読むような感じです。古本屋さんから買うって、ちょっと抵抗あるんですが、これはOKでした。
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演劇界1月号

2014-12-09 23:16:06 | 読んだもの
 「演劇界1月号」に孝夫さんのロングインタビューが載っています。聞き手は渡辺保さんで孝夫さんの代表作「吉田屋」の伊左衛門、「女殺油地獄」の与兵衛、「すし屋」の権太、「寺子屋」の松王丸、「七段目」の由良助についてさまざまお尋ねになっていらっしゃいます。インタビューですが季節の挨拶のようなものはいっさいなく、いきなり本題に入っていらっしゃいます。ページ数は7ページ、舞台写真もふんだんに出てきます。

 巻頭特集は「歌舞伎と宝塚」で、玉ちゃんが植田伸爾さんが対談していらっしゃいます。それ以外は染五郎さん×紅ゆずるさん、壱太郎さん×石田昌也さん、藤間勘十郎×原田諒さんの組み合わせです。

 実はまだ全部読んでないんですが、パラパラと見たところ、なかなか充実した内容のようです。「演劇界」は一時、読むところは劇評だけというようなこともあって、しばらく敬遠していましたが(読みたいところだけ立ち読みしてました)、先月号が勘三郎さんの特集だったので復活、今月も孝夫さんのロングインタビューということで、お買い上げでございます。

 そうそう、今月はカレンダーがついてきます。役者さんのお誕生日が書いてある、アレです。何年か前に始めてこのカレンダーを見たときはちょっとびっくりしましたが、歌舞伎ファンならば、毎日どなたのお誕生日なのかチェックするぐらいでないといけないんでしょう。ちなみに、カレンダーの中のお写真ですが、玉ちゃんは2月に「おかる」のお姿で、孝夫さんは8月に「松吉」のお姿で登場されます。
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昭和演劇大全集

2014-12-08 23:03:09 | 読んだもの
 「昭和演劇大全集」という本です。著者は渡辺保さんと高泉淳子さんです。そう、あの歌舞伎評論家の大御所、渡辺保さんが“歌舞伎ぢゃない”演劇について語っていらっしゃいます。それがとても不思議で、思わずこの本を手に取りました。写真だけではわかりませんが、厚さが3センチ超、ページ数485ページとかなり大きな本でお値段も2800円+税、一瞬ひるみましたが、何度か本屋さんで立ち読みしましたが、読みたい箇所がいくつもあったので、買って読むことにしました。中身は、渡辺保さんと高泉淳子さんの対談という形式なので、とても読みやすく、案外早々に読了しました。

 内容紹介です。
 
新劇、新派、アングラ……演劇が花ざかりだった昭和。その役者と作家、演出と舞台を渡辺保が縦横無尽に語りつくし、演じ手・作家の視点から高泉淳子がそれを引き出す。昭和と演劇を再発見する!

 もともとはNHK-BS2の「昭和演劇大全集」(2007年4月~2009年3月)で放送されていた番組だそうで(だから対談という形式)、その番組の中で取り上げた演劇作品のうち32作品の解説に、大幅に加筆・修正を行って出版された本です。

