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【ダイヤモンドオンライン】非正規労働者向け資格創設の無意味

ダイヤモンド・オンラインの「山崎元のマルチスコープ」に「 非正規労働者向け資格創設の無意味 」と題する記事を書きました。(※リンクをクリックすると、新しいページが立ち上がります。)

 6月8日付の読売新聞によると、政府は非正規雇用で働く人の待遇改善や正社員への登用を進めるため、非正規雇用労働者を対象とした資格制度を創設する方針にあるそうです。
 新たな資格は、1流通、2派遣、3教育、4健康の4業種で、接客などの対人サービスに従事する人を対象とし、資格の認定には、厚労省から委託を受けた業界団体があたる予定です。
 さて、この試みは成功するのでしょうか?

 個人的な意見として、この資格制度は、無駄であり、上手く行かないと考えています。

 アルバイトや派遣契約でしばらく使ってみると、その人が雇い主側で要求する接客力水準に達しているか否かは、簡単に分かります。また、いきなり正社員で雇うことには自信が持てなくても、30分くらい面接してみると、その人物が、当該業務で必要とする接客に向いた人であるか否かは、相当程度分かるのではないでしょうか。

 一方、資格を制度化する以上、資格試験があるでしょうし、ペーパーテストや研修を用意することも考えられます。しかし、もともと多くの非正規労働者を正社員に登用して欲しいという制度の趣旨と、現実の受験者の適応レベルからして、試験は本格的なビジネス能力を問うような有効で難しいものにはならないでしょう。
 そうなると、この資格の有無は、雇い主側から見て、30分の面接から得られる情報価値に到底及ばない結果になることは明らかです。

 結局、新たな公的資格を立ち上げたところで、意味がないばかりか、官僚の仕事と天下り先が増えて、役所に上手く取り入った業者が、研修等で多少のビジネスを作り、それで終わりです。何と無駄なことか!

 非正規労働者に正社員での雇用チャンスを増やすことが目的なら、取り組むべきは、正社員ポストの流動化を通じた、正社員と非正規労働者との間の距離の縮小でしょう。

 現状の正社員が過剰に保護されていることによって、雇用者側が正社員を固定的コストと認識し、その雇用を躊躇する要因となっています。
 この正社員を雇うことの固定性が緩和されれば、間違いなく正社員での雇用が増えるでしょう。正社員雇用の機会自体が増えるでしょうし、入れ替えが活発になることも、有能な非正規労働者の正社員での就職チャンスを増やすことにつながると考えています。
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