鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

松樹に軍馬図小柄 後藤 Goto Kozuka

2013-12-31 | 小柄
松樹に軍馬図小柄 後藤


松樹に軍馬図小柄 後藤

 赤銅魚子地を高彫に仕立て、金銀の色絵を施して華やかな場面に仕上げた小柄。江戸時代前期の後藤の作。松に竹は冬にでも緑の衰えることがないことから長寿のシンボル。これに、繋がれた馬は今にも綱を切って駆けださんばかりに快活。活力に満ちた図柄とされている。出陣のときを待っているのであろうか。


 また一年が過ぎました。来年はどれだけ出来るか、あるいは続けられるか分りませんが、出来る限り作品を紹介してゆくつもりです。コメントを残してもらえると、この作業をしている者にとっては励みになります。よろしく。
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源平屋島合戦図小柄 光壽 Mitsutomo Kozuka

2013-12-29 | 小柄
源平屋島合戦図小柄 光壽


源平屋島合戦図小柄 銘 光壽(花押)

 後藤宗家十二代光壽の在銘作。右の一団は舟上の平家。左は義経の率いる源氏。瀬戸内の海軍を支配して舟戦に長けた平家と、軍馬を操るを得意とした源氏の、まさに対比の意味を備えている図柄でもある。群れる軍馬の先頭にいるのが義経であろうか。
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牟礼高松図小柄 後藤 Goto Kozuka

2013-12-28 | 小柄
牟礼高松図小柄 後藤


牟礼高松図小柄 後藤

 松樹の下で海を見つめる武士。屋島を攻撃した義経である。松樹、馬上の武者、海という三つの要素のみを描いた象徴的な図柄であるが、この三つだけで意味が分かってしまうのが我が国の絵画の面白さでもある。留守模様にせよ、このような象徴的図柄にせよ、背後にある意味を伝えているのは、画題という定型化された様式が備わっていたからだが、その限られた題材を如何に消化するかが金工の技術と感性なのであろう。すばらしいと思う。
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羅城門の鬼図三所物 程乗 Teijo Mitokoromono

2013-12-27 | 小柄
羅城門の鬼図三所物 程乗


羅城門の鬼図三所物 銘程乗作光孝(花押)

以前にも紹介したことがある、『平家物語』に見られる武家の台頭を暗示する羅城門の鬼退治伝説。頼光一門の渡辺綱が羅城門に金札を立てようとしているところを鬼に襲われた場面。綱の兜をつかんで天上へと舞い上がらんとする鬼の腕を切り落とすのだが・・・。太刀の、武器としての効果が具体的な鬼退治として表現されたもの。ここでは必ず馬が描かれる。馬は武家と常に対として考えられているのだ。それは先に紹介した宇治川先陣図など、平安時代末期の源平の時代の武士の意識へと連続している。後藤程乗の作であることを十三代光孝が極めた、江戸前期の後藤家の特徴が良く示されている三所物である。

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軍馬図小柄 法橋程乗 Teijo Kozuka

2013-12-26 | 小柄
軍馬図小柄 後藤程乗



軍馬図小柄 銘 法橋程乗(花押)

 後藤宗家九代程乗の貴重な自身銘が刻されている作。放牧されている馬に馬具を身に着けている馬。その軍馬の野に放たれて疾駆する様が静と動の対比で描かれている。赤銅地に高彫、金銀の色絵に加え、朧銀色絵も加えているのであろうか放れ馬の身体の色合いは微妙。快活な表情がいい。

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樋定規に馬図小柄 後藤 Goto Kozuka

2013-12-24 | 小柄
樋定規に馬図小柄 後藤


樋定規に馬図小柄 後藤

 直線はいかにも武士好みの意匠である。図柄の一直線は他に何もないというわけではない。猪突猛進ではないが、まっすぐに前を見つめる意識を大切にしていたのであろう。樋定規図とは言うものの、樋定規そのものを描いているわけではないのである。そこに馬が組み合わされている。四百年以上を経て表面はすり減っており、表情など全く分らないが、力強く疾駆するその様子は理解できよう。いかにも和産の馬の姿であり、身体の各部に肉感があって四肢も力強い。

