鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

九年母図鐔 埋忠明寿 Myoju Tsuba

2021-01-27 | 鍔の歴史
九年母図鐔 埋忠明寿


九年母図鐔 埋忠明寿

 真鍮の色合いが頗るいい。わずかに腐らかしが施されているのであろう、表面の一部に独特の皺が現れており、そこが深く沈んだ色合いを呈している。九年母の枝葉は赤銅の平象嵌。実を透かしてヘタの部分を金の平象嵌としている。赤銅の黒が、地に滲み、地の皺と溶け合っているように感じられる。金だけが鮮やか。

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雲龍図鐔 赤文 Sekibun Tsuba

2021-01-25 | 鍔の歴史
雲龍図鐔 赤文


雲龍図鐔 赤文

 強く深く切り込むように施した片切彫により、図柄に声明を与えたのが赤文。渋い色調の鉄地を好んで用い、時には真鍮地をも用いたのも、深く沈んだ風合いを好んだことによる。磨地に近い微細な石目地であろうか、腐らかしの手は用いずに真鍮地の風合いを活かしている。

鐘馗図鐔 常重 Tsuneshige Tsuba

2021-01-25 | 鍔の歴史
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鐘馗図鐔 常重


鐘馗図鐔 常重

 常重は奈良派の金工。渋い色調を好み、その風合いを最大限に生かした作風を得意とした。山水風の風景図、古画を思わせる図など。真鍮地に槌目を鏨で加えている。腐らかしが施された古作の真鍮地に見られる皺とは異なる。鏨で加えられた微細な凹凸の中の色合いが黒味を帯びている。木や岩の苔は金の色絵。

唐草文図鐔 西垣 Nishigaki Tsuba

2021-01-23 | 鍔の歴史
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唐草文図鐔 西垣


唐草文図鐔 西垣

 真鍮地の渋い色合いを下地として活かし、平象嵌の手法で唐草文を全面に散らし配した作。平象嵌部分は山銅であろうか、地に溶け込むような色調で、墨絵のように陰影に揺らぎがあるところが魅力だ。

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桐紋桜花紋唐草図鐔 西垣 Nishigaki Tsuba

2021-01-21 | 鍔の歴史
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桐紋桜花紋唐草図鐔 西垣


桐紋桜花紋唐草図鐔 西垣

 これも同じ腐らかしによって文様を浮かび上がらせた作。文様を表わすにはほんの僅かの腐食で充分だ。しかも腐食した部分は微細な凹凸であるため、時代色が付きやすく、平坦な文様部分を鮮明にする。
さて、このような真鍮地金の下地は、鍛えたものであろうか、溶融した真鍮地を鐔の形に鋳込んだものであろうか、この点は現代の金工に研究してほしいところだ。溶融した金属を冷却固化させると、必ず内部に小さな気泡が生じる。そのような気泡が見当たらないので鍛えていると思うのだが、どうだろう。鍛造しても綺麗に揃ったような金属の組織が生じるのであろうか。この辺りが疑問だ。骨董市などで、江戸時代の作と思われる真鍮地の器物を探し、同様の地模様が出ていないだろうか探してみるが、古そうな作でも皺のないものが多い。実際にどのように製作しているのであろうか、知りたいものである。

抱杏葉紋唐草文図鐔 西垣 Nishigaki Tsuba

2021-01-19 | 鍔の歴史
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抱杏葉紋唐草文図鐔 西垣


抱杏葉紋唐草文図鐔 西垣

 同心円状に溝を設けた鐔面全体に、腐らかしの手法で文様を浮かび上がらせている。腐らかしとは、酸を用いて表面をわずかに腐食させることによってざらついた部分を造り出し、それを文様とする。即ち腐食せずに残ったところが唐草であり、杏葉紋である。腐食によって真鍮独特の皺模様が生じる。先に紹介した埋忠一類の光忠などの表面に現れている地文と同じ。鏨で彫り込んで表したものではない。

泥波図鐔 西垣勘四郎 Nishigaki-Kanshirou Tsuba

2021-01-19 | 鍔の歴史
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泥波図鐔 西垣勘四郎


泥波図鐔 西垣勘四郎

 この独特の意匠からなる波を肥後では泥波と呼んでいる。西垣勘四郎に特徴的な作である。肥後金工も真鍮地を好んで用いた。背景に、華やかさを抑えるという美意識が備わっていたからであろう。そしてその美意識は千利休の茶に通じると考えられている。□65

風景図鐔 平安城象嵌 heianjo-Zougan Tsuba

2021-01-18 | 鍔の歴史
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真鍮象嵌鐔拾遺


風景図鐔 平安城象嵌

 先に紹介した政重の作は地が平坦であったが、本作は抑揚を付けて波や雲のあり様を明確にしている。未だ文様を散し配しているだけの校正だが、耳の装飾も含めて創造性が進化しつつある様子が判る。