 本書の目次です。
1 「桜の園」 A・チェーホフ──なぜ日本人はチェーホフが好きなのか
2 「大寺学校」 久保田万太郎──「芸」と「演技」の競演
3 「瞼の母」 長谷川伸──アウトローの肖像
4 「元禄忠臣蔵・大石最後の一日」 真山青果──史実に向き合った「忠臣蔵」
5 「沢氏の二人娘」 岸田國士──昭和の中流階級の風景
6 「火山灰地・第一部」 久保栄──リアリズム演劇の原点
7 「花咲く港」 菊田一夫──チャップリンとキートン、そして菊田一夫
8 「女の一生」 森本薫──中国と日本に引き裂かれる一人の女
9 「夕鶴」 木下順二──日本語の魅力を引き出した民話劇
10 「炎の人・ゴッホ小伝」 三好十郎──滝沢修の透明なリアリズム
11 「近代能楽集」 三島由紀夫──近代劇として描かれた「能」
12 「どれい狩り」 安部公房──戦後の混沌から生まれた不条理劇
13 「貴妃酔酒」「三岔口」京劇来日公演──歌舞伎座の観客を酔わせた梅蘭芳
14 「佃の渡し」 北條秀司──東京の「島」に生きる人間の運命
15 「三人姉妹」 A・チェーホフ──モスクワ芸術座、本物の衝撃
16 「マリアの首」 田中千禾夫──被爆ナガサキの祈り
17 「村岡伊平治伝」 秋元松代──戦い続けた女流劇作家
18 「セツアンの善人」 B・ブレヒト──恋愛劇の名手ブレヒト
19 「マッチ売りの少女」 別役実──体の中からゆさぶられる気持ちの悪さ
20 「ジャガーの眼」 唐十郎──特権的肉体論
21 「船場の子守唄」 松竹新喜劇──上方ならではの笑いと涙の人生訓
22 「美しきものの伝説──幕間狂言をもつ二幕」 宮本研──革命幻想の美しさ
23 「なぜか青春時代」蜷川幸雄・清水邦夫──戦いのなかの青春
24 「ベルサイユのばら・アンドレとオスカル」 宝塚歌劇団――長谷川一夫の見せる演出
25 「レミング―─壁抜け男」 寺山修司──前衛とは何か
26 「アメリカ」「翼を燃やす天使たちの舞踏」 佐藤信──歴史の闇を照らす寓話
27 「小町風伝」 太田省吾──無言という「言葉」の世界
28 「熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン」 つかこうへい──肉体と言葉を鮮烈に描く時代の肖像
29 「上海バンスキング」 斎藤憐──昭和の青春は音楽にのって
30 「頭痛肩こり樋口一葉」 井上ひさし──あの世から一葉の生涯を見たら
31 鈴木忠志の「リア王」 W・シェークスピア──日本からモスクワ芸術座へ
32 「小指の思い出」 野田秀樹──身体化されたナンセンス

 本当にバラエティに富んでいます。何となく、こういう「演劇史」なんて言われると眉間にしわを寄せるような新劇だけを取り上げるのかと思っていたら、松竹新喜劇やタカラヅカ、アングラ、そしていわゆる小劇場系まで、退屈させない内容になっていました。

 高泉淳子さんとはほぼほぼ同い年のようですが、彼女は大学から東京に出ていらっしゃるので、私の若いときよりはずっといろいろなお芝居に触れていらっしゃいます。彼女自身も劇団を作って作・演出・主演と活躍されていますので、大阪の田舎モンの私と引き比べるっていうののナンなんですが、時々私が疑問に思うようなことを渡辺保さんに質問してくださっていて、「ほー、なるほど」といちいち納得しながら読み進みました。

 渡辺さん、本当によくお芝居をご覧になっています。そしてすごい記憶力です。高泉さんのどんな質問にもきちんと答えていらっしゃいます。歌舞伎しかご覧にならないと勝手に思っていたので、意外な一面を見せていただきました。

 最後が野田秀樹で、彼までが「昭和」になるんですね。それ以降、三谷幸喜もクドカンも松尾スズキもケラさんもみんな平成の世の方たちなんですね。何となくわかるような気がします。お二人にはぜひ引き続き「平成(20年まで)演劇大全集」もお願いしたいです。

 非常に面白い本でした。持ち歩いて読むにはずいぶんと嵩張りますが、内容がそんなに堅苦しくないので、電車の中でもサクサク読めました。です。

 
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吉原裏同心

2014-09-11 23:56:37 | 読んだもの
 最近、とんとテレビドラマ、特に連続ドラマは見なくなっていましたが、今クールは久しぶりに楽しみにしているテレビドラマがあります。それがNHKの「吉原裏同心」です。1ヶ月ぐらい前に、たまたまチャンネルを合わせたら、結構面白かったので、それ以来毎週欠かさず見るようになりました。

 そして、ついでに原作も読んでおります。こういうドラマの原作を読むって、どうもNHKと光文社文庫の“思うつぼ”のような気がして、何だか少し悔しい?気がしないでもありませんが、原作とドラマではいろいろ違うところもあるので、両方楽しむということで納得?させます。

 上の写真は10冊しかありませんが、このシリーズは現在21巻まで出版されています。実は友人の則ちゃんがドラマよりも先にこのシリーズを読んでいて、「面白かったのは10巻ぐらいまでかなぁ」と言ってたので、とりあえず10巻までを大人買いしました。で、現在10巻まで読み進み、そのまま中途半端に読むのを止めるのも気色悪いので、また今日残りの11冊をネットでボチッと買ってしまいました。

 本当に面白い小説です。よく売れているようです。NHKだけ見ていると、ほのぼの時代劇(「御宿かわせみ」の路線?)のように思っていましたが、原作はもっとシャープでシビア、「剣豪小説」ともなっているだけあって、チャンバラのシーンは壮絶、時にグロテスクとも言えるくらいの表現があります。則ちゃんは今回のドラマは「イメージと違う」と少々お怒りでしたが、でも、この原作のとおり映像化してしまうと、R指定を受けるかもしれません。主役の小出恵介と貫地谷しおりが原作よりもかなり“お子ちゃま”なんですが、それもNHKなので仕方ないのかもしれません。私はドラマから入っているので、それはそれで許容範囲です。なかなか微笑ましい夫婦で良いように思います。

 ドラマを見ているせいか、本を読んでいても登場人物が“動く”ので、かなりサクサクと読めてしまいます。2日で1冊くらいのペースです。読んだ本がどんどん積み上がっていくので、何だか自分がすごい読書家になった気分です(あくまで“気分”ですが)。ドラマのほうは来週が早や最終回だそうです。民放と違って丁寧に作られており、「ほのぼの路線」も嫌いではないので(どちらかというとそっちのほうが好みです)、シリーズ化希望します。HNKさんヨロシクでございます。
 
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安井かずみがいた時代

2014-02-26 22:46:39 | 読んだもの
 「安井かずみがいた時代」を読みました。

 内容紹介です。
「わたしの城下町」「危険なふたり」「よろしく哀愁」etc.今も歌い継がれる名曲の数々を世に送り出した作詞家・安井かずみ。御茶ノ水の文化学院在学中に訳詞家としてデビュー後、作詞を手がけるようになり、65年「おしゃべりな真珠」で日本レコード大賞作詞賞を受賞するなど、超売れっ子の作詞家として活躍した安井は、77年にミュージシャンの加藤和彦と結婚。それまでの華やかでスキャンダラスな生活から一転して家庭に入り、マスコミから理想のカップルと称揚される。癌で亡くなるまでの55年の生涯を、二つの人生を生きたかに見える安井かずみの人生は、戦後からバブル崩壊までの日本を体現したとも言えるのではないか? 前半生と後半生のどちらが本当の安井だったのか? 安井は加藤を支配していたのか、支配されていたのか? 20名を越える関係者の証言から浮かび上がる伝説の人の素顔に、気鋭のノンフィクション・ライター島崎今日子が迫る!

 
 Amazonで何か違う本を探しているときに「この商品を買った人はこんな商品も買っています」にこの本が表れ、よくわかりませんが何となく買いました。Amazonの策略にまんまと引っかかったワタクシでございます。とは言うものの、「何となく」というのも案外当るもので、なかなか面白くサクサクと読めた本でした。

 この本は、フリーライターの島崎今日子さんが、安井かずみさん、加藤和彦さん、安井・加藤夫婦の友人、知人、ゆかりの人たち26名にインタビューし、それをおまとめになっています。

 安井かずみさんは1939年生まれ、1961年に訳詞家としてデビュー、1963年頃から作詞を手がけられるようになり、その後の活躍は皆様ご承知のとおりです。この本のそれぞれの章に安井さんの作詞された歌のタイトルがつけられてあるんですが「え、これも?これも?これも?」状態で、上の紹介文に出てきた以外にも「片想い(中尾ミエさんの代表曲、私の大好きな歌です)」「経験(「♪やめてぇ~」でおなじみですね)」「古い日記(和田アキ子さんの物真似をされるときによく歌われる「♪あの頃はぁ、ハ、若かった」です)」「草原の輝き(アグネス・チャン)」「赤い風船(浅田美代子)」「不思議なピーチパイ(竹内まりあ)」「折鶴(千葉紘子、演歌っぽい感じの歌で、こういうのも書かれるんですね)」等々、全て歌える歌っていうのがすごいです。もちろん、これらはごく一部で、膨大な量の歌(しかもヒットを連発!)をお作りになっています。ただ、流行っていた頃って、作詞家まであまり気を配ることがなかったので、テレビの歌番組で歌のタイトルといっしょに作詞・作曲の氏名がチラッと写ったのを見るぐらいで、「安井かずみ」という名前は知っています、って程度でした。作詞以外に、ライフスタイルや女性の生き方や仕事、結婚などをテーマにしたエッセイなんかも数多くお書きになっていたようですが、昔の文学少女(ワタシのことです)はそういう人生ハウツー本のようなもの(特に芸能人が書いたもの)は忌避しておりましたので、この本を読んで初めて安井かずみさんのことを詳しく知ったような次第です。
 
