A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

連夜の歴史的なライブにメンバーの多くは疲れ果てたのではないかと・・・・

2012-01-14 | MY FAVORITE ALBUM
Profiles / Gary McFarland

1966年といえば日本ではビートルズが初来日した年。その年の2月6日、日曜日の夜、翌7日月曜日にサドメルオーケストラの初ライブを控えた、ボブブルックマイヤーやジェロームリチャードソン、ジェリーダジオン、そしてスヌーキーヤング、ダニームーア、さらにはベースのリチャードデイビスなどなど・・各セクションの主要メンバー達が、続々とマンハッタンのブロードウェイに面したリンカーンセンターのフィルハーモニックホールに集結していた。ここは言わずと知れたニューヨークフィルの本拠地、クラッシク音楽のホームグラウンド。エヴリフィッシャーになってからも音響の悪さで昔からすったもんだしていた所だが、ジャズクラブに較べると桁違いの観客が入れる大ホールだ。

ところが、この日のイベントはクラッシクではなく、アレンジャー、ゲーリーマクファーランドのコンサートだった。当時新人アレンジャー達の中で、オリバーネルソンやラロシフリンなどと並んでクローズアップされていた新進気鋭のマクファーランドの作品のお披露目コンサートだった。よくある過去のアルバムで演奏された曲のライブでのお披露目でもなく、定期的に開かれているジャズコンサートにマクファーランドが出演したわけでもない。その日は一夜限りの彼の新作の発表の場であった。その日のために、ニューヨークのトップレベルのミュージシャンに声が掛かった。というわけで、サドメルオーケストラのメンバーの多くにも声がかかった次第だ。特に、木管系の楽器を多用するので各種の持ち替えが効くミュージシャンとなると、人選にも苦労したと思われる。ジェロームリチャードソンなどは、このコンサートのために9種類の楽器を持ち込んだとか。これだけ肝いりで開かれたコンサートなので、リハーサルにも4日もかけたそうで、忙しいメンバー達を拘束するのはさぞかし大変だったであろう。

8時に、VOAのジャズアワーのアナウンサー、Willis Conoverの司会で幕を開ける。



彼のMCの中でも「プランされたものと自然発生的なものに乞うご期待」との一言が入る。
確かに、全編彼らしいアンサンブルが聴き所だがその間のソロもとって付けた様なソロではない。反対にソロを生かす事を思い描いたオーケストレーションとも言える。
彼の作品には自然の風物を題名にした曲が多い。最初の曲も”Winter Colors”と命名された組曲風の曲だ。作編曲もこの題名を十分に意識して書かれたものだろ。他のアレンジャーとは曲作りの取り組み方も違うのかもしれない。次の“Willie”は前の年の夏交通事故で亡くなってまもない友人のトロンボニストのウィリーデニスに捧げた曲。次の“Sage Hands”はサックスセクションのプレーヤーをクローズアップした曲。ピターガンのイントロに似た感じで始まる”Bygones & Boogie“は彼が子供の頃聞いてお気に入りであったブギウギをイメージしたとか。最後の”Milo's other Samba”はボサノバジャズの世界ではひとつの世界を作ったマクファーランドの世界をアピールしている。とにかく多彩な曲想、そして色々な木管を組み合わせた響き、それに合わせた一流どころのソロと、あっという間に終わってしまうが残りの録音が無いのか気になるところだ。

‘ボサノバブームに乗って一躍有名になったが、彼の原点は幅広く色々な音楽を取り入れ、色々な表現をするということに尽きる。初期のアルバムにはアニタオデイのバックもあったが、その後どちらというと軽いノリのアルバム作りに参加することが多かった。このアルバムのように真正面から取り組んだ作品は聴き応えがある。
このコンサートを企画したのはNorman Schwartz。後に、Sky, Gryphonでマクファーランドとはタッグを組む。また、コルトレーンの全盛期にこのようなライブをアルバムにしてラインナップに加えたBob Thieleの度量には感嘆する。