梅樹唐花文小透図鐔 平安城五条住政重 Masashige Tsuba

2021-01-18 | 鍔の歴史
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真鍮象嵌鐔拾遺


梅樹唐花文小透図鐔 平安城五条住政重

 平安城の銘が刻された貴重な作例。鉄地真鍮象嵌という平安城様式で、絵画的意匠が進んでいる。このような職人が、象嵌技術を工夫し、技術力を高め、意匠についても、古い時代の単なる文様から、本作のように梅の枝ぶりなどに工夫を加えて、より写実性を高めていった。

桐樹図鐔 久法 Hisanori Tsuba

2021-01-15 | 鍔の歴史
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桐樹図鐔 久法


桐樹図鐔 久法

 久法については詳らかではないが、作風が埋忠明壽そのものであることから、埋忠門人として考えてよいだろう。同門でなくても強く影響を受けた金工に間違いない。真鍮地に山銅地の平象嵌。時を重ねることによって色調が沈み、装飾性を超越した魅力的な景色を示し始める。明るい地金に黒っぽい金属を平象嵌し、墨絵のような風合いを表わしたものをそのまま墨絵象嵌と呼ぶ。まさに墨絵からなる古画を見るような作だ。地面の所々に現れている古調な筋状の凹凸が真鍮地の特徴である。

古裂図鐔 秋田正阿弥 Akita-Shoami Tsuba

2021-01-14 | 鍔の歴史
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古裂図鐔 秋田正阿弥


古裂図鐔 秋田正阿弥

 秋田正阿弥と極められた作。真鍮地の表面に腐らかしの手法で織物の文様を浮かび上がらせたもの。秋田というと、中央から遠く離れた北国の印象があるも、北前船によって今日の文化が多量に流れ込んだところ。この鐔も品位高く、洒落ている。耳に、なんと鉄地で覆輪を施している。飾りだけではない、実用としての強度を求めているのである。真鍮地の風合いが魅力の作である。

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文散し洲浜透図鐔 埋忠 Umetada Tsuba

2021-01-13 | 鍔の歴史
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文散し洲浜透図鐔 埋忠


文散し洲浜透図鐔 埋忠

 埋忠派に特徴的な文様美が示された作。明壽に代表される埋忠派は、装剣金具の装飾として、着物などに採られているような文様を布目象嵌や平象嵌を用いて華麗に施した。この鐔でも、真鍮地を土台とし、耳には金の布目象嵌で緻密な線状の文様を繰り返し、切羽台周囲の花状の透かし部分にも銀の布目象嵌で同様に緻密な線を施している。真鍮という地金は、素材の中に独特の細やかな叢があり、焼手腐らかしの処理を施すことにより、皺状の肌が浮かび上がる。

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桜花図鐔 埋忠 Umetada Tsuba

2021-01-12 | 鍔の歴史
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桜花図鐔 埋忠


桜花図鐔 埋忠

 六ツ木瓜風に仕立て、各々を桜花状に切り込みを設けている。小透もまた桜で、意匠は大胆。桃山頃の時代的嗜好性が窺える鐔である。素銅地とされているが、色調は真鍮地に近く、色変りも魅力的。

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唐草文図鐔 埋忠 Umetada Tsuba

2021-01-09 | 鍔の歴史
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唐草文図鐔 埋忠


唐草文図鐔 埋忠

 真鍮地に銀線を平象嵌の手法で表した作。葉を陰に透かしており、これも埋忠にままみられる作風。真鍮地の風合いがいい。わずかに打返耳としており、その穏やかなつらなりの様子と、地面の色変りの様子が真鍮地独特の景色となっている。地面の渋い色調もいいのだが、銀線も独特の黒味を帯びて味わい深く、先に紹介した秋田金工の作と同様に金属の組み合わせがいい。

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牡丹蝶に猫図鐔 秋田金工 Akita-Kinkou Tsuba

2021-01-08 | 鍔の歴史


牡丹蝶に猫図鐔 秋田金工


牡丹蝶に猫図鐔 秋田金工

 秋田金工が時代の上がる埋忠を狙って製作したものと考えられる。真鍮地の処理の方法は、鎚で叩いただけで、磨地石目地などの処理をせず、その自然な肌合いを活かし、打返耳にしている点も見逃せない。図柄の蝶を誘う牡丹とこれを狙う猫を高彫に表現しているところが新しい。まずは真鍮独特の古色が魅力だが、意外にも金銀赤銅素銅の色金の処理が強くもなく妙なる味を出している。