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宇治川先陣図鐔 後藤栄乗 Eijo Tsuba

2013-12-21 | 
宇治川先陣図鐔 後藤栄乗


宇治川先陣図鐔 後藤栄乗

 同じ後藤栄乗と極められた、同じ宇治川先陣に題を得た鐔。宇治川で木曽義仲軍を攻めた際に、宇治川渡河先陣を競った高綱と景季の間には、実はそれ以前にも争いがあったという。高綱の生唼も、景季の磨墨も、ともに頼朝の愛馬であった。宇治川の合戦では、生唼は高綱のものとなっているが、実はこの馬に先に目を付けたのが景季。頼朝に何度か下賜を願い出たものの許されず、代わりに磨墨が与えられたのであった。ところがその後、高綱も同様に生唼の下賜を願いでた。しかも執拗に迫り、ついには頼朝も諦めたものか、自らの知らぬ間に盗まれたとあっては仕方あるまいとつぶやき、暗に盗み出すことを許したのである。
 両者を比較すると、誠に素直な景季に対して、いかなる手段を用いても我がものにするという高綱の特質が浮かび上がる。良いか悪いかは別として、その意識は、宇治川先陣においても現れたのである。82.3ミリ。
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宇治川合戦図鐔 後藤栄乗 Eijo Tsuba

2013-12-20 | 
宇治川合戦図鐔 後藤栄乗


宇治川合戦図鐔 後藤栄乗

 後藤宗家六代栄乗の作と極められた、桃山時代の特質が窺える鐔。大振りで人物も大振り。金銀を多用して華やかである点もこの時代の特徴。表は佐々木高綱と梶原景季による先陣争いを描いた図。裏面は同じ合戦で、木曽義仲の愛妻として知られる巴御前の、逃走の最中に追手を倒すという奮戦の姿を活写したもの。櫃穴が左右同じであることから、どちらを表にしても良い。巴御前の奮戦場面を拡大してあるのでご覧いただきたい。この馬は、重い甲冑を身にした二人の武者を背にして跳びはねていることになる。脚太くがっしりとした和産の馬での活躍に他ならない。

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瓢箪から駒図小柄 後藤栄乗 Eijo Kozuk

2013-12-19 | 小柄
瓢箪から駒図小柄 後藤栄乗



瓢箪から駒図小柄 栄乗作光孝(花押)

 後藤宗家六代栄乗の作であることを、同十三代光孝によって極められた作。高彫金銀色絵に銀の平象嵌。「瓢箪から駒」と題したが、紙の馬を持ち歩き、その紙の馬に瓢箪に入れられた特殊な薬をかけることによって現実の馬に仕立て、これにのったという張果老かもしれない。だが、狭苦しい瓢箪から飛び出して喜んでいるように快活に跳ね回る馬から、「瓢箪から駒」を題に採りたい。戦国時代、摂津には秀吉が管理した多田銀山があった。その中に「瓢箪間歩」と名付けられた坑道があった。秀吉が馬で坑内に入ったとも伝えられる、比較的大きな坑道であった。この坑には、古くから秀吉によって金塊が隠されたという伝説がある。即ち瓢箪から思わぬ財宝が飛び出すということになるのだが、これが即ち「瓢箪から駒」の謂れだとか・・・という説もあるのだがどうだろう。
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牛馬図目貫 後藤光乗 Kojo Menuki

2013-12-18 | 目貫
牛馬図目貫 後藤光乗



牛馬図目貫 後藤光乗

 これも後藤宗家四代光乗の作。牛を赤銅で、馬を金無垢で彫り出し、両者を芋継の手法で合着させた特殊な造り込み。色絵に比較して金の冴えが抜きん出ており、赤銅も深みのある黒で、贅沢な表現である。馬は流れるような姿態。後藤に牛の図は比較的多いが、牛馬とした例は少ない。両者の特質が対比の形で見事に表現されている。上品な作だが、動きに活力が感じられていい。
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黄石公と張良図小柄 後藤光乗 Kojo Kozuka

