このところ翻訳本を手にすることはほとんどないのですが、今回は翻訳者にご縁があり2冊入手しました。
一冊はエリザベート・ザントマン著「奪われたクリムト」です。

共訳者のお一人、永井さんと以前同じ職場で働いていました。
ナチスにより略奪されたクリムトの作品をモデルになった女性の姪が戦後持ち主に奪還するために立ち向かう史実に基づく物語です。
丁度「クリムト展」が開催中なのでミュージアムショップに置いてもらえれば良かったのですが、
物語の後半に返還を拒むオーストリア政府への批判が記述されていることも理由なのかショップで販売される品々のリストには載せて貰えなかったようです。
この本は帰独する機内で読みました。
内容はもとより、私は特に永井さんのあとがきと原書にはない当時の歴史状況などを説明する脚注が良かったと先日彼女と電話で話した折、伝えました。
それと人物関係が複雑なので、人物相関図などをはじめに示せば良かったかなとも思いました。
関連する映画「黄金のアデーレ」と以前このブログでも紹介した「ミケランジェロ・プロジェクト」を視聴するのもお勧めです。
もう一冊は母校の卒業生が訳したアンジェラ・デーヴィス=ガードナー著「八月の梅」です。

翻訳された岡田郁子さんとは面識はないのですが、この本を紹介した母校の同窓会阪神支部のメールを友人が転送してくれました。
翻訳した岡田さんは英文科のご出身ですが、翻訳者としては全くの素人だったので翻訳教室に通うなどして、何と8年間もかけて翻訳を完成されたということです。
偶然、母校の創立者が今度、新紙幣の表紙になるということで評判になり、現在は在庫が少なくなるほど売れているとのことです。
この本はとても厚く重いので今回購入した他の書籍と一緒に現在船便で郵送中です。
タイトルのように八月頃読書することになるかもしれません。
この本の著者は母校で教鞭をとっておられたということですが、私が入学する前で先生にはお目にかかったことはありません。
本の紹介者が先生の思い出を綴る文章に好感がもてました。
「著者は私が学生時代に教わった先生で、劣等感と自己嫌悪の固まりだった私が4年間でただ一人自分を分かってくれると感じ、救われた先生でした」