 とにかく、すっごいすっごい豪奢な生活を送っていらっしゃって、本当の贅沢とはこういうものなのかとビックリしたり感心したりしながら読み進みました。インタビューを受けられた方々も大体は「セレブ、おしゃれ、スノッブ、スタイリッシュ、カッコイイ…」というような意味の発言をなさっているんですが、細部がそれぞれ微妙にというか大幅にというか違っているんです。芥川龍之介の「藪の中」、あるいは有吉佐和子の「悪女について」を思い出しました。でも、「藪の中」も「悪女について」も小説ですから、作者である芥川や有吉佐和子が最初から意図して発言内容を違うものにしていますが、これはノン・フィクションです。“事実は小説より奇なり”ってとこなんでしょうか。安井かずみ・加藤和彦のどちらにどれだけ近しいのかによって、時には正反対の証言が出てきます。ちょっとびっくりします。ただ、どちらも鬼籍に入られているので、結局実際のところはどうだったのか、ご本人たちはどう思っていたのかはわからないんですよね。ナゾですね。

 島崎今日子さんの力作でした。キラキラと輝いていた時代、上へ上へと向かっていた時代、古きよき時代を垣間見せてくれた本でした。
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小山三ひとり語り

2014-02-22 23:20:45 | 読んだもの
 中村屋さんのお弟子さんの中村小山三さんの「小山ひとり語り」を読みました。

 内容紹介です。
大正13年に4歳で十七代目中村勘三郎へ入門して以来、九十年。中村屋三代に仕える現役最長老の歌舞伎女形、中村小山三。その九十年の役者人生が綴られています。師匠十七代目をはじめ初代吉右衛門や六代目歌右衛門などの昭和の名優から現在の俳優、北条秀司から宮藤官九郎までの劇作家などについても語られ、昭和から平成の歌舞伎の変遷も感じられる内容です。
また、戦争時の体験や戦後の銀座の様子など、当時の時代背景にも触れられています。
番外編として、小山三の1日を追ったドキュメントと50の質問を収載。

 雑誌「演劇界」に連載されていたものが単行本になりました。「演劇界」でも毎月楽しみにしていた連載でした。矢口由紀子さんの聞き書きですが、本当に上手にまとめていらっしゃって(って、プロの方に失礼な書き方ですが…)、小山三さんの声が聞こえてきそうな文章です。

 勘三郎さんの追っかけドキュメンタリーがずっと放映されてきたせいか、小山三さんって、結構有名人ですよね。古典芸能にあまり興味のないウチの会社のお嬢さんに言っても通じますから。幹部さんたちより有名人かもしれません。12月の「忠臣蔵」でも、小山三さんが登場すると、すごい拍手でしたから。

 何と言っても、90年分の役者人生が詰まった本ですから、本当に盛り沢山で、とても興味深く面白く読みました。小山三さんに言わせると第二次世界大戦なんて「つい、この間」なんですから。やはり、十七代目勘三郎さんとのお話が中心になります。かなり“無茶ぶり”されていらっしゃって、大体は絶対服従、よくお仕えになっていらっしゃるんですが、時々密かに“逆襲”したりして、なかなかお茶目な小山三さんです。

 「小山三十種」っていうのがあるそうで、小山三さんの代表作が書かれてありましたが、ほとんど拝見していないように思います。私が歌舞伎に入れ揚げたのがここ4、5年のことで、その間に勘三郎さんのお芝居をあまり見ていないせいもあるんでしょうが、何かひとつは見ておきたいなぁと思います。

 いろいろお話されている合間合間に、今の若手に対していろいろアドバイス(苦言?)されています。その中で吹き替えのことをおっしゃっています。
 「顔なんて似せたってしょうがないんです。どうせ見えないんだから。動きがいかに似ているかが大事なわけよね。そのためにその人の動き方の癖を観察する。
 まあ、言わせてもらえば、今の若い人たちはそれ以前の問題ですけどね。吹き替えなのに平気で顔を見せちゃうし、自分の動きで踊ってしまったりするんです。」
 これ、わかります。最近の吹き替えの人、顔が見えるんですよね。1月の松竹座でも七之助さんの早替わりの時に、チラッと顔が見えて、「なんだかなぁ」と思っていたところでした。昔の人はそんなこと、しなかったんですね。