独自の世界を展開させ将来を嘱望されたマクファーランドだが、このアルバムを録音してから5年後、1971年にニューヨークのバーで毒を飲んで(飲まされて?)亡くなってしまう。詳しい状況は発表されていないようだが、これからという時に何とも残念。もし生きていればというのは、早く逝ってしまったジャズの巨人の残された作品を聴くといつも思うことである。



Gary McFarland Conductor, Marimba, Vibraphone

Bill Berry    Brass
Clark Terry    Brass
Bob Brookmeyer  Brass
Joe Newman    Brass
Bob Northern   Brass
Jimmy Cleveland  Brass
Jay McAllister  Brass
Phil Woods    Reeds
John Frosk    Brass
Bernie Glow    Brass
Richie Kamuca   Reeds
Jerome Richardson Reeds
Zoot Sims     Reeds
Richard Davis   Bass
Gabor Szabo    Gutar
Sammy K. Brown  Gutar
Joe Cocuzzo    Percussion
Tommy Lopez    Percussion

All Songs Composed By Gary Mcfarland
Willis Conover Narrator
Produced by Bob Thiele
Engineer : Rudu Van Gelder
Recorded live at Lincolin Center's Philharmonic Hall on Feb.6, 1966



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姿見に写る自分の裏側には何があるだろう・・・

2011-12-23 | Thad Jones & Mel Lewis & VJO
Through A Looking Glass / Bob Brookmeyer


また一人自分にとってのジャズの歴史で大事な人が亡くなった。先週の15日、82歳の誕生日を目前にした突然の訃報であった。トロンボーンのボブブルックマイヤー。普通のスライドトロンボーンではなく、バルブトロンボーンを使い続けていた。そして、晩年はプレーヤーとしてよりも、アレンジャーとして活躍する機会が多かった。
自分がこれまでに愛聴盤として紹介したアルバムにもブルックマイヤーが参加したアルバムは多い。

ブルックマイヤーを知ったのは多分、ジェリーマリガンの共演者としてだ。


そして、あの有名な真夏の夜のジャズのファーストシーンにも登場している。


その後、マリガンとのピアノレスカルテットのコンビで、


マリガンとはその後コンサートジャズバンドでも


さらに、好きなアルバムのNight Light


スタンゲッツとの共演は、メンバーといい演奏といい最高だ。


クラークテリーとのコンビも絶妙だった。


そして、サドメルオーケストラの立ち上げメンバーとしても


そして、ブルックマイヤーは、68年に西海岸に移る。その後しばらく東海岸のスタジオミュージシャンが西海岸に大移動したがその一人として。ジャズに限らずスタジオワークに精を出していたようだが、そこで、しばらくして活動暦は消える。実は、アルコール依存症になっていたそうだ。音楽的な悩みなのか、生活環境の変化なのか、それとも他の理由か・・・?その理由は与り知らないが。

そして、10年近く経ち、78年に自己のアルバム”Back again”で表舞台に復帰する。Concordのアルバムに顔を出すようになった。古巣のメルルイスのオーケストラにアレンジャーとして本格復帰した。その後も、プレーは続けたが、アレンジャーとしてのブルックマイヤーがマリアシュナイダーのような、彼の意を継いだ後進のアレンジャーも育ち、より大きな存在感になっていた。最近もその作品は提供され続けてきていたのだが、今回の死はあまりに突然だった。

マイヤーが復帰してまもなく、81年にその後の活動に向けての節目となるような、一枚のアルバムを作ったのがこのアルバムだ。
タイトルは“Through A Looking Glass”。不思議の国のアリスの続編に“Through The Looking Glass”という作品がある、これを意識したのかどうかは分からないが、マイヤーにとっては今まで過ごしてきた世界から、「姿見を抜けるとそこには夢に見た新たな世界がある」ことをかなり意識したようなタイトルであり内容だ。明らかに、演奏スタイルも、アレンジも、そして曲想も新しい次元になっている。その後のオーケストラのアレンジや演奏もその延長上にあるように思う。その意味ではマイヤーの大きな転換点ともいえるアルバムだ。
付き合っているメンバーは、御大メルルイスを筆頭にその時のメルルイスオーケストラの面々。ブルックマイヤーはニューヨークから去るときもサドメルオーケストラの一員だったが、ニューヨークに戻った時もそのメンバーに支えられての復帰だった。彼がサドメル~VJOの歴史には無くてはならない一人であったことは間違いない。
プレーは聴けなくなっても、彼の作品が演奏され続けることを願って冥福を祈りたい。もしかしたら、あの世に行ってまた新たな世界を見出しているかもしれない。

