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1993年合同シンポジウムで「現代空間計画論 1/1000地図で考える」をコメント

2016年07月28日 | よしなしごと

1993 「現代空間計画論 1/1000地図で考える」 建築学会合同シンポジウム

 1993年、農村計画学会、建築学会、農業土木学会、造園学会が合同で現代空間計画論についてシンポジウムを開いた。4者の講演のあと、コメントを依頼された。4者の講演を聞いてまず感じたのは、1/1000スケールが共通の土台になることだった。
 以下にコメントの要旨を再掲する。
 
 住宅などの建築単体の計画では1/200や1/100、あるいは1/50を主として用い、建物の配置を検討するときに1/200~1/500、そして立地の検討や周辺の環境との関係を考えるときに1/500~1/1000を利用する。つまり。1/1000は建築単体の計画で利用する上限に近いスケールになる。
 対して、都市や地域の計画では、1 /50や1/100を使うことはほとんどないのではない。代わって1/500~1/1000、さらに1/5000や1/10000の地図を用いることが多くなる。
 農村の計画では、立地地勢や水系、DID都市との関係を検討するときなど、1/1000より広い範囲を含んだ1/5000や1 /10000~1 /50000の地図を使う。
 それぞれの専門分野に応じて計画の関心が異なり、用いる地図のスケールも専門ごとにやや偏りがある、ところが1/1000はどの専門も利用するスケールの一つで、1/1000の地図を共通言語にすれば同じテーブルについて計画を具体的に話し合うことができる、最初にそう感じた。

 ところで、現地の様態をあまり見ていない人たちが、もし地図や集落図だけから空間を判読し、計画を練り上げようとすると、地図に記されている小さな表現を見落とし、集落の成り立ちにかかわる根幹の部分を欠落させて計画を構想してしまう危険がある。
 地図や集落図は、物的な様態の平面的な関係を表しているに過ぎない。解読できる限界があることに注意し、状況を正確に判断するため、断面図をあわせ用いることや、模型やパースなど立体的なとらえ方を補うべきである。
 もちろん、現地で実際に縄張りをしたり、現場で意見交換し、その場で模造紙などを用い合意を確認する方法は、実体を誤りなく判断できる点で優れている。

 地図には住宅以外にもいろいろなものが記されている。公民館や神社、お堂、広場、大木・・。
 住民の主体的な活動にとって、集落が空間的にも社会的にもヒューマンな大きさであることが望ましく、それを保証するにはお年寄りや子供でも楽に歩いて行け、みんな顔見知りで安心できる大きさが期待される。
 集落内の共同空間は、住民の主体的な活動の拠点であると同時に、時代をこえて老人・青壮年・子供を集落文化の文脈でくくることのできる重要な場となっている。
 空間計画を始める第1段階で住文化に踏み込んだ調査をぜひお願いしたいし、地図に記された共同空間から集落の文脈を読みとって頂きたい。

 

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