2013-12-17 | 小柄
黄石公と張良図小柄 後藤光乗


黄石公と張良図小柄 後藤光乗

 過去に紹介したが、何度も紹介したい作品である。人物も馬も小振りな印象だが、小さいながらも引き締まった高彫とされているところに後藤宗家四代光乗の特徴と
優れた技術がある。黄石公と張良の出会いの場面であろうか、この伝承において馬は重要な存在ではないが、ここでは四肢の張った馬を従える黄石公としている。特に彫口が高くふっくらとしており、鬣や尾など細部にも鏨を切り込んでいることから各部が際立っている。際端も引き締まっている。それは馬だけではない、二人の表情にも厳しさが表わされている。
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二疋馬図笄 後藤祐乗 Yujo Kougai

2013-12-16 | 
二疋馬図笄 後藤祐乗




二疋馬図笄 後藤祐乗

 後藤宗家初代祐乗の作であることを、同十二代光理が極めた笄。高彫に金色絵と平象嵌を加えている。平象嵌の一部が抜け落ちており、その処理の方法など、技術的情報が窺いとれる作でもある。金の斑文のある馬は大地を強く蹴っており、背後の馬は前足を前方に強く突き出している。互いの視線が一になっているのは古典にある阿吽の相。
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直実に敦盛図目貫 後藤宗乗 Sojo Menuki

2013-12-14 | 目貫
直実に敦盛図目貫 後藤宗乗



直実に敦盛図目貫 後藤宗乗

 後藤宗家二代宗乗の、『平家物語』の名場面に取材した作。この時代の馬は、現代の馬に比較してかなり小形であった。マンガや歴史雑誌などで紹介されている平家物語など、イラストによる軍馬の様子とは明らかに間違い、この目貫のような小さな馬が正しい。小さくてはあまりにも格好悪いというので現代のような馬に描いているのだが、逆に何ともおかしい。軽い騎手をのせて走る競馬ではないのだ。鎧を身に着けた武将が、ひ弱な馬になどのって走れるものか。十数年前に知り合いの画家に源平合戦図の要所をイラストで表現してもらったことがある。その頃は筆者も、正確さを重要視する画家の仕上げた絵をみて格好が悪いと思ったが、あとになって考えると、現在の雑誌などに氾濫している不均衡な軍馬の図の方が何ともおかしく見える。
 さてこの目貫は、海上の軍舟へ逃れようとする敦盛を呼び返す直実。馬は既に腹の辺りまで水につかっている。波は瀬戸内のそれ。武士の立場として、敵将に呼び返されたのであれば一騎打ちに応じねばならない。敦盛はすぐさま陸へと馬をかえしたのだが…。


 同じ『平家物語』の、宇治川先陣を描いた、ちょっと時代が降って桃山頃の工。後藤の係累だが、いずれの工とも判断できない。戦場を印象付けているのであろう、波は川の流れを意味しており激しい動きが感じられる。宗乗の馬は鼻筋が通っていて品があり、堂々としているのに比し、この目貫は激しく動く様子に力強さが表わされている。
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波に馬図鐔 Tsuba

2013-12-13 | 
波に馬図鐔 

波に馬図鐔

 波兎と同じ意味があるのであろう、波間を走り抜ける馬の様子を象徴的に表現している。襲い来るような波こそ敵軍であろう、その間隙を突いて攻撃する。こうして鑑賞すると、隠されているであろう意味への想いも広がり、図柄としても面白いのだが、実は波に馬の図は少ない。75ミリ。

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波兎図小柄 Kozuka

2013-12-12 | 小柄
波兎図小柄


波兎図小柄

 波文を背景に二羽の兎。銀の波に金の兎が映える構成。兎の表現が如何にも古風。阿吽の相にて駆けながらも向い合う姿は後藤の構成。波は確かに古金工のそれで、文様としてあり、兎が存在する意味を暗に示しているようでもある。
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