1. April March
2. Daisy
3. Mirrors
4. The Magic Shop
5. Dancing Woman
6. Sundays
7. Top of The World

 All compositions By Bob Brookmeyer

Bob Brookmeyer : Trombone
Dick Oatts : Soprano sax
Tommy Harrell : Trumpet
Mel Lewis : Drums
Jim McNeely : Piano
MarcJohnson : Bass

Produced By Norman Schwartz
Co-Produced by Bob Brookmeyer
Director of Recording, Frank Lake
Recorded at Columbia Records’ 30th Street Studios

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名アレンジの再演を聴く楽しみ・・

2011-11-07 | MY FAVORITE ALBUM
In Concert / Montreux ’79 with Bingo Miki and The Inner Galaxy Orchestra




辰己哲也のビッグバンドのライブが赤阪のビーフラットで18日に予定されている。
今回はマリアシュナイダーの曲が中心だそうだ。彼のバンドはオクテットにしてもビッグバンドにしても、過去の名アレンジの再演を基本コンセプトにしている。彼曰く、「せっかくの名アレンジをお蔵にしておくのはもったいない」と。全く同感である。過去のビッグバンドの名演をレコード(CD)で聴くだけでなく実際のライブで再演してもらえるのはファンとしては嬉しい限りだ。今後も是非続けてもらいたいと思う。
ビッグバンドはいつカムバックするのか?とよく言われている。エリントンのアルバムにもこのタイトルがあった。華やかなスイングバンドが復活するのは難しくとも、形を変えてその時代時代の名ビッグバンド、そして名アレンジ、そして名演は現在に至るまで脈々と続いている。それらの演奏を一度、一同に会して聴いてみたいものだ。

70年代の終わりに、サドメルのリーダーであったサドジョーンズも自分が育てたオーケストラを去り単身ヨーロッパに渡った。ビッグバンドの歴史も、この頃がひとつの時代の節目だったのかもしれない。同じ頃、日本に彗星のように現れたのが三木敏悟のインナーギャラクシーオーケストラだ。何枚かのアルバムを残してすぐに解散してしまったが、時代を先取りしたような新鮮な演奏だった。そして、このオーケストラは海外にも遠征して活躍し、1979年のスイスのモントルージャズフェスティバルの舞台にも登場している。この年のモントルーの舞台には、Concordのメンバーも数多く参加している。この年、ジャズの世界では何か時代の流れがヨーロッパに向いていたのかもしれない。

三木敏悟のオーケストラは、モントルーのステージで自らの作品を披露しただけでなく、実は他の名アレンジャーの作品をゲストを迎えて演奏する機会を得た。誰の企画なのかは定かではないが、名アレンジとソリストを迎えいつものギャラクシーオーケストラとはまた違った側面を見せてくれた。
一曲目はドンセベスキーのアレンジをバックにジョーベックのギター。続いてボブブルックマイヤーのThe First Love Song。トロンボーンのソロにはブルックマイヤー自身が参加している。サドジョーンズの去ったメルルイスオーケストラでも演奏した曲だ。そしてジョンファディスをフィーチャーして一曲。リチャードデイビスのビッグバンドをバックにした演奏も珍しい。偶々だとは思うが、これらのゲストの面々はサドメルオーケストラの出身。ビッグバンドの素晴らしさを、身を持ってサドメルのバンドで体験してきたメンバー達だ。
そして、最後には松本英彦を前面に、タイトルどおり「東洋からの嵐」がモントルーの舞台に響き渡った。