 何度読んでもウルッとするのは、勘三郎さんがお亡くなりになった前後の玉ちゃんの件です。玉ちゃんに「親がいないのだからあなたがいなくっちゃ」と言われ、さらに本葬では抱きしめて「何かあったら相談してちょうだい。絶対よ」と。ただ、後でわかりましたが、玉ちゃんご自身も勘三郎さんが亡くなったことがすごいダメージで、かなり落ち込まれて精神的にも肉体的にも非常におつらい時期があったそうで、それを思うと、この件、よけい悲しく切なくなります。

 小山三さん、次の目標は七緒八クンの初舞台でしょうか。「かぶき手帖」には「中村屋の乳母」って書かれているくらいですから、お元気で初舞台に同座していただきたいですね。
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芸術新潮10月号

2013-10-17 23:20:15 | 読んだもの
 「芸術新潮」という雑誌があるんですね。10月号の特集が「スヌーピー」と聞きつけ、初めて買いました。

 こちらの雑誌、Wikipediaによれば、創刊は昭和25年、創刊から長らくは、海外渡航が大きく制約された時代でもあったので、海外の美術動向紹介や美術評論が多かったそうですが、近年は啓蒙的な美術評論から展覧会とのタイアップ特集、作家特集が多くなってきているそうで、さらに『フィレンチェ』、『ローマ』、『パリ』、『プラド美術館』、『北京』、『故宮博物院』、『鎌倉』等のガイドブック的な総特集もあるそうです。

 特集のタイトルは「スヌーピーのひみつ チャールズ・M・シュルツの創作世界」です。六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで「スヌーピー展」が開催されるので、その展覧会のタイアップ特集のようです。

 実は、ワタクシ、スヌーピーが大好きで、中高生の頃は身の回りはスヌーピーだらけ、高校時代の友人から「今でもスヌーピーを見ると貴女を思い出す」と言われたことがあるので、どれだけコレクションしていたかおわかりいただけるかと…。そして、グッズを買い揃えるだけでなく、月刊誌「SNOOPY」(←こういう雑誌もあったんです)も購読し、ピーナッツの漫画も愛読しておりました。イースターもハロウィンもこの雑誌で初めて知りました。

 で、今回、この雑誌で久しぶりにピーナッツ漫画を読み、とても懐かしく一気に“オトメ”に戻りました。やっぱり、ピーナッツの世界はステキです。ちょっとエッジの効いたほのぼの感と言いましょうか、単純な子供向けの漫画ではありません。またコミックスが買いたくなりました。

 新聞連載は50年続いたそうで、わが国のサザエさんもそうですが、絵が変わってきています。初めの頃は、スヌーピーは四足で歩いているし、ルーシーもお目めぱっちりの可愛らしいお嬢ちゃんでした。

 そういう絵だけでなく、作者のシュルツさんの伝記やピーナッツファンのエッセイ、スヌーピーのふるさとサンタローザの街の紹介など、文章のほうも読み応えがありました。サンタローザの街は本当にスヌーピーだらけのようで、ちょっと行ってみたいと思ったけれど、なかなかアメリカまでは行けそうにないと思うので、せめて東京の六本木ヒルズぐらいは…と思いますが、どうなることやら。
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日本の古典芸能

2013-09-29 22:48:21 | 読んだもの
 河竹登志夫さんの「日本の古典芸能」を読みました。河竹さんはお亡くなりになるまで「演劇界」にコラムをお持ちでしたが、その中で「玉ちゃんがいかに努力の人か」ということを説明するために、この本の中の川瀬白秋さんとの対談をピックアップされていたので、「どんな本かいなぁ?」と思って調べてみると、何と!孝夫さんとも対談されているではありませんかっ!早速ネットでポチッと注文いたしました。

 内容紹介です。
古典芸能界の最高峰である名人10人に、歌舞伎作者・河竹黙阿弥の曽孫でもある演劇研究家・河竹登志夫が「芸の真髄」を聞いた貴重な対談集。豪華な顔ぶれで、他では決して聞くことのできない「芸の奥義」が語られる。

