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ライブドア事件報道の危うさ

次の文章は、2月5日の日経の社説の一部だ。

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事件の全容が解明されるまで、事実関係の扱いは慎重でなければならない。確かなのは市場を舞台にした「錬金術」まがいの取引が、証取法に違反する疑いが強いことだ。
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これ自体としては、当たり前のことを書いているが、それでは、ライブドア本体の粉飾決算といった(粉飾決算は明らかに証取法違反だ)これまでの日経の報道は何がもとになっているのだろうか。「疑い」だけで、大きな見出しで報じるのは乱暴だし、まさか、同社が、これまで調べて来たが、まだ公表していなかった独自の調査報道の結果ではあるまい。

他社の報道も大同小異なのだが、家宅捜索で証拠が押収された今となっては、独自に根拠を集めることが難しいような事実が次々に報道されてきた。これらの報道の根拠になっている事実は何なのか。地検以外に、信頼に足る情報源は無いように思うが、どうなのか。(※正確に言うと、ライブドア問題は、各社「大同小異」ではなかった。たとえば、読売は、今回、朝日よりも、半日以上、一日未満早くて的確だったと思う。記者クラブ発表以外がソースになる事件はメディアによって報道に差が付く)

大きな問題は、地検が、必ずしも「信頼に足る情報源」ではないことだ。彼らは、世論の支持と関心を得たいと思っている筈だし、家宅捜索や逮捕を正当化したいと思っているはずだ。ライブドア以外の刑事事件でも、メディアが、検察の発表をそのまま大きく報じて、実は後から無罪になった事件があるのではなかろうか。

私の個人的な心証としては、ライブドアの場合、証取法に抵触するだろうし、それ以上に、市場の倫理にそむく行動を取っていたことはほぼ間違いないと思う。彼らを弁護したい気持ちは無い。

だが、しかし、ライブドアに関する報道についても、検察の提供した情報を新聞社等のメディアが勝手に消化して、間違いない「事実」であるかのように報ずるのではない、確度に関する判断材料の提供を含む情報が欲しい。

取材源の秘匿が大切だとしても、たとえば、「地検の責任ある地位の者のコメントによる」とか「ライブドア関係者に対する、小社の独自の取材と判断による」といった記事の判断根拠をはっきりさせるような記事を求めたい。それで、拙いような情報を地検が提供している(「洩らしている」という方がいいかも)とすれば、それは地検が悪いのであり、それ自体が、別の重大ニュースではなかろうか。

記者クラブ、放送免許、外人の持ち株規制、などに加えて、記事は根拠を示さない書きっぱなし、しゃべりっぱなし、でいいのだとすれば、日本のメディアはあまりに甘やかされているような気がする。

それにしても、日経の社説の書きぶりから推測すると、地検は、堀江容疑者の黙秘に意外に苦戦しているのかも知れない。
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Gyaoというアプローチ

今月から、月に数回、Gyaoというインターネット放送のニュース番組にコメンテーターとして出演することになった。番組は(まだ名前も知らないが)月~金の午後10時~10時20分の生番組で、キャスターは中井亜紀さんだ。私が出演するといっても、現在、プロデューサーとの口約束の段階で、出演頻度やスケジュールが先まで確定している訳ではない。

取り敢えず、今週の2月8日、その翌週の13,14,15,16の各日に出演する予定になっている。生番組のストレートニュースと聞いているが、録画配信されるのかどうかも含めて詳細を聞いていないので、8日に出演した時に話を聞いて、またご報告する。

GyaoはUSENが運営しているインターネット放送だ。現在、爆発的に会員数が伸びているので、ご覧になった方も多いだろうと思う。年齢などごく基本的な情報を登録する必要があるが(個人が特定できる情報は含まない)、無料で視聴できるので、お暇な時に見てみて欲しい。(http://www.gyao.jp/)

以下は個人的な意見だが、今は「容疑者」が肩書きとなった堀江前ライブドア社長が仕掛けたニッポン放送、ひいてはフジテレビへの買収や、楽天が仕掛けたTBS株の大量取得から提携への動きについて、私は、ビジネス・プランとして疑問を感じていた(現在も感じている)。上場株を買い占めることや、株式を通じて企業を支配することについては何ら悪いことだとは思わないのだが(悪いとすれば、のんびり上場している被買収企業の経営者が悪い)、地上派のテレビが、時価総額が示すほどの買収価値を本当にもっているのか、という点に疑問があるからだ。

既存のコンテンツは権利関係の処理が難しく、放送局だけ買っても、なかなか収益化しずらい。それに、多くのコンテンツは時間と共に鮮度が劣化するから、結局、必要なのはコンテンツの制作力である。買うなら、放送局ではなくて、厳選して制作者を買うべきではないか。

また、現在、地上波民放は到達力の点で圧倒的なメディアとしてのパワーを持っているが、これと、BS・CS・インターネット放送などとの差は、特に地上波デジタル(TVの買い替え等一手間掛かる)今後、縮小するのではないか。

そう考えると、「ネットと放送の融合」のためには、ともかくネットで放送を配信するインフラを持つことと、番組を制作する能力を蓄積することが重要になる。もちろん、買収の価格次第だが、地上波を無理矢理(相手が嫌がるのに、高いお金を出してまで)手に入れる必要はない。正攻法は、Gyaoのように、ともかく番組のネット配信を始めつつ、自分でも番組を作るアプローチではないだろうか。

堀江容疑者は何ヶ月か前に、楽天・TBS問題を評して、放送局を買うタイミングは、2005年の初頭までで、もう遅い、と宣ったが(何とも自己正当化の強い人物だ!私は、2005年初頭のタイミングでも遅かったと思っている)、この意見自体は正しいように思える。

私がGyaoとはじめて関わったのは、2005年秋の選挙特番だったが、なかなか真面目に番組を作ろうとしていて、立派な出来映えだと思った。それ以来、パソコンで時々Gyaoを視ている。ブロードバンド回線が入っていれば、十分視聴に耐えるし、ある時間に何かを視ようと思ったときの選択肢は、通常のTV放送局よりも遙かに多い。

パソコンは前のめりで見るもので、テレビは後ろにひっくり返りながら見るものだ、と言うご老人もいらっしゃるが(たとえば元有名コンサルタントの某氏)、そんなものは直ぐに変わるし、ハード・ソフト両面で、TVがPCの機能を取り込むのも、PCがもっと簡単に扱えるようになるのも、難しいことではない筈だ。

Gyaoというアプローチは「買える!」と思っている。
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