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ギリシャの債務問題とその背景

2015年06月26日 | Weblog

 6月末に期限が迫ったIMF等への債務返済に対する資金供与等のギリシャへの援助策とギリシャに対する年金、社会保障改革、財政健全化要求の交渉が大詰めを迎えています。ギリシャが期限にIMF等への資金を返済できないとなれば、ギリシャはデフォルトとなります。次のステップは、ユーロ通貨圏からの脱退、さらに次のステップは、EUからのギリシャの脱退です。ユーロ通貨圏から脱退する方法に関しては、取決めがなく、実務的には相当な困難が予想されます。

 今回のギリシャ債務問題に関して、市場は比較的冷静であり、大きな混乱が今のところ出ていないのは、欧州債務危機以降ギリシャ問題がスペイン、ポルトガル、イタリア等に伝播しないような遮断壁を作ってきたこととECBなどが危機対応の支援制度を充実させてきたことです。しかしいざデフォルトとなると市場の反応を十分予想しえない点は注意が必要です。

 今回EUとギリシャの問題は、夕張市の財政破たん問題との対比で考えられよう。日本の場合は、中央政府から破たん自治体に対して十分な財政支援を行うことにより破たんにおける地域の混乱や破たんの経済的影響を最小限にすることができました。一方、ギリシャが自国通貨を持っている場合には、財政や国際収支の悪化に対して、通常通貨切り下げで輸出競争力を高め、また実質的な賃金や年金、社会保障の給付水準を切り下げることができます。しかしユーロを通貨として使っている以上通貨切り下げができず、政治的に賃金、年金、社会保障給付水準を引き下げることが望ましいのですが、国民の選挙で選ばれた政府はこれらの対策にはそれほど前向きではないことが問題を複雑化しています。最終的に必要なことは、ドイツ等のギリシャに対する財政支援ですが、EUは財政的に統合されておらず抜本的な解決ができない問題点があります。

 今回のギリシャの債務交渉は、一時的に妥結したとしても、ギリシャの財政赤字や産業競争力強化がなされない限り、長期間繰り返し、繰り返し発生することが予想されます。私は、ギリシャ問題の解決は、ギリシャのユーロ及びEU離脱を認めるか、ドイツ等から財政支援を恒常的に行う制度を導入するか長期的には二者択一と考えます。IMFやECBなどの財政支援で時間稼ぎをすることができますが、本質的な解決にならないと考えます。ドイツ国民がギリシャの財政支援に抵抗感がある以上、ギリシャのデフォルトは時間の問題と考えて、このことによる金融市場の混乱を必要最小限にとどめるための方策やタイミングを考えることが真の解決策でしょう。

 最後になりますが、年金や社会保障改革が進まず累積財政債務を抱えるギリシャより、日本の対GDP公的債務が各段に大きいことは留意すべき点です。GDP比200%超える公的債務と世界一の少子高齢化が進んでいる日本は、財政的には厳しい状況にあることは言うまでもありません。アベノミクスの円安政策とゼロ金利政策と2%インフレターゲットを組み合わせ実質マイナスの金利を作る政策は、国民にだまし討ちで、ドルベースでの賃金、年金等の引き下げと、産業競争力の強化を行うものです。ドルベースで賃金や年金が下がってもすぐには生活に打撃はありませんが、日本が資源エネルギー、食料品、最近では電化製品等多くのものを輸入に頼っている以上ボデイブローのように日常生活にひびいてくることが予想されます。また日本国債は、国内の預金でファイナンスされているので、実質マイナス金利政策により、預金者にインフレ増税を課すものです。おそらくアベノミクスが、2020年の東京オリンピックのころまでもし続くとすると、大幅な円安や実質預金の切り捨てにより、多額の株式や不動産を保有していない普通の国民の生活水準は、ずいぶん切り下げられていることでしょう。アベノミクスによる資産バブル政策は、株や不動産価格の上昇で景気や税収が一時的には改善しますが、将来の潜在成長力を先取りすることになり、バブル崩壊後の大きな副作用をもたらします。私は、これらのことをしっかり国民に説明することが野党の役割であると主張します。