藤沢周平のこと

2020-06-02 21:19:35 | 日記

 先日7冊の本を書いた。その中で藤沢周平の「闇の梯子」を紹介した。早速それを読んだ方からメールがきた。「藤沢周平さんの名前は聞いてはいたけれど、読む機会がなかった。けれどこれはきっと面白いに違いないと思って読んだ。ところがである。ここに出てくる物語どれも暗い、きつい、辛い物語ばかりでこんなんを、あんたはいいというのか。」と叱られた。 こちらの書きようが悪かったのだろう、癒されるつもりで読んだのが大間違いだったのだろう。その意味ではこの「闇の梯子」はことのほか暗かったことに、こちらもびっくりした。こちらも紹介がてらあれから読んだのだ。しかしなんていうのだろう、周平さんは人であることを根底的に信じていると言ったらいいのでしょうか。まことのそれぞれの暮らしも楽しみや嬉しさももちろんあるけれど、皆それぞれがそれぞれの抱え込み方をして何かを懸命に背負って暮らしている。それは他者から見れば暗かったり、辛かったりであるが、人として生きているありようそのものなんだと思う。われらはいつもなんとなく幻影を描いていて、どこかすっきりさわやかに暮らしたいという願望がつい幻影する。

 いわば、生きていることの辛さや悩み惑いがあればこそ、お月さんの姿が目に映るし、野の花が鮮やかにこのわれを誘うものとしてある。そう周平さんはいうているように思うのだ。ちなみに「橋ものがたり」はじつにほのぼのさせてくれる名品。

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