このモントルーの舞台で三木敏悟率いるオーケストラが披露したのが、自分達の曲だけではなく、名アレンジャーの作品の再現だった。評論家のIRA GITLERが、ライナーノーツで語っている。”A Marvelous Interaction Between The Written and The Improvised”と。この大役を日本のオーケストラが務めたのは誇りにしていいのではないか。

1. Alcazar
   Joe Beck (g)
   Composed and orchestrated by Don Sebesky

2. The First Love
   Bob Brookmeyer (vtb)
   Composed and orchestrated by Bob Brookmeyer

3. Zylvia
   John Faddis (tp)
   Composed by John Faddis
   Orchestrated by Rob Mounsey

4. Pitter Pat
   Richard Davis (b)
   Composed by Richard Davis
   Orchestrated by Bill Lee

5. Cyclone From The East
   Frutani Tetsuya (Per)
   Nakamura Toshiyuki (ds)
   Hidehiko Matsumoto (ts,fl)
   Composed and orchestrated by Bingo Miki

With Bingo Miki and The Inner Galaxy Orchestra

Produced by Norman Schwartz
Recorded in Concert July 11,1979 by Mountain Recording Studio
Chief Engineer David Richard
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友を助けるついでに、その場を借りて旧友と再会を・・・・

2011-07-20 | Thad Jones & Mel Lewis & VJO
Bob Brookmeyer Composer,Arranger / Mel Lewis & the Jazz Orchestra


‘78にサドジョーンズが突然去った後のサドメルオーケストラを引き継いだのはメルルイス。それまでは曲の多くをサドジョーンズに頼っていただけにサドが去った後のレパートリーの維持には苦労したと思われる。色々試行錯誤が行われと思われるが、その時に支えになったのは旧友のボブブルックマイヤー。サドメルオーケストラが生まれた時は、トロンボーンセクションにトレードマークのバルブトロンボーンで参加していた。’82年のアルバムは全編ブルックマイヤーのアレンジでプログラムが作られていた。
このアルバムは、先立つこと2年前、1980年にホームグランドのビレッジバンガードでのライブだ。やはりこのアルバムも全編ブルックマイヤーのアレンジだ。
そして、もう一人このアルバムにはゲストが加わっている。クラークテリーだ。サドジョーンズがいなくなった後の代役という訳でもないと思うが。



A面の4曲はブルックマイヤーの編曲、主役はメルルイスオーケストラ。
B面に移るとクラークテリーが登場、そしてブルックマイヤーもトロンボーンを手に取る。このクラークテリーとボブブルックマイヤーは60年代の前半、このレコーディングから15年前には双頭コンボを組んでいた仲だ。したがって、この2曲は2人の再会をメルルイスオーケストラがバックで祝う構成になっている。彼らのトレードマークの、mumble(もぐもぐ) & grumble(ぶつぶつ)の再演だ。ブルックマイヤーのアレンジは渋いが演奏はスイングするから不思議だ。テリーの参加は、サドの代役ではなく、旧友との再会であった。

このアルバムの2曲目のFIRST LOVE SONGは先日の辰巳哲也のビッグバンドで取り上げられていた美しい曲だ。この選曲をした辰巳の想いはこちらで。



1. Ding, Dong, Ding   Brookmeyer 7:13
2. First Love Song    Brookmeyer 5:06
3. Hello and Goodbye   Brookmeyer 7:27
4. Skylark          Carmichael, Mercer 6:35
5. El Come Sunday     Ellington 15:34
6. The Fan Club      Brookmeyer 5:11

Ron Tooley Trumpet
Larry Moses Trumpet
Earl Gardner Trumpet
John Marshall Trumpet
Lollie Bienenfeld Trombone
Lee Robertson Trombone
John Mosca Trombone
Earl McIntyre Trombone, Trombone (Bass)
Stephanie Fauber French Horn
Dick Oatts Reeds (Multiple), Sax (Alto), Sax (Soprano), Saxophone
Rich Perry Saxophone
Steve Coleman Saxophone
Gary Pribeck Clarinet (Tenor), Saxophone
Bob Mintzer Saxophone
Jim McNeely Piano
Rufus Reid Bass
Mel Lewis Drums

