A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ボサノバの新しい世界に皆でチャレンジしたが、・・・これが実に最高のできに。

2008-03-16 | MY FAVORITE ALBUM
Phil Woods / Floresta Canto with Chris Gunning and Orchestra

今年のBAFTA (British Academy of Film and Television Arts) のFilm AwardsのBest Musicを受賞したのは ”CHRIS GUNNING”。つい最近のニュースだった。
と知ったかぶりをして書き出したが、実は自分は映画ファンでもない。そんなニュースは今日まで何も気に留めていなかった。
久しぶりにこのアルバムを聴いてみたが、アレンジャーのクリス・ガニングについて実は良く知らなかった。何か情報を求めてネットを見たらいきなりこのニュースに遭遇したという次第だ。

ヨーロッパから戻ったフィルウッズは、70年代の中ごろ積極的にアルバム作りを行っていた。それらは、ヨーロピアンリズムマシーンでコンボ演奏を極めたのか、何故かオーケストラとの共演が多かった。それもミシェル・ルグランやこのガニングなど、ヨーロッパのアレンジャーによる編曲で。アレンジャーの個性もあるがアメリカのオーケストラのバックとは一味も二味も違うアルバムになっている。

特に、このアルバムは素材をボサノバにしている。ジャズとボサノバは相性がいい。ゲッツがジャズの世界にボサノバを持ち込んだのが60年代の始め。それからすでに10年以上が過ぎており、ジャズプレーヤーであればボサノバのひとつや2つはチャレンジが済んでレパートリーに加えていた時期だ。

ところがこのアルバムの制作には、プロデューサーのノーマンシュワルツ以下、ウッズやガニングのみならず、レコーディングのスーパーバイザーであるキースグラント、そして数多く参加したミュージシャン、さらに関係するスタッフ全員が並々ならぬパワーを注力し、ある種の思い入れとこだわりの元に完成したアルバムだそうだ。

その手のアルバムは、前知識がなくとも何か「ピン」と来るものがある。
初めてこのアルバムを聴いたとき、ボサノバのリズムはを聴き慣れたものではあったが、今までとは全く違う物を感じた。チックコリアのリターンツーフォーエバーのように。
ライナーノーツにも、「これは76年春に作られた作品であるが、数ヶ月いや15年は聴いてもらえる内容だ」と書かれている。15年どころかすでに30年以上経っているが、このオーケストレーションとそれに浮かび上がるウッズのサックスは今でも色褪せていない。
ウッズはもっぱらアルト中心であったが、このアルバムではソプラノも使用している。ボサノバには明るい高音域が合うのかもしれない。そういえばナベサダもフルートだけでなくソプラニーノを一時吹いていたものだ。

ヨーロッパでの演奏経験を経てウッズのアルトは太く逞しくなったが、このオーケストレーションもボサノバ特有の軽さはない、重厚な重みを感じる一方で、ボサノバ特有の軽さを感じるのはオーケストレーションに加えてパーカッションの使い方だ。打楽器奏者だけでも5人を揃え、使ったパーカッションは数知れず。
これがこのオーケストラの特徴である。このサウンドを生み出したアレンジャーが英国人というのも意外な感じだ。グローバルなメンバーやスタッフの組み合わせによる合作の成果だ。
インターネットも無かった時代に打ち合わせをするのもさぞ大変であったことと思う。

ガニングは今年だけではなく、これまでも英国のアカデミーともいえるBAFTAで何度もノミネートされ、そして受賞をしている有名アレンジャーとのこと。デビューしたての頃からこのアルバムのような素晴らしい作品を作っていたのだから、それも合点がいく。

1. Canto de Ossanha [Let Go]     DeMoraes, Powell 4:55
2. Let Me                 Gimbel, Powell 3:58
3. O Morro                Jobim 4:20
4. Chaldean Prayer            Cunning 8:56
5. Sails                   Cunning 3:56
6. Roses                  Ian 4:24
7. Without You              Woods 4:14
8. Portrait of Julia            Stratta 5:06
9. Jesse                  Ian 4:14
10. Menino das Laranjas         Theodorakis 2:42

Produced by Norman Schwartz
Arranged by Chris Gunning & Phil Woods
Technical Supervisor : Keith Grant

Recorded at Olympic Studios, London, England. April 1976


Phil Woods (as,ss)
Gordon Beck (Keyboards)
Dave Markee (Acoustic & Electric Bass)
Daryl Runswick (Acoustic & Electric Bass)
Alf Bigden (ds)

Chris Karan: Drums, Triangle, Windchimes, Claves
Tony Uter: Congas, Guiro
Tony Carr: Chocolo, Timbales, Cabasa, Maracas
Louis Jardim: Caxixi, Guiro, Quica, Cabasa, Claves, Temple Blocks, Triangle
Robin Jones: Tambourine, Caxixi, Cabasa, Pandiero

Jack Rothstein: Lead Violin & Concertmaster
Tony Fisher: Lead Trumpet
Kenny Wheeler: Trumpet
Nat Peck: Lead Trombone
Chris Pyne: Trombone
Tony Coe: Sax
Bob Efford: Sax
Stan Sulzmann: Sax
Roy Wilox: Lead Flute

etc.

フロレスタ・カント(紙ジャケット仕様)
フィル・ウッズ&クリス・ガニング・オーケストラ
BMG JAPAN

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コメント (2)
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