春日大社の御祭りが毎年12月16日に開かれていると言うことを、知ったのはつい先達日である。そういえば以前にテレビで観て、おおう、こんなんあるんかとえらい感動したこともその時思い出した。それはもう少し詳しく言うと、春日大社のなかの若宮神社というお宮があり、そこの神様は芸能の神様であるとか。この時期お日様が1年で一番弱まる時、神様の力も弱くなるとか。そこで、神様に一の鳥居に造った仮御殿まで移られてそこで神楽などの芸能を見せて力を与えるとのこと。日にちは16日深夜つまり17日の0時から18日0時までの帰られる間、披露されるとのこと。したがって私たちが観るのは後ろからということになる。
なによりも圧巻は神様をお連れする儀式である。頂いたご本には、オオカミのうなりとともに神様は来られたとあるが。本殿からお連れが到着する前に二の鳥居のところで寒さに震えて待っている我らに対して神官の説明があった。「これからもうしばらくすると神様が通ります。今から社務所や街灯の電気いっさい消えます。神様は人口の明かりを嫌いますから、カメラ、懐中電灯の光は禁止です。これは本来ならば秘儀中の秘儀でありますから、みなさまもどうぞご一緒に(見物ではなく)お見守りください。と、こう言われるといやがおうでも盛り上がる。ちなみに観衆はしかと解りませんが、何千人ぐらいでしょうか。二の鳥居から先は入ることができないためその前の道の両端に息を沈めて、暗闇のなかで耐え忍んでいる。そこに2本の太い松明を地面に引きずりながら、道を清めているのでしょう、その明かりがぼぉーと遠くに見える。と同時にまさしくオオカミが鳴くごとく、おおおぅと太鼓の音も聞こえる。それらに引きずられるようにして、身を乗り出すようにして待ち構えていると、やがてその姿が目の前を通る。榊をかかげ持った白装束の神官50から70人がその雄叫びとも唸りともつかぬ荒声を発しながらしずかに、なれど榊のふれあう音もするどく。その一団のなかに囲まれて神様がおられることは必定。そのあとにつづいて、笛、笙(だとおもわれる)太鼓が続き、それから社中の面々が2百人ほどか、続いて。はい、待っていたのは2時間ほどなれど、実際に通りすぎるのはほんのわずかな時間。その長い行列のあとにつづいて、われら参詣のものも行列に加わった。寒さに震えながら、この行列そのものがもう神様のすがたになってしまっているなぁなどと、おもいながら。