Clark Terry Flugelhorn, Trumpet
Bob Brookmeyer Liner Notes, Performer, Producer, Trombone, Trombone (Valve), Vocals

Norman Schwartz Liner Notes, Producer

Recorded in Concert at the Village Vanguard, Feb. 1980

Live At The Village Vanguard
 BOB BROOKMEYER
DCC Compact Classics, Inc.

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ボサノバの新しい世界に皆でチャレンジしたが、・・・これが実に最高のできに。

2008-03-16 | MY FAVORITE ALBUM
Phil Woods / Floresta Canto with Chris Gunning and Orchestra

今年のBAFTA (British Academy of Film and Television Arts) のFilm AwardsのBest Musicを受賞したのは ”CHRIS GUNNING”。つい最近のニュースだった。
と知ったかぶりをして書き出したが、実は自分は映画ファンでもない。そんなニュースは今日まで何も気に留めていなかった。
久しぶりにこのアルバムを聴いてみたが、アレンジャーのクリス・ガニングについて実は良く知らなかった。何か情報を求めてネットを見たらいきなりこのニュースに遭遇したという次第だ。

ヨーロッパから戻ったフィルウッズは、70年代の中ごろ積極的にアルバム作りを行っていた。それらは、ヨーロピアンリズムマシーンでコンボ演奏を極めたのか、何故かオーケストラとの共演が多かった。それもミシェル・ルグランやこのガニングなど、ヨーロッパのアレンジャーによる編曲で。アレンジャーの個性もあるがアメリカのオーケストラのバックとは一味も二味も違うアルバムになっている。

特に、このアルバムは素材をボサノバにしている。ジャズとボサノバは相性がいい。ゲッツがジャズの世界にボサノバを持ち込んだのが60年代の始め。それからすでに10年以上が過ぎており、ジャズプレーヤーであればボサノバのひとつや2つはチャレンジが済んでレパートリーに加えていた時期だ。

ところがこのアルバムの制作には、プロデューサーのノーマンシュワルツ以下、ウッズやガニングのみならず、レコーディングのスーパーバイザーであるキースグラント、そして数多く参加したミュージシャン、さらに関係するスタッフ全員が並々ならぬパワーを注力し、ある種の思い入れとこだわりの元に完成したアルバムだそうだ。

その手のアルバムは、前知識がなくとも何か「ピン」と来るものがある。
初めてこのアルバムを聴いたとき、ボサノバのリズムはを聴き慣れたものではあったが、今までとは全く違う物を感じた。チックコリアのリターンツーフォーエバーのように。
ライナーノーツにも、「これは76年春に作られた作品であるが、数ヶ月いや15年は聴いてもらえる内容だ」と書かれている。15年どころかすでに30年以上経っているが、このオーケストレーションとそれに浮かび上がるウッズのサックスは今でも色褪せていない。
ウッズはもっぱらアルト中心であったが、このアルバムではソプラノも使用している。ボサノバには明るい高音域が合うのかもしれない。そういえばナベサダもフルートだけでなくソプラニーノを一時吹いていたものだ。

ヨーロッパでの演奏経験を経てウッズのアルトは太く逞しくなったが、このオーケストレーションもボサノバ特有の軽さはない、重厚な重みを感じる一方で、ボサノバ特有の軽さを感じるのはオーケストレーションに加えてパーカッションの使い方だ。打楽器奏者だけでも5人を揃え、使ったパーカッションは数知れず。
これがこのオーケストラの特徴である。このサウンドを生み出したアレンジャーが英国人というのも意外な感じだ。グローバルなメンバーやスタッフの組み合わせによる合作の成果だ。
インターネットも無かった時代に打ち合わせをするのもさぞ大変であったことと思う。

