鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

勿来関図縁頭 竹乗

2010-03-29 | その他
勿来関図縁頭 竹乗

  
勿来関図縁頭 銘 竹乗

 桜と関係のある人物として、まず第一に思い浮かぶのは、平安時代の武将、源氏の武士団としての基礎を固めた八幡太郎義家(はちまんたろうよしいえ)であろう。義家が陸奥守として奥州に赴いたおり、勿来の関(なこそのせき)を通過したのが桜の季節。歌枕にも採られているこの地に至った義家の、遠く離れた都を偲ぶ姿が画題として採られているのである。武将として名高いと同時に歌人としても知られているためか、義家は装剣小道具の画題として好まれており、この図も比較的目にする機会が多い。
 朧銀地を磨地に仕上げ、高彫に金銀赤銅の色絵を的確に施し、馬上の義家の振り返る先に、桜の散りかかる勿来の関がある。高彫の表面がなだらかに仕上げられて柔らか味があり、武家の姿を捉えた作品とは言え、振り向いた表情などに京の雅を漂わせている。桜はごくわずかに添え描いているのみだが、印象深く美しい構成である。この縁頭には竹乗の銘があるも、作者については不詳。