2015.12.13 book407 「物語 スペインの歴史」 岩根圀和 中公新書 2002 /2015.11読
この本はスペイン旅行から帰ったあとに読んだが、持参しながら旅の友として読めば良かった思ったほど、内容が深く、しかもタイトルに「物語」とあるように展開がおもしろく読みやすい。
副題に、「海洋帝国の黄金時代」とあり、年代が限られているが、スペインがもっとも華々しく輝いたのがこの時期だから、スペインを学びたい、知りたい方には格好の書である。
内容は目次が分かりやすいが、細かな目次になっているので、章立てだけ記す。
第1章 スペイン・イスラムの誕生
第2章 国土回復運動
第3章 レパント海戦
第4章 捕虜となったセルバンテス
第5章 スペイン無敵艦隊
終章 現代のスペイン
あとがき
スペイン略史
目次を眺めただけでも、スペインが、国土回復運動のあと国力をつけ、レパント海戦でイスラム海軍に勝つが、やがてスペイン無敵艦隊がイギリス海軍に敗れ、国力が低迷し内政が混乱した激動の歴史だったことが分かる。
イスラム勢力がジブラルタルを経由してイベリア半島に侵攻したのが711年、ただちに、国土回復運動が進展する。1492年、最後のイスラム勢力グラナダが奪回され、国土回復運動が完了する。その主役は、カステーリャ女王イサベル1世とアラゴン王フェルナンド2世夫妻である。
二人のあいだに生まれたフアナが神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世の子であるフィリップと結婚する。この二人のあいだに生まれたのがカルロス、のちのスペイン王カルロス1世=神聖ローマ皇帝カール5世で、広大な領土のハプスブルク家が生まれる。このあたりは第1章に詳しい。
第2章は、キリスト教国がイスラム勢力=モーロ人を追放し、やがてユダヤ人も追放し、逆らうものは異端審問で火刑に処した内容である。
第3章のレパント海戦は、オスマン帝国海軍に神聖同盟の連合軍が勝利する海戦で、詳細な海戦図によって、1午前11時の開戦、午後2時の激戦、午後5時の終戦をドラマを見るような筆さばきで描いている。このとき、セルバンテスが弟といっしょに一兵卒として乗船していて、負傷してしまう。
第4章では、負傷したセルバンテスが帰還途中でトルコの海賊船に囚われ、アルジェに連行される。セルバンテスは脱走を試みる。が、失敗、再度脱走、またも失敗、厳重な見張りをやり過ごしもう一度脱走を試みるが発覚、それでも捕虜として死ぬより脱走を試み、またも失敗する。息詰まる展開である。
第5章で、スペイン無敵艦隊がイギリス海軍に敗れ、ハプスブルク家が終焉を迎えて、スペインが歴史の表舞台から退場する展開である。
スペイン旅行の予定がなくても、ヨーロッパ史に詳しくなれるし、「物語」もおもしろい。