ガニングは今年だけではなく、これまでも英国のアカデミーともいえるBAFTAで何度もノミネートされ、そして受賞をしている有名アレンジャーとのこと。デビューしたての頃からこのアルバムのような素晴らしい作品を作っていたのだから、それも合点がいく。

1. Canto de Ossanha [Let Go]     DeMoraes, Powell 4:55
2. Let Me                 Gimbel, Powell 3:58
3. O Morro                Jobim 4:20
4. Chaldean Prayer            Cunning 8:56
5. Sails                   Cunning 3:56
6. Roses                  Ian 4:24
7. Without You              Woods 4:14
8. Portrait of Julia            Stratta 5:06
9. Jesse                  Ian 4:14
10. Menino das Laranjas         Theodorakis 2:42

Produced by Norman Schwartz
Arranged by Chris Gunning & Phil Woods
Technical Supervisor : Keith Grant

Recorded at Olympic Studios, London, England. April 1976


Phil Woods (as,ss)
Gordon Beck (Keyboards)
Dave Markee (Acoustic & Electric Bass)
Daryl Runswick (Acoustic & Electric Bass)
Alf Bigden (ds)

Chris Karan: Drums, Triangle, Windchimes, Claves
Tony Uter: Congas, Guiro
Tony Carr: Chocolo, Timbales, Cabasa, Maracas
Louis Jardim: Caxixi, Guiro, Quica, Cabasa, Claves, Temple Blocks, Triangle
Robin Jones: Tambourine, Caxixi, Cabasa, Pandiero

Jack Rothstein: Lead Violin & Concertmaster
Tony Fisher: Lead Trumpet
Kenny Wheeler: Trumpet
Nat Peck: Lead Trombone
Chris Pyne: Trombone
Tony Coe: Sax
Bob Efford: Sax
Stan Sulzmann: Sax
Roy Wilox: Lead Flute

etc.

フロレスタ・カント(紙ジャケット仕様)
フィル・ウッズ&クリス・ガニング・オーケストラ
BMG JAPAN

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作曲家自らのとの共演はきっと格別だと思う・・・・が?

2008-01-24 | Thad Jones & Mel Lewis & VJO
Lena & Michel / Lena Horne & Michel Legrand

ミッシェル・ルグランという作曲家がいる。特徴ある美しい曲をたくさん作っていて自分も好きな曲が多い。このルグランの曲を取り上げたアルバムを作る歌手も多い。歌手にとっても歌ってみたい魅力的な曲が多いのだろう。
先日聴いたレナホーンのアルバムのタイトル”Whach What Happen”もルグランの名作だ。お気に入りの曲のひとつである。

ルグランは映画音楽で有名だが、作曲だけでなくジャズのアレンジも得意だし自分でもプレーをする。
超オールスターメンバーを集めた「ルグランジャズ」が有名だが、ピアノのプレーではシェリーズマンホールでのレイブラウンとシェリーマンのライブが圧巻。ルグランのピアノの迫真に迫るプレーと3人のコラボレーションが印象に残っている。
プレーをしたかったのか、来たついでなのかは分からないが、その後も、アメリカに来てはジャズプレーヤーとの共演をすることが多かった
その中に、「大御所リナホーン」とも直接共演したアルバムを作った。
ただし録音には立ち会ったがアレンジと指揮だけ。ピアノプレーが聞けないのは少し残念だが。

だが、このアルバム彼のプレーがなくとも、そのアレンジとバックの演奏が素晴らしい。
特にリチャードティーのオルガン。
これを中心としてロンカーターとグラディーテイト。ゴードンベックとコーネルデュプリーと性格の違う2本のギター。
ホーンセクションにはサドジョーンズやジョンファディスも。
いつものことがだが、またまたオールスターメンバー。
これで大体どんなサウンドが聞こえてくるか想像がつくとは思うが、これにルグランのアレンジの味付けが加わる。