 対談のお相手の方々です。
狂言師・野村万作
能楽師・観世榮夫
文楽人形遣い・吉田文雀
歌舞伎俳優・片岡仁左衛門
歌舞伎俳優・中村芝翫
日本舞踊家・花柳寿南海
雅楽演奏家・東儀俊美
長唄三味線演奏家・杵屋巳太郎
胡弓演奏家・川瀬白秋
文楽太夫・竹本住大夫

 錚々たるメンバーが並んでいます。河竹さんはあとがきで「登場する10人の名人は、どの方もみな著者(河竹さん)が芸と人に惚れ込んでいる上に、それぞれに親しく、何でも打ちとけて話していただけるという、自信がありました。ですから芸の秘密はもちろん、対談の随所に、ふつうには聞けない率直な心の内や、ハッとする言葉や、その人らしいエピソード、屈託のない打ち明け話などが、ちりばめられているはずです。」と書いていらっしゃるとおり、単なる芸談ではなく、血肉が通ったお話とでも言えばいいんでしょうか、とても面白く読みました。読む前は、歌舞伎や文楽以外はわけがわからなくて前へ読み進めないのではないかと思っていましたが、かえって初めて知ることが楽しくて、雅楽とか長唄三味線とか胡弓とか、そちら方面の演奏会に行ってみたくなりました。

 孝夫さんとの対談は1999年、仁左衛門襲名直後でした。仁左衛門襲名時はファンではありましたが、今ほど入れ込んでいたわけではないので、私は松竹座しか見ていませんが、歌舞伎座と松竹座で2ヶ月ずつ、名古屋・京都・博多で1ヵ月ずつ、計7ヶ月の公演で、まさしく“今世紀最後の大襲名”だったんですね。やっぱり、孝夫さん、さすがでございます

 「女殺油地獄」「吉田屋」「熊谷陣屋」とお得意の演目のお話はもちろん、黙阿弥の「三人吉三」や「弁天小僧」などのお話もありました。昔の役者さんの録音を聞くと、普通にしゃべっているようでそれが七五調になっているけれど、今の役者さんは最初から七五調で喋ろうとしており、これは同じ七五調のせりふが全然違うものになってしまうので、古典芸能の伝承における根本的な問題だそうです。

 最後に「どういう役者でありたいですか」と尋ねられたときの孝夫さんのお答えです。「上方の狂言も江戸の狂言もということを含めて、なんでもこなせる役者ですね。それも器用でこなす役者じゃなくて、不器用でも大きいなという役者ね。やっぱり大物になりたいですから。うまくなるには越したことはないんだけれども、出てるだけでお客さんが喜んでくださるような、華やいだ役者になれればいいですね。」

 はい、もう十分、上方も江戸もこなせて、大きくて、うまくて、華やいだ役者さんにおなりでございます。

 スミマセン、結局孝夫さんしか触れておりませんが、全編非常に読み応えのある素晴らしいご本でございます。まだ絶版にはなっておらず、新刊でお買い求めになれます。でございます。

 この本を読む前か読んでいる最中かに河竹登志夫さんがお亡くなりになり、ついでに、と言ってはナンでございますが「黙阿弥」も読んでおります。曽祖父に当たられる河竹黙阿弥の伝記です。伝記なんですが、記録というよりは物語になっていて、それこそ浜村純ではありませんが、“見てきたように、聞いてきたように”書かれてあって、退屈することなく面白く読みました。同じく「作者の家」というご本もあるようですが、こちらは新刊はもうなく、古本屋さんで探さないといけないので、まだ読んでおりません。
 

 
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女の一生 杉村春子の生涯

2013-09-25 23:43:59 | 読んだもの
 新藤兼人さんの「女の一生 杉村春子の生涯」を読みました。

 内容紹介です。
杉村春子は夫や愛人の死に際にも舞台に立って演じ続けた。1906年、広島生まれ、21歳のとき新劇を志す。生涯抜けなかった広島弁、演技への凄まじい執念、貪欲に奪い取る愛、劇団経営の嵐、すべてを乗り越えて、代表作「女の一生」947回、「欲望という名の電車」594回公演。1997年死去。病名は頭部膵臓癌。

