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ドンキホーテとオリジン東秀

ドンキホーテとオリジン東秀の問題が面白い局面を迎えている。

この問題は、そもそもオリジンの創業一族がドンキに株を売ったオリジンの内紛に端を発しているが、ドンキが1/3超の株式獲得を目指して2800円でかけたTOBが、ホワイトナイト役のイオンの3100円でのTOB(期限は3月1日)によって失敗して、オリジンはイオンの傘下に入るのかと思われた。しかし、2月16日になってドンキはオリジン東秀の株式を市場で買って、46%超を保有していることを明らかにしたのだ。

これで、オリジンの経営陣と共にあわてたのは、イオンのTOBを当て込んでオリジン株を持っていた投資家たちだ。ドンキがイオンのTOBに応じなければイオンのTOBが成立しなくなる公算が大きいから、彼らは持ち株の売り場が無くなってしまうかも知れない。オリジン東秀は魅力のある会社だが、3000円近辺の株価は、さすがにかなり割高だ。そんなこともあって、16日のオリジンの株価は前日比310円安の2780円で引けた。

持ち株の処理に困ると見えていたのに、一転して有利な立場に立ったのはドンキホーテだろう。理由は、彼らのみが、イオンのTOBが成立するか否かを事前に分かるからだ(自分で決めるのだから)。彼らは、あわてた投資家が投げた株を市場で買ってオリジンの過半数を確保して経営権を取ろうとしてもいいし、或いは、3100円よりも安くオリジン株を買えるだけ買って、イオンのTOBに応じて大儲けする手もある。

イオンはもともと3100円で全株買ってもいいと言っているのだからいいとして、現在、困っているのは、一般株主ということになる(オリジンの経営者にはあまり同情を感じない。注意力が足りない)。もっとも、オリジンの株式の価値が株価に見合うだけあれば損はしない理屈なのだから、この状況をもって、TOBルールの見直し等、企業買収ルールの見直しの必要性を訴えるのは、やや無理があろう。

一方、ドンキは、印象として汚いし、冷静に考えると、これでオリジン東秀を傘下に入れても、上手く経営できるとは思えない。過半数を抑えても、オリジン側の不測の抵抗を受けるリスクがある(筋のいい手は無いが、抵抗手段はいろいろある)。

私がドンキの経営者なら、オリジンの株を出来るだけ安くたくさん集めて、イオンに売って巨利を得るのがベストだと思うが、これは何とも興味深い状況だ。
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ライブドア株と外資系運用会社の力量

ライブドア・ショックで大幅に下落したライブドア株について、面白い事実が明らかになった。

フィデリティーとキャピタル・リサーチといえば、あまたある米国系の運用会社の中でもレピュテーションの高い運用会社だが、これらの日本法人がライブドアの株式をそれぞれ同社の発行株数の6%を超えて持っていたのだ。取得時期は多少異なるようだが、昨年末の時点で両社がこれだけのライブドア株を持っていたことは確実だ。

業界外の方の為に補足すると、フィデリティーは「世界最大」の運用会社だし、キャピタル・リサーチはたぶん評判を集計すれば「世界最良」(本当かどうかは知らないよ!)の運用会社と言っていいだろう(チャールズ・エリスが「キャピタル」という本を書いており、日経から翻訳が出ている。ちなみに、訳書の帯のコピーは「こんな会社にお金を預けたい!」だ)

ところが、1月末時点では、フィデリティーは保有割合0.54%までライブドア株を売却し、キャピタル・リサーチは逆に8.58%へと2%以上買い増しした。

注目点は二つある。

一つは、調査力だの運用力だのといっても、外資系の大手の運用会社でも、ライブドアの粉飾を見抜くことは出来なかったということであり、運用会社に(もちろん証券会社にもだし、プロ一般に対して、ということでもあるが)過大な期待をしない方がいい、ということだ。

年金基金などには、まだ外資(外人?)コンプレックスを持っていて、「外資系のファンドマネジャーは本当のプロだから、日系のサラリーマン・ファンドマネジャーと違う」などと半可通の運用会社グルメ的解説をしながら、外資系運用会社を偏愛する運用担当者(運用執行理事など)がいる場合があるのだが(黒船と太平洋戦争敗戦の影響は大きい!)、こういう人たちは、今回のケースをよく噛みしめて理解すべきだ。

現実を言ってしまえば、外資だろうが、国内だろうが、運用パフォーマンスにつながる「運用力」には大差がない。これは、日米の投信の運用成績で見てもそうだし、「本当に儲かられると思うなら、他人のお金なんて運用しないだろう」という身も蓋もない経済常識が正しいのだ。

詳しくは別の機会に書こうかとも思うが、外資系の運用会社で優れているのは、イメージの作り方であり、マーケティング戦略であって、且つこれと一致したマネジメントが出来ていることだ。これとて、日本の証券会社や保険会社(まして銀行)出身の素人経営者には真似が難しいことなのだが、彼我の差は「運用力」にはない、というのが運用ビジネスの現実である。

ところで、ライブドア・ショック以降のフィデリティーとキャピタル・リサーチの正反対の対応は興味深い。

結果はどっちがいいか分からないが、ライブドアをここに来て投げ売りしたフィデリティーよりも、株価よりも実態価値はあると判断して実際に行動するキャピタル・リサーチの方が、運用会社のあり方としてはサマになっている。

気楽な見物人としては(ああ、良かった!)、良し悪しではなく、好き嫌いで、キャピタル・リサーチに1票を投じたい。
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