評論家・山崎元の「王様の耳はロバの耳!」
山崎元が原稿やTVでは伝えきれないホンネをタイムリーに書く、「王様の耳はロバの耳!」と叫ぶ穴のようなストレス解消ブログ。
【現代ビジネス】GPIF運用見直しの効果を推測する
現代ビジネス「ニュースの深層」(隔週連載)に記事を書きました。
「「国内株式22%」なら日経平均2万円も。GPIF運用見直し後の株価を推測してみた」
※リンクをクリックすると、新しいページが立ち上がります。
現在、政府が期待をかけているGPIFの運用方針見直し(による株式等の買い増し)について、前提として、GPIFで株式運用を行うこと自体に問題があり、その拡大が予想される「運用方針見直し」も、政策として決して好ましいものではありません。
ですが、今回は、善し悪しの議論をしばし棚上げして、この見直しが、マーケットにどう影響するかということだけを考えてみました。
GPIFの運用方針見直しでは、基本ポートフォリオの資産配分が1%変わると、1兆3千億円の売買が生じる計算です。また、GPIFの運用が「事実上のベンチマーク」となる公的年金を考慮に入れると、「GPIFの1%の方針変更」は、単純計算すると1.75兆円より少し少ない程度の影響をもたらすことになります。
GPIFの現在の基本ポートフォリオでは、「国内株式」の標準配分比率が11%、許容乖離幅が6%あるので、国内株式は最大資産の17%まで、また、「外国株式」は同様に標準比率9%、許容乖離幅5%で最大14%まで持つことが出来るようになっています。実際には、昨年の大幅な株価上昇と現在の株価水準を考慮すると、ともに、この上限に近い値になっていると推測出来ます。
それでは、GPIFはどの程度の規模で運用方針の見直しを行うのでしょうか。
国内株式について言えば、運用委員会の長である米澤氏等の発言や、既に17%近く保有していることから、20%を切る配分比率は考えにくいと思われます。仮に、20%を下回る配分計画が発表された場合、市場参加者からは「失望売り」が出て、株価が下がってしまう事態が十分考えられます。
また、「外国株式」と「外国債券」の比率も増加方向で見直される公算が大きく、仮に、両方合わせて7%配分が増えるとすると、GPIFの運用資産だけで9兆円強の「外貨の買い」が発生することを意味します。
これは、相応の円安効果をもたらしますが、仮に5%の円安効果があれば、10%程度追加で株価を押し上げる効果があるでしょう。
繰り返しになりますが、見直しの規模がどれくらいのものになるかは、現時点では分かりません。
したがって、これらの数値感は、私のごく大雑把な感覚によるものですが、リスク資産全体が増加すると大まかに考えた場合、「国内株式」の計画比率が「17%」から1%増加する毎に、日経平均に換算して1千円ずつくらいの上昇インパクトがあると考えてみてよいのではないでしょうか。
「国内株式=20%なら日経平均1万8千円」、「国内株式=22%なら日経平均2万円」、というくらいの目安です。
さて、仮に、GPIFの運用方針見直しが上記のような効果を持つとした場合、マーケット参加者にとっては「重大注意事項」とも言うべきポイントが2つあります。
第一に、株価上昇が実現するとしても、GPIFの新運用方針が発表されてからになるとは限りません。
新しい基本方針の発表前から株価は大きく反応するでしょうし、発表された結果によっては、「失望売り」による株価下落の可能性もあります。
第二に、GPIF等の資金投入による株価上昇は、しょせん需給による一過性のもので、これが維持される公算は低いと言えます。
株式の価値が改善するような変化が十分伴わない限り、投資家は、GPIF効果による株価上昇を信用してはなりません。
「GPIF効果があれば、利食い売りの足しに使え!」というのが、私から一般投資家向けのアドバイスです。
「「国内株式22%」なら日経平均2万円も。GPIF運用見直し後の株価を推測してみた」
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現在、政府が期待をかけているGPIFの運用方針見直し(による株式等の買い増し)について、前提として、GPIFで株式運用を行うこと自体に問題があり、その拡大が予想される「運用方針見直し」も、政策として決して好ましいものではありません。
ですが、今回は、善し悪しの議論をしばし棚上げして、この見直しが、マーケットにどう影響するかということだけを考えてみました。
GPIFの運用方針見直しでは、基本ポートフォリオの資産配分が1%変わると、1兆3千億円の売買が生じる計算です。また、GPIFの運用が「事実上のベンチマーク」となる公的年金を考慮に入れると、「GPIFの1%の方針変更」は、単純計算すると1.75兆円より少し少ない程度の影響をもたらすことになります。
GPIFの現在の基本ポートフォリオでは、「国内株式」の標準配分比率が11%、許容乖離幅が6%あるので、国内株式は最大資産の17%まで、また、「外国株式」は同様に標準比率9%、許容乖離幅5%で最大14%まで持つことが出来るようになっています。実際には、昨年の大幅な株価上昇と現在の株価水準を考慮すると、ともに、この上限に近い値になっていると推測出来ます。
それでは、GPIFはどの程度の規模で運用方針の見直しを行うのでしょうか。
国内株式について言えば、運用委員会の長である米澤氏等の発言や、既に17%近く保有していることから、20%を切る配分比率は考えにくいと思われます。仮に、20%を下回る配分計画が発表された場合、市場参加者からは「失望売り」が出て、株価が下がってしまう事態が十分考えられます。
また、「外国株式」と「外国債券」の比率も増加方向で見直される公算が大きく、仮に、両方合わせて7%配分が増えるとすると、GPIFの運用資産だけで9兆円強の「外貨の買い」が発生することを意味します。
これは、相応の円安効果をもたらしますが、仮に5%の円安効果があれば、10%程度追加で株価を押し上げる効果があるでしょう。
繰り返しになりますが、見直しの規模がどれくらいのものになるかは、現時点では分かりません。
したがって、これらの数値感は、私のごく大雑把な感覚によるものですが、リスク資産全体が増加すると大まかに考えた場合、「国内株式」の計画比率が「17%」から1%増加する毎に、日経平均に換算して1千円ずつくらいの上昇インパクトがあると考えてみてよいのではないでしょうか。
「国内株式=20%なら日経平均1万8千円」、「国内株式=22%なら日経平均2万円」、というくらいの目安です。
さて、仮に、GPIFの運用方針見直しが上記のような効果を持つとした場合、マーケット参加者にとっては「重大注意事項」とも言うべきポイントが2つあります。
第一に、株価上昇が実現するとしても、GPIFの新運用方針が発表されてからになるとは限りません。
新しい基本方針の発表前から株価は大きく反応するでしょうし、発表された結果によっては、「失望売り」による株価下落の可能性もあります。
第二に、GPIF等の資金投入による株価上昇は、しょせん需給による一過性のもので、これが維持される公算は低いと言えます。
株式の価値が改善するような変化が十分伴わない限り、投資家は、GPIF効果による株価上昇を信用してはなりません。
「GPIF効果があれば、利食い売りの足しに使え!」というのが、私から一般投資家向けのアドバイスです。
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【夕刊フジ】市場のカモにされる「GPIF」 株価上昇効果も一時的
夕刊フジの木曜日号(水曜発売)に「経済快説」という短いコラムを載せています。これは、WEBでもお読み頂けます。
今週は、「市場のカモにされる「GPIF」 株価上昇効果も一時的 」と題する記事を書きました。
(※リンクをクリックすると、新しいページが立ち上がります。)
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、合計130兆円に迫る日本の厚生年金と国民年金の積立金を運用する、世界最大級の機関投資家です。
今般、安倍首相はGPIFの運用方針の見直しを9月から10月をめどに行うよう指示しましたが、彼らが運用方針を見直しし、株の買い増しを実施した場合、株価は上昇する公算が大きいと思われますが、「GPIFの買い」自体が企業業績を改善する訳ではないので、効果は一時なものでしょう。
また、その動きを見越した投資家が高値で株を売り、GPIFや、その方針に影響を受ける他の公的年金は、高値で仕込むことになるでしょう。
公的年金の積立金運用は、「池の中のクジラ」であると同時に、手続きと説明責任を十分果たすと市場のカモになる、というお話です。
今週は、「市場のカモにされる「GPIF」 株価上昇効果も一時的 」と題する記事を書きました。
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GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、合計130兆円に迫る日本の厚生年金と国民年金の積立金を運用する、世界最大級の機関投資家です。
今般、安倍首相はGPIFの運用方針の見直しを9月から10月をめどに行うよう指示しましたが、彼らが運用方針を見直しし、株の買い増しを実施した場合、株価は上昇する公算が大きいと思われますが、「GPIFの買い」自体が企業業績を改善する訳ではないので、効果は一時なものでしょう。
また、その動きを見越した投資家が高値で株を売り、GPIFや、その方針に影響を受ける他の公的年金は、高値で仕込むことになるでしょう。
公的年金の積立金運用は、「池の中のクジラ」であると同時に、手続きと説明責任を十分果たすと市場のカモになる、というお話です。
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