A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

背中合わせに勝手にやっているように見えるが・・・実際の演奏は心と心が通じ合い

2008-03-09 | CONCORD
Back to Back / Scott Hamilton & Buddy Tate

アルトの演奏が続いたが、Concordのアルバムに戻ってみたら奇しくも次はテナーの共演であった。

スコットハミルトンはConcordではすでにスターの仲間入り。新譜のアルバムへの登場回数もうなぎの上りであった。
一方の相方はバディーテイト。カウントベイシーのカンサスシティー時代のバンドの創世記にも参加していた大ベテランだ。
この時ハミルトンは25歳。一方のテイトは50代の後半。もうすぐ還暦を迎えようとしていた頃だ。その差40歳以上ということは、親子どころか下手をしたら2廻りも違う年齢差であった。したがって、テナーコンビといっても、アル&ズートとか、ゴードン&アモンズといった同格のテナーの2人組とは少し状況が違う。

当然、テイトはコールマンホーキンズ、レスターヤング、そしてポールゴンザルベス・・・と、ハミルトンが影響を受けたプレーヤーとは同じ時代に生き、そして実際に一緒にプレーをしてきた一人だ。
一方のハミルトンは、父の集めたレコードで彼らのプレーを聴きながら育った。もちろん一緒にプレーすることなどは時代的にも無理であった。

最近の日本の若者は「動かなくなった」といわれている。何でも自由に手に入り、ネットの時代になって実際に行動しなくとも何でも情報を得られ、そしてサービスや物の購入までできるようになった。その結果、自分で行動しなくとも何でも体験したつもりになってしまっているということであろう。
ところが、ハミルトンはレコードを聴き漁っただけではなかった。テナーの巨人達のプレーを着実に行動し自分の物にしていった。そして、ニューヨークへと出ていたのだ。

このアルバムでハミルトンと共演したテイトはハミルトンと一緒に演奏した時の感想を以下のように言っている。
「ハミルトンは今までで最大のインスピレーションを自分に与えてくれる。彼のソロを聴いていると、思わず自分の中に自分のソロのイメージができ、すぐにプレーせずにはいられなくなるのだ」と。
一方のハミルトンも、「自分はまだまだ未熟。テイトのプレーを聴くと影響されるが同じように吹かないように努力しようと思っている」と。
でも、テイトは「ハミルトンは自分のアイディアでプレーしているよ。ウェブスターに似ているところはあるし、プレーズも同じようなものを使っても、他の連中のように全部のフレーズを真似ることないんだ。しっかり自分のプレーをしているよ」と。
このコメントを見ても2人がお互い認め合いそして影響し合いながらプレーをしたというのがよく分かる。

アルバムの内容もこれで想像はつくであろう。
ナットピアス以下のリズムセクションはおなじみのメンバー。否が応でも2人のプレーに興味の対象が行く。
出だしのタンジェリン。スローな出だして、お互いエールの交換をし、そのままアップテンポの展開に。物怖じしない八ミルトンのプレーが印象的だ。
この2人のプレーを聴くと、“Back to Back”というタイトルではあるが、年齢差、そして経験の差を微塵も感じさせないインタープレーが聴くことができる。
2人がしかと正面を向き合ってがっぷり取り組んだアルバムだ。

ハミルトンが若くしてベテランと対等にプレーをしあえたのも、才能があっただけでなく自らの意思による行動と努力があったからに違いない。
自ら行動し体験するには実際に場数を多く踏んでいくのが必要だが、実はバーチャルな世界でも色々体験ができるようになった世の中なのだ。体験したつもりになるだけでなく、その経験も自分の行動に役立てるようになればよいということだろう。
ハミルトンは益々好調だ。

1. Tangerine         
2. Rompin'With Buck
3. September Song
4. All Of Me
5. Candy
6. Medley
   You’ve Changed
   Blue And Sentimental
7. Big Tate
8. Sunday

Produced by Frank Dorritie 

Scott Hamilton (ts)
Buddy Tate (ts)
Nat Pierce (p)
Monty Budwig (b)
Chuck Riggs (ds)

Recorded at Coast Recorders, San Francisco , September 1978
Originally released on Concord CJ-85
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする