「大阪市に保健所は一ヶ所だけ」という記事がフェイスブックにアップされていました。



この記事を読んで、現在ドイツの保健所が行なっている仕事は日本ではどの機関が行なっているのだろうかという疑問がわきました。
ドイツ全国には約400の保健所があり、2500名の専従医師が勤務しています。
確かに病院勤務や開業医の医師に比べると月収は平均で1500ユーロ(約18万円)少なくなりますが、
残業がないなどの理由で保健所勤務医には家庭を持つ女性医が多くなっています。
今回の新型コロナウィルス感染症対策に関しては保健所が大きな役割を果たしています。
保健所の仕事の大部分を占めるのは感染の有無を調べる検査ではなく、感染経路を確定し、濃厚接触者とコンタクトを取り、在宅隔離を要請し、その後2週間毎日電話で健康チェックを行うということです。
ドイツで感染拡大が始まった頃、各保健所に対して人口2万人あたり5人のチームで防疫に臨むようにと感染症対策本部の国立ロベルトコッホ研究所から指令が出ました。
各保健所では自治体の他の部門の職員のサポートもありましたが、それだけではもちろん足りないので医学部の学生11000人が補充要員として雇われました。
それにボランティアの人やコロナ禍で休業を余儀なくされた人々(例えば地区の劇場の監督などもいます)もサポーターとして従事しました。
事前に講習を受けてから、電話相談に応答したり、感染経路調査、在宅隔離の人の健康チェックを行なっています。
先日の報道週刊誌Der Spiegelでは、保健所の職員のことを「ウィルス探偵」と呼んでいます。

感染者が発生したら、感染経路を突き止め、接触者を隔離すること。
治療薬やワクチンのない現在、これ以外に感染拡大を防ぐ手段はありません。
ドイツでは韓国のような接触者を追跡するスマホのアプリもまだ出回っていないので、
今のところ保健所の人海戦術が唯一の手段で、保健所の仕事に対してはこれまで不満の声は聞かれません。
私も地元の保健所は良くやっていると思います。
毎日新聞に発表される地元の新規感染者数や在宅隔離者数、入院者数(そのうち集中治療室の患者数)などで、
これまでどれだけ不安が解消されたかわかりません。
今回のコロナ禍で、2009年から2010年にかけて発生した新型インフルエンザのことを思い出しました。
あの時はデュッセルドルフの日本人学校の生徒さんが感染したこともあり、市内に住むほぼ7000人の日本人から市の保健所に問い合わせが殺到したため、急遽周辺に在住する日独通訳者がサポーターとして集められ、私も多分2週間程、保健所のコールセンターに通ったと記憶しています。
それだけではなく防護服を着用してドイツ人のお医者さんとともに感染者宅のインタビューにも行きました。
夫はインタビューのことは知らなくて、この間そのことを打ち明けたら「知っていたら仕事を許可しなかった」と言っていましたが、もうあとの祭りです。
この間、あの時の奮闘のことを当時一緒に仕事をした通訳仲間と「あんな時代もあったわね」と語り合いました。
まさに中島みゆきの「時代」です。