一曲目のおなじみシェルブールの雨傘“IWill Wait for You”。
曲自体の美しさとホーンの深みのある歌声、それにティーのオルガンがリードするバックがソウルフルな味付けで結びつける。
やはりルグランのアレンジは歌のバックといっても、歌の裏方に徹するというより、歌手と対等以上の関係だ。歌手とアレンジが対等に向き合い、それが溶け合って魅力的なコラボレーションが生まれる。
やはり「実力のある大御所歌手」でなければ、ルグランのアレンジだとバックに負けて歌が霞んでしまうであろう。
そこが、ルグランの魅力である。

I Will Wait For You
I Got a Name
Nobody Knows
Being A Woman
Let Me Be Your Mirror
Loneliness
Time in a Bottle
Everything That Happens to You, Happens to Me
Sad Song
I’ve Been Starting Tommorow All of My Life
Thank You Love
One At a Time

Lena Horne (Vocals)
Michel Legrand (Arr.&Con.)
Produced by Norman Schwartz & Michel Legrand
Exective Producer Nat Shapiro

Richard Tee (org)
Paul Griffin (p)
Joe Beck (g)
Cornel Dupree (g)
Ron Carter (b)
Ralfh Macdonald (per.)
Grady Tate (ds)
The Howard Charale (voices)

Thad Jones, Joe Newman , John Faddis , Marvin Stamm , Alan Rubin (tp)
& stirings

Recorded at RCA Studios,New York , Feb. 1975

シェルブールの雨傘
リナ・ホーン&ミシェル・ルグラン,リナ・ホーン,ジョー・ベック,ザ・ハワード・ロバーツ・コーラル,ポール・グリフィン,コーネル・デュプリー,ロン・カーター,リチャード・ティー,ラルフ・マクドナルド,グラディ・テイト
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ミシェルルグランの曲には好きな曲が多い・・・・

2007-12-23 | MY FAVORITE ALBUM
WATCH WHAT HAPPENS / Lena Horne & Gabor Szabo

タイトル曲の”WATCH WHAT HAPPENS”も好きな曲の一つ。
L.A.4のアルバムを聴いて、この曲を、そしてこのアルバムを思い出した。
タイトルに惹かれて思わず買い求めた一枚だ。
特にリナホーンのファンでもないし、別にガーボルザボが好みであった訳ではなかったのだが・・・・。
ところが、聴いてみるとバックのリチャードティーのオルガンが心地よい演奏ですっかりお気に入りの一枚になった。ザボのギターよりもこのオルガンが印象に残っていた。

歌っている曲は、タイトル曲以外にもビートルズナンバーを含めて当時のヒット曲集。
実はこのアルバムは、SKYEというレーベルから最初発売されたもの。
このアルバムにも参加しているマクファーランド、ザボ、それにヴァイブのカルジェイダーで設立されたレーベルだ。
ちょうどジャズが多様化を始めた60年代の後半、ジャズをもっと身近なものにしようという心意気で新しいポピュラーな曲を、ジャズの世界で新しい試みにチャレンジしたレーべルであった。
ビジネス的には難しかったのか、短命ではあったが、斬新なアルバムが何枚かある。

このアルバムは、レナホーンを主役にしたものだが、張りのある彼女の歌声に、ザボの朴訥としたギターがよく合う。それに、バックのリズムセクションも。60年代の録音とは思えないほど洗練されていて、ソウルフルだが垢抜けしている。
と思ったら、バックは後のフュージョンの世界を引っ張った面々だし、アレンジがゲーリーマクファーランドだった。オブラートに包んだというか、旨くコーティングしたというか、派手さはないが独特のアレンジで好きなアレンジャーの一人だ。

「コスモポリタン」という言葉がある。レナホーン自身もネイティブアメリカンの血が流れる。ザボもハンガリー出身で自国の民族音楽に根ざしたプレー、彼らがヨーロッパ生まれのヒット曲を。まさに国際色豊かであり、それぞれに根ざした新旧の音楽をミクスチャーした作品。けっして大作というわけではないが、Skysレーベルのコンセプトが旨く表現できたアルバムだ。