 杉村春子先生の本、5冊目です。実はさらにもう1冊買ってありまして、ここまでくると“意地”になっているような、そんな気がします。ただ、この本は、これまでの聞き書き、自叙伝と違って、映画監督の新藤兼人さんが書いていらっしゃるので、他の本とは少し趣が異なりました。

 新藤兼人さんは杉村春子先生の劇団葬で弔辞をお読みになっています。以下その全文です。
杉村春子さん
午後の遺言状の 蓼科のロケで
午の弁当を白樺の林の中で ひらいたとき
あなたは 芽をふいたぜんまいを見て
だれにもいのちがあるのね
でもわたしはいまがあるだけ
きのうもあすもないわ
と明るい顔でおっしゃった
新潟の寺泊の海岸で
ラストカットを撮ったとき
青い海を見て
あなたは
ひきこまれそうな深い色ね
このまま ずんずん はいって行けたらね
と笑っておっしゃった
杉村春子さん
あなたは広島の人
花崗岩土壌が太陽にはねかえり
大輪の向日葵が
天に向かって
顔をあげるのです
女優ひとすじの道を
まっすぐに歩みつづけられました
悔いはないでしょう
あなたのその姿を
わたしたちは忘れないでしょう

 この弔辞に沿って、本を書き進めていらっしゃいます。杉村春子先生の最後の映画「午後の遺言状」のお話から始まります。映画の「午後の遺言状」は結構話題になっていましたが、もともと“映画を見ない人”なので、見逃しています。新藤さんはもちろんこの映画の監督さんですが、シナリオも書いていらっしゃいます。杉村先生は、撮影時は既に88歳杉村春子先生の老いを隠さず、老いを生かしたいという思いで、杉村春子先生そのものを描かれました。主人公は新劇の老女優、ほんとそのままですね。そうそう、この映画は共演の乙羽信子さんにとっても最後の映画でした。撮影に入る前に癌とわかり、余命1年から1年半と言われての撮影となったそうです。そして、撮影終了後、スタッフ試写をごらんになって、旅立たれたそうです。これもまたすごいドラマですよね。

 第1章は弔辞のぜんまいと寺泊の部分(「午後の遺言状」のこと)、第2章以降が広島の人以下の部分なります。そこからは副題の「杉村春子の生涯」のとおり、先生の生涯をなぞっていくことになります。これまで私が読んだ杉村春子先生の“生涯”は繰り返し出てきす。ついこの前読んだ「振りかえるのはまだ早い」や大笹吉雄さんの「女優杉村春子」からの引用が多数あり、おそらく半分くらいはその引用で、初めてお読みになる方にはいいんでしょうが、何冊も読んでいるとちょっと損した?気分になってしまいました。スミマセン、貧乏性で…。

 とは言え、単になぞるだけでなく、そこは新藤さんらしい解釈とか芸術論とかが間に入ってきます。杉村先生、「情熱の人」だったんですね。とにかく誰か愛する人がそばにいないとダメ、激しく生きていらっしゃいます。

 私が「杉村春子」という女優さんを知ったのは当然テレビのほうが先です。テレビドラマの名脇役、品のいい控えめなおばあさんというというイメージがありました。文学座を見るようになって、実は新劇の大女優、舞台ではいつも主役で、座員やファンの人からは崇め奉られていると知って、非常に驚いた覚えがあります。「女の一生」も「欲望と言う名の電車」も「華々しき一族」も杉村先生が主役の舞台をいくつも見ています。舞台は、テレビのイメージと正反対です。どんどん前へ攻めてこられる、出てこられます。そして、舞台だけでなくプライベートでも本当に華やかな女優人生なんですが、なぜか私の中ではテレビのほうの品のいいおばあさんのイメージのほうが強く、こういった伝記を読むと、いつもとても不思議な感覚?戸惑い?を感じてしまうんですが…。

 特にこの本は、シナリオライターの新藤兼人さんらしく、杉村先生の恋愛事情をかなり激しくドラマチックに描かれてありました。相手はいつも年下で、愛されもしたけれど、それ以上に杉村先生のほうがむさぼるように愛する、相手を吸い尽くしてしまう、そういう恋愛だったそうです。とてもそうはお見受けしないのですが、例えば、杉村先生のお弟子さんにあたる太地喜和子さんなら「あぁ、そうかなぁ」って納得できるんですけれどね…。まあ、70年近く、第一線の女優であり続けた理由はそのあたりにあるのでしょう。「This is 女優」です。
コメント (2)
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