リナホーンは1930年代から活動していたようだがこのアルバムの録音時にはすでに50歳。80歳を超えても新たなアルバムを出して比較的最近まで活躍していたが実に息の長い活躍ぶりである。ひょっとしてまだ健在なのかも。

Rocky Raccon
Something
Everybody’s Talkin’
In My Life
Yesterday When I Was Young
Watch What Happens
My Mood Is You
Message To Michael
Nightwind
The Fool On The Hill

Produced by Norman Schwartz

Lena Horne (Vocals)
Gabor Szabo (g)
Howard Roberts (Vocal Arrangement)
Gary McFarland (Arranger, Conductor, Orchestration)
Richard Tee (org)
Cornell Dupree (g)
Eric Gale (g)
Chuck Rainey (b)
Grady Tate (ds)

Recorded at A&R Recording Studios, New York; Oct.-Nov. 1969
Watch What Happens!
Lena Horne & Gabor Szabo
DCC

このアルバムのCD盤


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旧知の仲でも、なかなか一緒に演奏する機会がないこともある

2007-04-29 | MY FAVORITE ALBUM
TOGETHER AGAIN-FOR THE FIRST TIME / MEL TORME & BUDDY RICH

この2人もどうもそういう仲だったらしい。
BUDDY RICHがオーケストラを再編して約10年。短命に終わるのではという世間の心配を他所に、コンスタントに活躍を続けていた。
ちょうど10年前の立ち上げの時は、サミーデイビスJr.のバックを努めたが、今度は、よりJazzyな歌い方もするMel Tormeとの共演。
前年にGryphonレーベルと契約したトーメであったが、ProducerのNorman SchwartzがこのRichとの共演を企画した。

このアルバムの録音がプランされた時、RichのオーケストラはMiamiで演奏中。TormeはLas Vegasでショーの真最中。プロデューサーはLondonに。録音が行われるNew Yorkに三々五々集まる予定であったが、季節は1月。全国的な雪で飛行機は欠航、バスは大きく迂回をする有様。予定が大幅に遅れて時間が無い中での録音になったそうだ。
広いアメリカ大陸の中で、各地で活動する有名プレーヤの共演セッションを企画するのが大変だということが良く分かる。

一日目は呼吸合わせに時間がかかったが、2日目からは呼吸もぴったり。
このアルバムのハイライトは、やはり呼吸も合ってきた最後の曲、”Lady be good” だろう。エラに捧げたこの曲は、トーメがスキャットで縦横無尽に歌いまくるが、最初のコーラスはエラの30年以上も前に録音されたChick Webbのオーケストラでのスキャットをコピーし、最後は、Four BrothersやSister Sadie 、そしてAir Mail Specialのフレーズまで飛び出す大サービス。

何となく様子見で始まった2人の共演も、この一曲でまずは大成功といったところだろう。
初めてのお見合いでもすぐ打ち解けた仲.
ジャケットの2人の写真を見ると幸せ一杯という顔をしている。
一緒にショーにでも出演していて付き合いを深めたら、もっと親しい仲になれたかもしれない。2人の玄人好みのコラボが何かを生み出したような気がする。


1 When I Found You Randall 3:18
2 Here's That Rainy Day Burke, VanHeusen 4:56 (*)
3 Blues in the Night Arlen, Mercer 8:05
4 Bluesette Gimbel, Thielemans 3:30
5 You Are the Sunshine of My Life Wonder 4:30
6 I Won't Last a Day Without You Williams, Nichols 3:56
7 Oh, Lady Be Good Gershwin, Gershwin 4:37

produced by Norman Schwartz
Chuck Schmidt,Dean Pratt,John Marshall,Dave Kennedy (tp)
John Mosca,Dale Kirkland,Dave Boyle (tb)
Tony Price(tuba)
Chck Wilson,Alan Gauvin,Steve Marcus,Gary Pribek,Greg Smith (saxes)
Hank Jones(p)
Tom Warrington(b)
Buddy Rich (ds)
Mel Torme (vol)

Phil Woods (as) *

Recorded at RCA studio, New York, January ,1978
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